SESはやめとけ!IT業界の闇?後悔する前に知るべき7つの罠と搾取構造

やめとけ

「SESって、IT業界未経験でもエンジニアになれるって聞いたけど、本当はどうなんだろう?」「なんだか『客先常駐』とか『多重下請け』とか、ちょっと不安な言葉も聞くけど、実際どうなの?」そんな風に、SES(システムエンジニアリングサービス)という働き方に興味を持ちつつも、その実態について疑問や不安を感じている学生さんや、IT業界への転職を考えている社会人の方も多いのではないでしょうか。

「SES やめとけ」と検索すると、ネガティブな情報がたくさん出てきて、ますます混乱してしまいますよね。

この記事では、なぜSESという働き方を、場合によっては安易におすすめできないのか、その具体的な理由を一つひとつ丁寧に解き明かし、皆さんが将来「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないための大切な視点をお伝えしていきたいと思います。

皆さんの大切なキャリア選択が、より賢明で、後悔のないものになるよう、少しでもお手伝いができれば、とても嬉しいです。

この記事でお伝えしたいこと

  • SES(システムエンジニアリングサービス)とは何か、そのビジネスモデルとIT業界における立ち位置
  • なぜ「SESはやめとけ」という声があがるのか、その具体的な理由7選
  • SESで働くことのリアルな側面と、そこで直面するかもしれないキャリア、給与、労働環境、人間関係に関する問題点
  • もしSES業界で働くことを選ぶのであれば、後悔しないために知っておくべき心構え、企業選びのポイント、そして自己防衛策
  • 皆さんのITキャリアが、より希望に満ちたものになるための、建設的な考え方と行動のヒント
  1. SES(システムエンジニアリングサービス)とは? まずはその概要とIT業界での立ち位置を理解しよう
    1. SESの基本的な仕組みと契約形態(準委任契約)
    2. SES業界の現状と多重下請け構造の問題点
    3. SESで働くことの一般的なイメージと実態とのギャップ
  2. ここが危険!SES就職・転職を勧めない7つの深刻な理由
    1. 【理由1】キャリアアップの困難さとスキルが身につかない可能性:「客先ガチャ」の恐怖
      1. スキルシート至上主義と「使い捨て」のリスク
      2. 設計・開発の上流工程に関われない現実
    2. 【理由2】給与水準の低さと評価制度の不透明さ:頑張りが報われない?
      1. 多重下請け構造による中間マージン(中抜き)の実態
      2. 評価基準の曖昧さと昇給・昇進の難しさ
    3. 【理由3】労働環境の劣悪さと長時間労働の常態化:心身を蝕むブラックな実態
      1. 「客先のカレンダー通り」という名の不条理
      2. 炎上プロジェクトへの投入とデスマーチの恐怖
    4. 【理由4】帰属意識の薄さと孤独感:自社への愛着が持てない?
      1. 「ウチの会社の人間じゃないんで」と言われる寂しさ
      2. 自社の理念や文化への共感が難しい
    5. 【理由5】多重下請け構造の末端での搾取:中間マージンで給料が消える?
      1. 「単価」と「給与」の大きな乖離
      2. ブラックボックス化されたマージン率と交渉の難しさ
    6. 【理由6】案件を選べない「案件ガチャ」とキャリアプランの崩壊
      1. 希望しない技術、興味のない業界へのアサイン
      2. 待機期間の不安と「とりあえず」の案件受諾
    7. 【理由7】偽装請負のリスクと法律違反の可能性:知らぬ間に加担?
      1. 指揮命令系統の曖昧さと法律のグレーゾーン
  3. それでもSES業界で働くことを選ぶなら…後悔しないための心構えと対策
    1. 徹底的な自己分析とキャリアプランの明確化:「なぜSESか」を問い直す
    2. 優良SES企業の見極め方:ホワイト企業を見抜くポイント
    3. スキルアップへの強い意志と自己学習の継続:環境に依存しない努力
    4. 契約内容の確認と交渉力の重要性:自分の身は自分で守る
    5. セカンドキャリアや脱出戦略も視野に入れる:SESはあくまで通過点?
  4. SES就職・転職「やめとけ」理由の総括と、あなたのITキャリアを輝かせるために

SES(システムエンジニアリングサービス)とは? まずはその概要とIT業界での立ち位置を理解しよう

まずはじめに、SES(システムエンジニアリングサービス)とは一体何なのか、その基本的な仕組みやIT業界における役割について、一緒に見ていきましょう。この働き方の特性を正しく理解することが、後悔しないキャリア選択への第一歩になりますからね。

SESの基本的な仕組みと契約形態(準委任契約)

SESとは、ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用といった業務において、エンジニアの技術力(労働力)を、特定の期間、クライアント企業(客先)に提供する契約形態、またはそのサービス自体を指します。

多くの場合、エンジニアは自身が所属するSES企業から、クライアント企業のオフィスに派遣され、そこで業務を行います。これを「客先常駐」と呼びます。

SES契約の多くは、「準委任契約」という形態で結ばれます。これは、「成果物の完成」を目的とする「請負契約」とは異なり、「業務の遂行」そのものを目的とする契約です。

つまり、SESエンジニアは、クライアント企業からの指示(指揮命令)は直接受けず、あくまで所属企業の管理下で、定められた業務を行う建前となっています。しかし、この建前と実態が乖離しているケースも多く、それが様々な問題を引き起こす原因の一つにもなっているんです。この点については、後ほど詳しく触れますね。

準委任契約では、エンジニアの労働時間に基づいて報酬が支払われるのが一般的です。例えば、「エンジニア1人が1ヶ月働いたらいくら」という単価(月単価)が設定され、それに基づいてSES企業に報酬が支払われます。

SES業界の現状と多重下請け構造の問題点

日本のIT業界、特に大規模なシステム開発プロジェクトにおいては、元請けとなる大手SIer(システムインテグレーター)から、二次請け、三次請け、さらにその下へと、業務がピラミッドのように再委託されていく「多重下請け構造」が常態化していると言われています。

SES企業は、この多重下請け構造の中で、様々な階層に位置し、エンジニアを供給する役割を担っています。

この構造自体が必ずしも悪いわけではなく、それぞれの企業が専門性を活かしてプロジェクトに貢献するという側面もあります。

しかし、下請けの階層が深くなるにつれて、中間マージン(いわゆる中抜き)が発生し、末端で実際に作業するエンジニアへの報酬が低くなりがちであることや、プロジェクト全体の情報伝達が悪くなったり、責任の所在が曖昧になったりするといった問題点が指摘されています。

SES業界で働くということは、この多重下請け構造の中で、自分がどの立ち位置に置かれるのかを意識する必要があるということなんです。

SESで働くことの一般的なイメージと実態とのギャップ

SESという働き方に対して、「未経験からでもITエンジニアになれるチャンスがある」「色々なプロジェクトに参加できて経験が積める」「客先によっては最先端の技術に触れられる」といったポジティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、SESはIT業界への入り口として、門戸が比較的広いと言われていますし、多様な現場を経験できる可能性も秘めています。

しかしその一方で、「給料がなかなか上がらない」「スキルアップが難しい」「労働環境が客先に左右される」「自社の社員というよりは派遣社員に近い感覚」といったネガティブな声も多く聞かれます。

この「キラキラしたイメージ」と「厳しい実態」との間に大きなギャップがあることが、SES業界を語る上で非常に重要なポイントであり、「やめとけ」と言われる大きな理由の一つになっているんですね。

「未経験でも大丈夫!」という甘い言葉の裏には、どんな現実が待っているのでしょうか?次の章では、その具体的な問題点について、詳しく見ていきましょう。


ここが危険!SES就職・転職を勧めない7つの深刻な理由

さて、SESの概要についてご理解いただけたところで、いよいよ本題です。なぜ「SESはやめとけ」という厳しい言葉が、これほどまでに多く聞かれるのでしょうか。

それは、SESという働き方が抱える構造的な問題や、そこで働くエンジニアが直面しやすい困難に起因しています。ここでは、私が特に懸念する7つの深刻な理由を、詳しくご説明したいと思います。

【理由1】キャリアアップの困難さとスキルが身につかない可能性:「客先ガチャ」の恐怖

SESエンジニアのキャリア形成において、最も大きな問題の一つが、配属されるプロジェクト(客先)によって、経験できる業務内容や身につくスキルが大きく左右されてしまう、いわゆる「客先ガチャ」の問題です。

自分の希望する技術や分野の仕事に就けるとは限らず、時にはスキルアップに繋がらない単純作業や、キャリアプランとはかけ離れた業務を長期間担当させられることもあります。

スキルシート至上主義と「使い捨て」のリスク

SES企業によっては、エンジニアのスキルアップよりも、目先の案件にエンジニアを「アサイン(割り当てる)」することを優先する傾向があります。

スキルシート(職務経歴書)の見栄えが良くなるような経験よりも、とにかく単価の高い案件や、人手が足りていない案件にエンジニアを送り込もうとするのです。その結果、エンジニアは自分の意志とは関係なく、様々なプロジェクトを転々とさせられたり、特定の技術に偏った経験しか積めなかったりすることがあります。

「このままだと、自分の市場価値が上がらないのではないか…」「将来、本当にやりたい仕事に就けるのだろうか…」そんな不安を抱えながら働くことになるかもしれません。

設計・開発の上流工程に関われない現実

特に多重下請け構造の下層に位置するSES企業の場合、担当できる業務が、プログラミングやテストといった下流工程に偏りがちで、要件定義や設計といった上流工程に携わるチャンスが少ないという現実もあります。

上流工程の経験は、エンジニアとしてのキャリアアップや市場価値向上において非常に重要ですが、SESではその機会を得るのが難しい場合があるのです。

もちろん、客先によっては素晴らしい経験が積める「当たり」の案件もあります。しかし、それはあくまで「運」の要素が強く、自分でコントロールできない部分が大きいのが「客先ガチャ」の怖いところなんです。

【理由2】給与水準の低さと評価制度の不透明さ:頑張りが報われない?

SESエンジニアの給与水準は、残念ながら、自社開発企業や大手SIerのエンジニアと比較して、一般的に低い傾向にあると言わざるを得ません。

これには、前述した多重下請け構造による中間マージンの問題や、SES企業のビジネスモデルが大きく関係しています。

多重下請け構造による中間マージン(中抜き)の実態

クライアント企業が支払うエンジニアへの報酬(単価)から、元請け、二次請け、三次請け…と、各階層の企業がマージンを差し引いていくため、末端のSES企業、そしてそこで働くエンジニアに実際に支払われる給与は、元の単価から大きく目減りしてしまうことがあります。

ひどい場合には、単価の半分以下しかエンジニアに還元されないというケースも…。

この「中間マージン」の存在が、SESエンジニアの給与が上がりにくい大きな要因の一つです。どんなに客先で高い評価を得ても、その成果が直接自分の給与に反映されにくいという構造的な問題を抱えているのです。

評価基準の曖昧さと昇給・昇進の難しさ

SESエンジニアは客先で業務を行うため、自社の上司が日常的な働きぶりを直接評価することが難しいという問題もあります。

そのため、評価基準が曖昧だったり、客先からの評価が正しく自社に伝わらなかったりして、頑張りが正当に評価されず、昇給や昇進に繋がりにくいと感じるエンジニアも少なくありません。

「何をどう頑張れば給料が上がるのか分からない…」「自社に貢献している実感が持てない…」そんな不満や無力感が、モチベーションの低下を招いてしまうこともあるでしょう。

【理由3】労働環境の劣悪さと長時間労働の常態化:心身を蝕むブラックな実態

SESエンジニアの労働環境は、良くも悪くも「客先次第」です。配属されるプロジェクトによっては、劣悪な労働環境や、長時間労働を強いられるケースも残念ながら存在します。

「客先のカレンダー通り」という名の不条理

客先の就業規則やカレンダーに合わせて働くことになるため、自社の休日や福利厚生が適用されない場合があります。

例えば、自社は休みでも客先が稼働していれば出勤しなければならなかったり、逆に客先が休みでも自社から別の作業を指示されたりすることも…。有給休暇の取得しやすさなども、客先の雰囲気や忙しさに大きく左右されます。

炎上プロジェクトへの投入とデスマーチの恐怖

特に、納期が迫っているのに進捗が遅れている「炎上プロジェクト」に、火消し役として投入されることもあります。

そうした場合、連日の残業や休日出勤は当たり前、心身ともに疲弊しきってしまう、いわゆる「デスマーチ」状態に陥ることも…。SES企業によっては、こうした過酷な案件に、経験の浅いエンジニアを安易に送り込んでしまうケースも見受けられます。

自分の健康やプライベートを犠牲にしてまで働かなければならないような環境は、決して長続きしません。

【理由4】帰属意識の薄さと孤独感:自社への愛着が持てない?

客先常駐という働き方は、自分が所属する会社(自社)への帰属意識が薄くなりがちという問題も抱えています。

日常的に顔を合わせるのは客先の社員であり、自社の社員との接点は、月に一度の帰社日や、たまにある社内イベント程度、ということも少なくありません。

「ウチの会社の人間じゃないんで」と言われる寂しさ

客先では、どうしても「外部の人間」「協力会社の人間」という扱いを受けることが多く、疎外感や孤独感を感じるエンジニアもいます。

「ウチの会社の人間じゃないんで、この会議には参加できません」「この情報は共有できません」といった線引きをされるたびに、寂しさや虚しさを感じるかもしれません。

もちろん、客先の社員と良好な関係を築き、チームの一員として迎え入れてもらえる素晴らしい現場もあります。しかし、そうでない場合に、精神的な支えとなるはずの自社との繋がりが希薄だと、より一層孤独を感じやすくなってしまうのです。

自社の理念や文化への共感が難しい

自社で働く時間が少ないため、会社の理念やビジョン、企業文化といったものに触れる機会が乏しく、共感しにくいという面もあります。

「自分は何のために、誰のために働いているのだろう…」と、仕事への意義を見失いそうになることもあるかもしれません。会社への愛着や誇りを持つことが難しい環境は、働く上でのモチベーション維持にも影響を与える可能性があります。

【理由5】多重下請け構造の末端での搾取:中間マージンで給料が消える?

【理由2】でも触れましたが、多重下請け構造の問題は、SESエンジニアの待遇を語る上で避けては通れません。特に、構造の末端に近いSES企業で働く場合、中間マージンによって不当に低い給与で働かされていると感じるケースも出てきます。

「単価」と「給与」の大きな乖離

クライアント企業がエンジニア1人に対して支払っている「単価」と、実際にエンジニアが受け取る「給与」の間には、大きな乖離があることが珍しくありません。この差額の多くは、商流の途中に介在する企業の中間マージンや、所属するSES企業の利益として消えていきます。

自分の市場価値(客先からの評価や単価)と、実際の給与が見合っていないと感じた時、「自分は搾取されているのではないか…」という不信感や怒りがこみ上げてくるのも無理はないでしょう。

ブラックボックス化されたマージン率と交渉の難しさ

多くの場合、エンジニア自身が自分の「単価」や、所属企業のマージン率を正確に知ることは困難です。情報がブラックボックス化されているため、給与交渉をしようにも、正当な根拠を示しにくいという問題があります。

「もっと高い単価で契約できているはずなのに、なぜ自分の給料はこれだけなんだ…」そんな疑問を抱えながら働くのは、精神衛生上も良くありませんよね。

【理由6】案件を選べない「案件ガチャ」とキャリアプランの崩壊

「客先ガチャ」と並んでSESエンジニアを悩ませるのが、自分の意志とは関係なく、会社の都合で案件が決まってしまう「案件ガチャ」の問題です。これは、エンジニアのキャリアプランを大きく狂わせる可能性があります。

希望しない技術、興味のない業界へのアサイン

「Javaのスキルを伸ばしたいのに、COBOLの保守案件に回された…」「Web系の開発がしたいのに、インフラの運用監視業務ばかり…」そんな風に、自分の希望とは全く異なる案件にアサインされてしまうことは、SES業界では決して珍しい話ではありません。

SES企業としては、エンジニアを遊ばせておくわけにはいかないため、とにかく空いている案件にエンジニアを当て込もうとするのです。

その結果、興味の持てない仕事へのモチベーション低下や、望まないスキルセットの形成、そしてキャリアプランからの逸脱といった問題が生じます。

待機期間の不安と「とりあえず」の案件受諾

一つの案件が終了し、次の案件が決まるまでの「待機期間」が発生することもあります。この待機期間中は、給与が減額されたり、自宅待機を命じられたりするSES企業もあるため、エンジニアにとっては大きな不安要素です。

そのため、「早く次の案件を決めなければ…」という焦りから、本意ではない案件でも「とりあえず」受諾してしまう、という悪循環に陥ることもあります。

自分のキャリアは自分でデザインしたい、と考えるエンジニアにとって、この「案件を選べない」という状況は、非常に大きなストレスとなるでしょう。

【理由7】偽装請負のリスクと法律違反の可能性:知らぬ間に加担?

SES契約は準委任契約であり、客先の担当者がSESエンジニアに対して直接的な指揮命令を行うことは、原則としてできません。

もし客先がSESエンジニアに対して、自社の社員と同様に業務の指示や勤怠管理などを行っている場合、それは「偽装請負」という法律違反の状態にあたる可能性があります。

指揮命令系統の曖昧さと法律のグレーゾーン

しかし、実際の現場では、この指揮命令系統が曖昧になっているケースが少なくありません。客先の担当者から直接指示を受けて作業を進めないと、業務が円滑に進まないという現実もあるからです。エンジニア自身も、知らず知らずのうちに偽装請負の状態に加担してしまっている可能性も…。

偽装請負は、労働者派遣法などに抵触する違法行為であり、発覚した場合には、クライアント企業だけでなく、SES企業も罰則を受ける可能性があります。

こうした法律スレスレ、あるいは完全にアウトな状態で働かされるリスクがあるということも、SES業界の闇の一つと言えるかもしれません。

「これって、もしかして偽装請負なんじゃ…?」と疑問を感じても、立場の弱いSESエンジニアが声を上げるのは難しいのが現状です。こうした不安を抱えながら働くのは、精神的にも大きな負担ですよね。


それでもSES業界で働くことを選ぶなら…後悔しないための心構えと対策

ここまで、SES業界の厳しい側面や、働く上での様々なリスクについて、詳しくお話ししてきました。正直なところ、「やっぱりSESはやめておこうかな…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、全てのSES企業がブラックなわけではありませんし、SESという働き方を通じてスキルアップを果たし、充実したキャリアを築いているエンジニアの方も、もちろんいらっしゃいます。

もし、これらのリスクを理解した上で、それでも「IT業界でエンジニアとしての一歩を踏み出したい」「SESで経験を積んで、将来に繋げたい」と強く思うのであれば、後悔しないために、ぜひ以下の点を心に留めて、賢明な選択をしていってほしいと思います。

徹底的な自己分析とキャリアプランの明確化:「なぜSESか」を問い直す

まず何よりも大切なのは、「なぜ自分はSESという働き方を選ぶのか」「SESで何を経験し、どんなスキルを身につけ、将来どんなエンジニアになりたいのか」という、自己分析とキャリアプランの明確化です。

「未経験でも雇ってくれそうだから」「なんとなくIT業界に興味があるから」といった曖昧な理由だけでSES業界に飛び込むと、高い確率で後悔することになります。

ご自身の強みや弱み、興味のある技術分野、そして5年後、10年後の理想のエンジニア像を具体的に描き、その目標達成のためにSESという選択肢が本当に最適なのかを、冷静に問い直してみてください。目的意識が明確であれば、困難な状況に直面した時でも、それを乗り越えるためのモチベーションを維持しやすくなるはずです。

優良SES企業の見極め方:ホワイト企業を見抜くポイント

「SES企業はどこも同じ」ではありません。中には、エンジニアのキャリア形成を真剣に考え、教育制度や福利厚生が充実し、適正な評価と報酬でエンジニアに報いる「優良SES企業(ホワイトSES企業)」も存在します。

そうした企業を見極めることが、SESで成功するための最も重要な鍵と言えるでしょう。

優良SES企業を見抜くためのポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 教育・研修制度の充実度:未経験者や経験の浅いエンジニア向けの研修制度が整っているか、資格取得支援制度はあるかなど。
  • エンジニアのキャリアパスの提示:どのようなキャリアステップが用意されているか、上流工程への挑戦機会はあるかなど。
  • 還元率(マージン率)の透明性:エンジニアの単価に対して、どの程度の割合が給与として還元されるのか。情報開示に積極的か。
  • 案件の選択肢と営業力:エンジニアの希望やスキルに合った案件を獲得できる営業力があるか、案件の選択肢は豊富か。
  • 自社開発や受託開発の有無:SESだけでなく、自社内での開発案件も手がけているか。帰社日の頻度や内容はどうか。
  • 社員の定着率と口コミ:社員が長く働き続けられる環境か。企業の口コミサイトなどでの評判はどうか。
  • 残業時間や有給休暇取得率の実態:過度な長時間労働が常態化していないか、有給休暇は取得しやすいか。

面接の際には、これらの点について積極的に質問し、企業の姿勢や実態をしっかりと見極めるようにしましょう。複数の企業を比較検討し、安易に内定に飛びつかない慎重さが求められます。

スキルアップへの強い意志と自己学習の継続:環境に依存しない努力

たとえ優良なSES企業に入社できたとしても、そこで満足していては、スキルアップは望めません。客先の業務を通じて得られる経験には限界があることを理解し、常に新しい技術や知識を主体的に学び続ける「自己学習」の姿勢が不可欠です。

業務時間外にプログラミングスクールに通ったり、オンライン学習サービスを活用したり、技術書を読んだり、社外の勉強会やセミナーに参加したりと、スキルアップのための努力を継続することが、SES業界で生き残り、市場価値を高めていくためには絶対に必要です。

環境に依存せず、自ら学びの機会を創り出していく強い意志を持ちましょう。

契約内容の確認と交渉力の重要性:自分の身は自分で守る

客先に常駐する際には、どのような契約内容(業務範囲、期間、指揮命令系統など)で業務を行うのか、可能な限り事前に確認するようにしましょう。

特に、自分のスキルや経験に見合わない業務内容や、明らかに偽装請負にあたるような指示系統になっていないかは、注意深くチェックする必要があります。

また、給与や待遇面についても、疑問点があれば遠慮なく会社に質問し、納得のいく説明を求めることが大切です。もちろん、経験の浅いうちは交渉が難しいかもしれませんが、自分の市場価値を客観的に把握し、正当な評価と報酬を求める姿勢は、エンジニアとしてのキャリアを築いていく上で非常に重要です。

「言われた通りに働く」だけでなく、時には交渉することも厭わない強さも必要になるでしょう。

セカンドキャリアや脱出戦略も視野に入れる:SESはあくまで通過点?

SESという働き方を、ITエンジニアとしてのキャリアの「最終ゴール」と考えるのではなく、「あくまで通過点の一つ」と捉え、その先のセカンドキャリアや「SESからの脱出戦略」も視野に入れておくことも、賢明な考え方の一つです。

SESで数年間経験を積み、スキルを磨いた後に、自社開発企業や事業会社、あるいはフリーランスエンジニアへとステップアップしていくというキャリアパスは、決して珍しくありません。

そのためにも、SESで働いている間から、将来どんな分野に進みたいのか、どんなスキルが必要になるのかを常に意識し、計画的に準備を進めていくことが大切です。例えば、ポートフォリオとなるような個人開発の成果物を作成したり、転職市場の動向を常にチェックしたりといった行動が、将来の選択肢を広げることに繋がります。

SESという環境を最大限に活用し、次のステップへの踏み台にするくらいのしたたかさも、時には必要かもしれませんね。


SES就職・転職「やめとけ」理由の総括と、あなたのITキャリアを輝かせるために

今回は、「SESはやめとけ!」という少しショッキングなタイトルから始まり、SES業界の構造的な問題点や、そこで働くエンジニアが直面しやすい困難、そして後悔しないための大切な心構えや対策について、詳しくお話ししてきました。最後に、この記事でお伝えしたかった重要なポイントを、改めてまとめてみたいと思います。

  • SES(システムエンジニアリングサービス)は、IT業界への入り口として門戸が広い一方、キャリア形成、給与、労働環境などにおいて多くの課題を抱えています。
  • 「やめとけ」と言われる主な理由として、スキルが身につかない「客先ガチャ」、給与水準の低さと評価の不透明さ、劣悪な労働環境、帰属意識の薄さ、多重下請け構造による搾取、案件を選べない「案件ガチャ」、そして偽装請負のリスクなどが挙げられます。
  • これらのリスクを理解せずに安易にSES業界に飛び込むと、「こんなはずじゃなかった」と後悔し、貴重な時間とキャリアを無駄にしてしまう可能性があります。
  • それでもSESで働くことを選ぶのであれば、徹底的な自己分析とキャリアプランの明確化、優良SES企業の見極め、スキルアップへの強い意志と自己学習の継続、そして契約内容の確認と交渉力、さらには将来の脱出戦略を持つことが不可欠です。
  • 全てのSES企業が悪質なわけではなく、個人の努力と賢明な企業選びによって、SESをステップとして成功する道も確かに存在します。
  • そして何よりも、どのような働き方や企業を選ぶにしても、情報を鵜呑みにせず、自分自身の目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、最終的にはご自身が心から納得できる選択をすることが、後悔のないキャリアを築くための最も大切な秘訣です。

SESという働き方は、確かに多くの課題を抱えています。しかし、それは同時に、IT業界の構造的な問題点を映し出す鏡のような存在でもあるのかもしれません。

この記事が、皆さんがSESという選択肢について深く考え、ご自身のITキャリアをより良い方向へと導くための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。皆さんの未来が、希望とやりがいに満ちた、輝かしいものとなることを心から応援しています。

UTA

会社員。営業職で着実に成果を上げ、年収は本業と副業合わせて1,X00万円。副業は投資とライティング。妻と小学生の娘と3人暮らし。休日は家族サービスと自己研鑽に励む。趣味は映画鑑賞。

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