新しいパソコンを選んだり、ご自身でパーツを組み合わせてパソコンをお作りになる「自作パソコン」のパーツを考えたりするとき、「CPU(シーピーユー)は何にしようかな?」って、とっても悩みますよね。CPUはパソコンの頭脳とも言われる、とっても大切な部品ですから、慎重になるのも当然です。
最近よく耳にする「Ryzen(ライゼン)」というCPU。高性能でコストパフォーマンスも良いって評判ですし、気になっている方も多いんじゃないでしょうか。でも、インターネットでRyzenについて調べてみると、「Ryzen やめとけ」「Ryzen 勧めない」「Ryzen 失敗した」なんて、ちょっとドキッとするような言葉を目にすることもありますよね。
「え、そうなの?Ryzenって良くないのかな…」って不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。一体どうして、そんな声があるのでしょうか?
この記事では、なぜRyzenを選ぶ際に慎重になった方が良いのか、どんな場合に「やめとけ」と言われてしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして分かりやすくご説明していきたいと思います。もちろん、Ryzenには素晴らしい点がたくさんあることも事実です。
でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんの大切なCPU選びで後悔しないためのお手伝いができれば嬉しいです。CPU選びはパソコンの性能を左右する重要なポイントですから、じっくり考えていきましょうね。
この記事でお伝えしたいこと
- Ryzenを選ぶ際に知っておくべきいくつかの注意点
- Ryzenが必ずしも最適なCPUとは言えない具体的なケース
- 特定の用途や環境におけるRyzenの潜在的なデメリット
- それでもRyzenを選びたいと考えた場合の賢明な選択方法
- CPU選びで失敗を避け、後悔しないための総合的な考え方
Ryzenとは? その概要とAMD製CPUの立ち位置
まずはじめに、「Ryzenってそもそも何?」という方のために、簡単にご説明しますね。Ryzen(ライゼン)というのは、AMD(エーエムディー、Advanced Micro Devices社の略です)という会社が作っているパソコン用のCPUのブランド名なんです。
CPUは、先ほども申し上げたように、よく「パソコンの頭脳」に例えられる、とっても重要な部品なんですよ。計算処理やプログラムの実行など、パソコンのあらゆる動作の中心的な役割を担っています。
長い間、パソコンのCPU市場はIntel(インテル)という会社の製品が大きなシェアを占めていました。皆さんも「Core i7(コアアイセブン)」とか「Core i5(コアアイファイブ)」といった名前は聞いたことがあるかもしれませんね。
AMDも昔からCPUを作ってはいたのですが、しばらくはIntelのCPUに性能面や人気で差をつけられてしまう時期が続いていたんです。
でも、2017年にこのRyzenシリーズが登場してから、CPU市場の状況が大きく変わりました。初代Ryzenは、それまでのAMD製CPUのイメージを覆すような高い性能、特に複数の作業を同時に行う「マルチコア性能」に優れていて、しかもIntelの同等性能のCPUと比べると価格が抑えられていることが多かったんですね。
それで、一気に「コストパフォーマンスが良いCPU」として、自作PCユーザーや高性能を求める方々を中心に人気が出たんです。
Ryzenの主なラインナップと特徴
Ryzenには、用途や性能に応じていくつかのシリーズがあります。主なものを簡単にご紹介しますね。世代によって少しずつ性能や特徴も変わってきますが、大まかな位置づけは以下の通りです。
- Ryzen 9:現在、最も高性能なコンシューマー向けシリーズで、プロの動画編集や3Dレンダリング、最新の非常に重たいゲームを最高設定で楽しみたいなど、極めて高い処理能力を求める方向けです。
- Ryzen 7:ハイエンドに近い性能を持ち、本格的なクリエイティブ作業(高解像度動画編集、写真編集など)や高画質での快適なゲームプレイに適しています。性能と価格のバランスが良いモデルも多いです。
- Ryzen 5:ミドルレンジの中心的な存在で、一般的な作業(インターネット閲覧、オフィスソフト利用)から、ある程度のゲームや軽いクリエイティブ作業まで幅広くこなせるバランスの良いシリーズです。コストパフォーマンスにも特に優れていると言われています。
- Ryzen 3:エントリー向けのシリーズで、インターネット閲覧やメール、書類作成などの比較的軽作業が中心の方に適しています。価格も手頃なものが多いですね。
- Ryzen Threadripper(スレッドリッパー):これはさらに特殊で、一般的なパソコン向けというよりは、プロフェッショナルな映像制作スタジオや、科学技術計算、大規模なデータ解析など、極めて高いマルチコア性能と多くのメモリーが必要なワークステーション向けのCPUです。お値段も非常に高価になります。
また、Ryzen CPUの中には、型番の末尾に「G」が付いているものがあります(例:Ryzen 5 8600G)。これはAPU(Accelerated Processing Unit)と呼ばれていて、比較的高性能なグラフィック処理機能(内蔵GPU、iGPUとも言います)をCPUに統合しているモデルなんです。
別途グラフィックボード(ビデオカードとも呼ばれます)を用意しなくても、ある程度のゲームや画像編集ができたりするのが特徴ですね。特に予算を抑えたい場合や、コンパクトなPCを組みたい場合に選ばれることがあります。
Intel CPUとの一般的な比較
RyzenとIntelのCPUは、それぞれ得意な分野や特徴が少し異なります。もちろん、CPUの世代や具体的なモデルによって性能は大きく変わるので一概には言えませんが、一般的には次のようなイメージで語られることが多いです。最新の情報は常にチェックするようにしてくださいね。
項目 | Ryzen (AMD) | Intel |
---|---|---|
マルチコア性能 | 比較的得意な傾向が続いています。 コア数が多いモデルが、同価格帯のIntel製品に比べて手に入りやすいことがありました。 | 世代によってはRyzenに後れを取ることもありましたが、 近年はハイブリッド・アーキテクチャ(高性能コアと高効率コアの組み合わせ)などで巻き返しています。 |
シングルコア性能 | 世代によってはIntelにやや劣ることもありましたが、 近年はその差が非常に小さくなっています。最新世代では肉薄、あるいは上回ることも。 | 伝統的に得意としてきた分野で、特にゲームなどでは有利な場合も依然として見られます。 |
内蔵GPU性能 | 「G」付きモデル(APU)は比較的強力なものが多く、 軽いゲームなら十分プレイ可能です。 それ以外のモデルは非搭載か、画面表示程度の簡易的なものです。 | 多くのモデル(「F」付きモデルなどを除く)に内蔵GPUを搭載。 「Intel Iris Xe Graphics」など、以前より高性能なものも増えています。 |
価格(コストパフォーマンス) | 同程度の性能であれば、比較的安価な傾向があり、 コストパフォーマンスが高いと言われることが多いです。 | やや高価な場合もありますが、幅広いラインナップと安定した供給が魅力です。 |
マザーボード | チップセットの種類がIntelに比べると少ない時期もありましたが、 最近は充実してきています。 ソケットの互換性が長く続く傾向があり、アップグレードしやすい反面、 BIOSアップデートが必要なケースも。 | チップセットの種類が豊富で、選択肢が多いです。 世代交代でソケット形状が変わることが多いです。 |

こんなふうに、Ryzenは特にマルチコア性能とコストパフォーマンスの高さで評価され、多くのユーザーに支持されてきたCPUなんです。だから、動画編集をされる方や、複数のソフトウェアを同時に使うようなヘビーな作業をする人たちからは、すごく人気があるんですよね。
ただ、そんなRyzenにも、「やめとけ」と言われてしまうような、注意すべき側面があるのもまた事実。次は、その理由について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
Ryzenはやめとけと言われる5つの深刻な理由
さて、ここからが本題です。どうして一部で「Ryzenはやめとけ」という、ちょっと心配になるような声があがるのでしょうか? その理由を、できるだけ分かりやすく、そして具体的にお伝えしていきますね。これらの理由を知っておくことで、皆さんがCPUを選ぶ際に「こんなはずじゃなかった…」と後悔することを避けられるかもしれません。
もちろん、これらの理由が全ての方に当てはまるわけではありませんし、Ryzenの世代やモデルによっても状況は変わりますので、あくまで一般的に言われることがある注意点として捉えていただければと思います。
【理由①】シングルコア性能が最重要な場面ではIntel CPUにまだ分がある可能性を否定できないから
Ryzenはマルチコア性能に優れている、というお話をしましたが、一方で、CPUのコア1つあたりの処理能力、いわゆる「シングルコア性能」や「シングルスレッド性能」が非常に重要になる場面もまだまだあるんです。
例えば、一部の古いゲームや、設計上あまり多くのコアを効率よく使えないアプリケーションソフトウェアなどですね。こういったものでは、いくらCPU全体のコア数が多くても、1つ1つのコアの処理速度(クロック周波数やIPC:クロックあたりの命令実行数)が遅いと、思ったようなパフォーマンスが出ないことがあるんです。
近年のRyzenはシングルコア性能も大幅に向上してきていて、Intel CPUとの差はかなり小さくなってきていますし、モデルによってはRyzenが上回ることもあります。しかし、それでも特定のアプリケーションや、特に発売から時間が経った一部のゲームなどでは、同世代・同価格帯のIntel CPUの方がフレームレート(1秒間に表示される画像の枚数)が高く出たり、処理がスムーズだったりするケースが報告されることがあるんですよ。
実際に、ゲームのフレームレートを比較した海外のレビューサイト(例えば Tom’s Hardware さんや TechSpot さんのようなサイト)などを見てみると、最新のAAAタイトル(大作ゲーム)ではRyzenが健闘していても、少し前のeスポーツ系タイトルなどで、わずかながらIntel CPUに軍配が上がることがあったりします。
これは、それらのゲームが開発された当時は、まだCPUのメニーコア化(コア数をたくさん搭載すること)が現在ほど一般的ではなく、少数のコアのクロック周波数(動作速度)が高い方が有利だった名残とも言えるかもしれませんね。
「FPSゲームで少しでもフレームレートを稼ぎたいなら、やっぱりシングル性能が高いIntelの方が有利って聞くよね。Ryzenも全然遊べるレベルだけど、競技シーンとかでコンマ1秒を争うなら気になる人もいるかも。」(ゲーム系フォーラムでの書き込みより)
もし皆さんがプレイしたいゲームや使いたいソフトウェアが、特にシングルコア性能を重視するタイプのものだと分かっている場合は、念のためにRyzenとIntelのCPUで、そのソフトウェアの動作比較レビューなどを調べてみることをお勧めします。
場合によっては、Ryzenを選んだことで「思ったより快適じゃない…」「友達のIntelマシンの方がなんだかスムーズ…」と感じてしまう可能性も、ゼロではないかもしれません。
【理由②】マザーボードのBIOSアップデートや相性問題に少し手間がかかる場合があるから
CPUをパソコンに組み込むには、マザーボードという基板パーツが必要です。このマザーボード選びも、パソコンの安定性や拡張性に関わる重要なポイントなんですが、Ryzenの場合、このマザーボード周りで少し注意が必要なケースがあると言われています。
一つは、マザーボードのBIOS(バイオス)の問題です。BIOSというのは、パソコンの基本的なハードウェア制御を行うプログラムのことで、新しい世代のCPUに対応するためには、このBIOSを最新版にアップデートする必要がある場合があります。
特に、RyzenはIntelに比べて、同じソケット(CPUを取り付ける場所の形状)を数世代にわたって維持しつつ新しいCPUが登場することがあります。
これは、古いマザーボードでもBIOSアップデートで新しいCPUが使える可能性があるという大きなメリットでもあるのですが、逆に言うと、購入したマザーボードのBIOSが古くて、最新のRyzen CPUを認識せず、画面が真っ暗で起動しない…なんてトラブルに見舞われることがあるんです。
この場合、もし手元に対応する古い世代のRyzen CPUがあれば、それを使って一度起動し、BIOSをアップデートするという手順が必要になります。もしなければ、パソコンショップに作業を依頼したり、場合によってはマザーボードメーカーのサポートに連絡したりする必要が出てくることもあり、自作PC初心者の方には少しハードルが高いかもしれません。最近のマザーボードには、CPUなしでUSBメモリからBIOSをアップデートできる機能(「BIOS Flashback」や「Q-Flash Plus」などと呼ばれます)を備えたものも増えてきましたが、全てのモデル、特に安価なモデルに搭載されているわけではありません。
また、Intelプラットフォームに比べて、Ryzen対応マザーボードのチップセット(マザーボードの性能や機能を決める重要な部品)の種類が、時期によってはやや少なかったり、特定の機能(例えばThunderbolt端子など)を持つマザーボードの選択肢が限られたりすることがありました。
最近ではこの点もかなり改善されてきていますが、それでも「この機能がどうしても欲しいんだけど、Ryzen用だと選択肢が少ないな…」と感じる場面が全くないとは言い切れません。
さらに、ごく稀ではありますが、特定のRyzen CPUと特定のマザーボード、あるいは特定のメモリとの間で相性問題が発生し、動作が不安定になったり、ブルースクリーン(Windowsのエラー画面)が頻発したり、メモリが定格クロックで動作しなかったりするという報告も、インターネット上のフォーラムなどで見かけることがあります。
もちろん、これはIntel環境でも起こり得ることですが、Ryzenが登場してからの数年間は、比較的そういった声が目立った時期があったのも事実です。特に初期のRyzenではメモリの相性がシビアだったと言われています。
「新しいRyzen 7000シリーズのCPUとB650マザーボードを買ったんだけど、最初どうしてもEXPOプロファイル(AMD版XMPのようなメモリのオーバークロック設定)が安定しなくて焦った。BIOSアップデートしたら直ったけど、原因特定するまで時間かかったよ…。」(情報元:自作PC関連の掲示板より)
こうしたマザーボード周りの潜在的な手間やトラブルの可能性を考えると、「パソコンにあまり詳しくないから、そういうのはちょっと不安だな…」と感じる方にとっては、「やめとけ」と言いたくなる気持ちも分からなくはないですよね。
事前にマザーボードメーカーのウェブサイトでCPUサポートリストやBIOS情報を確認することがとても大切です。
【理由③】内蔵GPU非搭載モデルが多く、グラフィックボードが別途必須になるケースが多いから
先ほど「Ryzenのラインナップ」のところで少し触れましたが、Ryzen CPUには、型番末尾に「G」が付くAPUモデル以外は、基本的にグラフィック処理機能(内蔵GPU)が搭載されていないか、搭載されていても画面表示程度の非常に簡易的なものであることが多いんです。
(※最新のRyzen 7000シリーズからは、Gなしモデルにも簡易的な内蔵GPUが搭載されるようになりましたが、これはあくまで画面表示やトラブルシューティング用で、ゲームができるほどの性能はありません。)
一方、IntelのCore iシリーズのCPUの多く(こちらも末尾に「F」や「KF」が付くモデルなどを除く)には、「Intel UHD Graphics」や、より高性能な「Intel Iris Xe Graphics」といった内蔵GPUが搭載されています。
これらは、もちろん本格的な3Dゲームを高画質でプレイするには力不足ですが、インターネットを見たり、動画を再生したり、オフィスソフトを使ったりするくらいの日常的な用途であれば十分な性能を持っていますし、設定を調整すれば軽いゲームなら遊べることもあります。
「どうせ高性能なグラフィックボード(グラボ)を別に買うから、CPUに内蔵GPUなんていらないよ」という方にとっては、この点はあまり問題にならないかもしれません。むしろ、内蔵GPUがない分、CPUのコストが少しでも抑えられているなら歓迎、という考え方もありますよね。
しかし、「とりあえずCPUとマザーボードとメモリだけ買って、グラボは後で予算ができたら追加しようかな」と考えている方や、「ゲームは全くしないし、動画もそんなに見ないから、できるだけ安く、省電力なパソコンを組みたい」という方にとっては、これは大きなデメリットになり得ます。多くのRyzenの「G」なしモデルを選ぶと、画面を映すためだけにでも、何かしらのグラフィックボードが必須になってしまうんです。

最近はグラフィックボードの価格も時期によって大きく変動し、高性能なものは非常に高価です。エントリークラスの安いグラボを買うにしても、数千円から1万円以上の追加出費になります。また、グラフィックボードを増設するということは、その分PCケース内のスペースも必要になりますし、消費電力もわずかながら増えることになります。
もし、皆さんがグラフィックボードを搭載する予定がなく、CPUの内蔵GPUで済ませたいと考えているなら、Ryzenを選ぶ際には「G」付きのAPUモデルを積極的に選ぶか、あるいはIntel CPUを検討した方が、結果的にコストを抑えられたり、構成がシンプルになったりする可能性があります。
この点を理解しておかないと、「よし、Ryzenで組んだぞ!…あれ?電源入れても画面が真っ暗だ!グラボが必要だったなんて…」と後悔することになりかねません。
【理由④】一部ハイエンドモデルでは消費電力や発熱が大きく、冷却や電源に十分な配慮が必要だから
Ryzen、特に上位モデルのRyzen 9シリーズや、一部のRyzen 7シリーズは、その非常に高いマルチコア性能を発揮するために、相応の電力を消費し、それに伴って発熱も大きくなる傾向があります。
もちろん、IntelのハイエンドCPUも同様に消費電力や発熱が大きいものはありますが、Ryzenの一部のモデルでは、TDP(Thermal Design Power:熱設計電力、CPUクーラーが処理すべき熱量の目安)という指標上はそれほど高くなくても、実際の高負荷時には瞬間的にTDPを大きく超える電力(PPT:Package Power Tracking と呼ばれる値まで)を消費したり、それに伴ってCPU温度がかなり高くなったりすることが報告されています。
AMD自身も、Ryzen 7000シリーズなどでは、許容温度(例えば95℃)に達するまで性能を引き出すような設計思想(Precision Boost 2など)を採用していると説明しています。
これは、Ryzenの電力管理技術が、許容される温度や電力の範囲内で最大限のパフォーマンスを引き出そうとするアグレッシブな設計になっているためとも言われています。性能を追求する上では合理的なのですが、その分、CPUをしっかりと冷却できる高性能なCPUクーラーや、PCケース内の良好なエアフロー(空気の流れ)を確保することが非常に重要になってくるんです。
もし冷却が不十分だと、CPUが高温になりすぎて性能が低下したり(サーマルスロットリングと呼ばれ、CPUが自身を守るために動作クロックを落とす現象です)、最悪の場合はパソコンが頻繁にフリーズしたり、シャットダウンしたり、CPUの寿命を縮めてしまったりする可能性もゼロではありません。
「新しいRyzen 9、確かにめちゃくちゃ速いんだけど、Cinebench(CPUの性能を測るソフト)回すとあっという間に90℃超える…。CPUクーラーを大型の空冷にしたけど、夏場はケースファンもガンガン回さないと心配だね。」
「前に使ってた650Wの電源じゃ、Ryzen 7と新しいグラボの組み合わせだとちょっと容量不足な気がして、850Wのゴールド認証電源に買い替えたよ。思ったより出費がかさんじゃった。」(X (旧Twitter) の投稿より)
「CPUを交換するだけ」と考えていたのに、結果的にCPUクーラー(数千円~2万円程度)や電源ユニット(1万円~3万円程度)、場合によってはPCケース(エアフローの良いものに買い替え)まで新調する必要が出てきて、予算オーバーになってしまった…なんてことになったら、ちょっと残念ですよね。
特に静音性を重視する方や、コンパクトなスリム型PCケースを使いたい方にとっては、Ryzenのハイエンドモデルの発熱と、それを抑えるための冷却ファンの騒音は悩みの種になるかもしれません。
もちろん、Ryzen 5などミドルレンジ以下のモデルや、TDPが65W程度に抑えられたモデルであれば、それほどシビアに考える必要はない場合も多いですが、高性能なRyzenを選ぶ際には、こうした冷却や電源周りのことも念頭に置き、十分な予算と知識を持って臨む必要がある、というのは覚えておいてくださいね。
【理由⑤】特定のソフトウェアとの互換性や最適化でIntelにやや遅れをとるケースが稀にあるから
これは以前ほど顕著ではなくなってきていますが、ごく一部の専門的なソフトウェアや、特定のゲームエンジンなどにおいて、Ryzen CPUとの互換性で小さな問題が出たり、あるいはIntel CPU環境ほど最適化が進んでいなかったりするケースが、過去には報告されることがありました。
理由としては、やはり長年にわたるIntel CPUの市場での支配的なシェアが影響していると考えられます。多くのソフトウェア開発者は、より多くのユーザーが利用しているプラットフォーム(つまりIntel CPU)での安定動作や性能発揮を優先して開発やテストを行う傾向があったためです。
Ryzenが市場に登場してからも、その新しいアーキテクチャ(CPUの内部設計)にソフトウェア側が完全に対応し、性能を最大限に引き出せるようになるまでには、ある程度の時間が必要だったのです。
例えば、Adobe社のPhotoshopやPremiere Proといったクリエイティブ系ソフトは、かつてIntelのQSV(Quick Sync Video)というハードウェアエンコード機能に最適化されている部分があり、Ryzen環境では同等の機能を利用するのに工夫が必要だったり、一部処理でIntel CPUに比べて速度が出にくい場面があったりしました。
現在ではこれらのソフトもRyzenへの最適化が進んでいますが、それでも非常にニッチな業務用ソフトや、古いバージョンのソフトウェアなどでは、まだRyzen環境で予期せぬ挙動を示したり、期待した性能が出なかったりする可能性が完全に否定できるわけではありません。
また、パソコンのトラブルシューティングに関しても、ユーザー数が多かったIntel環境の方が、インターネット上で見つかる情報(フォーラムの書き込み、ブログ記事、解決策など)が相対的に多かった時期があります。
Ryzenも急速にユーザーが増え、情報交換も活発になっていますが、それでも非常に特殊なトラブルや、古い世代のRyzen特有の問題などに関しては、英語の情報を探したり、自分で試行錯誤したりする必要が出てくるかもしれません。

もし皆さんが、非常に専門的で特殊なソフトウェアを業務で使われる予定がある場合や、絶対に動作の安定性が求められるような環境でRyzenの導入を検討している場合は、事前にそのソフトウェアの開発元がRyzen環境を正式にサポートしているか、あるいは同じソフトを使っているRyzenユーザーの情報を集めてみるなど、慎重な確認をおすすめします。
「自分の使いたいソフトがRyzenだと動かないなんて…」となれば、大きな損失ですからね。
以上が、「Ryzenはやめとけ」と言われることがある主な5つの理由です。どれも、Ryzenが絶対的にダメだというわけではなく、特定の状況や使い方、あるいはユーザーの知識や経験によってはデメリットになり得る、という性質のものが多いことにお気づきいただけたでしょうか。
これらの点を理解した上で、ご自身の状況と照らし合わせて判断することが大切ですね。
それでもRyzenを選ぶなら?後悔しないための賢い選択肢
ここまでRyzenの注意点について詳しくお話ししてきましたが、「じゃあ、Ryzenはやっぱり選ばない方がいいの?」と不安に思われたかもしれませんね。
でも、そんなことは決してないんですよ! Ryzenには、先ほども触れたように、優れたマルチコア性能や高いコストパフォーマンスといった、たくさんの魅力がありますし、ご紹介したデメリットをしっかりと理解した上で、ご自身の使い方に合っていれば、非常に満足度の高いCPUの選択肢になり得ます。
大切なのは、「なぜ自分はRyzenを選びたいのか」「Ryzenに何を期待しているのか」を自分の中でハッキリさせることです。そして、先ほど挙げたような注意点を踏まえて、賢く選ぶこと。ここでは、それでもRyzenを選びたいという皆さんのために、後悔しないためのポイントをいくつかご紹介しますね。
【ポイント①】自分の用途を徹底的に明確にし、Ryzenの強みが本当に活きるか確認する
まず一番大切なのは、皆さんがそのパソコンで何をしたいのか、その用途をできるだけ具体的に考えることです。そして、その用途にRyzenの強みが本当に合っているか、冷静に確認しましょう。
- 動画編集(4K編集など)、3DCGレンダリング、ソフトウェアのライブ配信、複数の仮想マシンを同時に動かすなど、マルチコア・マルチスレッド性能が特に重視される作業がメインですか?
もしそうであれば、Ryzenは非常に有力な選択肢です。特にRyzen 7やRyzen 9シリーズは、同価格帯のIntel CPUと比較してもコア数・スレッド数が多い傾向があり、これらの作業を効率的に、そして快適にこなせる可能性が高いです。処理時間が短縮できれば、それだけ生産性も上がりますよね。 - 最新のPCゲームを高画質・高フレームレートで楽しみたいですか?
Ryzenはゲーム性能も非常に高くなっています。特に最新世代のRyzen(特に末尾にX3Dが付くモデルなど)は、IntelのハイエンドCPUと遜色ない、あるいはそれを上回るゲーミングパフォーマンスを発揮するモデルも多く登場しています。ただし、プレイしたいゲームのタイトルや解像度によっては、Intel CPUの方がわずかに有利な場合もまだ見られますので、気になるゲームのベンチマーク比較(信頼できるレビューサイトなどで公開されています)などをチェックしてみると良いでしょう。 - 何よりもコストパフォーマンスを重視しますか? 同じ予算なら少しでも高性能なCPUが欲しいですか?
一般的に、Ryzenは同程度の性能を持つIntel CPUよりも安価な場合が多いと言われています(もちろん時期やモデルによります)。予算を抑えつつ、できるだけ高性能なPCを手に入れたいという方には、Ryzenは引き続き魅力的な選択肢となるでしょう。浮いた予算をグラフィックボードやSSDなど、他のパーツに回すこともできますね。 - CPUの内蔵GPUで済ませたいですか? それとも高性能なグラフィックボードを別途購入する予定ですか?
内蔵GPUで済ませたい場合は、Ryzenの「G」付きAPUモデルを選ぶか、Intel CPU(「F」なしモデル)を検討しましょう。「G」なしのRyzen(特にRyzen 5000シリーズ以前)を選ぶ場合は、別途グラフィックボードが必須になることを忘れないでください。
自分の主な用途が、Ryzenの得意とするマルチコア性能を最大限に活かせるものなのか、それともシングルコア性能や内蔵GPUの利便性、あるいは特定のソフトウェアとの相性がより重要なのかをしっかりと見極めることが、後悔しないための最も重要な第一歩ですよ。
【ポイント②】購入前には最新情報を徹底的にチェックし、複数のレビューや口コミを多角的に参考にする
CPUの世界は技術の進歩が非常に速いです。RyzenもIntelも、ほぼ毎年のように新しい世代の製品が登場し、性能や消費電力、対応するマザーボードのチップセットなどが大きく変わることがあります。
ですから、Ryzenを選ぶ際には、できるだけ最新の情報を集めることが何よりも大切です。数ヶ月前、あるいは1年前に言われていたRyzenの弱点が、最新世代ではすっかり改善されていることもよくあります。逆に、新しい機能が追加されたことで、新たな注意点(例えば特定のOSバージョンが必要など)が出てくることもあります。
具体的には、以下のような情報を、できれば複数のソースからチェックすると良いでしょう。
- 信頼できるIT系ニュースサイトやPCパーツ専門のレビューサイトの記事:例えば、日本のサイトでは PC Watch さんや ITmedia PC USER さん、海外では前述の Tom’s Hardware さんや TechSpot さん、AnandTech さんなどが有名です。これらのサイトでは、新しいCPUが登場するたびに詳細な性能比較(ベンチマークテストの結果)、消費電力、温度、そして他のCPUとの比較分析記事が掲載されます。こうした記事は、客観的なデータに基づいてCPUの性能を評価しているので、非常に参考になりますよ。
- YouTubeなどの動画レビュー:実際にRyzenを使ってPCを組んでいる様子や、ゲームのプレイ動画、各種ソフトウェアでの動作検証など、動画ならではの分かりやすい情報が得られます。ただし、個人のレビュアーの場合は、公平性や検証環境の厳密さにばらつきがある可能性もあるので、複数のチャンネルを見て比較するのが良いでしょう。
- 価格比較サイトの製品レビューやユーザーの口コミ、専門フォーラム:価格.comのようなサイトの製品レビューページや、Redditのr/Amd、r/buildapcといった海外のフォーラム、あるいは日本の自作PC関連の掲示板などでは、実際にRyzenを使っているユーザーの生の声を見ることができます。「このマザーボードとの組み合わせは安定している」「このゲームではこれくらいのフレームレートが出た」「こんなトラブルがあったけど、こうやって解決した」といった具体的な情報は、製品選びやトラブルシューティングの助けになります。ただし、口コミは個人の主観や使用環境に大きく左右されるので、鵜呑みにしすぎず、あくまで参考情報の一つとして捉え、複数の情報を照らし合わせることが大切です。
- マザーボードメーカーの公式サイトにあるCPUサポートリスト(CPU QVL):もし使いたいRyzen CPUとマザーボードの組み合わせの候補が決まっている場合は、必ずそのマザーボードメーカーの公式サイトで、該当CPUが正式にサポートされているか、また、どのバージョンのBIOSが必要かなどを事前に確認しましょう。これを怠ると、「買ったのに動かない!」という最悪の事態になりかねません。
情報収集は少し手間と時間がかかるかもしれませんが、ここをしっかり行うことで、「こんなはずじゃなかった…」「もっと調べておけばよかった…」という購入後の後悔を大きく減らすことができますよ。
特に高価なCPUを選ぶ際には、この事前調査が成功の鍵を握ると言っても過言ではありません。
【ポイント③】信頼できるショップで購入し、不安ならBTOパソコンやショップブランドPCも検討する
もし皆さんが自作PCにあまり慣れていない場合や、パーツ同士の相性問題、あるいは組み立て中のトラブルなどが不安な場合は、信頼できるパソコンショップで購入したり、BTO(Build to Order:受注生産)パソコンやショップブランドの完成品PCを検討したりするのがおすすめです。
BTOパソコンとは、パソコンショップがいくつかの基本構成(ベースモデル)を用意していて、そこからCPUの種類やメモリ容量、ストレージの種類や容量、グラフィックボードの有無や種類などを、自分の好みや予算に合わせてカスタマイズして注文できるパソコンのことです。
BTOパソコンであれば、ショップ側で主要なパーツの相性検証がある程度行われているため、自分で一つ一つパーツを選んで組むよりもトラブルのリスクを大幅に減らすことができます。
また、組み立て済みの状態で届きますし、OSもインストールされているので、すぐに使い始められるのも魅力です。さらに、購入後の保証やサポート(電話やメールでの問い合わせ、修理サービスなど)も期待できます。
自作する場合でも、パーツ選びに迷ったら、大手家電量販店のPCパーツコーナーの店員さんや、PC専門店の経験豊富なスタッフさんに相談してみるのも良いでしょう。皆さんの用途や予算、希望する性能などを伝えれば、それに合ったRyzen CPUや、相性の良いマザーボード、メモリなどをアドバイスしてくれるはずです。また、万が一購入したパーツに初期不良などがあった場合の保証や交換手続きなども、信頼できるショップなら比較的スムーズに対応してくれることが多いです。購入時のレシートや保証書は大切に保管しておきましょうね。
「とにかく安ければいい」と、あまり聞いたことのないようなオンラインショップで格安のパーツを購入したり、オークションサイトなどで詳細不明の中古パーツを知識なく購入したりすると、かえって「安物買いの銭失い」となり、トラブルに見舞われる可能性が高まります。
特にCPUやマザーボードのようなパソコンの心臓部となる重要なパーツは、多少価格が高くても、安心できる実績のあるところから購入するのが賢明ですね。
【ポイント④】冷却と電源には妥協せず、十分な余裕と品質を持たせることを徹底する
「【理由④】一部ハイエンドモデルでは消費電力や発熱が大きく、冷却や電源に十分な配慮が必要だから」でも詳しくお話ししましたが、特に高性能なRyzen CPU(Ryzen 7やRyzen 9など)を選ぶ場合は、CPUクーラーと電源ユニット(PSU)に十分な性能と容量、そして品質を持たせることを徹底するのが、CPUの性能を安定して引き出し、長期間安心して使うための秘訣です。
- CPUクーラー:Ryzenの上位モデルには、CPUクーラーが付属していない「リテールBOX版(Without Coolerなどと表記されます)」と、AMD純正のクーラーが付属しているものがあります。付属クーラーでも定格運用(オーバークロックなどしない標準状態での使用)なら問題ないことが多いですが、より静かに、より低温で安定して運用したい場合や、Precision Boost Overdrive (PBO)のような自動オーバークロック機能を積極的に活用したい場合、あるいは手動でのオーバークロックを考えている場合は、別途高性能なサードパーティ製の空冷クーラー(大型ヒートシンクと強力なファンを備えたもの)や、簡易水冷クーラー(ラジエーターとポンプ、水冷ヘッドが一体化したもの)を用意することを強くおすすめします。どの程度の冷却性能のクーラーが必要かは、選ぶRyzen CPUのTDP(やPPTの上限値)を参考にしつつ、各種レビュー記事で使用されているクーラーとその時のCPU温度などを比較検討すると良いでしょう。目安として、ハイエンドRyzenには1万円~2万円クラスの高性能クーラーが推奨されることが多いです。
- 電源ユニット(PSU):電源ユニットは、パソコン全体の安定動作を支える、縁の下の力持ちであり、非常に重要なパーツです。CPUだけでなく、高性能なグラフィックボードや、複数のストレージ、多数のファンなど、システム全体の総消費電力を考慮して、十分な定格出力容量の電源ユニットを選びましょう。一般的には、システム全体のピーク総消費電力に対して、1.5倍から2倍程度の容量の電源ユニットを選ぶと、負荷率が適正に保たれ、安定性や効率、寿命の面で安心と言われています。また、容量だけでなく、品質(電圧の安定性、リップルノイズの少なさ、保護回路の充実度、変換効率など)も非常に重要です。信頼できるメーカー(Seasonic、Corsair、be quiet!、FSPなど)の、80PLUS認証(電源の変換効率の高さを示す認証で、Bronze、Silver、Gold、Platinum、Titaniumのランクがあります。Gold以上がおすすめです)を受けた製品を選ぶと良いでしょう。安価で品質の低い電源は、PC全体の不安定動作や故障の原因になるだけでなく、最悪の場合、他のパーツを巻き込んで壊してしまう危険性すらあります。
- PCケースのエアフロー:高性能なCPUやグラフィックボードは多くの熱を発します。PCケース内の空気の流れ(エアフロー)が悪いと、熱がケース内部にこもってしまい、各パーツの温度が異常に上昇し、性能低下(サーマルスロットリング)や動作の不安定化、さらにはパーツ寿命の短縮の原因になります。ケースの前面から新鮮な冷たい空気を吸気し、CPUやグラフィックボードなどの発熱源を効率よく冷却した後、ケースの背面や天面から熱い空気をスムーズに排気できるような、良好なエアフローを確保することが大切です。そのためには、適切な数のケースファン(吸気用と排気用)を適切な位置に設置し、ケーブル類を整理して空気の流れを妨げないようにするなどの工夫が必要です。

これらの冷却や電源周りをしっかりとお金をかけて整備しておくことで、高価なRyzen CPUの真の性能を最大限に引き出し、長期間にわたって安定して、そして安心して使うことができます。自作PCでは予算をケチってしまいがちな部分かもしれませんが、ここは絶対に妥協しない方が、結果的に満足度が高くなり、トータルコストも抑えられることが多いんですよ。
これらのポイントを押さえておけば、Ryzenを選んだとしても、きっと後悔することなく、その高いパフォーマンスを存分に享受できるはずです。大切なのは、一方的な情報や噂に流されるのではなく、ご自身の目で多くの情報を集め、ご自身の頭で考え、そしてご自身の目的に合わせて賢く選択することなんですね。
Ryzenはやめとけの噂は本当? CPU選びで失敗しないための総括
さて、ここまでRyzenについて、「やめとけ」と言われることがある理由や、それでもRyzenを選ぶ場合に後悔しないためのポイントなど、詳しくお話ししてきました。最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがCPU選びで失敗しないための総合的な考え方について、おさらいをしておきましょう。
今回の記事でお伝えしてきた、「Ryzenはやめとけ」と一部で言われることがある主な理由を、もう一度簡単に振り返ってみますね。
- 理由①:シングルコア性能が最重要な場面ではIntel CPUにまだ分がある可能性
特定の古いゲームや一部のシングルスレッド重視のソフトでは、Intel CPUの方がわずかに快適な場合があるかもしれません。 - 理由②:マザーボードのBIOSアップデートや相性問題に少し手間がかかる場合がある
新しいCPUと古いマザーボードの組み合わせではBIOSアップデートが必須なことがあり、稀にパーツ間の相性問題に遭遇する可能性も考慮に入れる必要があります。 - 理由③:内蔵GPU非搭載モデルが多く、グラフィックボードが別途必須になるケースが多い
「G」なしモデル(特にRyzen 5000シリーズ以前)ではグラフィックボードが必須となり、その分の追加コストやPCケース内のスペース、消費電力増を考慮する必要があります。 - 理由④:一部ハイエンドモデルでは消費電力や発熱が大きく、冷却や電源に十分な配慮が必要
特にRyzen 7やRyzen 9などの高性能モデルでは、その性能を安定して引き出すために、高性能なCPUクーラーと大容量で高品質な電源ユニット、そして良好なエアフローが求められます。 - 理由⑤:特定のソフトウェアとの互換性や最適化でIntelにやや遅れをとるケースが稀にある
非常にニッチな業務用ソフトや古いソフトなどでは、Intel環境ほど最適化が進んでいないか、ごく稀に互換性の問題が出る可能性もゼロではありません。
これらの理由だけを並べて見てしまうと、「やっぱりRyzenは色々と面倒そうだし、避けた方が無難なのかな…」と感じてしまうかもしれません。
でも、大切なのは、これらの情報が「RyzenというCPUが絶対的にダメな製品だ」とか「買ってはいけないCPUだ」という意味では決してない、と正しく理解することです。
どんな製品にも、必ずメリットとデメリット、得意なことと不得意なことがあります。それはCPUも同じです。
Ryzenの場合、特にコストパフォーマンスに優れた非常に高いマルチコア性能という、他には代えがたい大きな魅力がある一方で、上記のような、特定の状況や使い方、あるいはユーザーの知識や経験によってはデメリットになり得る、注意すべき点も確かに存在する、ということなんです。
CPU選びで最も重要なのは、インターネット上の断片的な噂や誰かの「やめとけ」という言葉のイメージだけで短絡的に判断するのではなく、
- まず、ご自身がその新しいパソコンで何をしたいのか、主な用途(ゲーム、動画編集、仕事、学業など)を明確にすること。
- 次に、その用途に対して、CPUにどのような性能(マルチコア性能、シングルコア性能、内蔵GPUの有無や性能、省電力性など)を最も求めるのかを具体的に把握すること。
- そして、ご自身の予算と、求める性能とのバランスをじっくりと考えること。どこまでなら許容できて、どこは妥協できないのか、優先順位をつけることも大切です。
- 最後に、候補となるいくつかのCPU(Ryzenだけでなく、Intelも含めて)のメリットとデメリットを、信頼できる複数の情報源(公式サイト、専門レビューサイト、公平な比較記事など)からしっかりと比較検討し、ご自身の状況に最も適したものを選ぶこと。
これらのステップを一つひとつ丁寧に行うことが、後悔しないCPU選び、ひいては長く愛用できる満足のいくパソコン選びにつながるのだと、私は思います。
Ryzenは、例えば、高解像度の動画編集や3DCG作成、ソフトウェアのライブストリーミング、複数の仮想環境の運用といった、CPUのコア数をたくさん使う作業を頻繁に行う方や、できるだけ予算を抑えつつ、高い処理能力を持つパソコンを手に入れたいと考えている方にとっては、今も昔も、そしてこれからも、素晴らしい選択肢の一つであり続けるでしょう。実際に、多くのクリエイターやパワーユーザーから高い評価を得ています。
一方で、例えば、とにかく特定のeスポーツ系ゲームでコンマ1秒でも高いフレームレートを安定して追求したいという競技志向の強いゲーマーの方や、自作PCのトラブルシューティングにはあまり時間や手間をかけたくない、できるだけ安定志向で選びたいという方、あるいはグラフィックボードは使わずに、CPUの内蔵グラフィックス機能だけで手軽に省電力なPCを組みたいという方などは、最新のIntel CPUのラインナップと比較検討してみる価値が大いにあるかもしれません。
「やめとけ」という言葉は、確かに強い響きがありますし、時には不安を煽ることもあります。でも、その言葉の裏にある「なぜ、そう言われるのか?」という具体的な理由や背景をきちんと理解し、それがご自身にとって本当に無視できない問題になるのかどうかを冷静に、そして客観的に考えることができれば、必要以上に恐れたり、間違った判断をしたりすることを避けられるはずです。
この記事が、皆さんのRyzenというCPUに対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんご自身にとって本当に最適なCPU選びのお役に立てたなら、とっても嬉しいです。
パソコン選びは、色々と調べることも多くて難しく感じることもあるかもしれませんが、自分の使い方や目的にピッタリ合った一台を見つけられた時の喜びは、本当に大きなものですから、ぜひ今回の情報を参考に、楽しみながら、じっくりと選んでみてくださいね!応援しています!