「REIT(リート)」という言葉、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「不動産投資信託」とも呼ばれ、「比較的手軽に不動産投資が始められる!」「安定した分配金が期待できる!」「専門知識がなくても大丈夫!」そんな魅力的なキャッチフレーズと共に、資産運用に関心のある方々、特に安定的な収入源を求める退職世代の方や、分散投資を考える若い世代の方から注目を集めていますよね。
証券会社の窓口やインターネット広告でも、よく「おすすめの金融商品」として紹介されています。
でも、インターネットで「REIT」と検索してみると、「REIT やめとけ」「REIT 危険性」「REIT 暴落」なんて、ちょっと気になる、いえ、投資を考えている方にとってはかなり心配になるような言葉も一緒に表示されることがあるんです。
「え、そんなに手軽で安定しているイメージなのに、何か大きな問題があるの…?」と、不安に感じてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。一体どうして、そんな声があがってしまうのでしょう?
この記事では、REIT(不動産投資信託)について、なぜ一部で「買うな」「やめとけ」と言われてしまうのか、どんな点に注意しないと、安定的な資産運用のはずが、大きな損失や後悔につながってしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして皆さんに分かりやすくご説明していきたいと思います。
もちろん、REITには分散投資の有効な手段としての魅力や、インフレ対策としての側面もあります。でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんが大切な資産運用で失敗しないためのお手伝いができれば嬉しいです。金融商品は、その仕組みとリスクを正しく理解することが何よりも大切ですからね。
この記事でお伝えしたいこと
- REIT(不動産投資信託)の基本的な仕組みと、なぜ多くの投資家を惹きつけるのかという一般的な魅力
- なぜREITが「買うな」「やめとけ」と言われることがあるのか、その具体的な6つの理由と、そこに潜む深刻なリスクや誤解
- REIT投資で後悔しやすいケースや、知っておくべき潜在的なデメリット
- それでもREITに投資したいと考えた場合に、失敗を避け、賢明な判断をするための重要な注意点と選び方のコツ
- ご自身の投資目的やリスク許容度、そして経済状況に、REITという金融商品が本当に合っているのかを見極めるためのヒント
- REIT(不動産投資信託)とは?その概要と一般的な魅力
- REIT(不動産投資信託)は買うなと言われる6つの深刻な理由と落とし穴
- それでもREITに投資するなら?後悔しないための賢い選択と注意点
- 【ポイント①】自分の投資目的とリスク許容度を明確にし、REITの位置づけをポートフォリオ全体で考える
- 【ポイント②】個別銘柄だけでなく、REIT-ETF(上場投資信託)やREITファンド(投資信託)も比較検討する
- 【ポイント③】投資対象不動産の種類(オフィス、住居、商業、物流、ホテルなど)とその特性・リスクを理解し、分散を心がける
- 【ポイント④】LTV(有利子負債比率)や格付け、スポンサー企業の信用力など、REITの財務健全性を必ずチェックする
- 【ポイント⑤】分配金利回りだけでなく、NAV倍率や分配金の安定性・成長性も重視する
- 【ポイント⑥】市場全体の過熱感や専門家の意見にも注意を払い、冷静な投資判断を心がける
- REIT投資で後悔しないための「買うな」理由総括
REIT(不動産投資信託)とは?その概要と一般的な魅力
まずはじめに、「REITって、そもそもどんな仕組みなの?」「普通の不動産投資とはどう違うの?」という方のために、REITの基本的なところからご説明しますね。
その特徴やメリットとされる点を理解することは、なぜそれが大きなリスクにも繋がり得るのかを考える上で非常に大切なんです。
REITの基本的な仕組み
REIT(リート)とは、「Real Estate Investment Trust」の略で、日本語では「不動産投資信託」と訳されます。簡単に言うと、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビル、商業施設、マンション、物流施設、ホテルといった様々な不動産を購入・運用し、そこから得られる賃料収入や売買益を、投資家に分配金として還元する金融商品のことです。
「投資信託」の一種なので、証券取引所に上場されており、株式と同じように手軽に売買できるのが大きな特徴です(これをJ-REITと呼びます。海外のREITもあります)。
通常の不動産投資(現物不動産投資)では、物件の選定から購入、管理、運営まで全て自分で行う必要があり、多額の自己資金や専門的な知識、そして多くの手間と時間がかかります。しかし、REITであれば、
- 少額から投資可能:数万円~数十万円程度から、プロが運用する複数の不動産に間接的に投資できます。
- 専門家による運用:不動産の選定や管理・運営は、不動産投資の専門家(不動産投資法人とその委託を受けた資産運用会社)が行ってくれます。
- 分散投資効果:一つのREIT銘柄でも、複数の物件に投資しているため、自然と分散投資が図れます。また、異なる種類の不動産(オフィス、商業施設、住居など)に投資するREITを組み合わせることで、さらにリスク分散が可能です。
- 換金性の高さ:証券取引所に上場されているため、株式と同様に、市場が開いている時間であればいつでも売買が可能です。現物不動産のように、売りたい時にすぐに買い手が見つからない、という流動性の低さとは異なります。
- 比較的高い分配金利回り:REITは、利益の大部分(一般的に90%以上)を投資家に分配することで、法人税が実質的に免除されるという税制上の優遇措置があります。そのため、比較的高い分配金利回りが期待できると言われています。
といったメリットがあるため、「不動産には興味があるけれど、自分で物件を運営するのは大変そう…」と考えている人にとっては、非常に魅力的な投資対象として映るわけです。
投資家は、REITの投資口(株式でいうところの株券)を購入することで、実質的に複数の不動産のオーナーの一人となり、その収益の恩恵を受けることができる、というイメージですね。
REITが多くの投資家を惹きつける一般的な魅力
REITが、個人投資家だけでなく、機関投資家からも注目され、資産運用のポートフォリオの一角として組み入れられることが多いのには、以下のような魅力があるからだと考えられます。
- 安定したインカムゲイン(分配金収入)への期待:REITの主な収益源は、保有する不動産からの賃料収入です。これは比較的安定した収入源となりやすく、そこから定期的に支払われる分配金は、株式の配当金と同様に、安定したインカムゲインとして期待できます。特に、低金利時代においては、預貯金よりも高い利回りを求める投資家にとって魅力的です。
- インフレヘッジ効果への期待:一般的に、インフレ(物価上昇)が起こると、不動産の賃料や資産価値も上昇する傾向があると言われています。そのため、REITは、インフレによって現金の価値が目減りするリスクを回避する(ヘッジする)ための手段の一つとして考えられることがあります。
- 株式や債券とは異なる値動きをする傾向(分散投資効果):REITの価格は、株式市場や債券市場とは必ずしも同じように動くわけではなく、異なる値動きをすることがあります。そのため、株式や債券といった伝統的な資産とREITを組み合わせてポートフォリオを組むことで、全体の資産価値の変動リスクを抑える効果(分散投資効果)が期待できると言われています。
- 透明性の高さと情報開示:上場しているREITは、定期的に運用状況や財務状況、保有物件に関する情報を開示する義務があり、投資家はそれらの情報を基に投資判断を行うことができます。現物不動産投資に比べて、情報の透明性が高いと言えるでしょう。

これらの魅力から、「安定的な分配金収入が欲しい」「インフレに備えたい」「株式以外の投資対象も持ちたい」と考える方々にとって、REITは非常に有力な選択肢の一つとして、常に注目されているんですね。
しかし、その「手軽さ」や「安定性」といったイメージの裏には、知っておくべきいくつかの「落とし穴」や「リスク」も潜んでいるのです。
REIT(不動産投資信託)は買うなと言われる6つの深刻な理由と落とし穴
さて、ここからが本題です。REITの概要と魅力をご理解いただいたところで、なぜ一部で「REITは買うな」「やめとけ」という、投資をためらわせるような厳しい声があがってしまうのか、その具体的な理由を6つに絞って、詳しくご説明していきたいと思います。
これらの理由を知っておくことは、皆さんがREIT投資で「こんなはずじゃなかった…」と大きな損失を被ったり、後悔したりしないために、非常に重要になってくるはずです。
【理由①】金利上昇局面では価格が下落しやすく、分配金利回りの魅力も薄れるから
REITの投資判断において、「金利」の動向は非常に重要なファクターとなります。そして、一般的に、金利が上昇する局面では、REITの価格(投資口価格)は下落しやすい傾向があると言われています。これは、いくつかの理由によります。
- 相対的な魅力の低下:REITの魅力の一つは、預貯金や国債といった安全資産と比較して、相対的に高い分配金利回りが期待できる点にあります。しかし、もし市場金利が上昇すると、預貯金や国債の金利も上昇し、REITの分配金利回りとの差が縮まります。そうなると、わざわざリスクを取ってREITに投資するよりも、安全資産で運用した方が良いと考える投資家が増え、REITの魅力が薄れて売られやすくなるのです。
- 借入金利の上昇による収益圧迫:多くのREITは、不動産を取得するために、銀行などから多額の資金を借り入れています(レバレッジをかけている状態です)。もし市場金利が上昇すると、REITが支払う借入金の金利も上昇し、その分、収益が圧迫され、結果として投資家への分配金が減少する可能性があります。これが嫌気されて、REIT価格が下落する要因となります。
- 不動産市況への影響:金利が上昇すると、住宅ローン金利なども上昇し、不動産の購入意欲が低下したり、企業の設備投資意欲が減退したりして、不動産市況全体が冷え込む可能性があります。そうなると、REITが保有する不動産の資産価値が下落したり、空室率が上昇して賃料収入が減少したりするリスクも出てきます。
近年、世界的に低金利時代が長く続いていましたが、インフレ抑制のために各国の中央銀行が利上げに踏み切るなど、金利が上昇する局面も現実のものとなっています。
こうした金利上昇局面においては、REITは他の金融商品と比較して、特に価格下落のリスクに晒されやすいということを、肝に銘じておく必要があります。「REITは安定している」というイメージだけで投資を始めると、思わぬ金利変動リスクに巻き込まれてしまうかもしれません。
実際に、過去の金利上昇局面では、REIT指数が大きく下落した事例もあります。特に、これから金利がどう動くか不透明な時期に、REITへの集中投資を行うのは、非常にリスクが高いと言えるでしょう。「高利回りだから魅力的」という理由だけで飛びつくのは危険です。
「REITって、分配金利回りが高いから良いと思ってたけど、最近の金利上昇でどんどん値下がりして、結局分配金以上に損してる…。こんなはずじゃなかった。」(REIT投資家Aさんの嘆き)
この「金利上昇リスク」が、REIT投資の大きな注意点であり、「やめとけ」と言われる理由の一つなのです。
【理由②】不動産市況の悪化や災害リスクで、価格も分配金もダブルで下落する危険性
REITは、その名の通り「不動産」に投資する金融商品ですから、当然ながら不動産市況の変動の影響を直接的に受けます。
景気後退や、特定の種類の不動産(例えば、コロナ禍におけるオフィスや商業施設など)への需要低下、あるいは供給過剰といった要因で不動産市況が悪化すると、REITの収益性や資産価値も大きな打撃を受ける可能性があります。
具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
- 賃料収入の減少:景気が悪化したり、テナント企業の業績が悪化したりすると、賃料の値下げ要求が出てきたり、あるいはテナントが退去して空室が増えたりして、REITの主要な収入源である賃料収入が減少する可能性があります。
- 保有不動産の資産価値の下落:不動産市況が悪化すると、REITが保有している不動産の評価額も下落します。これにより、REITの1口あたりの純資産価値(NAV:Net Asset Value)が低下し、投資口価格の下落に繋がることがあります。
- 物件売却損の発生:資金調達のためや、ポートフォリオ入れ替えのために保有物件を売却する際に、不動産市況が悪化していると、取得時よりも低い価格でしか売れず、売却損が発生する可能性があります。
これらの要因によってREITの収益が悪化すれば、当然、投資家への分配金も減額されたり、最悪の場合は支払われなくなったりする(無配)リスクがあります。そして、分配金の減少や将来の収益性への懸念から、投資口価格も大きく下落するという、「価格と分配金のダブルパンチ」に見舞われる可能性があるのです。
「安定した分配金が魅力だと思っていたのに、分配金は減るし、元本も大きく目減りしてしまった…」なんてことになったら、目も当てられませんよね。
さらに、日本は地震や台風、水害といった自然災害が多い国です。もし、REITが保有する物件が大規模な災害によって大きな被害を受けた場合、修繕費用がかさんだり、賃料収入が途絶えたりして、REITの収益に深刻な影響を与える可能性があります。
もちろん、REITは保険に加入しているのが一般的ですが、全ての損害が保険でカバーされるとは限りませんし、復旧までの期間は収益が悪化します。特定の地域に物件が集中しているREITは、特にこの災害リスクが高いと言えるでしょう。
東日本大震災や熊本地震の際には、実際に被災した物件を保有していたREITの価格が大きく下落した事例もあります。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、ホテル特化型REITや商業施設特化型REITに大きな打撃を与えました。このように、REITは、経済全体の動向だけでなく、特定の社会情勢や災害によっても、その価値が大きく揺らぐ可能性があるのです。
「コロナショックで、持ってたホテル系REITの価格が半分近くまで暴落した。分配金も大幅に減って、本当にショックだった。不動産だから安定してるってわけじゃないんだね…。」(REITで痛い目に遭ったBさんの体験談)
「不動産は固い資産だ」というイメージだけでREITに投資すると、こうした不動産特有のリスクを見誤ってしまうかもしれません。
【理由③】倒産・上場廃止リスクがゼロではなく、投資資金が紙くずになる可能性も
「REITは上場している金融商品だから安心」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、REIT(不動産投資法人)も、一般の企業と同様に、経営状況が悪化すれば倒産したり、あるいは証券取引所の上場基準を満たせなくなって上場廃止になったりするリスクがゼロではありません。
もし、投資しているREITが倒産してしまった場合、その投資口の価値は、最悪の場合、ほぼゼロ(紙くず同然)になってしまう可能性があります。また、上場廃止になった場合も、市場での売買が非常に困難になり、換金性が著しく低下し、実質的に投資資金が塩漬けになってしまうリスクがあります。
実際に、過去の日本においても、リーマンショック後の不動産市況の悪化などにより、経営破綻に追い込まれたJ-REITの事例がいくつか存在します(例えば、2008年のニューシティ・レジデンス投資法人など)。
また、上場廃止基準(例えば、純資産額が一定額を下回る、投資口数が一定数を下回るなど)に抵触しそうになり、他のREITに吸収合併されるといった形で、事実上市場から姿を消すREITも出てきています。
こうしたリスクは、特に以下のような特徴を持つREITで高まる傾向があると言われています。
- 財務体質が脆弱なREIT:借入金の比率が高い(LTV:Loan to Valueが高い)、あるいは格付けが低いREITは、金利上昇や資金調達環境の悪化の影響を受けやすく、経営危機に陥りやすいです。
- 特定のスポンサー企業に依存しているREIT:REITの運営は、スポンサー企業(親会社となる不動産会社や金融機関など)の信用力や物件供給能力に大きく依存している場合があります。もしスポンサー企業の経営が悪化したり、支援が受けられなくなったりすると、REITの経営も立ち行かなくなる可能性があります。
- 特定の種類の不動産や地域に特化しすぎているREIT:その特定の不動産市場や地域経済が悪化した場合、リスクを分散できずに大きな打撃を受けやすいです。
「まさか上場しているREITが潰れるなんて…」と思うかもしれませんが、「絶対安心」という金融商品は存在しないのです。株式投資と同様に、REIT投資にも、投資先の「信用リスク(倒産リスク)」が伴うことを、必ず理解しておかなければなりません。
もし、あなたが「元本だけは絶対に減らしたくない」と考えるのであれば、REITは適した投資対象とは言えないでしょう。

この「倒産・上場廃止リスク」も、「やめとけ」と言われる深刻な理由の一つです。
【理由④】「プロが運用」という言葉の幻想と、運用会社の利益相反・手数料構造への不信感
REITのメリットの一つとして、「不動産の専門家が運用してくれるから安心」という点がよく挙げられます。確かに、個々の物件の選定や管理・運営は、不動産投資法人とその委託を受けた資産運用会社のプロフェッショナルたちが行っています。
しかし、この「プロが運用」という言葉に、過度な期待や幻想を抱いてしまうのは危険かもしれません。
なぜなら、
- プロでも失敗することはある:どんなに優秀な専門家であっても、将来の不動産市況や金利動向を完璧に予測することは不可能です。時には、物件選定を誤ったり、市場環境の急変に対応しきれなかったりして、運用成績が悪化することもあります。「プロだから必ず儲かる」という保証はどこにもありません。
- 運用会社の利益相反リスク:REITの資産運用会社は、多くの場合、スポンサー企業(親会社)のグループ会社であることが多いです。そのため、スポンサー企業の利益を優先するような形で、必ずしも投資家にとって最善とは言えない物件を高値で購入したり、あるいはスポンサー企業に有利な条件で物件を売却したりするのではないか、といった「利益相反」のリスクが指摘されることがあります。つまり、運用会社が、REITの投資家の利益よりも、スポンサー企業の利益を優先するような行動を取る可能性がある、ということです。
- 不透明な手数料構造と高額な報酬:REITの運用には、資産運用会社への運用報酬、物件管理会社への管理委託料、信託銀行への信託報酬など、様々な手数料がかかっています。これらの手数料は、REITの収益から差し引かれるため、間接的に投資家の負担となります。そして、これらの手数料の算定根拠や水準が、必ずしも透明性が高いとは言えず、「運用成績に関わらず、運用会社だけが高い報酬を得ているのではないか」といった不信感を持つ投資家もいます。
- ガバナンス(企業統治)体制への疑問:REITの投資主(投資家)が、不動産投資法人の意思決定にどの程度関与できるのか、そして資産運用会社の業務執行をどの程度監督できるのか、といったガバナンス体制の有効性については、まだ改善の余地があるという指摘もあります。
「プロに任せておけば安心」と、思考停止でREITに投資してしまうのではなく、そのREITがどのような運用方針で、どのような物件に投資し、どのような手数料体系になっており、そしてどのようなガバナンス体制で運営されているのかを、投資家自身がしっかりと吟味し、理解する必要があるのです。
金融庁も、投資信託の販売・運用における顧客本位の業務運営の徹底を金融機関に求めていますが(参考:金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」)、最終的な投資判断は、やはり自己責任です。
「専門家がやってくれるから、自分は何も考えなくても大丈夫」という甘い考えは、REIT投資においても通用しないということを、肝に銘じておくべきでしょう。
【理由⑤】流動性が低い銘柄や市場全体のパニック時には、売りたくても売れないリスク
REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できるため、「換金性が高い」のがメリットの一つとされています。
しかし、これはあくまで「理論上」の話であり、実際には、銘柄によっては流動性(市場での売買のしやすさ)がそれほど高くない場合があったり、あるいは市場全体がパニック状態に陥った際には、売りたくてもなかなか買い手がつかず、希望する価格で売却できない、あるいは全く売れないというリスクも存在します。
特に、以下のようなケースでは、流動性リスクが顕在化しやすくなります。
- 時価総額の小さいマイナーなREIT銘柄:発行されている投資口数が少なく、日々の出来高(売買される量)も少ないREIT銘柄は、いざ売却しようと思っても、なかなか買い注文が入らず、希望する価格よりも大幅に低い価格でしか売れなかったり、あるいは売買が成立しなかったりすることがあります。
- 金融危機や市場全体の暴落時:リーマンショックやコロナショックのような、市場全体がパニック的な売り一色になるような状況では、REIT市場も例外ではありません。多くの投資家が一斉に売りに走るため、買い手が極端に少なくなり、REIT価格は急落し、ストップ安(一日の値下がり制限幅まで下落すること)が続くなどして、売りたくても売れない「流動性の枯渇」という事態が発生する可能性があります。
- 特定のREITに関する悪材料が出た場合:例えば、保有物件で大きな問題が発生したり、スポンサー企業の経営不安が報じられたりすると、そのREIT銘柄に対する売り注文が殺到し、同様に流動性が低下することがあります。
「いつでも好きな時に売れるから安心」と思っていたのに、いざ現金が必要になった時や、損失を限定するために早く損切りしたいと思った時に、「売りたいのに売れない」という状況に陥ってしまうのは、非常に大きなストレスであり、深刻なリスクです。
特に、REITの価格が大きく下落している局面で、損切りしようとしても売れずに、さらに損失が拡大してしまう、といった事態は避けたいものです。
株式投資においても同様のリスクはありますが、REIT市場は、株式市場全体と比較すると、まだ市場規模が小さく、参加者も限られているため、一度パニック的な売りが出ると、流動性がより低下しやすい傾向があると言えるかもしれません。「上場しているから大丈夫」と安易に考えず、投資するREIT銘柄の日々の出来高や、市場全体の状況にも注意を払う必要があります。
【理由⑥】「分散投資」という言葉の誤解と、REITだけに偏ったポートフォリオの危険性
REITは、それ自体が複数の不動産に投資しているため、「分散投資効果がある」と言われます。また、株式や債券といった伝統的な資産とは異なる値動きをすることが期待されるため、ポートフォリオ全体のリスクを低減する効果がある、とも言われています。これらは確かにREITのメリットの一つです。
しかし、ここで注意しなければならないのは、「REITに投資していれば、それだけで十分に分散された安全なポートフォリオになる」というわけでは決してない、ということです。
特に、以下のような誤解や偏った考え方は非常に危険です。
- REITだけに集中投資してしまう:「REITは安定していて分配金も高いから、自分の資産の大部分をREITに集中させよう」と考えるのは、非常にリスクの高い行為です。どんなに分散されたREIT銘柄であっても、それはあくまで「不動産」という一つの資産クラスへの投資であり、理由②で述べたような不動産市況の悪化や災害リスク、あるいは理由①の金利上昇リスクの影響を直接的に受けてしまいます。
- 複数のREIT銘柄に投資すれば安心、というわけでもない:異なる種類のREIT銘柄(オフィス系、住居系、商業系など)に分散投資したとしても、それらは結局のところ同じ「J-REIT市場」という枠組みの中で取引されており、市場全体が大きく変動する際には、多くの銘柄が同じような値動きをする(相関性が高まる)傾向があります。本当の意味での分散効果を得るためには、REITだけでなく、国内外の株式、債券、あるいは現金といった、異なる性質を持つ資産クラスとバランス良く組み合わせることが重要です。
- 「REITはミドルリスク・ミドルリターン」という言葉の鵜呑み:REITは、一般的にローリスク・ローリターンの債券と、ハイリスク・ハイリターンの株式の中間に位置する「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品と言われることがあります。しかし、これはあくまで一般的な傾向であり、市場環境や個別銘柄によっては、株式並み、あるいはそれ以上の大きな価格変動リスクを伴うこともあります。「ミドルリスクだから安心」と安易に考えるのは禁物です。
資産運用における「分散投資」の本当の意味は、値動きの異なる複数の資産クラスに、自分のリスク許容度に合わせて適切に資産を配分(アセットアロケーション)することで、ポートフォリオ全体のリスクをコントロールし、安定的なリターンを目指すということです。REITは、その有効なパーツの一つにはなり得ますが、それだけで万能なわけではありません。金融庁のNISA特設ウェブサイトでも、分散投資の重要性が繰り返し強調されていますが、それは資産クラス全体の分散を指しています。
もし、あなたが「REITに投資しておけば、もう資産運用のことは考えなくても大丈夫だ」と思っているのであれば、それは大きな誤解です。
REITだけに偏ったいびつなポートフォリオは、かえってあなたの資産全体のリスクを高めてしまう可能性があることを、肝に銘じておきましょう。
以上が、「REITは買うな」と言われることがある主な6つの理由です。どれも、REITという金融商品が持つ特性や、それを実際に運用する上で直面しやすい課題を映し出しており、手軽さや安定性といった表面的なイメージだけでは見えてこない、重要なポイントばかりですね。
それでもREITに投資するなら?後悔しないための賢い選択と注意点
ここまでREIT投資の厳しい側面や、「買うな」「やめとけ」と言われる理由について詳しくお話ししてきましたが、「うーん、やっぱりREITは、自分が思っていたほど簡単な投資対象ではないのかもしれない…」と、少し慎重になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、お待ちください! REITが、分散投資の有効な選択肢の一つとして、あるいは安定的なインカムゲインを期待できる金融商品として、多くの投資家から支持されていることには、やはりそれなりの理由があります。
そして、デメリットやリスクをしっかりと理解し、ポイントを押さえて賢く選べば、きっとあなたの資産形成の一助となる可能性も十分にあります。
大切なのは、REITという金融商品の「メリット」と「デメリット」、そして「リスク」と「リターン」の関係を正しく認識し、ご自身の投資目的やリスク許容度、そして経済状況と照らし合わせて、本当に自分にとって必要な投資対象なのかを冷静に見極めることです。
ここでは、それでもREITへの投資を検討したい!という皆さんのために、後悔しないための賢い選択方法と、投資する際の注意点をいくつかご紹介しますね。
【ポイント①】自分の投資目的とリスク許容度を明確にし、REITの位置づけをポートフォリオ全体で考える
まず何よりも大切なのは、「自分は何のためにREITに投資するのか?」「REITにどのような役割を期待するのか?」そして「自分はどの程度のリスクなら受け入れられるのか?」といった、ご自身の投資目的とリスク許容度を明確にすることです。
そして、REITを単独で評価するのではなく、ご自身の資産全体のポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)の中で、REITがどのような位置づけになるのかを考えることが重要です。
- 投資目的の明確化:
- 安定的なインカムゲイン(分配金)が欲しいのか?(その場合、分配金利回りの高さだけでなく、分配金の安定性や成長性も重要になります)
- インフレヘッジ効果を期待するのか?
- 株式や債券とは異なる値動きをする資産を組み入れて、ポートフォリオ全体のリスクを分散させたいのか?
- 値上がり益(キャピタルゲイン)も狙いたいのか?(その場合、価格変動リスクもより大きくなります)
- リスク許容度の把握:
- 投資した元本が、どの程度までなら減っても精神的に耐えられるか?(例えば、10%、20%、あるいはそれ以上?)
- その投資資金は、近い将来に使う予定のない、本当に「余裕資金」なのか?
- もしREIT価格が大きく下落した場合でも、パニックにならずに長期的な視点で持ち続けられるか?
- ポートフォリオにおけるREITの適切な割合:一般的に、個人のポートフォリオにおける不動産関連資産(REIT含む)の割合は、全体の5%~15%程度が一つの目安と言われることがありますが、これはあくまで一般的な話です。ご自身の年齢、資産状況、リスク許容度、そして他の保有資産とのバランスを考慮して、REITへの投資額(割合)を慎重に決定する必要があります。決して、REITだけに資産を集中させるようなことは避けるべきです。
「みんなが良いって言うから」「分配金利回りが高いから」といった理由だけでREITに手を出すのではなく、ご自身の投資戦略全体の中で、REITがどのような役割を果たし、どの程度のリスクを担うのかを、明確に位置づけることが、後悔しないREIT投資の第一歩です。
【ポイント②】個別銘柄だけでなく、REIT-ETF(上場投資信託)やREITファンド(投資信託)も比較検討する
REITに投資する方法は、個別のREIT銘柄を証券取引所で購入するだけではありません。複数のREIT銘柄にまとめて分散投資ができる「REIT-ETF(上場投資信託)」や、「REITファンド(投資信託)」といった選択肢もあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自身の投資スタイルや知識レベルに合わせて比較検討すると良いでしょう。
- 個別REIT銘柄への投資:
- メリット:自分の好きなREIT銘柄(例えば、特定の種類の不動産に特化したものや、特定の運用会社のものなど)を選んで投資できる。分配金も直接受け取れる。
- デメリット:銘柄選択の知識が必要。一つの銘柄に集中投資するとリスクが高まる。最低投資金額が銘柄によって異なる(数万円~数十万円)。
- REIT-ETF(上場不動産投資信託)への投資:
- メリット:東証REIT指数のような、市場全体の動きを示す指数に連動するように運用されるものが多く、一つのETFを購入するだけで、複数のREIT銘柄に自動的に分散投資できる。個別銘柄を選ぶ手間が省ける。株式と同じようにリアルタイムで売買可能。信託報酬(運用管理費用)が比較的低いものが多い。
- デメリット:指数に連動するため、市場全体が下落すればETFの価格も下落する。個別銘柄のように、特定のREITの成長性を狙うことは難しい。
- REITファンド(投資信託)への投資:
- メリット:こちらも複数のREIT銘柄に分散投資してくれる。少額(例えば100円)から積み立て投資ができる商品も多い。運用は専門家(ファンドマネージャー)に任せられる。
- デメリット:ETFと比較して、信託報酬や販売手数料といったコストがやや高くなる傾向がある。毎月分配型で元本を取り崩しているファンドもあるので注意が必要。基準価額は1日1回しか公表されない。

「どのREIT銘柄を選べばいいか分からない」「手軽に分散投資を始めたい」という初心者の方にとっては、REIT-ETFや、低コストで実績のあるREITファンドから始めてみるのも、良い選択肢の一つかもしれません。手数料や運用方針をよく比較して、自分に合った商品を選びましょう。
【ポイント③】投資対象不動産の種類(オフィス、住居、商業、物流、ホテルなど)とその特性・リスクを理解し、分散を心がける
REITは、投資対象とする不動産の種類によって、その収益性やリスク特性が大きく異なります。主な種類としては、以下のようなものがあります。
- オフィスビル特化型REIT:都心部のオフィスビルに投資。景気動向や企業のオフィス需要に収益が左右されやすい。テレワークの普及も影響要因。
- 住居特化型REIT:賃貸マンションやアパートに投資。比較的安定した賃料収入が期待できるが、大きな成長性は見込みにくい。人口動態や単身者・ファミリー層のニーズ変化の影響を受ける。
- 商業施設特化型REIT:ショッピングセンターや百貨店、路面店などに投資。消費者の購買意欲やEコマースの拡大、インバウンド需要などに収益が左右される。
- 物流施設特化型REIT:大型の物流倉庫や配送センターに投資。Eコマース市場の拡大に伴い、近年需要が高まっているが、特定のテナント企業への依存度が高い場合も。
- ホテル特化型REIT:ビジネスホテルやリゾートホテルに投資。観光需要やインバウンド客の動向、そして感染症の流行などに収益が大きく左右される、ボラティリティ(価格変動)の高いセクター。
- ヘルスケア施設特化型REIT:有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などに投資。高齢化社会の進展に伴い、安定的な需要が見込まれるが、介護保険制度の変更などの影響も受ける。
- 複合型REIT:上記の複数の種類の不動産に分散して投資するタイプ。リスク分散効果が期待できるが、特化型ほどの高いリターンは狙いにくい。
- 総合型REIT:さらに幅広い種類の不動産に投資するタイプ。
それぞれの不動産タイプには、メリットとデメリット、そして特有のリスクがあります。「今のトレンドはこれだから」と安易に一つのタイプに集中投資するのではなく、ご自身の見通しやリスク許容度に合わせて、複数の異なるタイプのREIT(あるいはREIT-ETF)に分散投資することを心がけましょう。
例えば、安定性を求めるなら住居系や物流系を多めに、成長性を期待するならオフィス系や商業系(ただしリスクも高い)を一部組み入れる、といった具合です。「何に投資しているREITなのか」その中身を理解することが、賢い分散投資の第一歩です。
【ポイント④】LTV(有利子負債比率)や格付け、スポンサー企業の信用力など、REITの財務健全性を必ずチェックする
REITの倒産・上場廃止リスクを避けるためには、投資するREITの財務健全性をしっかりとチェックすることが非常に重要です。具体的には、以下のような指標や情報に注目しましょう。
- LTV(Loan to Value:有利子負債比率):総資産に占める有利子負債の割合を示す指標です。一般的に、LTVが高いほど、借入金への依存度が高く、金利上昇リスクや資金調達リスクに対する脆弱性が高いと言えます。J-REIT全体の平均LTVは40%台半ば程度と言われていますが、個別銘柄でこの数値が極端に高くないか(例えば、60%を超えているなど)を確認しましょう。
- 格付け:格付会社(R&I、JCRなど)が付与している信用格付けも、REITの財務健全性や信用力を判断する上での重要な参考情報となります。AA(ダブルA)やA(シングルA)といった格付けが高いほど、信用力は高いと評価されます。
- スポンサー企業の信用力とサポート体制:REITの運営は、スポンサー企業の信用力や物件供給能力、そして経営危機に陥った際のサポート体制に大きく依存しています。スポンサー企業が、財務的に安定しており、不動産事業で豊富な実績を持つ大手企業であるか、そしてREITに対するコミットメント(関与度合い)が高いか、といった点を確認しましょう。
- 有利子負債の金利タイプ(固定金利か変動金利か)と返済期限の分散状況:借入金の多くが変動金利であったり、返済期限が特定の時期に集中していたりすると、金利上昇時や資金調達環境悪化時のリスクが高まります。有利子負債の金利タイプや返済期限が適切に分散されているか、開示資料で確認しましょう。
- 自己資本比率やキャッシュフローの状況:純資産の割合や、営業キャッシュフローが安定してプラスになっているかなども、財務の安定性を見る上で重要です。
これらの情報は、各REITが公表している決算短信や有価証券報告書、資産運用報告といったIR資料で確認することができます。少し専門的で難しく感じるかもしれませんが、大切な資産を投じるのですから、これらの情報を読み解き、自分なりに財務の安全性を評価する努力は惜しむべきではありません。
「よく分からないから、まあ大丈夫だろう」という態度は禁物です。
【ポイント⑤】分配金利回りだけでなく、NAV倍率や分配金の安定性・成長性も重視する
REITを選ぶ際、多くの方がまず注目するのが「分配金利回り」の高さだと思います。「利回りが高い=お得」と短絡的に考えてしまいがちですが、それだけでは不十分です。
なぜなら、分配金利回りが高くても、その分配金が将来にわたって安定的に支払われ続けるとは限りませんし、投資口価格そのものが大きく下落してしまっては、トータルで損失を被る可能性もあるからです。
分配金利回りに加えて、以下のような指標も総合的に見て判断することが大切です。
- NAV倍率(純資産価値倍率):REITの投資口価格が、1口あたりの純資産価値(NAV)の何倍になっているかを示す指標です。NAVは、REITが保有する不動産の時価評価額から負債を差し引いたもので、REITの「解散価値」とも言えます。NAV倍率が1倍であれば、投資口価格と純資産価値が等しい状態です。1倍を大きく下回っていれば割安、大きく上回っていれば割高と判断する一つの目安になります(ただし、成長期待の高いREITはNAV倍率が高くなる傾向もあります)。
- 分配金の安定性と成長性:過去の分配金の実績を見て、安定して分配金が支払われているか、そして将来的にも分配金が増えていく(あるいは少なくとも維持される)見込みがあるかを確認しましょう。そのためには、REITが保有する物件の質(築年数、立地、テナントの質など)や、賃料収入の安定性、そして運用会社の物件取得・運営戦略などを評価する必要があります。
- FFO(Funds From Operations:営業活動による資金)倍率:FFOは、REITのキャッシュフロー創出力(儲ける力)を示す指標の一つで、当期純利益に減価償却費などを加えたものです。投資口価格がFFOの何倍になっているか(FFO倍率、あるいはP/FFOレシオ)を見ることで、REITの収益力から見た割安・割高感を判断するのに役立ちます。一般的に、この倍率が低いほど割安とされます。
- 物件ポートフォリオの質と分散度合い:どのような種類の不動産を、どの地域に、どの程度分散して保有しているか。物件の築年数、稼働率、主要なテナントの信用力なども重要です。
「高利回り」という言葉の響きだけに惑わされず、そのREITが本当に質の高い不動産を保有し、安定的に収益を上げ続け、そして将来にわたって投資家に還元できる力があるのかどうかを、多角的な視点から見極めることが、賢明なREIT投資家になるための鍵となります。
【ポイント⑥】市場全体の過熱感や専門家の意見にも注意を払い、冷静な投資判断を心がける
そして最後に、REITに投資する際には、個別銘柄の分析だけでなく、REIT市場全体、あるいは不動産市場全体の状況や、専門家(アナリストやエコノミストなど)の意見にも注意を払い、常に冷静な投資判断を心がけることが大切です。
特に、市場が過熱している時や、逆に悲観論が広がっている時には、感情に流されずに客観的な視点を保つことが重要になります。
- 市場全体の過熱感のチェック:東証REIT指数が過去最高値圏にあり、多くのREIT銘柄の分配金利回りが歴史的な低水準になっているような場合は、市場全体が過熱しており、高値掴みになるリスクがあるかもしれません。逆に、市場全体が悲観に包まれている時は、優良なREIT銘柄が割安な価格で放置されているチャンスかもしれません。
- 専門家のレポートや分析の参照:証券会社のアナリストレポートや、不動産市場の専門家、経済評論家などが発信する情報を参考にし、市場の現状認識や将来見通しについて、様々な意見に触れてみましょう。ただし、専門家の意見も絶対ではありませんし、立場によってポジショントーク(特定の方向に誘導しようとする発言)が含まれている可能性もあるので、鵜呑みにせず、あくまで参考情報の一つとして捉えることが大切です。
- 「群集心理」に流されない:「みんなが買っているから大丈夫だろう」「みんなが売っているから自分も売らなければ」といった、周りの雰囲気に流されてしまう「群集心理」は、投資で失敗する大きな原因の一つです。自分自身の投資目的とリスク許容度に基づいて、冷静に判断する姿勢を貫きましょう。
- 定期的なポートフォリオの見直しとリバランス:市場環境の変化や、ご自身のライフステージの変化に合わせて、定期的にREITを含むポートフォリオ全体を見直し、必要であれば資産配分の調整(リバランス)を行うことも大切です。
「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、REIT投資においても、個別銘柄のミクロな情報だけでなく、市場全体のマクロな環境や、専門家の多様な意見にも耳を傾け、総合的かつ客観的な視点から、自分自身の投資判断を下していくことが、長期的に成功するための秘訣と言えるでしょう。
これらのポイントを押さえて、覚悟と周到な準備を持って臨めば、REIT投資は、きっとあなたの資産形成の一翼を担う、有効な手段となり得るはずです。大切なのは、メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットやリスクもしっかりと理解し、全てを納得した上で、自分自身の判断と責任において投資を行うことなんですね。
REIT投資で後悔しないための「買うな」理由総括
さて、ここまでREIT(不動産投資信託)について、「買うな」「やめとけ」と言われてしまう理由や、それでもREITという金融商品への投資を検討する場合に後悔しないための賢い選択と注意点など、詳しくお話ししてきました。
最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがこの「不動産への間接投資」という選択肢とどう向き合うべきか、その最終的な判断をする上で、本当に心に留めておくべきことは何なのか、おさらいをしておきましょう。
今回の記事でお伝えしてきた、「REITは買うな」と一部で言われることがある主な理由は、以下の6点でしたね。
- 理由①:金利上昇局面では価格が下落しやすく、分配金利回りの魅力も薄れる
金利上昇は、REITの調達コスト増と相対的魅力低下を招き、価格下落の大きな要因となります。 - 理由②:不動産市況の悪化や災害リスクで、価格も分配金もダブルで下落する危険性
景気後退や災害は、賃料収入減・資産価値下落・分配金減額というトリプルパンチに繋がります。 - 理由③:倒産・上場廃止リスクがゼロではなく、投資資金が紙くずになる可能性も
財務悪化やスポンサー企業の信用不安は、REITといえども破綻リスクと無縁ではありません。 - 理由④:「プロが運用」という言葉の幻想と、運用会社の利益相反・手数料構造への不信感
運用会社の透明性や、本当に投資家の利益を最優先しているかには、疑問の目が向けられることも。 - 理由⑤:流動性が低い銘柄や市場全体のパニック時には、売りたくても売れないリスク
マイナー銘柄や市場混乱時は、換金性の高さというメリットが失われる可能性があります。 - 理由⑥:「分散投資」という言葉の誤解と、REITだけに偏ったポートフォリオの危険性
REITはあくまで資産クラスの一つであり、それだけに集中投資するのは高リスクです。
これらの理由だけを改めて見ると、「やっぱりREIT投資は、安定しているように見えて、実は結構リスクが高いのかもしれない…」「素人が安易に手を出すべきではないのかな…」と、少し慎重な気持ちになったかもしれません。でも、どうか忘れないでください。
これらの厳しい側面や注意点は、REITという金融商品が持つ、少額から不動産に分散投資でき、比較的安定した分配金収入が期待できるという、大きな魅力の裏にある、正しく理解しておくべきリスクであるということを。
どんな金融商品にも、必ずメリットとデメリット、そしてリスクとリターンがあります。REITの場合、「手軽に不動産オーナー気分を味わえ、インカムゲインを狙える」という魅力的なリターンが期待できる一方で、金利変動リスク、不動産市況リスク、信用リスク、流動性リスクといった、様々なリスクも内包しているのです。
REIT投資で後悔しないために最も重要なのは、インターネット上の「高利回りでおすすめ!」といった甘い言葉や、あるいは「REITはもう終わった…」といった極端な悲観論にただ流されるのではなく、
- まず、ご自身が「なぜ資産運用をしたいのか」「REITに何を期待し、どのような役割を担ってほしいのか」という、明確な「投資目的」と「リスク許容度」を、深く、そして正直に見つめ直すこと。
- 次に、REITという金融商品の仕組み、メリットとデメリット、そしてそれに伴う様々なリスク(金利、不動産市況、信用、流動性など)について、信頼できる多様な情報源から、時間をかけて真摯に、そして多角的に学ぼうと努めること。
- そして、そこで得た知識と、ご自身の投資目的、リスク許容度、そして資産全体のポートフォリオバランスを冷静に照らし合わせ、本当に自分にとってREITが必要な投資対象なのか、そしてもし投資するならどの程度の割合が適切なのかを、客観的かつ徹底的に比較検討すること。
- 最後に、もしREITに投資すると決めたならば、個別銘柄やREIT-ETF/ファンドの選定において、その投資対象不動産の種類、財務健全性、分配金の安定性・成長性、手数料などを細部まで吟味し、市場全体の状況も考慮しながら、全てを納得した上で、自分自身の判断と責任において投資を実行し、そして定期的な見直しを怠らないこと。
これらのステップを一つひとつ丁寧に、そして誠実に行うことが、後で「こんなはずじゃなかった…」と後悔することを避け、ご自身にとって本当に満足のいく、そして賢明な資産運用を実現するための、何よりの道しるべになるのだと、私は思います。
REITは、適切な知識と慎重な判断、そして何よりも「リスクを理解し、コントロールする」という意識を持って向き合えば、あなたの資産形成の頼もしい味方となってくれる可能性を秘めた金融商品です。
「買うな」「やめとけ」という言葉は、時に私たちを慎重にさせ、立ち止まって深く考えるきっかけを与えてくれます。しかし、その言葉の裏にある「なぜ?」を深く掘り下げ、そのリスクや課題を克服するための具体的な方策を考え、そして「それでも自分には、このREITという投資が、自分の目標達成のために必要だ」と心から確信できるのであれば、その声はもはや障害ではなく、むしろより賢明に、より安全に、そしてより満足度の高い投資を行うための、貴重なアドバイスへと変わるのではないでしょうか。
この記事が、皆さんのREIT(不動産投資信託)という金融商品に対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんお一人おひとりが、ご自身の資産運用について真剣に考え、後悔のない選択をするための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。
皆さんの資産形成が、REITと共に(あるいはREITでなくても!)、より豊かで実りあるものとなることを、心から応援しています!