新しいゲーミングPCを組もうと考えたり、PCのグラフィック性能をアップグレードしたいと思ったりした時、必ず候補に挙がってくるのが「グラフィックボード(グラボ)」ですよね。
そして、その選択肢として常に比較されるのが、NVIDIA社の「GeForce(ジーフォース)」シリーズと、AMD社の「Radeon(ラデオン)」シリーズです。
「GeForce一強」とも言われた時代もありましたが、近年ではRadeonも性能を大きく向上させ、特にコストパフォーマンスの面で注目を集めることが増えてきました。「GeForceは高いから、Radeonの方がお得かも…」「AMDでCPUとグラボを統一したら相性良さそう!」なんて考えている方もいらっしゃるかもしれません。
でも、インターネットで「Radeon」と検索してみると、「Radeon やめとけ」「Radeon 後悔」「Radeon ドライバー 不安定」なんて、ちょっと気になる、いえ、購入を検討している方にとってはかなり心配になるような言葉も一緒に表示されることがあるんです。
「え、そんなにコスパが良いって聞くのに、何か大きな問題があるの…?」と、不安に感じてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。一体どうして、そんな声があがってしまうのでしょう?
この記事では、AMD社のグラフィックボード「Radeon」シリーズについて、なぜ一部で「買うな」「やめとけ」と言われてしまうのか、どんな点に注意しないと、せっかくのPCパーツ選びで大きな後悔につながってしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして皆さんに分かりやすくご説明していきたいと思います。
もちろん、Radeonには素晴らしい魅力と、特定の用途においてはGeForceを凌駕するほどの性能を持つ製品もたくさんあります。でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんが大切なグラフィックボード選びで失敗しないためのお手伝いができれば嬉しいです。
PCの快適さを大きく左右するパーツだからこそ、じっくりと考えていきましょうね。
この記事でお伝えしたいこと
- AMD Radeonグラフィックボードの基本的な特徴と、GeForceとの一般的な比較
- なぜRadeonが「買うな」「やめとけ」と言われることがあるのか、その具体的な6つの理由と背景にある技術的な課題や評判
- Radeonを購入して後悔しやすいケースや、知っておくべき潜在的なリスク
- それでもRadeonを選びたいと考えた場合に、失敗を避け、賢明な判断をするための重要な注意点と選び方のコツ
- ご自身のPCの利用目的や価値観、そして予算に、Radeonという選択が本当に合っているのかを見極めるためのヒント
- Radeonとは?その概要とGeForceとの比較
- Radeonは買うなと言われる6つの深刻な理由と失敗談
- それでもRadeonを選ぶなら?後悔しないための賢い選択と注意点
- 【ポイント①】自分の主な利用目的(ゲーム、クリエイティブ、普段使いなど)と予算を明確にし、それに最適なモデルを徹底比較する
- 【ポイント②】信頼できるレビューサイトやユーザーの口コミを複数確認し、ドライバの安定性や相性問題に関する最新情報を集める
- 【ポイント③】購入するならできるだけ新しい世代の製品を選び、中古品や極端な安価品には手を出さない勇気も持つ
- 【ポイント④】PC全体のバランス(CPU、電源、ケースの冷却性など)を考慮し、ボトルネックを避ける
- 【ポイント⑤】ドライバのクリーンインストールや、トラブル時の基本的な対処法を学んでおく覚悟も
- 【ポイント⑥】「コストパフォーマンス」という言葉の裏にあるかもしれない「何か」を常に意識する
- Radeon購入で後悔しないための「買うな」理由総括
Radeonとは?その概要とGeForceとの比較
まずはじめに、「Radeonって、そもそもどんなグラフィックボードなの?」「NVIDIAのGeForceとはどう違うの?」という方のために、Radeonの基本的なところからご説明しますね。
その特徴や市場での立ち位置を知ることは、今回のテーマを深く理解する上でとても大切なんです。
AMD Radeonグラフィックボードの基本的な紹介
Radeon(ラデオン)は、アメリカの半導体メーカーであるAMD(Advanced Micro Devices)社が開発・販売しているグラフィックプロセッシングユニット(GPU)および、そのGPUを搭載したグラフィックボードのブランド名です。
GPUは、PCの画面表示や、特に3Dグラフィックスの描画処理、動画のエンコード・デコードといった、高度な画像処理を専門に行う半導体チップのことですね。グラフィックボードは、このGPUと、専用のビデオメモリ(VRAM)、そして冷却ファンなどを一つの基板上に搭載した拡張カードで、PCの性能、特にゲーミング性能やクリエイティブ性能を大きく左右する重要なパーツです。
AMDは、CPU市場においてIntelの強力なライバルとして知られていますが、GPU市場においても、NVIDIA社のGeForceシリーズと長年にわたり激しい競争を繰り広げてきました。
Radeonブランドは、元々はATI Technologies社(カナダの企業)が展開していましたが、2006年にAMDがATIを買収したことにより、AMDのGPUブランドとして現在に至っています。
RadeonのGPUには、その性能やターゲットユーザーに応じて、いくつかのシリーズやモデルが存在します。例えば、
- Radeon RX 7000シリーズ(例:RX 7900 XTX, RX 7800 XT, RX 7600など):最新世代の高性能GPUで、最新のゲームを高画質・高フレームレートで楽しみたいハイエンドユーザーや、4K解像度でのゲーミングを求めるユーザー向け。
- Radeon RX 6000シリーズ(例:RX 6950 XT, RX 6700 XT, RX 6600など):前世代の高性能GPUで、依然として高いゲーミング性能を持ち、コストパフォーマンスに優れたモデルも多いです。
- Radeon Proシリーズ:プロフェッショナル向けのワークステーション用GPUで、CAD、CG制作、映像編集といった専門的なクリエイティブ作業に特化しています。
などがあります。これらのGPUを搭載したグラフィックボードは、ASUS、MSI、GIGABYTE、Sapphire、PowerColorといった、様々なサードパーティメーカー(AIB:Add-in-Boardパートナーとも呼ばれます)から、独自の冷却機構やデザインが施されて販売されています。
NVIDIA GeForceとの一般的な比較とRadeonの強み
GPU市場は、長らくNVIDIAのGeForceシリーズとAMDのRadeonシリーズという二大勢力によって形成されており、両者は常に技術開発と性能競争を繰り広げてきました。
一般的に、両者を比較する際には、以下のような点がよく言及されます(ただし、これはあくまで大まかな傾向であり、具体的なモデルや時期、そして評価する視点によって大きく異なります)。
項目 | AMD Radeon | NVIDIA GeForce |
---|---|---|
純粋なラスタライズ性能(従来のゲーム描画性能) | 近年、特にミドルレンジ~ハイエンドにおいて、GeForceに匹敵、あるいは同価格帯では上回るコストパフォーマンスを発揮するモデルも多い。 | 長らく市場をリードしており、特にハイエンド帯では依然として高い性能を誇る。 |
レイトレーシング性能 | 対応はしているが、同世代・同クラスのGeForceと比較すると、やや性能が劣る傾向があると言われることが多い。 | 「RTX」シリーズとして、レイトレーシング技術を強力に推進しており、対応ゲームでのパフォーマンスが高い。 |
AI関連技術(アップスケーリングなど) | FSR(FidelityFX Super Resolution)という独自のアップスケーリング技術があり、対応ゲームでフレームレートを向上できる。オープンソースである点も特徴。 | DLSS(Deep Learning Super Sampling)というAIを活用した強力なアップスケーリング技術があり、対応ゲームでの画質とパフォーマンスの両立に優れる。 |
クリエイティブ用途(動画編集、3D制作など) | 一部のソフトウェアでは最適化が進んでいるが、全体的にはGeForce(特にCUDAコアを活用する場面)に比べて、対応状況や性能で見劣りするケースがあると言われる。 | 多くのクリエイティブ系ソフトウェアがCUDA(NVIDIA独自の並列コンピューティングプラットフォーム)に最適化されており、安定した性能を発揮しやすい。 |
ドライバソフトウェアの安定性・機能性 | 過去には不安定さが指摘されることもあったが、近年は大幅に改善。多機能な「Adrenalin Edition」ソフトウェアを提供。 | 比較的安定していると評価されることが多い。「GeForce Experience」という便利なソフトウェアを提供。 |
価格(コストパフォーマンス) | 同程度の性能であれば、GeForceよりも安価な価格設定になっているモデルが多く、コストパフォーマンスに優れると言われることが多い。これがRadeon最大の強みの一つ。 | 比較的高価なモデルが多いが、その分、ブランド力や安定した性能、豊富な機能で支持されている。 |
省電力性・発熱 | モデルや世代によって異なるが、一時期はGeForceに比べて消費電力や発熱が大きいと言われたことも。最新世代では改善傾向。 | ワットパフォーマンス(消費電力あたりの性能)を重視する傾向があり、比較的バランスが良い。 |

このように、Radeonの最大の魅力は、やはり「コストパフォーマンスの高さ」にあると言えるでしょう。「同じくらいのゲーム性能なら、少しでも安く手に入れたい!」と考えるユーザーにとって、Radeonは非常に魅力的な選択肢となります。
また、AMDはCPU(Ryzenシリーズ)も手がけているため、「CPUもグラボもAMDで揃えたい(通称”AMD信者”、”赤ヘル”などと呼ばれることも)」という熱心なファンも存在します。そして、オープンソースの取り組み(FSRなど)も、一部のユーザーからは好意的に受け止められています。
しかし、その魅力的なコストパフォーマンスの裏には、いくつかの「罠」や「注意点」、そして長年言われ続けてきた「評判」も潜んでいるのです。
Radeonは買うなと言われる6つの深刻な理由と失敗談
さて、ここからが本題です。Radeonの概要と魅力、そしてGeForceとの大まかな違いをご理解いただいたところで、なぜ一部で「Radeonは買うな」「やめとけ」という、購入をためらわせるような厳しい声があがってしまうのか、その具体的な理由を6つに絞って、詳しくご説明していきたいと思います。
これらの理由を知っておくことは、皆さんがRadeonのグラフィックボードを購入して「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、非常に重要になってくるはずです。
【理由①】ドライバソフトウェアの不安定さや相性問題に長年悩まされてきた過去があるから
Radeon(というか、旧ATI時代から)のグラフィックボードに対して、長年にわたり一部のPCユーザーの間で語り継がれてきたのが、「ドライバソフトウェアの不安定さ」と「特定のゲームやアプリケーション、あるいは他のPCパーツとの相性問題」です。
ドライバソフトウェアとは、OS(Windowsなど)とグラフィックボードを連携させ、GPUの性能を最大限に引き出すための非常に重要なプログラムのことです。
過去には、以下のようなトラブルが比較的よく報告されていました。
- 特定のゲームで画面が真っ暗になる、フリーズする、強制終了する。
- ドライバのアップデート後に、かえって動作が不安定になったり、ブルースクリーン(Windowsの深刻なエラー画面)が発生したりする。
- 特定のモニターとの接続で表示がおかしくなる、あるいは認識しない。
- 動画再生支援機能がうまく働かない、あるいは特定のコーデックで問題が出る。
- デュアルモニター環境で問題が発生しやすい。
- 特定のチップセットのマザーボードとの相性が悪い。
こうした問題は、NVIDIAのGeForceでも全くないわけではありませんが、Radeonの方が「遭遇率が高い」「解決に手間がかかる」というイメージが、長らく一部の自作PCユーザーやゲーマーの間で定着してしまっていたのです。「Radeonは玄人向け」「トラブルシューティングを楽しめる人じゃないと無理」といった揶揄も聞かれたほどです。
もちろん、AMDもこの問題を認識しており、近年ではドライバソフトウェアの品質向上に非常に力を入れています。特に「Adrenalin Edition」と呼ばれる統合ソフトウェアは、多機能で使いやすく、安定性も大幅に改善されたと評価されています。しかし、それでもなお、「過去のトラウマ」から抜け出せないユーザーや、ごく稀にですが、依然として特定の環境で不安定な挙動を示すという報告が、インターネット上のフォーラムやレビューサイトなどで散見されることがあるのです。
「せっかく新しいグラボを買ったのに、お気に入りのゲームがまともに動かない…」「原因不明のフリーズに悩まされて、PCを再起動する日々…」そんなことになったら、どんなにコストパフォーマンスが高くても、ストレスしか残りませんよね。
特に、PCのトラブルシューティングにあまり慣れていない方や、「とにかく安定して、何も気にせずに使いたい」と考える方にとっては、この「ドライバの安定性への一抹の不安」は、Radeonを選ぶ上での大きな懸念材料となる可能性があります。
「昔Radeonでひどい目に遭ってから、もう怖くて買えないんだよね…。確かに最近は良くなったって聞くけど、あの時のブルースクリーンの悪夢が忘れられない。」(ベテラン自作PCユーザーAさんの声)
「新しいRadeonのグラボに変えたら、なぜか特定の動画編集ソフトだけが頻繁に落ちるようになった。ドライバ入れ直したり、設定変えたり色々試したけど、結局解決しなくて、泣く泣くGeForceに戻したよ…。」
この「ドライバ問題の過去」と、それが完全に払拭されたとは言い切れない現状が、「Radeonはやめとけ」と言われる最も根深い理由の一つと言えるでしょう。
【理由②】特定のゲームや最新技術への最適化がGeForceに比べて遅れがちで、性能を発揮しきれないことも
PCゲームの世界では、グラフィックボードの性能を最大限に引き出すために、ゲーム開発会社とGPUメーカーが協力して、ゲームごとにドライバの最適化を行うことが一般的です。
また、レイトレーシングやAIによるアップスケーリングといった最新のグラフィック技術についても、GPUメーカーが主導して開発・普及を進めています。
この点で、市場シェアで長らく優位に立ってきたNVIDIAのGeForceシリーズは、多くのゲーム開発会社との連携が深く、新作ゲームの発売に合わせて最適化されたドライバ(Game Ready Driver)が迅速に提供されたり、DLSSのような独自の先進技術が多くのゲームでサポートされたりするという点で、一日の長があると言われています。
一方で、AMDのRadeonシリーズは、
- 新作ゲームへのドライバ最適化が、GeForceに比べてやや遅れることがある、あるいは最適化の度合いが十分でない場合がある。
- レイトレーシング性能において、同クラスのGeForceと比較して見劣りすることが多い。(レイトレーシングは、光の反射や屈折をリアルに再現する技術で、対応ゲームでは非常に美しい映像表現が可能になりますが、処理負荷も非常に高いです)
- FSR(FidelityFX Super Resolution)という独自のアップスケーリング技術も進化しているが、対応ゲームの数や、画質とパフォーマンスのバランスという点で、NVIDIAのDLSSにまだ及ばないという評価もある。(アップスケーリングは、低い解像度で描画した映像を高解像度に引き伸ばすことで、フレームレートを向上させる技術です)
といった点で、「最新のゲームを最高の環境で楽しみたい!」と考えるハイエンドゲーマーにとっては、少し物足りなさを感じさせる場面があるかもしれません。
「スペック表上の純粋な描画性能(ラスタライズ性能)は高いはずなのに、実際にゲームをプレイしてみると、なぜかGeForceの方がフレームレートが高い、あるいは安定している…」といった現象が、特定のゲームや設定で起こり得るのです。
これは、ゲームがどちらのメーカーのGPUアーキテクチャにより最適化されて開発されたか、という点にも大きく左右されます。NVIDIAが「The Way It’s Meant to Be Played」というスローガンでゲーム開発会社との連携をアピールしてきたように、市場での影響力という点では、まだNVIDIAに分があると言わざるを得ないのかもしれません。
「最新のAAAタイトル、レイトレーシングONでプレイしたくて奮発してRadeonのハイエンド買ったけど、思ったよりフレームレート伸びなくてガッカリ…。友達の同じくらいの値段のGeForceの方がヌルヌル動いてる気がする。やっぱりレイトレはGeForceなのかなあ。」(PCゲーマーBさんの嘆き)
もちろん、全てのゲームでRadeonが不利というわけではありませんし、FSRも対応ゲームが増え、その効果も向上しています。しかし、「最新技術への対応力」や「幅広いゲームでの安定した高性能」という点で、まだGeForceに一歩譲る部分があるかもしれない、という認識は持っておいた方が良いでしょう。
特に、レイトレーシングを重視する方にとっては、慎重な比較検討が必要です。
【理由③】クリエイティブ用途(動画編集・3D制作など)でのソフトウェア対応や安定性がGeForceに劣る場合があるから
グラフィックボードは、ゲームだけでなく、動画編集、3D CG制作、CAD、AI開発といった、プロフェッショナルなクリエイティブ作業においても非常に重要な役割を果たします。
そして、こうしたクリエイティブ系のソフトウェアの多くは、長年にわたりNVIDIAのGPU、特にその並列コンピューティングプラットフォームである「CUDA(クーダ)」に最適化されてきたという経緯があります。
そのため、AMDのRadeonシリーズは、これらのクリエイティブ用途において、以下のような点でGeForceに比べて不利になる、あるいは期待した性能を発揮できないケースがあると言われています。
- ソフトウェアの対応状況:Adobe Premiere ProやAfter Effects、DaVinci Resolveといった主要な動画編集ソフトや、Blender、Maya、3ds Maxといった3D制作ソフトの中には、NVIDIAのCUDAコアをフルに活用することで処理を高速化する機能(ハードウェアエンコード、AIによるエフェクト処理、レンダリング支援など)が搭載されているものが多いです。RadeonもOpenCLというオープンな並列コンピューティング規格に対応しており、これらのソフトで全く使えないわけではありませんが、CUDAに比べて最適化の度合いが低かったり、対応している機能が限られていたり、あるいは動作が不安定だったりすることがあります。
- レンダリング速度やエンコード速度:特にCUDAに最適化された処理においては、同クラスのRadeonよりもGeForceの方が、レンダリングや動画エンコードといった時間のかかる作業を、より短時間で完了できる傾向にあります。これは、プロのクリエイターにとっては、作業効率に直結する大きな問題です。
- AI・機械学習分野でのエコシステム:AI開発、特にディープラーニングの分野では、NVIDIAのGPUとCUDA、そしてcuDNNといったライブラリ群が、研究開発から実用化まで、圧倒的なシェアとエコシステムを築いています。RadeonもROCm(Radeon Open Compute platform)という対抗プラットフォームを提供していますが、対応するフレームワークやツールの数、そしてコミュニティの規模という点では、まだNVIDIAに大きく水をあけられているのが現状です。
- ドライバの安定性(クリエイティブ用途特有の問題):ゲーム用途とはまた異なる、クリエイティブ系ソフトウェア特有のドライバの相性問題や、安定性の問題が、Radeonで発生しやすいという声も聞かれます。

もし、あなたがPCを主にゲームではなく、動画編集や3Dモデリング、AI開発といったクリエイティブな作業、あるいは専門的な計算処理のために使うことを考えているのであれば、Radeonを選ぶ際には、ご自身が使いたいソフトウェアがRadeonに十分最適化されているか、そして期待する性能が得られるのかを、事前に徹底的にリサーチする必要があります。
「スペック表上の性能は高いはずなのに、実際の作業では全然パフォーマンスが出ない…」というのでは、仕事になりませんからね。多くのプロフェッショナルがGeForceを選ぶのには、やはりそれなりの理由があるのです。
【理由④】消費電力や発熱が同程度の性能のGeForceより大きい傾向が過去にあったことへの懸念
グラフィックボードを選ぶ上で、性能だけでなく、消費電力やそれに伴う発熱も重要な考慮事項です。消費電力が大きければ、それだけ電気代もかさみますし、PCケース内の温度も上昇しやすくなります。
発熱が大きければ、それを冷却するために高性能な冷却ファンが必要になり、結果としてPC全体の騒音が大きくなる可能性もあります。また、電源ユニット(PSU)も、グラフィックボードの消費電力に見合った、十分な容量のものを選ぶ必要があります。
この点で、AMDのRadeonシリーズは、過去の一時期、同程度のゲーミング性能を持つNVIDIAのGeForceシリーズと比較して、消費電力や発熱が大きい傾向があると指摘されていました。
「ワットパフォーマンス(消費電力あたりの性能)が悪い」「爆熱グラボ」といった、あまり有り難くない評価をされていた時期もあったのです。
もちろん、これは全てのRadeonモデルに当てはまるわけではありませんし、AMDも世代を重ねるごとにアーキテクチャの改良を進め、電力効率の改善に努めています。
最新のRDNAアーキテクチャを採用したRadeon RX 7000シリーズなどでは、ワットパフォーマンスも大幅に向上し、GeForceと遜色ないレベルになってきているモデルも多いです。
しかし、中古のRadeon(例えば、RX 5000シリーズ以前のGCNアーキテクチャのモデルなど)を購入する場合や、あるいは一部のハイエンドモデルにおいては、依然として消費電力や発熱が比較的大きい可能性があることは、頭に入れておく必要があるでしょう。
特に、
- コンパクトなPCケース(Mini-ITXなど)で自作PCを組みたいと考えている方。
- PCの静音性を非常に重視する方。
- 現在使用している電源ユニットの容量にあまり余裕がない方。
- 電気代を少しでも抑えたいと考えている方。
といった場合には、Radeonの消費電力と発熱は、無視できない検討事項となります。購入前に、検討しているモデルのTBP(Total Board Power:ボード全体の消費電力)や、推奨される電源ユニットの容量、そして各種レビューサイトでの実際の消費電力や温度の測定結果などを、しっかりと確認することをお勧めします。
「安かったから買ったけど、電気代がすごいことになった…」「ファンがうるさくてゲームに集中できない…」なんてことになったら、後悔先に立たずです。
【理由⑤】中古市場でのリセールバリューがGeForceに比べて低い傾向があること
グラフィックボードは、PCパーツの中でも比較的高価な部類に入り、また技術の進歩も速いため、数年ごとに新しいモデルに買い替える、という人も少なくありません。
そうした際に気になるのが、現在使っているグラフィックボードが、中古市場でどのくらいの価格で売れるのか、つまり「リセールバリュー(再販価値)」です。リセールバリューが高ければ、新しいグラボへの買い替え資金の足しにできますし、結果的にトータルのコストを抑えることにも繋がります。
この点で、一般的に、AMDのRadeonシリーズは、同程度の性能や購入価格帯のNVIDIAのGeForceシリーズと比較して、中古市場でのリセールバリューがやや低い傾向があると言われています。つまり、売却時の価格が、GeForceよりも安くなってしまう可能性が高いのです。
その理由としては、以下のような点が考えられます。
- 市場でのブランドイメージと人気:やはり、長年にわたり市場をリードしてきたNVIDIAのGeForceブランドの方が、一般ユーザーからの知名度や信頼性が高く、中古市場でも需要が安定している傾向があります。
- ドライバの安定性への懸念(過去のイメージ含む):理由①で述べたような、ドライバの不安定さに対する過去からのイメージが、中古Radeonの敬遠に繋がっている可能性があります。
- マイニング需要の終焉による影響:一時期、暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)用途で、Radeonのグラフィックボード(特に特定のモデル)が高い演算性能を発揮することから、品薄状態となり中古価格も高騰した時期がありました。しかし、マイニングブームが下火になった現在では、そうした特殊な需要はなくなり、むしろマイニングで酷使された可能性のある中古Radeonが出回っていることへの警戒感から、相場が下落している面もあるかもしれません。
- 最新技術への対応の差:レイトレーシングやDLSSといった、GeForceが得意とする最新技術への対応という点で、Radeonが見劣りすると感じられる場合、それが中古価格にも影響する可能性があります。
もちろん、これはあくまで一般的な傾向であり、特定の人気モデルや、品薄状態のモデルであれば、Radeonでも比較的高値で取引されることもあります。
しかし、「数年後に売る時のことも考えて、少しでも高く売りたい」と考えるのであれば、GeForceを選んだ方が、結果的に有利になる可能性が高いかもしれません。「買う時は安かったけど、売る時もすごく安かった…」となると、トータルでのコストパフォーマンスは、必ずしもRadeonが優れているとは言えなくなってしまいますよね。
この「リセールバリューの差」も、長期的な視点でPCパーツ選びをする際には、頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。
【理由⑥】「安物買いの銭失い」になるリスクを常に意識しなければならないこと
ここまでRadeonの様々な懸念点について述べてきましたが、それらを総じて言えるのは、Radeonのグラフィックボードを選ぶ際には、常に「本当にこの価格で大丈夫なのか?」「何か裏があるのではないか?」「安さの代わりに、何かを犠牲にしていないか?」といった、ある種の警戒心と、そして「安物買いの銭失い」になってしまうのではないかというリスクを、常に意識し続けなければならない、ということです。
もちろん、Radeonの全ての製品がそうだというわけではありません。コストパフォーマンスに優れた素晴らしい製品もたくさんあります。しかし、
- ドライバの安定性で、もしかしたら苦労するかもしれない…。
- 特定のゲームやソフトで、期待した性能が出ないかもしれない…。
- クリエイティブ用途では、GeForceの方が良かったかもしれない…。
- 消費電力や発熱が、思ったより大きいかもしれない…。
- 数年後に売る時、あまり値段がつかないかもしれない…。
といった、様々な「かもしれない」という不安要素が、GeForceを選ぶ場合に比べて、どうしても付きまとってくる傾向があるのは否めません。そして、もしこれらの「かもしれない」が現実のものとなり、購入後にトラブルに見舞われたり、期待外れの性能にがっかりしたり、あるいはすぐに新しいグラボに買い替える羽目になったりすれば、それはまさに「安物買いの銭失い」です。
最初に数千円~数万円安く買えたとしても、その後の手間やストレス、追加費用などを考えれば、結果的に高くついてしまうことだってあり得るのです。

「とにかく価格が一番大事!」という方であれば、Radeonは魅力的な選択肢でしょう。
しかし、「価格も大事だけど、それ以上に安定性や信頼性、そして手間のかからなさを重視したい」と考えるのであれば、多少価格が高くても、より実績があり、情報も豊富で、トラブルの報告も比較的少ないGeForceを選んだ方が、結果的に満足度の高い買い物になる可能性があります。
この「常にリスクを意識しなければならない」という精神的な負担もまた、「Radeonはやめとけ」と言われる背景にあるのかもしれませんね。
以上が、「Radeonは買うな」と言われることがある主な6つの理由です。どれも、Radeonというグラフィックボードが持つ特性や、市場での評判、そして実際に使ってみたユーザーが感じやすい課題を映し出しており、購入前に知っておくべき重要なポイントばかりですね。
それでもRadeonを選ぶなら?後悔しないための賢い選択と注意点
ここまでRadeonの注意点やデメリットについて詳しくお話ししてきましたが、「うーん、やっぱりRadeonは、色々と心配なことが多いから、やめておこうかな…」と、購入をためらってしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、お待ちください! Radeonが全ての人にとってダメな選択肢というわけでは決してありません。その魅力的なコストパフォーマンスや、特定のゲームにおける高い描画性能、そしてAMDプラットフォームとの親和性など、依然として多くのユーザーにとって、非常に価値のある選択肢となり得るのです。
大切なのは、Radeonの「強み」と「弱み」、そして「潜在的なリスク」を正しく理解し、ご自身のPCの利用目的や予算、そしてPCスキルと照らし合わせて、本当に自分に合っているのかを冷静に見極めることです。
そして、もしRadeonを選ぶのであれば、後悔しないために、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、それでもRadeonを選びたい!という皆さんのために、賢い選択をするための注意点をいくつかご紹介しますね。
【ポイント①】自分の主な利用目的(ゲーム、クリエイティブ、普段使いなど)と予算を明確にし、それに最適なモデルを徹底比較する
まず何よりも大切なのは、「自分は何のためにグラフィックボードを必要としているのか?」「どんなゲームを、どの程度の画質やフレームレートでプレイしたいのか?」「どんなクリエイティブ作業を、どのくらいの頻度で行うのか?」そして「グラフィックボードにかけられる予算は最大いくらなのか?」といった、ご自身の利用目的と予算を、できる限り具体的に明確にすることです。
これが曖昧なままでは、どのRadeonモデルが自分に合っているのか、あるいは本当にRadeonで良いのか、という判断ができません。
- 主にプレイするゲームのジャンルと要求スペック:
比較的軽いeスポーツ系のゲーム(VALORANT, Apex Legends, League of Legendsなど)を高リフレッシュレートモニターでプレイしたいのか。
最新のAAAタイトル(サイバーパンク2077, Starfieldなど)を、できるだけ高画質(フルHD~WQHD程度)で快適に楽しみたいのか。
4K解像度でのゲーミングや、レイトレーシングを積極的に活用したいのか(この場合は、Radeonの最上位モデルか、あるいはGeForceのRTXシリーズが現実的な選択肢になります)。プレイしたいゲームの推奨スペックを調べ、それに見合う、あるいは少し余裕のある性能のRadeonモデルを選びましょう。
- クリエイティブ作業の内容と使用ソフト:
- 写真編集や簡単な2Dイラスト作成が中心であれば、それほど高性能なグラボは必要ないかもしれません。
- 動画編集(特に4K編集やエフェクト多用)、3Dモデリング、CADといった負荷の高い作業を行うのであれば、ある程度高性能なRadeon(あるいは、ソフトウェアの対応状況によってはGeForceの方が適している場合も)と、十分なVRAM容量(最低でも8GB以上、できれば12GB以上)を持つモデルが必要になります。
- 使用するソフトウェアが、RadeonのGPUアクセラレーションにどの程度対応しているか、あるいはCUDAが必須ではないか、などを事前に確認することも重要です。
- 予算の上限設定:グラフィックボードは非常に価格帯の広いパーツです。数万円のエントリーモデルから、十数万円、時には二十万円を超えるハイエンドモデルまであります。ご自身の予算の上限を明確に決め、その範囲内で最もコストパフォーマンスの高い、そして目的に合ったRadeonモデルを探すようにしましょう。
- GeForceとの徹底比較:同じくらいの予算であれば、どのRadeonモデルとどのGeForceモデルが競合するのか、そしてそれぞれの純粋なゲーミング性能(ラスタライズ)、レイトレーシング性能、FSR/DLSSの対応状況、消費電力、そして各種レビューサイトでの評価などを、徹底的に比較検討しましょう。YouTubeなどで、具体的なゲームタイトルでのフレームレート比較動画なども非常に参考になります。
「とにかく一番安いRadeonでいいや」とか、「どうせなら一番高いRadeonを買っておけば間違いないだろう」といった安易な選び方ではなく、自分のニーズと予算、そして市場に出回っている製品の性能と価格を、冷静に、そして客観的に比較検討することが、後悔しないための最も重要な第一歩です。
【ポイント②】信頼できるレビューサイトやユーザーの口コミを複数確認し、ドライバの安定性や相性問題に関する最新情報を集める
Radeonを選ぶ上で、どうしても気になるのが「ドライバの安定性」や「相性問題」ですよね。これについては、過去のイメージに引きずられすぎることなく、できるだけ最新の情報を、複数の信頼できるソースから集めることが大切です。
PCパーツの専門レビューサイトや、実際にRadeonを使用しているユーザーのブログ、SNSの口コミ、価格.comのような比較サイトのレビュー、そしてYouTubeのレビュー動画など、様々な情報源を活用しましょう。
情報を集める際には、以下の点に注目すると良いでしょう。
- 特定のゲームやアプリケーションでの動作報告:自分がよく使うゲームやソフトで、Radeonの特定のモデルが安定して動作しているか、何か問題は報告されていないか。
- ドライバのバージョンごとの評価:最新のドライバで問題が改善されたという報告もあれば、逆に特定のバージョンで不具合が出たという報告もあります。最新のドライバが必ずしも最良とは限りません。
- 組み合わせる他のPCパーツとの相性情報:特定のCPUやマザーボード、メモリとの組み合わせで問題が発生しやすい、といった情報がないか。
- トラブル発生時の対処法に関する情報:もし問題が発生した場合に、どのような対処法が有効だったのか、といった情報も参考になります。
- 肯定的な意見と否定的な意見の両方に目を通す:良い点ばかりを強調するレビューや、逆に不満ばかりを述べるレビューだけでなく、両方の意見をバランス良く見て、総合的に判断することが大切です。

ただし、インターネット上の情報は玉石混交であり、中には誤った情報や、個人的な偏見に基づいた意見も含まれている可能性があります。
一つの情報を鵜呑みにせず、複数の情報源を照らし合わせ、できるだけ客観的な事実と、個人の感想とを区別して捉えるように心がけましょう。そして、もし可能であれば、実際にRadeonを使っている友人に話を聞いてみるのも良いかもしれませんね。「情報弱者」にならないための努力が、Radeon選びでは特に重要です。
【ポイント③】購入するならできるだけ新しい世代の製品を選び、中古品や極端な安価品には手を出さない勇気も持つ
もしRadeonのグラフィックボードを購入するのであれば、予算が許す限り、できるだけ新しい世代の製品(例えば、現行であればRX 7000シリーズなど)を選ぶことをお勧めします。新しい世代の製品は、一般的に、
- 性能が向上している(前世代の同クラス品と比較して)。
- 電力効率が改善されている(ワットパフォーマンスが良い)。
- 新しい機能や技術に対応している(例えば、より進んだFSRのバージョンや、新しいビデオエンコーダーなど)。
- ドライバの最適化が進んでいる(あるいは、今後も継続的なサポートが期待できる)。
といったメリットがあります。特に、過去に指摘されていたドライバの不安定さなども、新しい世代になるほど改善されている傾向にあります。
一方で、中古のRadeonや、市場価格よりも極端に安価で販売されている新品(あるいは新古品)には、注意が必要です。確かに価格は魅力的かもしれませんが、以下のようなリスクが伴います。
- 中古品の場合:
- 前のオーナーがどのような使い方(例えば、マイニングで酷使していた、オーバークロックしていたなど)をしていたか不明で、寿命が短くなっている可能性がある。
- 保証期間が切れていたり、残っていても短かったりする。
- 隠れた不具合や故障のリスクがある。
- ドライバのサポートが終了している古い世代の製品である可能性も。
- 極端な安価品の場合:
- 並行輸入品で、国内での正規保証が受けられない可能性がある。
- いわゆる「バルク品」で、製品箱や付属品がなかったり、品質管理が不十分だったりする可能性がある。
- 盗品や偽物のリスクも、ゼロとは言い切れません。
「少しでも安く済ませたい」という気持ちは分かりますが、グラフィックボードはPCの中でも高価で、かつデリケートなパーツです。安物買いをして、すぐに壊れてしまったり、トラブル続きでまともに使えなかったりしては、結局高くついてしまいます。信頼できる販売店から、正規の保証が付いた新品を購入するのが、最も安心できる選択と言えるでしょう。そして、もし予算的に厳しいのであれば、無理にハイエンドモデルを狙うのではなく、一つ下のクラスの最新世代モデルを選ぶ、といった賢明な判断も必要です。
【ポイント④】PC全体のバランス(CPU、電源、ケースの冷却性など)を考慮し、ボトルネックを避ける
高性能なRadeonのグラフィックボードを購入しても、PCの他のパーツとのバランスが悪ければ、その性能を十分に引き出すことができず、宝の持ち腐れになってしまう可能性があります。特に、以下の点には注意が必要です。
- CPUの性能(ボトルネック):グラフィックボードがいくら高性能でも、CPUの処理能力が低いと、CPUがグラフィックボードに十分なデータを供給できず、結果としてグラフィックボードの性能が頭打ちになってしまいます(これを「CPUボトルネック」と言います)。特に、ハイエンドなRadeon(RX 7800 XT以上など)を選ぶ場合は、それに見合うだけの性能を持つCPU(例えば、AMD Ryzen 5/7/9の比較的新しい世代や、Intel Core i5/i7/i9の比較的新しい世代など)と組み合わせることが重要です。
- 電源ユニット(PSU)の容量と品質:Radeonのグラフィックボード、特に高性能なモデルは、多くの電力を消費します。PC全体の消費電力(CPU、マザーボード、メモリ、ストレージなども含む)を考慮し、グラフィックボードのメーカーが推奨する容量以上の、そして品質の高い電源ユニットを選びましょう。容量不足や品質の低い電源は、PC全体の不安定動作や、最悪の場合、パーツの故障の原因にもなりかねません。80PLUS認証(Bronze以上、できればGold以上)を受けた、信頼できるメーカーの製品を選ぶのがお勧めです。
- PCケースのエアフロー(冷却性能):高性能なグラフィックボードは多くの熱を発します。PCケース内の空気の流れ(エアフロー)が悪く、熱がこもってしまうと、グラフィックボードの温度が上昇し、サーマルスロットリングによる性能低下や、ファンの騒音増加、そして長期的にはパーツの寿命を縮める原因になります。十分な吸気ファンと排気ファンを備え、ケース内にスムーズな空気の流れを作れる、冷却性能の高いPCケースを選ぶことが大切です。特に、コンパクトなケースに高性能グラボを搭載する場合は、エアフローの確保に細心の注意が必要です。
- マザーボードのPCI Expressスロットの規格:最新のRadeonはPCI Express 4.0や5.0といった高速なインターフェースに対応していますが、マザーボード側もそれに対応している必要があります(下位互換性はあるので動作はしますが、性能を最大限に引き出せない可能性があります)。
- メモリ容量と速度:ゲーミングPCであれば、最低でも16GBのメモリは搭載したいところです。メモリの速度も、CPUの性能を引き出す上で影響があります。
これらのパーツのバランスが取れていないと、せっかく高性能なRadeonを選んでも、「思ったより性能が出ない…」「なんだかPCが不安定だな…」といった不満を感じることになりかねません。グラフィックボード単体の性能だけでなく、PC全体の構成を総合的に考えて、ボトルネックが生じないようにパーツを選ぶことが、快適なPC環境を構築するための鍵となります。
【ポイント⑤】ドライバのクリーンインストールや、トラブル時の基本的な対処法を学んでおく覚悟も
「理由①」でも触れましたが、Radeonのグラフィックボードは、ドライバ関連のトラブルが、GeForceと比較してやや発生しやすいというイメージが、残念ながらまだ一部には残っています。そのため、もしRadeonを選ぶのであれば、万が一ドライバ関連のトラブルに遭遇した際に、ある程度自分で対処できるだけの基本的な知識と、それを実行する覚悟を持っておくことが、精神的な安心感に繋がるかもしれません。
例えば、以下のような対処法は、覚えておくと役立つことがあります。
- グラフィックドライバのクリーンインストール:新しいドライバをインストールする際に、古いドライバの残骸が原因で問題が発生することがあります。DDU(Display Driver Uninstaller)のような専用ツールを使って、古いドライバを完全に削除してから、新しいドライバをインストールする(クリーンインストール)ことで、問題が解決することがあります。
- ドライバのバージョンダウン(ロールバック):最新のドライバをインストールした後に問題が発生した場合、一つ前の安定していたバージョンのドライバに戻すことで、問題が解消されることがあります。
- Windows Updateとの関連確認:Windowsの大型アップデート後に、グラフィックドライバとの互換性の問題が発生することがあります。その場合は、最新のグラフィックドライバを再インストールしたり、あるいはWindows Updateの更新プログラムを一時的にアンインストールしたりすることで改善する可能性も。
- BIOSやチップセットドライバの更新:マザーボードのBIOSやチップセットドライバが古いと、グラフィックボードとの相性問題を引き起こすことがあります。これらを最新の状態に更新することで、問題が解決する場合も。
- イベントビューアや信頼性モニターの確認:Windowsのイベントビューアや信頼性モニターを確認することで、エラーの原因特定の手がかりが見つかることがあります。
- 海外のフォーラム(Redditのr/Amdなど)やコミュニティでの情報収集:同様のトラブルに遭遇している人がいないか、有効な解決策が議論されていないか、英語の情報を探してみるのも有効です。
もちろん、これらの対処法は、ある程度のPCスキルと自己責任が伴います。もし自信がない場合は、無理せずに詳しい友人に相談したり、PCショップのサポートを利用したりすることも検討しましょう。しかし、「何かあったら、まずは自分で調べてみよう、試してみよう」という主体的な姿勢が、Radeonと上手く付き合っていくためには、時には必要になるかもしれない、ということは心に留めておいても良いかもしれません。「人任せ」では、解決が遅れることもありますからね。
【ポイント⑥】「コストパフォーマンス」という言葉の裏にあるかもしれない「何か」を常に意識する
そして最後に、これがRadeon選びにおける最も本質的な心構えかもしれません。Radeonの最大の魅力は「コストパフォーマンスの高さ」であると述べましたが、その「安さ」には、必ず何らかの「理由」があるのかもしれない、ということを常に意識しておくことが大切です。それは、必ずしも「品質が悪い」ということではなく、例えば、
- NVIDIAに比べて、研究開発費やマーケティング費用を抑えているのかもしれない。
- ドライバ開発やソフトウェア最適化にかけるリソースが、相対的に少ないのかもしれない。
- 市場シェアでNVIDIAに後れを取っているため、価格で勝負せざるを得ないのかもしれない。
といった、様々な要因が考えられます。そして、それが結果として、理由①~⑤で述べてきたような、様々な「懸念点」や「リスク」に繋がっている可能性も否定できません。
「同じくらいの性能なら、安い方が絶対にお得だ!」と短絡的に考えるのではなく、「なぜRadeonはGeForceよりも安いのだろうか?」「その安さの代わりに、何か見えないコストやリスクを自分が負担することになるのではないか?」といった、一歩踏み込んだ視点を持つことが、賢い消費者としての態度と言えるでしょう。
もちろん、価格差ほどの性能差やリスク差がない、本当に「お買い得」なRadeon製品もたくさんあります。しかし、そのためには、徹底的な情報収集と、製品ごとの特性を見極める目、そして万が一のトラブルにも対処できるだけの知識と覚悟が必要になるのです。「安物買いの銭失い」という言葉を、常に心に留めておきましょう。
これらのポイントを押さえて、ご自身の利用目的、予算、そして何よりも「どこまでのリスクなら許容できるか」という点を総合的に判断すれば、Radeonを選んだとしても、きっと後悔することなく、そのコストパフォーマンスの高さを享受し、快適なPCライフを送ることができるはずです。
大切なのは、メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットやリスクもしっかりと理解し、全てを納得した上で決断することなんですね。
Radeon購入で後悔しないための「買うな」理由総括
さて、ここまでAMDのRadeonグラフィックボードについて、「買うな」「やめとけ」と言われてしまう理由や、それでもRadeonという選択肢を検討する場合に後悔しないための賢い選び方と注意点など、詳しくお話ししてきました。
最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがこの高性能ながらも少しクセのあるPCパーツとどう向き合うべきか、その最終的な判断をする上で、本当に心に留めておくべきことは何なのか、おさらいをしておきましょう。
今回の記事でお伝えしてきた、「Radeonは買うな」と一部で言われることがある主な理由は、以下の6点でしたね。
- 理由①:ドライバソフトウェアの不安定さや相性問題に長年悩まされてきた過去がある
近年は改善傾向にあるものの、「Radeonはドライバが…」というネガティブなイメージは依然として残っています。 - 理由②:特定のゲームや最新技術への最適化がGeForceに比べて遅れがちで、性能を発揮しきれないことも
レイトレーシング性能や、新作ゲームへの対応速度で、GeForceに一歩譲る場面が見られます。 - 理由③:クリエイティブ用途(動画編集・3D制作など)でのソフトウェア対応や安定性がGeForceに劣る場合がある
多くのプロユースソフトがNVIDIAのCUDAに最適化されており、Radeonでは不利になることがあります。 - 理由④:消費電力や発熱が同程度の性能のGeForceより大きい傾向が過去にあったことへの懸念
特に中古品や旧世代モデルでは、ワットパフォーマンスや冷却に注意が必要です。 - 理由⑤:中古市場でのリセールバリューがGeForceに比べて低い傾向がある
将来的な買い替えを考えると、GeForceの方が有利になる可能性があります。 - 理由⑥:「安物買いの銭失い」になるリスクを常に意識しなければならない
コストパフォーマンスの裏にあるかもしれない、様々な「かもしれない」リスクへの覚悟が必要です。
これらの理由だけを改めて見ると、「やっぱりRadeonは、GeForceに比べて色々と心配事が多いのかな…」「素直にGeForceを選んでおいた方が無難なのかもしれない…」と、Radeonへの購入意欲が少し薄れてしまったかもしれません。でも、どうか忘れないでください。
これらの懸念点は、Radeonが持つ、同価格帯のGeForceを凌駕することもある純粋な描画性能や、魅力的なコストパフォーマンス、そしてAMDプラットフォームとの親和性といった、大きな魅力の裏にある、注意すべき現実であるということを。
どんなPCパーツにも、必ず長所と短所、そして得意なことと不得意なことがあります。Radeonの場合、「限られた予算の中で、できるだけ高いゲーミング性能を手に入れたい」という明確なニーズを持ち、かつ、ある程度のPC知識とトラブルシューティング能力、そして情報収集能力を持つユーザーにとっては、依然として非常に強力で魅力的な選択肢となり得るのです。
Radeonのグラフィックボードを購入して後悔しないために最も重要なのは、インターネット上の「Radeon最高!」という熱狂的な声や、あるいは「Radeonは地雷だ!」という極端な批判にただ流されるのではなく、
- まず、ご自身が「なぜグラフィックボードを必要としているのか」「どんなゲームや作業を、どの程度のレベルで快適に行いたいのか」という、具体的な「利用目的」と「求める性能レベル」、そして「絶対に譲れないポイント(価格、安定性、特定の機能など)」を明確にすること。
- 次に、Radeonというブランドの特性、歴史、最新の技術動向、そしてメリットとデメリット(特にドライバの安定性、ソフトウェアの最適化状況、消費電力など)の両面を、信頼できる多様な情報源(専門レビューサイト、ユーザーコミュニティ、比較記事、公式情報など)から、時間をかけて真摯に、そして多角的に学ぼうと努めること。
- そして、そこで得た知識と、ご自身のPCスキルレベル、予算、そして何よりも「どこまでのリスクなら許容できるか」という現実的な状況を冷静に照らし合わせ、本当にRadeonが自分にとって最適な選択なのか、GeForceと比較してどちらにメリットがあるのかを、客観的かつ徹底的に比較検討すること。
- 最後に、もしRadeonを選ぶと決めたならば、その製品のレビューや評判を細部まで確認し、信頼できる販売店から、適切な保証が付いたものを購入し、ドライバのインストールや設定、そして万が一のトラブルにも、ある程度自分で対処できるだけの心構えと準備を持って、賢明な選択をすること。
これらのステップを一つひとつ丁寧に、そして誠実に行うことが、後で「こんなはずじゃなかった…」と後悔することを避け、ご自身にとって本当に満足のいく、そして快適なPC環境を実現するための、何よりの道しるべになるのだと、私は思います。
Radeonは、適切な知識と慎重な選び方、そして時には少しの「愛」と「寛容さ」を持って付き合えば、きっとあなたのPCライフをより豊かで、そしてコストパフォーマンスの高いものにしてくれる、頼もしい相棒となってくれる可能性を秘めています。
「買うな」「やめとけ」という言葉は、時に私たちを臆病にさせ、新しい選択肢から遠ざけてしまうことがあります。しかし、その言葉の裏にある「なぜ?」を深く掘り下げ、そのリスクや課題を克服するための具体的な方策を考え、そして「それでも自分にとっては、このRadeonが魅力的だ!」と心から確信できるのであれば、その声はもはや障害ではなく、むしろより賢明に、より安全に、そしてより満足度の高い買い物をするための、貴重なアドバイスへと変わるのではないでしょうか。
この記事が、皆さんのAMD Radeonというグラフィックボードに対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんお一人おひとりが、ご自身のニーズに合った後悔のないPCパーツ選びをするための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。
皆さんのPCライフが、Radeonと共に(あるいはRadeonでなくても!)、より快適でエキサイティングなものとなることを、心から応援しています!