「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?人の身体に触れ、痛みや不調を和らげる、とてもやりがいのあるお仕事だと感じられる方も多いかもしれませんね。実際に、手に職をつけたい、誰かの役に立ちたいという思いから、この道に興味を持たれる方もいらっしゃると思います。
でも、インターネットで検索してみると、「あん摩マッサージ指圧師 やめとけ」とか「大変」といった少し気になる言葉も目にすることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
この記事では、あん摩マッサージ指圧師というお仕事について、その魅力と、もし「やめとけ」と言われるとしたらどんな理由があるのか、そしてもし本気で目指すならどんな点に注意して、どんな覚悟が必要なのかを、心を込めて、そして詳しくご説明していきたいと思います。どうぞ、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
この記事でお伝えしたいこと
- あん摩マッサージ指圧師という国家資格の基本的な内容と、その専門性について
- なぜ「あん摩マッサージ指圧師はやめとけ」と言われることがあるのか、その具体的な6つの理由
- それでもあん摩マッサージ指圧師を目指す場合に、後悔しないために知っておくべき心構えと具体的なステップ
- あん摩マッサージ指圧師として活動していく上での課題と、将来に向けてどのように向き合っていくべきか
あん摩マッサージ指圧師とは?その専門性と魅力、そして誤解
まずはじめに、「あん摩マッサージ指圧師」がどのようなお仕事なのか、基本的なところからご説明させていただきますね。そして、多くの方が魅力を感じる点と、そこにはどんな誤解が潜んでいるのかを見ていきましょう。
あん摩マッサージ指圧師の仕事内容の基本
あん摩マッサージ指圧師とは、「あん摩」「マッサージ」「指圧」という3つの手技を用いて、お客様の身体の不調を和らげたり、健康の維持・増進をサポートしたりする専門職です。これは、国が認めた医療系の国家資格なんですよ。
具体的には、肩こりや腰痛、筋肉の疲れ、血行不良、自律神経の乱れなど、さまざまな身体の悩みに対応します。道具を使わずに、主に手や指を使って身体に適切な刺激を与え、自然治癒力を高めるお手伝いをするのが役割です。
病院などの医療機関や治療院、介護施設、スポーツトレーナーの現場など、活躍の場は多岐にわたります。
あん摩マッサージ指圧師が行う主な手技には、以下のような特徴があります。
- あん摩:中国から伝わった伝統的な手技で、揉む、押す、撫でる、叩くなどの手技で、主に衣服の上から気血の流れを整え、筋肉の緊張を和らげます。
- マッサージ:ヨーロッパで発展した手技で、オイルやパウダーを使い、主に皮膚に直接触れて求心性(末梢から心臓に向かう方向)に施術し、血液やリンパの流れを促進します。
- 指圧:日本独自の療法で、手指や手のひらで身体の特定のポイント(ツボなど)に圧を加え、生体反応を促し、不調を改善したり、健康を増進させたりします。
これらの手技を、お客様の状態や目的に合わせて使い分ける、まさに職人技と言えるお仕事なんです。
法律(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律、通称「あはき法」)によって、これらの業務を独占的に行うことが認められています。つまり、あん摩、マッサージ、指圧を「業として」行うことができるのは、医師とあん摩マッサージ指圧師の資格を持つ人のみと定められているんですね。これはとても重要なポイントです。
あん摩マッサージ指圧師の魅力とは?
あん摩マッサージ指圧師というお仕事には、多くの人を惹きつける魅力があります。
- 人の役に立てる実感:施術後にお客様から「楽になったよ」「ありがとう」という言葉を直接いただけるのは、何よりのやりがいですよね。痛みや不調で悩んでいた方が笑顔になるのを見るのは、本当に嬉しいものです。
- 国家資格という専門性:国が認めた資格であり、専門的な知識と技術を身につけている証となります。これは、お客様からの信頼にもつながりますし、自分自身の自信にもなります。
- 独立開業の道も:経験とスキルを積めば、自分の治療院を開業するという夢も持てます。自分の理想とする施術を提供できるのは、大きな魅力ではないでしょうか。
- 年齢を重ねても続けやすい:体力はもちろん必要ですが、経験と技術が重視されるため、年齢を重ねても活躍できる可能性があります。生涯現役を目指せるお仕事の一つとも言えるかもしれません。
- 幅広い活躍の場:治療院だけでなく、病院のリハビリテーション科、介護老人保健施設、スポーツ選手のトレーナー、企業の福利厚生としてのヘルスキーパーなど、さまざまな場所でその専門性が求められています。
こうした点から、あん摩マッサージ指圧師を目指す方がいらっしゃるのは、とてもよく分かります。人の役に立ち、専門性を活かせる素晴らしいお仕事ですよね。
しかし現実は甘くない?あん摩マッサージ指圧師を取り巻く誤解
ただ、こうした魅力的な側面の裏には、知っておかなければならない現実も存在します。「国家資格だから安泰」「すぐに独立して高収入」というのは、残念ながら少し誤解が含まれているかもしれないのです。
例えば、国家資格を取得するためには、専門の養成学校で3年以上学び、高額な学費も必要になります。そして、資格を取得したからといって、すぐに高い収入が得られるわけではありません。
また、街には「マッサージ」と名のつくリラクゼーションサロンなども多くありますが、これらはあん摩マッサージ指圧師の資格を持たない人が施術している場合がほとんどで、その違いが一般の方には分かりにくいという問題もあります。
「人の役に立てる仕事は魅力的だけど、資格を取るのも大変そうだし、本当に食べていけるのかな?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。この後、もう少し詳しく「やめとけ」と言われる理由について、一緒に見ていきましょう。
あん摩マッサージ指圧師はやめとけ!お勧めできない6つの理由
さて、ここからは本題である「あん摩マッサージ指圧師はやめとけ」と言われることがある具体的な理由について、一つひとつ掘り下げてご説明していきたいと思います。もちろん、これは全ての人に当てはまるわけではありませんし、あん摩マッサージ指圧師というお仕事を否定するものでもありません。ただ、憧れだけでこの道に進むと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまう可能性もある、ということを知っていただきたいのです。
【理由1】想像以上に過酷!肉体的負担の大きさと職業病のリスク
あん摩マッサージ指圧師のお仕事は、お客様の身体を良くする一方で、自分自身の身体には大きな負担がかかるという現実があります。これは、この仕事を目指す上で最も覚悟しておかなければならない点の一つかもしれません。
施術は、基本的に手指や腕の力を使って行います。特に指圧では、持続的に圧を加えたり、体重を乗せて深く刺激を入れたりすることもあります。一人のお客様に1時間近く施術することも珍しくなく、それを1日に何人も繰り返すわけですから、身体への負荷は相当なものです。
その結果、多くのあん摩マッサージ指圧師が、以下のような職業病に悩まされる可能性があります。
- 腰痛:長時間の立ち仕事や中腰での施術姿勢が原因で、慢性的な腰痛に悩む方は非常に多いです。
- 肩こり・首の痛み:前かがみの姿勢や、腕を酷使することから、肩や首にも大きな負担がかかります。
- 腱鞘炎・ばね指:手指を酷使するため、手首や指の腱鞘炎、指がスムーズに動かなくなる「ばね指」を発症することも少なくありません。ひどくなると、日常生活にも支障をきたすことがあります。
- 指の変形:長年指に力を入れ続けることで、指の関節が太くなったり、変形したりすることもあります。
あるベテランのあん摩マッサージ指圧師さんは、こうおっしゃっていました。
「若い頃は体力に自信があったけど、40代を過ぎたあたりから、朝起きると指がこわばっている日が増えました。お客様の身体を楽にする仕事なのに、自分の身体が悲鳴を上げているのは辛いですね。日々のセルフケアは欠かせません。」
もちろん、正しい身体の使い方を身につけたり、日頃からストレッチやトレーニングをしたりすることで、ある程度のリスクは軽減できるかもしれません。しかし、それでも完全に負担をなくすことは難しく、長くこの仕事を続けていくためには、自分の身体と真剣に向き合い、ケアし続ける覚悟が必要になります。
体力に自信がない方や、元々腰痛持ちの方などは、特に慎重に考える必要があるでしょう。お客様を癒すはずの自分が、逆に身体を壊してしまっては元も子もありませんからね。
施術技術だけでなく、自分の身体を守るための知識や技術(正しい姿勢、効率的な力の使い方、セルフケア方法など)も、養成学校時代からしっかりと学んでおくことが非常に重要です。それでも、身体への負担が大きい仕事であることは覚悟しておきましょう。

【理由2】国家資格取得への険しい道のり!高額な学費と3年間の努力
あん摩マッサージ指圧師になるためには、国家試験に合格する必要があります。そして、その国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣または厚生労働大臣が認定した養成施設(専門学校や大学など)で3年以上学ぶことが法律で定められています。
この「3年間」という期間と、そこにかかる「高額な学費」が、多くの方にとって最初の大きなハードルとなるかもしれません。養成学校の学費は、学校によって多少の違いはありますが、一般的に3年間で総額400万円から500万円程度かかることが多いようです。これには、入学金、授業料、実習費などが含まれます。教科書代や白衣代なども別途必要になるでしょう。
この金額は、決して簡単に用意できるものではありませんよね。奨学金制度を利用する方もいらっしゃいますが、卒業後に返済の負担がのしかかってくることになります。
社会人になってからこの道を目指す方にとっては、働きながら学費を捻出し、さらに3年間勉強に集中するというのは、相当な覚悟と努力が必要です。
そして、養成学校での勉強も決して楽ではありません。解剖学、生理学、病理学、東洋医学概論、関係法規といった専門知識を座学で学ぶだけでなく、あん摩、マッサージ、指圧それぞれの実技の習得にも多くの時間を費やします。定期的な試験や実技テストもあり、国家試験に向けて日々努力を重ねなければなりません。
厚生労働省の発表によると、例えば令和5年(第31回)のあん摩マッサージ指圧師国家試験の合格率は88.6%でした(厚生労働省 第31回あん摩マッサージ指圧師国家試験の合格発表について)。
この数字だけ見ると高く感じるかもしれませんが、これは3年間しっかりと勉強し、卒業試験などをクリアして受験資格を得た人たちの中での合格率です。つまり、誰でも簡単に取れる資格ではないということを理解しておく必要があります。
高額な学費と3年という時間を投資して、ようやくスタートラインに立てる。その上で、その投資に見合うだけの収入ややりがいを得られるのかどうか、冷静に考える必要があるでしょう。
特に、軽い気持ちで「手に職をつけたい」と考えているだけだと、この厳しい道のりの途中で挫折してしまうかもしれません。
養成学校を選ぶ際には、学費だけでなく、国家試験の合格率、カリキュラムの内容、実習先の環境、卒業生の進路などもよく調べて、自分に合った学校を選ぶことが大切です。オープンキャンパスに参加して、実際に先生や在校生の話を聞いてみるのも良い方法ですよ。
【理由3】独立開業の夢と現実!厳しい集客と激化する競争環境
あん摩マッサージ指圧師の資格を取得した後、多くの人が夢見るのが「独立開業」ではないでしょうか。自分の治療院を持ち、自分の思い描く理想の施術を提供する…。とても魅力的ですよね。
しかし、実際に独立開業して成功を収めるのは、簡単なことではありません。まず、開業するためにはまとまった資金が必要です。物件の取得費(または賃料や保証金)、内装費、施術ベッドやタオルなどの備品代、広告宣伝費など、安くても数百万円、場合によっては1000万円以上かかることもあります。
これを自己資金だけで賄うのは大変ですし、融資を受けるにしても事業計画などをしっかり立てる必要があります。
そして、無事に開業できたとしても、次なる大きな壁は「集客」です。どんなに素晴らしい技術を持っていても、お客様に来てもらえなければ経営は成り立ちません。しかし、あん摩マッサージ指圧師の広告は、「あはき法」によって厳しく規制されています。具体的には、施術者の氏名、名称、電話番号、施術所の名称、所在地、施術日、施術時間など、法律で定められた事項以外は広告できないことになっているんです。つまり、「〇〇が治る!」「効果抜群!」といったような、効果効能をうたうような広告は原則としてできません。
この広告規制がある中で、どのようにして自分の治療院を知ってもらい、お客様に来てもらうのか。ホームページやSNSを工夫したり、地域のイベントに参加したり、口コミを広げてもらったりと、地道な努力が求められます。
さらに、近年は競争環境も非常に厳しくなっています。街中には、あん摩マッサージ指圧師の治療院だけでなく、整体院、カイロプラクティック、足つぼ、アロママッサージ、もみほぐし専門店など、さまざまな形態のリラクゼーションを目的とした無資格のサービスを提供するお店が数多く存在します。
これらの無資格のサービスは、比較的安価な料金で提供されていることも多く、一般の消費者にとっては、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師の施術との違いが分かりにくいのが現状です。そのため、価格競争に巻き込まれてしまう可能性も否定できません。
ある開業したばかりのあん摩マッサージ指圧師の方は、こんな風に悩みを語っていました。
「技術には自信があったのですが、いざ開業してみると、思った以上にお客様が来なくて…。近くには安いもみほぐし屋さんがいくつもあって、どうやって差別化したらいいのか毎日頭を悩ませています。国家資格を持っていることの価値を、もっと知ってもらいたいんですけどね。」
独立開業は確かに夢がありますが、そのためには施術技術だけでなく、経営に関する知識や集客スキル、そして厳しい競争に打ち勝つための戦略が不可欠なのです。

【理由4】収入はどのくらい?不安定さとキャリアパスの限定性
あん摩マッサージ指圧師として働く上で、やはり気になるのは「収入」ですよね。国家資格ではありますが、その収入の実態はどうなのでしょうか。
まず、治療院などに勤務する場合の給与ですが、他の医療系国家資格(例えば看護師や理学療法士など)と比較すると、必ずしも高い水準とは言えないのが現実のようです。初任給は月収20万円前後からスタートすることが多く、経験やスキル、勤務先の規模や地域によって差はありますが、大幅な昇給が期待しにくいケースも見られます。
求人情報サイト「求人ボックス 給料ナビ」によると、あん摩マッサージ指圧師の平均年収は約391万円(2024年5月時点)というデータもありますが、これはあくまで一つの目安であり、実際にはもっと低い場合も高い場合もあると考えられます。
歩合制を採用している治療院も多く、その場合は自分の施術数や指名数によって収入が大きく変動します。つまり、人気が出てたくさんのお客様を担当できれば収入は増えますが、逆にお客様がつかなければ収入は安定しません。これは、常に成果を出し続けなければならないプレッシャーにもつながります。
独立開業した場合は、成功すれば勤務するよりも高い収入を得られる可能性がありますが、先ほどお話ししたように集客や経営の難しさがあり、必ずしも高収入が保証されるわけではありません。むしろ、経費などを差し引くと、勤務時代よりも収入が減ってしまうというケースも残念ながらあり得ます。
また、キャリアパスの選択肢が比較的限られているという点も、人によってはデメリットと感じるかもしれません。勤務する場合、経験を積んで院長などの管理職を目指す道や、後進の指導に当たる道などがありますが、それ以外のキャリア展開は多くないのが現状です。独立開業も一つの大きな目標ですが、誰もが経営者に向いているわけではありませんよね。
もちろん、特定の分野を極めて専門性を高めたり(例えばスポーツマッサージの専門家や、美容に特化した施術家など)、他の資格(例えば鍼灸師や柔道整復師)を取得してダブルライセンスで活躍の場を広げたりすることで、収入アップやキャリアの多様化を図ることは可能です。しかし、そのためにはさらなる努力と時間、そして費用が必要になります。
「国家資格だから安定していて高収入」というイメージだけでこの道を選ぶと、現実とのギャップに苦しむことになるかもしれません。収入面や将来のキャリアプランについて、事前にしっかりと情報収集し、現実的な見通しを持っておくことが大切です。
収入アップを目指すためには、技術力向上はもちろんのこと、お客様とのコミュニケーション能力を高めてリピーターを増やすことや、新しい技術や知識を積極的に学ぶ姿勢が重要になります。また、独立を考えるなら、経営の勉強も欠かせませんね。
【理由5】「マッサージ」の氾濫と無資格者問題!専門性が伝わりにくい現実
あん摩マッサージ指圧師が直面する大きな課題の一つに、無資格者によるマッサージ類似行為との混同があります。街を歩けば、「激安マッサージ」「もみほぐし」「リフレクソロジー」「整体」など、さまざまな看板を目にしますよね。これらのサービスの多くは、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持たない人が行っている、いわゆるリラクゼーションを目的としたものです。
法律上、「あん摩・マッサージ・指圧」を治療目的で「業として」行えるのは、医師とあん摩マッサージ指圧師の資格を持つ人だけです。
しかし、現実には「マッサージ」という言葉が非常に広義で使われており、一般の消費者にとっては、国家資格を持つ専門家による施術と、無資格者によるリラクゼーションサービスとの違いが非常に分かりにくい状況にあります。
これにより、あん摩マッサージ指圧師が持つ専門的な知識や技術、そして国家資格の価値が正しく評価されにくく、価格競争に巻き込まれやすいという問題が生じています。お客様の中には、「どこで受けても同じマッサージでしょ?」と思われている方も少なくないかもしれません。
さらに深刻なのは、一部の無資格者による施術で健康被害が発生するケースも報告されていることです。こうしたニュースは、たとえそれが無資格者の行為であっても、「マッサージ」という言葉が使われることで、業界全体のイメージダウンにつながりかねません。
あん摩マッサージ指圧師は、身体の構造や機能、病気に関する専門知識を深く学び、安全かつ効果的な施術を行うための訓練を受けています。しかし、広告規制によってその専門性や治療効果を具体的にうたうことが難しいため、無資格サービスとの差別化をアピールしにくいというジレンマも抱えています。
あん摩マッサージ指圧師の施術は、単なるリラクゼーションとは異なり、医学的な知識に基づいた治療行為としての側面を持っています。例えば、医師の同意書があれば、一部の症状に対して医療保険が適用される場合もあるんですよ。この点は、無資格のサービスとの大きな違いの一つです。
この「無資格者問題」は、あん摩マッサージ指圧師の業界が長年抱えている根深い課題であり、個人の努力だけではなかなか解決が難しい側面もあります。これからこの道を目指す方は、こうした業界全体の構造的な問題についても理解しておく必要があるでしょう。
自分の専門性をどう伝え、お客様に選んでもらうか。これは、あん摩マッサージ指圧師として活動していく上で、常に考えていかなければならないテーマなのかもしれませんね。
【理由6】AIには奪われない?将来性への期待と変化への対応
近年、AI(人工知能)の技術が目覚ましい進歩を遂げ、さまざまな仕事がAIに代替されるのではないかと言われていますよね。では、あん摩マッサージ指圧師のお仕事はどうなのでしょうか?
結論から申し上げますと、あん摩マッサージ指圧師の中核業務である「手技による施術」そのものが、すぐにAIやロボットに完全に取って代わられる可能性は低いと考えられています。
なぜなら、このお仕事には、お客様一人ひとりの身体の状態や心の状態を繊細に感じ取り、その日の体調や気分に合わせて力加減や手技を微調整する、といった人間ならではの高度な感覚と判断力、そして温かいコミュニケーションが不可欠だからです。
機械がマッサージを行うとしても、人の手による温もりや、微妙なニュアンスを汲み取った施術、そして何よりも施術者との信頼関係から生まれる安心感は、なかなか再現できるものではありません。そういった意味では、AI時代においても「人の手による癒し」の価値は残り続けると言えるでしょう。
しかし、だからといって将来安泰と楽観視できるわけではありません。例えば、予約管理やカルテ作成、経営分析といった事務的な作業は、今後AIやITシステムによって効率化されていく可能性があります。
また、お客様自身がAIを活用して健康情報を得たり、セルフケアの方法を学んだりすることも増えてくるかもしれません。
そうなると、あん摩マッサージ指圧師には、これまで以上に高い専門性と、人間ならではの付加価値を提供することが求められるようになるでしょう。
- より深い知識と高度な技術の追求
- お客様の心に寄り添うカウンセリング能力やコミュニケーション能力
- 他の医療専門職や介護職との連携スキル
- 新しい健康情報や技術に対する学習意欲
AIやテクノロジーの進化を脅威と捉えるのではなく、むしろそれらを上手に活用し、自身のサービス向上につなげていくような柔軟な姿勢も大切になってくるかもしれませんね。
例えば、AIによるデータ分析を参考に施術プランを考えたり、オンラインでのカウンセリングを取り入れたりすることも考えられます。
高齢化が進む現代社会において、健康寿命の延伸やQOL(生活の質)の向上に対するニーズはますます高まっています。あん摩マッサージ指圧師は、こうした社会の要請に応えられる可能性を秘めたお仕事です。変化を恐れず、常に学び続ける姿勢があれば、将来性も決して暗くはないと私は思います。
ただし、「資格さえ取れば大丈夫」という時代ではないこと、そして常に自己研鑽が求められることは、心に留めておく必要があるでしょう。
それでもあん摩マッサージ指圧師を始めたいあなたへ贈る言葉
ここまで、あん摩マッサージ指圧師というお仕事の厳しい側面や、「やめとけ」と言われる理由について詳しくお話ししてきました。もしかしたら、「やっぱり自分には無理かもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、もしあなたがこれらの現実を理解した上で、それでも「あん摩マッサージ指圧師として、人の役に立ちたい!」という強い気持ちをお持ちなのであれば、その志は本当に素晴らしいものだと思います。
ここからは、そんなあなたに向けて、後悔しないために知っておいてほしい心構えや、具体的なステップについてお伝えしたいと思います。
覚悟を持って始めるための心構え
まず何よりも大切なのは、「あん摩マッサージ指圧師は、決して楽な仕事ではない」という現実をしっかりと受け止め、それでも挑戦する覚悟を持つことです。
- 肉体的・精神的なタフさを受け入れる:お客様の身体を癒すためには、まず自分自身の心身が健康でなければなりません。日々のセルフケアを怠らず、時には厳しい現実に直面しても、前向きに乗り越えていく精神的な強さが必要です。
- 学び続ける情熱を持ち続ける:国家資格を取得したら終わりではありません。医学や健康に関する知識は日々進歩していますし、お客様のニーズも多様化しています。常に新しいことを学び、技術を磨き続ける探究心と情熱が不可欠です。
- 「ありがとう」の言葉を原動力にする:お客様からの感謝の言葉や笑顔は、この仕事の大きなやりがいです。しかし、そこに至るまでには地道な努力と苦労が伴います。そのやりがいを心の支えに、困難を乗り越えていく覚悟が必要です。
- 高い倫理観と責任感を持つ:人の身体に直接触れる仕事である以上、高い倫理観と責任感が求められます。お客様のプライバシーを守り、常に安全で誠実な施術を心がける姿勢が大切です。
「誰でも簡単にできる」「すぐに儲かる」といった甘い考えは捨て、この仕事の厳しさと素晴らしさの両面を理解した上で、それでも挑戦したいという強い意志を持つことが、何よりも重要なスタートラインになるでしょう。
失敗しないための具体的なステップ
覚悟が決まったら、次は具体的な行動に移していきましょう。闇雲に始めるのではなく、計画的にステップを踏んでいくことが、失敗を避けるための鍵となります。
- まずは情報収集と自己分析を徹底的に:
- 養成学校選びは慎重に:学費、カリキュラム、国家試験合格率、就職実績、学校の雰囲気などを複数の学校で比較検討しましょう。オープンキャンパスに積極的に参加し、現役の先生や学生の話を聞くのがおすすめです。
- 現役のあん摩マッサージ指圧師に話を聞く:可能であれば、実際に働いている方にお話を聞く機会を作りましょう。仕事のやりがいだけでなく、大変なことや苦労なども率直に聞いてみることで、より現実的なイメージを持つことができます。
- 自分の適性を考える:体力面、コミュニケーション能力、探究心、ストレス耐性など、この仕事に必要な適性が自分にあるか、冷静に自己分析してみましょう。
- 養成学校での学びを最大限に活かす:
- 基礎知識と技術を徹底的に習得する:解剖学や生理学といった基礎医学の知識は、安全で効果的な施術を行うための土台です。実技練習も、一つひとつの手技の意味を理解しながら、真剣に取り組みましょう。
- 積極的に質問し、学ぶ姿勢を持つ:分からないことはそのままにせず、先生や先輩に積極的に質問しましょう。クラスメイトと切磋琢磨しながら学ぶことも大切です。
- 臨床実習を大切にする:実際の患者さんやお客様に触れる臨床実習は、教科書だけでは学べない貴重な経験の場です。コミュニケーションの取り方や、臨機応変な対応力を養いましょう。
- 資格取得後のキャリアプランを考える:卒業後、どこでどのように働きたいのか、早い段階から考えておくことが大切です。
- 勤務先を選ぶ際のポイント:給与や待遇だけでなく、研修制度が充実しているか、自分の目指す施術スタイルと合っているか、職場の雰囲気はどうかなども考慮しましょう。
- 独立開業を目指すなら:在学中から経営に関する知識を学んだり、開業資金の準備を始めたりすることも考えておくと良いでしょう。成功している治療院を見学させてもらうのも勉強になります。
- 特定の分野を深める:スポーツ分野、高齢者ケア、美容関連など、自分の興味や強みを活かせる専門分野を見つけ、その知識や技術を深めていくことも、将来のキャリアにつながります。
- コミュニケーション能力を磨く:あん摩マッサージ指圧師にとって、技術と同じくらい大切なのがコミュニケーション能力です。お客様の悩みや要望を正確に聞き出す傾聴力、分かりやすく説明する力、安心感を与える言葉遣いや態度などを意識して磨きましょう。
焦らず、一歩一歩着実に進むことが大切です。特に養成学校での3年間は、将来の土台を作るための非常に重要な期間。目標を見失わず、日々の学びを大切にしてくださいね。

あん摩マッサージ指圧師として生き残るための秘訣
あん摩マッサージ指圧師として長く活躍し続け、お客様からも信頼される存在になるためには、いくつかの秘訣があります。
- 常に技術と知識をアップデートし続ける:医療や健康に関する情報は日進月歩です。セミナーや勉強会に積極的に参加したり、専門書を読んだりして、常に新しい知識や技術を学び続ける姿勢が不可欠です。現状に満足せず、向上心を持ち続けましょう。
- お客様一人ひとりと真摯に向き合う:マニュアル通りの施術ではなく、お客様それぞれの身体の状態や心の声に耳を傾け、その人に合ったオーダーメイドの施術を心がけることが大切です。誠実な対応が信頼関係を築き、リピーターにつながります。
- 自分の「強み」や「専門性」を磨く:他の施術者との差別化を図るために、何か一つでも「これなら誰にも負けない」という強みや専門性を持つことが重要です。例えば、特定の症状に特化した施術、特定の年齢層に強い、あるいはスポーツや美容など、自分の得意分野を深掘りしましょう。
- 同業者や他職種とのネットワークを大切にする:同じあん摩マッサージ指圧師の仲間や、医師、理学療法士、看護師、介護士といった他の専門職の方々とのつながりは、情報交換や連携、時には仕事の紹介にもつながる貴重な財産です。積極的に交流し、視野を広げましょう。
- 何よりも自分自身の健康管理を徹底する:お客様の健康をサポートするためには、まず自分自身が心身ともに健康でなければなりません。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、そしてストレスを溜め込まないためのリフレッシュ方法を見つけることが、長くこの仕事を続けるための秘訣です。
これらのことを意識しながら、日々お客様と向き合い、自分自身を磨き続ける努力をしていけば、きっと多くの方から必要とされる、やりがいのあるあん摩マッサージ指圧師になれるはずです。
あん摩マッサージ指圧師はやめとけと言われる理由の総括と未来への提言
今回は、「あん摩マッサージ指圧師はやめとけ」と言われることがある背景や、その具体的な理由、そしてもしこの道を目指すならば知っておくべき覚悟やステップについて、詳しくお話しさせていただきました。
最後に、この記事のポイントを改めてまとめさせていただきますね。
- あん摩マッサージ指圧師は国家資格であり、専門的な手技で人の役に立てる魅力的な仕事ですが、肉体的負担が大きく、職業病のリスクも伴います。
- 資格取得には3年以上の専門教育と高額な学費が必要であり、簡単な道のりではありません。
- 独立開業には資金や集客の壁があり、無資格のリラクゼーションサービスとの競争も激しいのが現状です。
- 収入は必ずしも高いとは言えず不安定な面もあり、キャリアパスの選択肢も限られていると感じるかもしれません。
- 「マッサージ」という言葉が氾濫し、国家資格の専門性が一般消費者に伝わりにくく、無資格者との混同という業界全体の課題があります。
- AIに仕事が奪われる可能性は低いものの、変化に対応し、人間ならではの付加価値を提供し続ける努力が求められます。
- もしあん摩マッサージ指圧師を目指すなら、厳しい現実を理解した上で、強い覚悟と長期的な視点を持ち、情報収集と自己分析を徹底することが大切です。
- 常に学び続け、技術とコミュニケーション能力を磨き、自分自身の健康管理を怠らないことが、長く活躍するための秘訣です。
あん摩マッサージ指圧師というお仕事は、決して華やかで楽な道ばかりではありません。しかし、困難を乗り越え、真摯にお客様と向き合い、専門性を磨き続ければ、多くの人の健康を支え、深い感謝と信頼を得られる、かけがえのない仕事であることもまた事実です。
もしあなたが、この記事を読んでなお、「それでも私はあん摩マッサージ指圧師になりたい」という熱い思いを抱き続けているのであれば、その志は本当に尊いものだと思います。その情熱を胸に、今日お話しした厳しい現実もしっかりと心に刻み、夢に向かって一歩を踏み出してみてください。
あなたの未来が、明るく輝かしいものになることを心から応援しています。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。