最近、スマートフォンのカメラもすごく進化していて、誰でも簡単にキレイな写真が撮れるようになりましたよね。でもその一方で、「フィルムカメラ」の持つ独特の温かみや、ちょっと懐かしい雰囲気に惹かれる方が増えているみたいなんです。
「エモい写真が撮りたい!」「カシャッていうシャッター音や、フィルムを巻き上げる感触がたまらない!」そんな風に、フィルムカメラに憧れを抱いている学生さんや社会人の方も多いのではないでしょうか。雑貨屋さんやインターネットでも、おしゃれなフィルムカメラを見かける機会が増えましたしね。
でも、ちょっと待ってください。「レトロで可愛いから」とか「手軽に味のある写真が撮れそう」というイメージだけで飛びついてしまうと、後で「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまうかもしれません。実は、フィルムカメラには、今の時代だからこその難しさや、知っておかないと大変なことがたくさんあるんです。「フィルムカメラ やめとけ」「お金がかかるだけ」なんて声も、ちらほら聞こえてきたり…。
そこで今回は、フィルムカメラの魅力の裏に潜むデメリットや、始める前にぜひ知っておいていただきたい現実について、詳しく、そして分かりやすく解説していきたいと思います。この記事を読めば、憧れだけで突っ走る前に、一度立ち止まって冷静に考えるきっかけになるはずですよ。
この記事でお伝えしたいこと
- フィルムカメラの基本的な仕組みと、なぜ今人気なのか
- フィルムカメラを「やめとけ」と言われる7つの具体的な理由
- 想像以上にかかる!フィルム代、現像代などのコストの実態
- 古い機械だからこその故障リスクと、メンテナンスの難しさ
- デジタルカメラとの違い、そしてフィルムならではの魅力と限界
- それでもフィルムカメラに挑戦したい場合の心構えと、賢い始め方
フィルムカメラってどんなもの?基本と人気の秘密
まずは、フィルムカメラがどういうものなのか、基本的なところからおさらいしましょう。そして、なぜ今の時代に、あえてこの手間のかかるカメラが人気を集めているのか、その秘密にも迫ってみたいと思います。
フィルムカメラの仕組みを簡単におさらい
フィルムカメラは、レンズを通ってきた光を、カメラの中に入れた「フィルム」に焼き付けて画像を記録する、とってもアナログな仕組みのカメラです。スマートフォンやデジタルカメラが、光を電気信号に変えてデジタルデータとして記録するのとは、根本的に違うんですね。
フィルムには、光に反応する特別な薬品が塗られていて、シャッターを切った瞬間に光が当たると、その部分が化学変化を起こします。この化学変化した部分を、さらに専門の薬品(現像液など)で処理することで、私たちが目に見える「写真」の元になる「ネガフィルム」や「ポジフィルム」ができあがるんです。
なんだか、理科の実験みたいでワクワクしますよね。このアナログなプロセスこそが、フィルム写真の独特な味わいを生み出す源になっているんですよ。
なぜ今、フィルムカメラが人気なの?
デジタルカメラが全盛のこの時代に、なぜわざわざフィルムカメラを選ぶ人が増えているのでしょうか。その理由はいろいろ考えられますが、主なものをいくつか挙げてみますね。
- デジタルにはない独特の風合い:フィルムの種類や現像の方法によって変わる、ザラッとした粒子感や、深みのある色合い、柔らかな階調。こういった「味」のある写りが、「エモい」と表現されて人気です。
- 一枚一枚を大切に撮る体験:フィルムは枚数に限りがある(だいたい1本24枚か36枚撮り)ので、シャッターを押すのにも慎重になります。その分、一枚一枚に思いを込めて撮影する、という行為そのものが魅力的に感じられるようです。
- レトロで可愛いカメラデザイン:昔ながらの金属ボディのカメラや、カラフルでポップなコンパクトカメラなど、持っているだけで気分が上がるような、おしゃれなデザインのものがたくさんあります。ファッションアイテムとして楽しむ人もいますね。
- 現像するまでのワクワク感:撮った写真をすぐに見られない分、現像に出して仕上がりを待つ間のドキドキ感や、出来上がった写真を見た時の感動は、フィルムカメラならではの楽しみです。
- SNSでのブーム:インスタグラムなどのSNSで、「#フィルム写真」「#filmphotography」といったハッシュタグをつけて投稿される、雰囲気のある写真を見て、「自分も撮ってみたい!」と思う方も多いようです。

このように、フィルムカメラにはデジタルカメラとは違った魅力がたくさん詰まっているんです。でも、その魅力的な側面の裏には、現代だからこその厳しい現実も隠れていることを、これからお話ししていきたいと思います。
フィルムカメラはやめた方がいい!後悔する7つの現実
ここからは、フィルムカメラの購入や使用を慎重に考えた方が良い理由、つまり「やめとけ」と言われる具体的なポイントを7つに絞って解説していきます。キラキラしたイメージだけで飛びつくと、きっと「こんなはずじゃなかった…」と肩を落とすことになってしまいますから、しっかり現実を見ていきましょう。
【理由1】想像を絶するランニングコスト!フィルム・現像代の沼
フィルムカメラを楽しむ上で、まず直面するのが衝撃的なランニングコストの高さです。気軽にパシャパシャ撮れるデジタルカメラの感覚でいると、あっという間にお財布が軽くなってしまいますよ。
主なコストは以下の通りです。
- フィルム代:これが本当に高くなりました。数年前と比べると、人気のカラーネガフィルムなどは2倍、3倍の値段になっていることも珍しくありません。例えば、定番の「Kodak Gold 200」や「Fujifilm SUPERIA PREMIUM 400」といったフィルムも、以前は1本数百円で買えたものが、今では1本1,500円~2,500円くらいすることも。しかも、品薄で手に入りにくい状況が続いています。種類もどんどん減っています。
- 現像代:撮影したフィルムは、専門のお店で現像してもらう必要があります。この現像代も、お店や地域によって差がありますが、カラーネガフィルム1本あたり800円~1,500円程度かかるのが一般的です。
- プリント代またはデータ化代:現像したネガフィルムから写真にプリントしたり、スマートフォンやパソコンで見られるようにデータ化したりするのにも、もちろん費用がかかります。L判1枚あたり数十円のプリント代や、フィルム1本あたり数百円~千数百円のデータ化料金が別途必要です。
つまり、フィルム1本(36枚撮り)を撮影して、現像して、データ化してもらうと、安く見積もっても3,000円~5,000円程度はかかってしまう計算になります。仮に月に2本フィルムを使ったら、それだけで6,000円~10,000円です。学生さんのお小遣いや、社会人の方のお給料から考えると、これはかなりの負担ですよね。
実際にSNSなどでも、
「フィルムカメラ始めたけど、フィルム代と現像代が高すぎて泣いてる。1枚撮るのに100円以上かかるって、冷静に考えるとヤバい…。」(X(旧Twitter)の投稿より)
といった悲鳴に近い声がたくさん見つかります。気軽にシャッターを押せないストレスを感じてしまうかもしれません。

「エモい写真を撮るためなら、多少の出費は仕方ない」と思っていても、この継続的なコストは想像以上に重くのしかかってくることを覚悟しておかなければなりません。
【理由2】手間と時間がかかりすぎる!すぐに見られない不便さ
デジタルカメラなら、撮ったその場で液晶画面で写真を確認できて、失敗したらすぐに撮り直せますよね。でも、フィルムカメラはそうはいきません。撮影してから写真を見られるようになるまで、かなりの手間と時間がかかるんです。
- 撮影結果がすぐには分からない:シャッターを切っても、どんな風に写っているのかは、現像するまでのお楽しみ(あるいは恐怖…)。ピンボケしていたり、露出がめちゃくちゃだったりしても、現像するまで気づけません。
- 現像に出す手間と時間:撮り終わったフィルムは、カメラ屋さんや現像所(ラボ)に持って行ったり、郵送したりして現像を依頼する必要があります。そして、仕上がりまでには通常、数日から1週間程度、お店によってはそれ以上かかることもあります。
- 失敗写真にもコストがかかる:現像してみたら、半分以上が真っ暗だったり、ブレブレだったり…なんてことも、フィルムカメラではよくある話です。でも、失敗した写真にも、しっかりフィルム代と現像代はかかっているのです。これは精神的にも経済的にも結構なダメージですよね。
「あの感動的な夕焼けを撮ったはずなのに、現像したら露出アンダーで真っ暗だった…」「友達との大切な記念写真、ピントが全然合ってなかった…」なんていう悲劇は、フィルムカメラあるあるなんです。
この「すぐに確認できない」「やり直しがきかない」という不便さは、デジタルに慣れ親しんだ私たちにとっては、想像以上のストレスになる可能性があります。「待つ時間も楽しみのうち」とポジティブに捉えられるうちは良いのですが、大事な場面で失敗が続くと、だんだんフィルムカメラから遠ざかってしまうかもしれません。
【理由3】カメラ本体の入手と状態の見極めが困難!中古市場の罠
「よし、フィルムカメラを始めよう!」と思っても、まず最初のハードルがカメラ本体の入手です。現在、新品で手に入るフィルムカメラは、ごく一部の特殊な機種やトイカメラを除いて、ほとんど生産されていません。
そのため、必然的に中古品を探すことになるのですが、これがまた一筋縄ではいかないんです。
- 中古カメラの状態は千差万別:何十年も前に作られた機械ですから、状態は本当にピンキリです。外観はピカピカでも、内部の機械や電気系統が劣化していたり、レンズにカビやクモリがあったりすることも。
- 専門知識がないと見極めが難しい:シャッターが正常に切れるか、露出計は動いているか、フィルム室の遮光材(モルトプレーン)は劣化していないかなど、チェックすべきポイントがたくさんあります。これらを初心者が一人で見極めるのは至難の業です。
- 信頼できるお店選びが重要:中古カメラ専門店の中には、きちんと整備して保証を付けて販売している良心的なお店もありますが、そうでないお店や、知識の浅い店員さんがいる場合も。
- フリマアプリやオークションは特に注意:個人が出品しているものは、状態の確認が甘かったり、説明と現物が違ったりするリスクが高いです。「現状渡し」「ノークレーム・ノーリターン」といった条件で売られていることも多く、トラブルになっても泣き寝入りになる可能性も。
- 人気機種は価格が高騰:ここ数年のフィルムカメラブームで、一部の人気機種(例えば、Contax T2やOlympus μ[mju:]-IIなど)は、異常なほど価格が高騰しています。数十万円することも珍しくありません。

せっかく憧れのカメラを手に入れたのに、すぐに壊れてしまったり、まともに写らなかったりしたら、本当にがっかりですよね。中古のフィルムカメラを購入する際は、信頼できるお店で、専門知識のある店員さんにしっかりと相談し、可能であれば保証が付いているものを選ぶことが鉄則です。そして、ある程度の「当たり外れ」は覚悟しておく必要があるかもしれません。
【理由4】故障したら修理困難?部品不足と高額な修理費
古い機械であるフィルムカメラは、いつ故障してもおかしくありません。大切に使っていても、経年劣化によるトラブルは避けられないことがあります。そして、一度故障してしまうと、修理するのが非常に難しい場合が多いのです。
- メーカーの修理サポートはほぼ終了:ほとんどのフィルムカメラは、製造メーカーによる修理サポートがとっくの昔に終了しています。
- 修理部品の枯渇:修理に必要な部品がもう製造されておらず、在庫もないため、修理したくてもできない「部品取り待ち」や「修理不能」と判断されるケースが増えています。
- 修理を受け付けてくれる専門業者の減少:フィルムカメラの修理を専門に行う職人さんも高齢化が進み、後継者不足もあって、その数は年々減っています。
- 修理費用が高額になることも:運良く修理可能な場合でも、手間のかかる作業や希少な部品を使うため、修理費用が数万円から、場合によってはカメラ本体の購入価格を上回るほど高額になることもあります。例えば、一眼レフのシャッター幕交換や、電子制御カメラの基板修理などは高額になりがちです。
「やっと手に入れたお気に入りのカメラが壊れてしまったけど、どこに持って行っても『これはもう直せませんね…』と言われてしまった…」なんていう、悲しい話もよく聞きます。
また、定期的なメンテナンス(オーバーホール)も、カメラを長持ちさせるためには重要ですが、これも数万円の費用がかかることが一般的です。購入後の維持・修理費用も、しっかりと予算に入れておく必要がありますね。
デジタルカメラなら、メーカー保証期間内なら無償修理、期間外でも比較的リーズナブルに修理できることが多いですが、フィルムカメラの場合はその感覚が通用しないことを肝に銘じておきましょう。
【理由5】知識と技術が必要!「オートで簡単」とは限らない
スマートフォンのカメラや最近のデジタルカメラは、シャッターボタンを押すだけで、カメラが自動的にピントを合わせてくれて、明るさも調整してくれるので、誰でも簡単に綺麗な写真が撮れますよね。でも、フィルムカメラ、特に古いマニュアル操作の一眼レフカメラなどは、ある程度の写真の知識と操作技術がないと、まともな写真を撮ることすら難しいんです。
最低限、以下のような知識や技術が必要になります。
- 露出の3要素(絞り・シャッタースピード・ISO感度)の理解:写真の明るさを決めるこれらの要素を、撮影状況に合わせて自分で設定する必要があります。これを間違うと、写真が真っ暗になったり、真っ白になったりします。
- ピント合わせ(マニュアルフォーカス):特に一眼レフカメラの場合、ファインダーを覗きながら、レンズのピントリングを回して自分でピントを合わせる必要があります。これが意外と難しく、慣れないうちはピンボケ写真を量産してしまうことも。
- フィルムの装填と巻き上げ:フィルムをカメラに正しくセットし、巻き上げるという一連の作業も、最初は戸惑うかもしれません。失敗すると、フィルムがちゃんと送られずに空シャッターを切っていたり、最悪の場合、フィルムが感光してしまったりすることも。
- フィルム感度の設定:使うフィルムのISO感度に合わせて、カメラ側の設定も変更する必要があります。これを忘れると、適正な明るさで写りません。
もちろん、一部のコンパクトフィルムカメラにはオートフォーカスや自動露出の機能が付いているものもありますが、それでもデジタルカメラほど高性能ではありませんし、電池が切れたら動かない、といった基本的なこともあります。
「フィルムカメラなら、誰でも簡単に雰囲気のある写真が撮れるんでしょ?」という甘い考えで手を出すと、その操作の難しさと失敗の多さに、すぐに心が折れてしまうかもしれません。基本的な写真の知識を学ぶ意欲と、試行錯誤を繰り返す根気が必要になります。
【理由6】フィルムの入手性が悪化の一途!撮りたい時に撮れないかも
理由1でも触れましたが、フィルムそのものの入手性が、年々悪化しているというのも深刻な問題です。特に、気軽に使えるカラーネガフィルムは、世界的な需要の高まりと供給不足から、品薄状態が慢性化しています。
大手カメラ店のオンラインストアを覗いても、人気のフィルムは軒並み「在庫なし」や「入荷未定」となっていることが多いですし、実店舗に行っても、棚がスカスカだったり、一人一本までの購入制限があったりすることも珍しくありません。
富士フイルムやコダックといった大手フィルムメーカーも、採算の合わないフィルムの生産を終了したり、生産量を縮小したりする動きが続いています。例えば、富士フイルムは2023年に写真用カラーネガフィルムの国内販売価格を平均約2割から最大約6割値上げすると発表し、多くのフィルムユーザーに衝撃を与えました。(参考:富士フイルム お知らせ 2023年3月1日)
このような状況なので、
- 「あの旅行で使いたかったお気に入りのフィルムが、どこを探しても見つからない!」
- 「やっと見つけたけど、以前の倍以上の値段になっていて手が出せない…」
- 「いつ入荷するか分からないフィルムを、いつまでも待ち続けるのは辛い…」
といった悩みを抱えるフィルムカメラユーザーが増えています。
海外から個人輸入するという手もありますが、それも手間と時間、そして追加の送料や関税がかかるため、決して手軽な解決策とは言えません。
せっかくカメラを手に入れても、肝心のフィルムが手に入らなければ写真を撮ることはできません。この「撮りたい時に撮れないかもしれない」という不安は、フィルムカメラを続ける上で大きなストレスになり得ます。
【理由7】「エモさ」の追求が自己満足に?デジタルでも表現できる時代
フィルム写真の持つ独特の粒子感や色合い、いわゆる「エモさ」は、確かに魅力的です。でも、その「エモさ」のためだけに、これまで挙げてきたような高いコストや手間、リスクを負う必要があるのでしょうか?
実は、現代のデジタルカメラの性能や、画像編集ソフト・アプリの技術は非常に進化していて、フィルム写真のような風合いをデジタルで再現することも十分に可能なんです。
- デジタルカメラのフィルムシミュレーション機能:特に富士フイルムのXシリーズなどに搭載されているフィルムシミュレーションは、同社が長年培ってきたフィルムの色再現技術を活かしたもので、手軽にフィルム調の美しい写真が撮れると評判です。
- 画像編集ソフトのプリセットやプラグイン:Adobe LightroomやPhotoshopなどのプロも使うソフトでは、様々なフィルムの質感を再現するプリセットやプラグインが数多く販売・配布されています。これらを使えば、デジタルで撮影した写真に、まるでフィルムで撮ったかのような加工を施すことができます。
- スマートフォンのアプリ:VSCO、Huji Cam、NOMO CAMといったスマートフォンアプリを使えば、もっと手軽にフィルム風の写真加工を楽しむことができます。シャッター音や現像プロセスまで再現するユニークなものもあります。

もちろん、本物のフィルムでしか出せない質感や、撮影体験そのものの価値は否定しません。でも、もし「フィルムで撮ったような雰囲気の写真が欲しい」ということが目的なら、必ずしもフィルムカメラにこだわる必要はないのかもしれません。
「フィルムじゃないとダメなんだ!」という思い込みが、かえって自分の表現の幅を狭めてしまったり、流行りに乗っているだけで、本質的な写真の楽しさを見失ってしまったりする可能性も考えてみる必要があるのではないでしょうか。手間やコストをかけた結果が、単なる自己満足で終わってしまっては、少し寂しいですよね。
それでもフィルムカメラを始めたいあなたへ。後悔しないための心構え
ここまで、フィルムカメラの厳しい現実について、かなり詳しくお話ししてきました。「やっぱりフィルムカメラはやめておこうかな…」と思った方もいらっしゃるかもしれません。でも、もしこれらのデメリットを全て理解した上で、「それでも、あの魅力に挑戦してみたい!」という強い気持ちがあるのなら、その情熱はとても素敵だと思います。
後悔する可能性を少しでも減らして、フィルムカメラとの良いお付き合いを始めるために、いくつか心構えと対策をお伝えしますね。
【対策1】まずは情報収集と目的の明確化
いきなりカメラを買いに走る前に、まずはじっくりと情報収集をしましょう。そして、「なぜ自分はフィルムカメラをやりたいのか?」「フィルムカメラでどんな写真を撮りたいのか?」という目的を、自分の中ではっきりさせることが大切です。
- フィルムカメラの種類(コンパクト、一眼レフ、レンジファインダーなど)や特徴を調べる。
- フィルムの種類(カラーネガ、モノクロ、リバーサルなど)や、それぞれの写りの違いを学ぶ。
- 現像やプリントの方法、料金などを詳しく調べておく。
- 自分の撮りたい写真のイメージ(風景、ポートレート、スナップなど)を固める。
- 「ファッションとして持ちたい」「プロセスを楽しみたい」「作品として残したい」など、フィルムカメラに何を求めているのかを明確にする。
目的がはっきりすれば、どんなカメラを選べば良いのか、どれくらいの予算が必要なのか、といったことも見えてきますよ。
【対策2】最初はレンタルや体験ワークショップから
高価な中古カメラをいきなり購入するのは、やはりリスクが大きいです。まずは、カメラのレンタルサービスを利用したり、フィルムカメラの体験ワークショップに参加したりするのがおすすめです。
レンタルなら、比較的少ない費用で実際にフィルムカメラを手に取って撮影を体験できますし、ワークショップなら、専門の講師から基本操作やフィルムの扱い方、現像のプロセスなどを直接教えてもらうことができます。
実際に触れてみて、「自分には合わないかも…」と感じるかもしれませんし、「やっぱり楽しい!」と確信を持てるかもしれません。どちらにしても、購入前に体験しておくことは、後悔を防ぐためにとても有効なステップです。
【対策3】信頼できるお店で相談しながら選ぶ
もしカメラを購入すると決めたなら、必ず信頼できる中古カメラ専門店に足を運び、経験豊富な店員さんに相談しながら選ぶようにしましょう。インターネットのフリマアプリやオークションでの個人取引は、初心者の方には絶対におすすめできません。
お店の方に、
- 予算はどれくらいか
- どんな写真を撮りたいのか
- フィルムカメラは初めてだということ
などを正直に伝えて、アドバイスをもらいましょう。カメラの状態をしっかりチェックしてもらい、使い方やメンテナンス方法なども教えてもらえると安心です。できれば、初期不良に対する保証が付いているお店やカメラを選ぶと、より心強いですね。
【対策4】低コストで始められるカメラとフィルムを選ぶ
最初から高価で高性能なカメラや、希少で高価なフィルムに手を出す必要はありません。まずは、比較的安価で手に入りやすく、操作もシンプルなカメラから始めてみるのが良いでしょう。
例えば、
- 中古のオートフォーカスコンパクトフィルムカメラ:比較的安価で見つかりやすく、操作も簡単なものが多いです。ただし、電子部品が多いので故障リスクも考慮しましょう。
- シンプルな機械式マニュアル一眼レフカメラ:Nikon FMシリーズやPentax SPなど、丈夫で基本的な操作を学べる機種がおすすめです。ただし、状態の良いものは価格が上がっていることも。
- トイカメラ:LOMO LC-AやHOLGAなど、独特の写りが楽しめるトイカメラも、遊び感覚で始めるには面白いかもしれません。
フィルムも、最初は比較的安価で手に入りやすいものを選びましょう。例えば、モノクロフィルムの「Kentmere」や「Fomapan」などは、カラーネガフィルムに比べてまだ価格が安定していて入手しやすい傾向があります。モノクロ自家現像に挑戦してみるのも、コストを抑える一つの手です(ただし、初期投資と手間はかかります)。
【対策5】失敗を恐れず、楽しむことを優先する
フィルムカメラは、デジタルカメラのように簡単に「完璧な写真」が撮れるものではありません。むしろ、失敗の中から何かを発見したり、偶然の写りを楽しんだりするのが、フィルムカメラの醍醐味の一つとも言えます。
ピンボケも、露出オーバーも、光線漏れ(カメラの隙間から光が入ってしまうこと)さえも、時には「味」になるのがフィルムの面白いところ。もちろん、基本的な技術を学ぶことは大切ですが、あまり神経質になりすぎずに、まずはシャッターを切ることを楽しんでみましょう。
そして、現像が上がってくるまでのドキドキ・ワクワク感も、存分に味わってくださいね。その体験こそが、フィルムカメラならではの貴重な時間なのですから。
【対策6】デジタルとの使い分けを考える
全ての写真をフィルムカメラで撮らなければならない、ということはありません。フィルムカメラとデジタルカメラ(スマートフォンも含む)を、それぞれの良さを活かして上手に使い分けるのが、現代的な賢い写真の楽しみ方かもしれません。
- 日常の記録や、失敗したくない大切な場面は、確実性の高いデジタルカメラで。
- 特別な旅行や、じっくりと被写体と向き合いたい時は、フィルムカメラで。
- 「今日はフィルムの気分だな」という日に、お散歩カメラとして持ち出す。
そんな風に、TPOや気分に合わせて使い分けることで、それぞれのカメラの魅力をより深く味わうことができるのではないでしょうか。フィルムは「特別な一枚」を撮るためのもの、と割り切るのも、長く楽しむためのコツかもしれませんね。
フィルムカメラ購入はやめた方がいい理由の総括と、賢い写真の楽しみ方
今回は、フィルムカメラについて、「やめとけ」と言われる理由や、それでも始めたい場合の心構えについて、詳しくお話ししてきました。最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
フィルムカメラ購入検討時の重要ポイント
- 高額なランニングコスト:フィルム代、現像代、プリント・データ化代が継続的にかかり、お財布への負担が大きい。
- 手間と時間:撮影結果がすぐに見られず、現像に時間がかかる。失敗してもコストは発生。
- カメラ本体の入手難と状態リスク:新品はほぼなく中古がメイン。状態の見極めが難しく、故障リスクも高い。
- 修理の困難さ:メーカーサポートは終了。部品不足や高額な修理費で、直せないことも多い。
- 知識と技術の必要性:露出やピント合わせなど、基本的な写真知識と操作技術が求められる。
- フィルムの入手性悪化:人気のフィルムは品薄・高騰。撮りたい時に手に入らない可能性も。
- 「エモさ」はデジタルでも表現可能:フィルム特有の風合いは、デジタルカメラや編集ソフトでも再現できる時代。
- 安易な憧れは後悔のもと:デメリットを理解せず始めると、すぐに挫折してしまう可能性が高い。
- それでも始めるなら:目的を明確にし、情報収集を徹底。レンタルやワークショップから試し、信頼できる店で購入。失敗を楽しみ、デジタルと賢く使い分けるのがおすすめ。
フィルムカメラには、確かにデジタルにはない魅力がたくさんあります。一枚一枚を大切に撮るという行為、フィルムならではの温かい写り、現像を待つワクワク感…。これらに心を奪われる気持ちは、とてもよく分かります。
しかし、その魅力の裏には、今の時代だからこその厳しい現実がたくさん横たわっているということも、ご理解いただけたのではないでしょうか。「やめとけ」という言葉は、こうした現実を知らずに憧れだけで飛び込んでしまい、結果的に「時間もお金も無駄にしてしまった…」と後悔する人を少しでも減らしたい、という経験者からの老婆心なのかもしれませんね。
もし、あなたがそれでもフィルムカメラの世界に足を踏み入れたいと強く願うのなら、これらのデメリットを全て受け入れる覚悟と、それを上回る情熱が必要です。そして、しっかりと準備をして、賢く、そして何よりも楽しんで向き合っていくことが大切です。
写真は、本来とても自由で楽しいものです。フィルムであれデジタルであれ、ご自身が心から「楽しい!」と思えるスタイルで、素敵な写真ライフを送ってくださいね。この記事が、そのための少しでもお役に立てたなら、私もとても嬉しいです。