FASはやめとけ!華やかなキャリアの裏にある6つの過酷な現実と後悔

やめとけ

「FAS(ファス)」という言葉、皆さんはお聞きになったことがありますか?M&A(企業の合併・買収)アドバイザリーや事業再生、不正調査など、なんだか企業の未来を左右するような、とってもダイナミックで専門性の高いお仕事…そんな華やかで知的なイメージをお持ちの方も多いかもしれませんね。

特に、コンサルティング業界や金融業界に興味のある学生さんや、キャリアアップを目指す社会人の方にとっては、非常に魅力的な選択肢に映るでしょう。でも、インターネットで「FAS」と検索してみると、「FAS やめとけ」「FAS 激務」「FAS 後悔」なんて、ちょっとドキッとするような言葉も一緒に表示されることがあるんです。

「え、そんなに大変なの?高給でエリートな世界の裏には、何か想像もつかないような厳しさがあるの…?」と、不安に感じてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。一体どうして、そんな声があがってしまうのでしょう?

この記事では、FAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)という専門分野のお仕事について、なぜ一部で「やめとけ」と言われてしまうのか、どんな点に注意しないと、憧れだけで飛び込んだ結果、大きな後悔につながってしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして皆さんに分かりやすくご説明していきたいと思います。

もちろん、FASには素晴らしい魅力や、他では得られない貴重な経験がたくさんあります。でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんが将来の大きなキャリア選択をする際に、後で「こんなはずじゃなかった…」と途方に暮れることがないよう、お手伝いができれば嬉しいです。

専門性が高く、大きな責任を伴うお仕事だからこそ、その実態をしっかりと見極めることが大切ですからね。

この記事でお伝えしたいこと

  • FAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)の基本的な仕事内容と、そこで働くことの一般的な魅力
  • なぜFASが「やめとけ」と言われるのか、その具体的な6つの理由と、業界特有の厳しい現実
  • FAS業界を目指す上で知っておくべき潜在的なリスクや、理想と現実の大きなギャップ
  • それでもFASの世界で挑戦したいと考えた場合に、後悔を避け、賢明な判断をするための重要な心構えと準備
  • ご自身の適性や価値観に、FASという専門性の高いキャリアパスが本当に合っているのかを見極めるためのヒント

  1. FASとは?その概要と魅力
    1. FASの主な仕事内容
    2. FASで働くことの一般的な魅力
  2. FASはやめとけと言われる6つの深刻な理由
    1. 【理由①】想像を絶する激務と長時間労働が常態化しているから
    2. 【理由②】常に高いプレッシャーと精神的負担に晒され続けるから
    3. 【理由③】専門知識の幅広さと絶え間ない学習が求められ続けるから
    4. 【理由④】ワークライフバランスの崩壊は覚悟しなければならないから
    5. 【理由⑤】成果主義と社内外の厳しい競争に常に晒されるから
    6. 【理由⑥】景気やM&A市場の動向にキャリアが左右される不安定さも否定できないから
  3. それでもFASを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え
    1. 【ポイント①】なぜFASなのか、その「強い動機」と「揺るがない覚悟」を明確にする
    2. 【ポイント②】徹底的な情報収集と自己分析で、自分と業界とのミスマッチを防ぐ
    3. 【ポイント③】会計・ファイナンス等の専門知識と論理的思考力を、学生時代から徹底的に鍛える
    4. 【ポイント④】体力と精神力の維持・向上に努め、タフな環境に耐えうるセルフケア能力を身につける
    5. 【ポイント⑤】積極的にネットワーキングを行い、業界理解とコミュニケーション能力を高める
  4. FASというキャリア選択で後悔しないための「やめとけ」理由総括

FASとは?その概要と魅力

まずはじめに、「FASって、具体的にどんなことをしているの?」「コンサルティングとはどう違うの?」という方のために、FASの基本的なところからご説明しますね。その専門性や社会的な役割、そしてなぜこれほどまでに高度なスキルが求められるのかを知ることは、今回のテーマを深く理解する上でとても大切なんです。

FASの主な仕事内容

FAS(Financial Advisory Service:フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)とは、その名の通り、企業が抱える財務戦略や取引戦略に関する様々な課題に対して、専門的なアドバイスや実行支援を行うサービスのことです。

特に、M&A(企業の合併・買収)に関連する業務がFASの中核を占めることが多いですが、それ以外にも非常に幅広い分野で専門性を発揮します。

FASのサービスを提供する主なプレイヤーとしては、大手監査法人(いわゆるBig4:PwC、デロイト トーマツ、KPMG、EYなど)のFAS部門や、独立系のFAS専門ファーム、一部の投資銀行などがあります。

そこで働く専門家(コンサルタントやアナリスト)は、会計士、税理士、証券アナリスト、MBAホルダーといった高度な資格や知識を持つ人々が多いのが特徴です。

主な仕事内容としては、以下のようなものがあります。

  • M&Aアドバイザリー
    • フィナンシャル・デューデリジェンス(Financial Due Diligence:FDD):M&A対象企業の財務状況や収益性、キャッシュフローなどを詳細に調査・分析し、潜在的なリスクや課題を洗い出します。買収価格の妥当性や、買収後の経営統合のポイントなどを見極める上で非常に重要なプロセスです。
    • バリュエーション(企業価値評価):M&A対象企業の事業価値や株式価値を、様々な評価手法(DCF法、類似会社比較法、純資産法など)を用いて算定します。適正な取引価格を決定するための根拠となります。
    • M&A戦略立案・実行支援:買い手企業または売り手企業のM&A戦略の策定から、相手先候補の選定、交渉支援、契約締結、そして買収後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)まで、M&Aプロセス全体をサポートします。
  • 事業再生支援(リストラクチャリング):経営不振に陥った企業に対して、財務状況の調査、再生計画の策定、金融機関との交渉支援、事業再編の実行などを通じて、企業の再建をサポートします。
  • 不正調査(フォレンジック・アカウンティング):企業の不正会計や横領、情報漏洩といった不正行為の疑いがある場合に、その事実関係を調査・解明し、原因分析や再発防止策の提言などを行います。会計やIT、法務といった専門知識を駆使する、高度な調査業務です。
  • その他
    • ファイナンシャルモデリング:M&Aや事業計画策定の際に、将来の財務数値を予測するための精緻な財務モデルを構築します。
    • 経営管理体制構築支援(トランザクションサービス):IPO(新規株式公開)準備や、海外進出に伴う財務・経理体制の整備などを支援します。
    • インフラ・PPPアドバイザリー:公共インフラ整備プロジェクトなどにおける資金調達や事業性評価などを支援します。

このように、FASの仕事は、企業の経営戦略や財務戦略の根幹に関わる、非常にダイナミックで、かつ高度な専門性が求められるものばかりなんですね。

FASで働くことの一般的な魅力

そんなFASの世界で働くことには、どのような魅力があるのでしょうか。一般的に言われるメリットをいくつか挙げてみますね。

  • 高度な専門知識とスキルの習得:会計、税務、法務、ファイナンス、バリュエーション、デューデリジェンスといった、財務・M&Aに関する深い専門知識と、それらを実践で活かすための高度な分析スキル、問題解決能力が短期間で集中的に身につきます。
  • ダイナミックで影響力の大きな案件に関与できる:数億円、数十億円、時にはそれ以上の規模のM&A案件や、企業の存続を左右するような事業再生案件など、社会経済に大きなインパクトを与えるプロジェクトに、若いうちから関与できる可能性があります。
  • 高収入の可能性:専門性の高さや業務の過酷さに見合う形で、他の多くの職種と比較して高い給与水準が期待できると言われています。特に、成果を上げれば、年齢に関わらず高い報酬を得られる可能性があります。
  • 多様なキャリアパス:FASでの経験は、その後のキャリアにおいて非常に有利に働くことが多いです。同業他社への転職はもちろん、投資銀行、プライベートエクイティファンド、事業会社の経営企画・財務部門、あるいは独立開業など、幅広い選択肢が開かれます。
  • 知的好奇心を満たせる刺激的な環境:様々な業界のビジネスモデルや、最先端の財務戦略、M&Aの手法などに常に触れることができ、知的好奇心が旺盛な人にとっては、日々新しい発見と学びがある、非常に刺激的な環境です。優秀な同僚や上司と働くことで、自身の成長も加速されるでしょう。

これらの魅力に惹かれて、多くの方がFASの世界に足を踏み入れるんですね。しかし、その輝かしいイメージの裏には、想像を絶するほどの厳しさや、知っておくべき現実もたくさん隠れているんです。


FASはやめとけと言われる6つの深刻な理由

さて、ここからが本題です。FASの概要と魅力をご理解いただいたところで、なぜ一部で「FASはやめとけ」という、キャリア選択を躊躇させるような声があがってしまうのか、その具体的な理由を6つに絞って、詳しくご説明していきたいと思います。

これらの理由を知っておくことは、皆さんがFASという道を検討する上で、非常に重要になってくるはずです。

【理由①】想像を絶する激務と長時間労働が常態化しているから

FAS業界で働く上で、まず覚悟しなければならないのが、「激務」と「長時間労働」です。

これは、FASの仕事がプロジェクトベースで進められることが多く、特にM&A案件などはディール(取引)の成立に向けて非常にタイトなスケジュールで動くため、必然的に労働時間が長くなりがちだからです。

具体的には、以下のような状況が常態化しているファームも少なくありません。

  • 深夜までの残業は当たり前:平日は終電帰りやタクシー帰りが日常茶飯事。時にはオフィスに泊まり込んで作業をすることも。
  • 休日出勤も厭わない:プロジェクトの佳境や、緊急の対応が必要な場合には、土日や祝日も関係なく出勤して仕事をすることが求められます。
  • 突発的な業務発生:M&Aの交渉状況や、クライアントからの急な依頼などにより、予定していたスケジュールが大幅に変わり、急遽徹夜作業が発生することも。
  • 体力的な限界との戦い:睡眠不足や不規則な生活が続くと、当然ながら体力は消耗します。若いうちは気力で乗り切れても、年齢を重ねるにつれて体にガタが来やすくなります。

「時は金なり」ならぬ、「時はディールなり」とでも言うべき、時間との戦いがFASの日常なのです。特に、デューデリジェンスの報告書作成期限や、M&Aのクロージング(取引完了)間際などは、想像を絶するほどの業務量とプレッシャーが一気に押し寄せてきます。この激務に耐えられず、心身の健康を損ねてしまったり、業界を去ってしまったりする人も少なくないのが現実です。

「若いうちはとにかく働いて成長したい!」という高いモチベーションがあるうちは良いかもしれませんが、この生活が何年も続くことを考えると、本当に自分に務まるのか、冷静に考える必要があります。家族や友人との時間、趣味や休息の時間は、大幅に犠牲になることを覚悟しなければなりません。この「働き方」が、FASが「やめとけ」と言われる最大の理由の一つと言っても過言ではないでしょう。

「FASに入って最初の1年は、本当に寝る時間以外は全部仕事だった。土日もほとんどなくて、友達との連絡も途絶えがちになった。確かにスキルは身についたけど、あの生活をずっと続けられる自信はないな…。」(FAS経験者Aさんの声)

この過酷な労働環境を乗り越えるだけの、強靭な体力と精神力がなければ、FASの世界で生き残っていくのは難しいかもしれません。

【理由②】常に高いプレッシャーと精神的負担に晒され続けるから

FASの仕事は、その影響力の大きさゆえに、常に非常に高いプレッシャーと精神的な負担が伴います。

扱う案件は、企業の将来を左右するような重要なものばかりであり、一つのミスがクライアントに多大な損害を与えたり、ディールそのものを破談に追い込んだりする可能性すらあるのです。

具体的には、以下のような精神的なプレッシャーに日常的に晒されることになります。

  • クライアントからの高い期待と要求:FASに依頼する企業は、高額なフィーを支払ってでも、最高の専門性と成果を期待しています。その期待に応えられなければ、厳しい評価を受けることになります。
  • 案件の成否に対する極度の責任感:M&Aディールが成功するか失敗するか、事業再生がうまくいくかいかないか、その結果が自分たちの働きに大きく左右されるという重圧は計り知れません。
  • 億単位、時には兆単位の金額を扱う緊張感:企業価値評価やデューデリジェンスで扱う金額は非常に大きく、その数字の重みが常に肩にのしかかってきます。
  • 厳しい上司やパートナーからのプレッシャー:FASファームの多くは、非常に優秀で、かつ厳しいプロフェッショナル集団です。上司やパートナーからの要求レベルも高く、その期待に応え続けるのは容易ではありません。細かなミスも許されず、常に完璧なアウトプットが求められます。
  • 時間的制約の中での判断力:タイトなスケジュールの中で、限られた情報に基づいて、重要な判断を下さなければならない場面も多くあります。その判断が正しかったのかどうか、常に自問自答し続けることになります。
  • 守秘義務と情報管理の徹底:扱う情報は非常に機密性が高く、情報漏洩は絶対に許されません。そのための情報管理にも細心の注意を払う必要があります。

こうした日常的なプレッシャーは、精神的にタフな人であっても、徐々に心を蝕んでいく可能性があります。

実際に、メンタルヘルスの不調を訴えたり、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥ってしまったりする人もいると言われています。「やりがい」だけでは乗り越えられない、精神的な強靭さが求められる世界なのです。

「M&Aのデューデリやってる時なんて、本当に寝ても覚めても数字のことばっかり考えてる。クライアントの社長から『君たちのレポートにかかってるんだぞ!』って言われると、もう胃がキリキリするよ。このプレッシャーに耐えられる人じゃないと、FASは無理だと思う。」(大手FASファーム勤務Bさんの本音)

「責任のある仕事がしたい」という思いは素晴らしいですが、その責任の重さが、時として自分自身を押しつぶしてしまうほどのものになる可能性も、覚悟しておかなければなりません。

【理由③】専門知識の幅広さと絶え間ない学習が求められ続けるから

FASで活躍するためには、非常に広範かつ深い専門知識と、それを常にアップデートし続けるための絶え間ない学習意欲が不可欠です。

一つの分野に精通しているだけでは不十分で、会計、税務、法務、ファイナンス、M&A戦略、事業再生手法、さらにはクライアントの属する業界に関する深い知識など、多岐にわたる専門性を身につける必要があります。

そして、これらの知識は一度習得すれば終わりというわけではありません。

  • 法改正や会計基準の変更への対応:税法や会社法、金融商品取引法といった関連法規や、会計基準は頻繁に改正されます。常に最新の情報をキャッチアップし、実務に的確に反映させなければなりません。
  • 新しいM&Aの手法や金融技術の習得:M&Aの世界も常に進化しており、新しいスキームや評価手法、金融商品などが次々と登場します。これらを理解し、活用できるようになるための学習が必要です。
  • グローバル案件への対応:クロスボーダーM&A(国境を越えたM&A)が増加する中で、海外の法制度や会計基準、商慣習に関する知識や、語学力(特に英語)の重要性も高まっています。
  • 業界知識の深化:クライアントのビジネスを深く理解し、的確なアドバイスをするためには、担当する業界の動向や特性、競争環境などに関する深い知識が求められます。
  • 資格取得や維持のプレッシャー:公認会計士(CPA)、米国公認会計士(USCPA)、証券アナリスト(CMA)、CFA(認定証券アナリスト)といった専門資格を保有している人が多く、これらの資格を取得したり、維持したりするための継続的な学習も必要になります。

こうした専門知識の習得やアップデートは、日々の激務の合間を縫って、あるいは業務時間外や休日を利用して行わなければならないことがほとんどです。「勉強が好き」「新しいことを学ぶのが楽しい」と感じられる人でなければ、この終わりのない学習のループは、大きな苦痛となってしまうでしょう。

「FASに入れば、勝手に賢くなれる」わけではありません。むしろ、入ってからが本当の勉強の始まりであり、常に自分を高め続けなければ、あっという間にプロフェッショナルとしての価値を失ってしまう厳しい世界なのです。この「学び続ける覚悟」がないのであれば、FASの門を叩くのは考え直した方が良いかもしれません。

【理由④】ワークライフバランスの崩壊は覚悟しなければならないから

「理由①」の激務・長時間労働とも密接に関連しますが、FAS業界で働く上で、ワークライフバランス(仕事と私生活の調和)を良好に保つことは、残念ながら非常に難しいと言わざるを得ません。

特に、若手のうちは、仕事に全ての時間とエネルギーを注ぎ込むような働き方が半ば常態化しているファームも少なくありません。

その結果、以下のような状況に陥りやすくなります。

  • プライベートな時間の確保が極めて困難:平日の夜はほぼ仕事で潰れ、週末も仕事を持ち帰ったり、急な呼び出しに対応したりすることも。友人との約束や、家族との団らん、趣味の時間などを計画的に取ることは非常に難しくなります。
  • 家族やパートナーとのすれ違い:一緒に過ごす時間が極端に減ることで、家族や恋人との関係に亀裂が入ってしまったり、理解を得られずに孤立感を深めてしまったりするケースも。
  • 自己犠牲の上に成り立つキャリア:高い給与や華やかなキャリアと引き換えに、自分の健康や大切な人との時間、そして人間らしい生活そのものを犠牲にしているのではないか、と感じてしまう人もいます。
  • 「仕事が人生の全て」になりがち:仕事に没頭するあまり、それ以外の価値観や人間関係が希薄になり、視野が狭くなってしまう危険性も。

もちろん、FASファームも働き方改革の重要性を認識し、労働時間の削減や有給休暇取得の奨励といった取り組みを進めているところもあります。

また、プロジェクトの合間には比較的まとまった休暇を取れる場合もあるかもしれません。しかし、業界全体の構造や、クライアントワークという仕事の性質上、繁忙期と閑散期の差が激しく、安定したワークライフバランスを長期的に維持するのは依然として難しいのが実情のようです。

「FASに転職して3年。給料は上がったけど、平日は子供の寝顔しか見られないし、週末も疲れ果てて何もできない。妻からは『いつまでそんな働き方するの?』って言われるし…。本当にこのままでいいのか、最近よく考える。」(30代FASコンサルタントCさんの悩み)
「『FASは20代を捧げる場所だ』って先輩に言われたけど、本当にその通りだと思う。スキルも経験も積めるけど、その代償は大きいよ。」

もし、あなたが「仕事も大切だけど、家族との時間や自分の趣味の時間も同じくらい大切にしたい」「オンとオフをきっちり分けて、人間らしい生活を送りたい」と強く願うのであれば、FASというキャリアは、あなたの価値観と大きく衝突してしまう可能性があります。

この点を軽視すると、後で「こんなはずじゃなかった」と深い後悔を抱えることになるかもしれません。

【理由⑤】成果主義と社内外の厳しい競争に常に晒されるから

FAS業界は、極めて成果主義的で、かつ競争の激しい世界です。

高い専門性と能力を持つプロフェッショナルたちが集まる場所ですから、常に高いパフォーマンスを維持し、目に見える成果を出し続けなければ、評価されず、生き残っていくことはできません。

  • Up or Out(昇進か退職か)の文化:特に外資系のFASファームなどでは、「一定期間内に次のポジションに昇進できなければ、ファームを去らなければならない」という、いわゆる「Up or Out」の文化が根強く残っている場合があります。常に昇進へのプレッシャーを感じながら働くことになります。
  • 同僚との熾烈な競争:同じプロジェクトチームのメンバーや、同期入社の同僚たちは、協力し合う仲間であると同時に、評価や昇進を争うライバルでもあります。常に他者と比較され、自分の能力を証明し続けなければならないという緊張感があります。
  • 案件獲得競争:シニアクラス以上になると、クライアントから新しい案件を獲得してくることも重要な評価指標となります。他のファームや、時には社内の他部門との間で、案件獲得のための厳しい競争が繰り広げられます。
  • クライアントからの厳しい評価:提供するアドバイスの質や、プロジェクトの成果に対して、クライアントからは常に厳しい目が向けられます。期待に応えられなければ、次の仕事に繋がらないだけでなく、ファーム全体の評判にも影響しかねません。
  • 常に「付加価値」を求められる:単に言われたことをこなすだけでなく、常にクライアントの期待を超えるような「付加価値」を提供することが求められます。そのためには、常に新しい視点やアイデアを生み出し、それを形にしていく創造性と実行力が必要です。

こうした厳しい競争環境の中で、常に結果を出し続けるためには、並外れた能力と努力、そして何よりも強い精神力が不可欠です。

「みんなで仲良く、和気あいあいと仕事がしたい」というタイプの方や、「あまり競争するのは好きじゃない」という方にとっては、FASの環境は非常にストレスフルに感じられるかもしれません。

また、成果主義は、裏を返せば「成果が出せなければ評価されない」というシビアな現実も意味します。どんなに長時間働いても、どんなに努力しても、最終的にクライアントの期待に応える成果が出せなければ、厳しい評価を受けることも覚悟しなければなりません。この「結果が全て」という世界で戦い抜く覚悟があるかどうかが問われます。

【理由⑥】景気やM&A市場の動向にキャリアが左右される不安定さも否定できないから

FASの主要な業務であるM&Aアドバイザリーは、景気の動向や、M&A市場全体の活況度に大きく左右されるという特性があります。景気が良く、企業が積極的に投資や事業拡大を行う時期にはM&A案件も増加し、FASの需要も高まります。

しかし、逆に景気が後退し、企業が投資に慎重になったり、資金調達が難しくなったりすると、M&A市場は急速に冷え込み、FASの案件数も減少してしまう可能性があります。

こうした市場環境の変化は、FASで働く人々のキャリアにも大きな影響を与える可能性があります。

  • 案件減少による業務量の不安定化:M&A市場が冷え込むと、担当できる案件が減ってしまったり、大規模なディールに関わる機会が少なくなってしまったりする可能性があります。これは、スキルアップの機会の減少や、モチベーションの低下にも繋がりかねません。
  • リストラや部門縮小のリスク:極端な市場の悪化が長期間続いた場合、FASファーム自体が業績不振に陥り、人員削減(リストラ)や、特定のサービス部門の縮小・撤退といった事態も起こり得ます。特に、特定の業界やサービスに特化しすぎている場合、その分野の市場が冷え込むと、リスクが集中しやすくなります。
  • 採用の抑制:景気後退期には、FASファームも新規採用を抑制したり、凍結したりする傾向があります。FAS業界への就職・転職を目指している人にとっては、タイミングが悪ければ、非常に厳しい状況に直面する可能性があります。

もちろん、事業再生支援や不正調査といった業務は、むしろ景気後退期に需要が高まるという側面もありますし、FASファームもリスク分散のために多様なサービスラインナップを揃えようとしています。しかし、それでもなお、M&A市場という外部環境の変動に、FAS業界全体の業績や個人のキャリアが大きく影響を受ける不安定さは、否定できない現実です。

「自分の努力だけではどうにもならない要因で、キャリアが左右されてしまうかもしれない」というリスクも、FASという仕事を選ぶ上で考慮に入れておくべき点の一つと言えるでしょう。景気に左右されにくい安定したキャリアを求めるのであれば、FASは少し不向きかもしれませんね。

以上が、「FASはやめとけ」と言われることがある主な6つの理由です。

どれも、FASという仕事の持つ専門性、責任の重さ、そして厳しい競争環境からくるものであり、華やかなイメージだけでは見えてこない、重要な現実ばかりですね。


それでもFASを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え

ここまでFASの厳しい側面や、「やめとけ」と言われる理由について詳しくお話ししてきましたが、「うーん、やっぱりFASの世界は、自分には無理かもしれない…」と、夢を諦めそうになってしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、お待ちください! FASという仕事が持つ、企業の未来を創造し、社会経済に大きなインパクトを与えるダイナミズムや、高度な専門性を駆使して難題を解決する達成感は、他の多くの職業では味わえない、かけがえのない魅力です。困難な道だからこそ、それを乗り越えた先には、大きな成長と、社会に貢献できる素晴らしいキャリアが待っている可能性も十分にあります。

大切なのは、FASという道の「光」と「影」の両面を正しく理解し、その上で、ご自身の価値観や目標、そして覚悟と照らし合わせて、本当に自分にとって進むべき道なのかを真剣に考えることです。

そして、もし「それでも私はFASの世界で、企業の変革を支援し、社会に貢献したい!」という強い意志をお持ちなのであれば、後悔しないために、いくつかの重要な心構えと準備が必要です。ここでは、そのためのヒントをいくつかご紹介しますね。

【ポイント①】なぜFASなのか、その「強い動機」と「揺るがない覚悟」を明確にする

まず何よりも大切なのは、「なぜ自分はFASの仕事がしたいのか?」「FASを通じて、何を成し遂げ、どんな専門家になりたいのか?」その動機や目的、そして将来のビジョンを、誰に何を言われても揺るがないくらい、明確に、そして深く自分の中に持つことです。

先にお話ししたように、FASの仕事は、激務、高いプレッシャー、絶え間ない学習、厳しい競争といった、多くの困難が伴います。

そんな時、自分を支え、困難を乗り越える原動力となるのは、「それでも自分は、この高度な専門性を身につけ、企業の成長と変革の最前線に立ちたいんだ!」という、その仕事に対する純粋な情熱や、知的好奇心、そして揺るぎない使命感なんです。

  • 「複雑なM&Aディールを成功に導き、日本企業の国際競争力強化に貢献したい」
  • 「経営危機に瀕した企業を再生させ、多くの従業員の雇用と生活を守りたい」
  • 「不正会計を見抜き、資本市場の公正性と透明性を高めることに尽力したい」
  • 「常に新しい知識とスキルを吸収し、財務・M&Aのプロフェッショナルとして成長し続けたい」

きっかけや目指すものは人それぞれで良いと思います。しかし、それが「なんとなくカッコ良さそうだから」「高給がもらえるから」「箔がつきそうだから」といった表面的な理由だけであれば、厳しい現実に直面した時に、簡単に見失ってしまうかもしれません。自分自身の内から湧き出る、本物の「知的好奇心」や「社会貢献への意欲」、「困難な課題への挑戦心」を見つけ出し、それを具体的な目標として設定することが、FASという長く険しい道のりを歩み続けるための、最も大切な羅針盤になるのです。

【ポイント②】徹底的な情報収集と自己分析で、自分と業界とのミスマッチを防ぐ

FAS業界を目指すと決めたら、あるいはまだ迷っている段階だとしても、その業界の実態や、求められる人物像、そして自分自身の適性について、徹底的な情報収集と冷静な自己分析を行うことが、ミスマッチを防ぎ、後悔しないキャリア選択をするためには不可欠です。

  • 現役FASコンサルタントの声を聞く:可能であれば、実際にFASファームで働いている方(OB/OG、キャリアセミナーの登壇者、SNS上の発信者など)に話を聞く機会を持ちましょう。仕事のやりがいだけでなく、大変なこと、苦労したこと、そして業界のリアルな雰囲気などを率直に聞いてみると良いでしょう。
  • インターンシップや説明会への参加:学生であれば、FASファームが実施するインターンシップや説明会に積極的に参加し、実際の業務の一部を体験したり、社員の方々と直接話したりする中で、業界や企業文化への理解を深めましょう。
  • 業界研究・企業研究:FAS業界全体の動向、各ファームの特徴(得意分野、企業文化、キャリアパス、待遇など)を、ウェブサイト、業界専門誌、転職情報サイトなど、様々な情報源から多角的に調べましょう。
  • 客観的な自己分析
    • 自分の強みと弱み:論理的思考力、分析力、コミュニケーション能力、ストレス耐性、体力、知的好奇心、学習意欲など、FASで求められる資質と照らし合わせて、自分は何が得意で、何が課題なのかを客観的に把握しましょう。
    • 自分の価値観:何を大切にして働きたいのか(高収入、専門性、社会貢献、ワークライフバランス、成長機会など)、FASという仕事がその価値観と合致しているのかを真剣に考えましょう。
    • ストレスへの向き合い方:自分がどんな時にストレスを感じやすく、それをどのように解消してきたのかを振り返り、FASの厳しい環境に適応できそうかを検討しましょう。

「自分はFASに向いているはずだ」という思い込みだけで進むのではなく、客観的な情報と自己分析に基づいて、冷静に判断することが、後悔しないための重要なポイントです。時には、FAS以外のキャリアパスも視野に入れながら、比較検討することも大切かもしれませんね。

【ポイント③】会計・ファイナンス等の専門知識と論理的思考力を、学生時代から徹底的に鍛える

FASの世界で活躍するためには、その土台となる会計やファイナンスに関する高度な専門知識と、複雑な問題を整理し、本質を見抜き、最適な解決策を導き出すための論理的思考力(ロジカルシンキング)が不可欠です。これらの能力は、一朝一夕に身につくものではありません。

もしFASを目指すのであれば、学生時代から意識して、これらの力を徹底的に鍛えておくことを強くお勧めします。

  • 会計知識の習得:簿記(日商簿記1級レベルを目指したいですね)、財務諸表論、管理会計論など、会計の基本的な知識を体系的に学びましょう。公認会計士試験の勉強を始めるのも良い選択肢です。
  • ファイナンス理論の学習:企業価値評価(DCF法、マルチプル法など)、資本コスト、ポートフォリオ理論、デリバティブといった、ファイナンスの基本的な理論を理解しておくことは、M&Aやバリュエーション業務において必須です。
  • Excelスキル・モデリング能力の向上:FASの業務では、Excelを使って大量のデータを分析したり、複雑な財務モデルを構築したりする機会が非常に多いです。高度なExcel関数やマクロ(VBA)を使いこなし、効率的かつ正確なモデリングができるスキルは、大きな武器になります。
  • 論理的思考力のトレーニング:ケーススタディやフェルミ推定といった、コンサルティング業界でよく用いられる思考トレーニングに取り組んだり、ロジカルシンキングに関する書籍を読んだりして、物事を構造的に捉え、筋道を立てて考える力を養いましょう。ディベートやグループディスカッションに参加するのも効果的です。
  • 英語力の向上:グローバル案件が増える中で、英語の財務諸表を読んだり、英語でレポートを作成したり、海外のクライアントとコミュニケーションを取ったりする機会も増えています。TOEICの高得点だけでなく、実践的なビジネス英語の能力を高めておくことが望ましいです。

これらの基礎体力とも言える専門知識や思考力は、FASファームに入社してからの成長スピードを大きく左右します。

学生時代という比較的時間に余裕のある時期に、どれだけ真剣にこれらの能力開発に取り組むかが、将来のキャリアを切り拓く上での大きなアドバンテージになるでしょう。

【ポイント④】体力と精神力の維持・向上に努め、タフな環境に耐えうるセルフケア能力を身につける

FASの仕事は、先にも述べた通り、激務であり、高いプレッシャーに晒され続けるため、強靭な体力と精神力がなければ、心身ともに疲弊し、長く続けることは難しいでしょう。

そのため、日頃から自分の心と体の状態に気を配り、健康を維持・向上させ、ストレスを上手にコントロールする術(セルフケア能力)を身につけておくことが非常に重要です。これは、FASを目指すと決めた瞬間から意識して取り組むべきことです。

  • 基礎体力の向上:定期的な運動習慣(ランニング、筋力トレーニング、水泳など)を取り入れ、長時間労働にも耐えうる体力を養いましょう。
  • 質の高い睡眠の確保:忙しい中でも、できる限り睡眠時間を確保し、睡眠の質を高める工夫(寝る前のカフェイン摂取を控える、寝室の環境を整えるなど)をしましょう。
  • バランスの取れた食事:不規則な生活の中でも、栄養バランスを考えた食事を心がけ、体調管理の基本を疎かにしないようにしましょう。
  • 効果的なストレスマネジメント:自分に合ったストレス解消法(趣味、スポーツ、瞑想、友人との会話など)を複数持ち、意識的にリフレッシュする時間を作りましょう。
  • メンタルタフネスの涵養:困難な状況に直面しても、すぐに諦めずに粘り強く取り組む力、失敗から学び次に活かす力、そして自分を客観的に見つめ、前向きに捉え直す力を養いましょう。
  • タイムマネジメント能力の向上:限られた時間の中で、効率的に業務をこなし、少しでも休息時間を確保するための時間管理術を身につけましょう。
  • 助けを求める勇気:一人で抱え込まず、辛い時や困った時には、上司や同僚、友人、家族、あるいは専門家(カウンセラーなど)に相談する勇気を持ちましょう。

特にFASファームに入社してからは、目の前の仕事に追われ、自分のことを後回しにしてしまいがちです。しかし、プロフェッショナルとして最高のパフォーマンスを発揮し続けるためには、心身の健康が何よりも大切な資本なのです。自己管理能力を高め、タフな環境でも自分自身を守り、成長し続けられる「サバイバル能力」を磨いていくことが、FASの世界で長く活躍するための秘訣の一つですよ。

【ポイント⑤】積極的にネットワーキングを行い、業界理解とコミュニケーション能力を高める

FAS業界は、専門性が高い一方で、意外と人の繋がりが重要になる世界でもあります。社内外に幅広い人脈を築き、円滑なコミュニケーションを取る能力は、案件の獲得や情報収集、そしてチームでの協業において、非常に大きな力となります。

これは、学生時代から意識して取り組むべきことです。

  • FAS業界のイベントへの参加:FASファームが開催する説明会、セミナー、ワークショップなどに積極的に参加し、現役のコンサルタントや他の参加者と交流する機会を持ちましょう。業界の最新動向や、ファームごとの雰囲気などを肌で感じることができます。
  • OB/OG訪問:もし、大学の先輩などでFAS業界で活躍している方がいれば、積極的にコンタクトを取り、話を聞かせてもらいましょう。リアルな体験談やアドバイスは、何よりも貴重な情報源となります。
  • ビジネス系SNSの活用:LinkedIn(リンクトイン)のようなビジネス特化型SNSを活用し、FAS業界の専門家をフォローしたり、関連するグループに参加したりして、情報収集や意見交換を行うのも有効です。
  • インターンシップ経験:可能であれば、FASファームでのインターンシップを経験することで、実際の業務に触れるだけでなく、社員の方々と直接的なコネクションを築くことができます。
  • コミュニケーション能力の向上:プレゼンテーション能力、交渉力、傾聴力、そして多様なバックグラウンドを持つ人々と協調して仕事を進めるチームワーク力など、FASで求められる様々なコミュニケーションスキルを、日頃から意識して磨きましょう。ディベートやグループワーク、アルバイト経験なども役立ちます。

これらの活動を通じて築いた人脈や、磨いたコミュニケーション能力は、FAS業界への就職・転職活動において有利に働くことはもちろん、入社後も、クライアントとの良好な関係構築や、社内でのスムーズな連携、そして将来的なキャリア展開においても、あなたの大きな支えとなるでしょう。

「専門知識さえあればいい」という考えではなく、積極的に人と関わり、信頼関係を築いていく姿勢が、FASの世界でも成功するためには不可欠なのです。

これらのポイントを押さえて、覚悟と準備を持って臨めば、FASという道は、きっとあなたにとって大きな成長と達成感、そして何よりも、企業の未来を創造し、社会に貢献できるという、かけがえのないやりがいをもたらしてくれるはずです。

大切なのは、情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考え、自分で決断し、そしてその決断に責任を持つことなんですね。


FASというキャリア選択で後悔しないための「やめとけ」理由総括

さて、ここまでFAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)について、「やめとけ」と言われてしまう理由や、それでもFASという専門性の高い道を選ぶ場合に後悔しないための心構えや準備について、詳しくお話ししてきました。

最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがこのダイナミックで、しかし非常に厳しい世界でキャリアを築いていく上で、本当に大切なことは何なのか、おさらいをしておきましょう。

今回の記事でお伝えしてきた、「FASはやめとけ」と一部で言われることがある主な理由は、以下の6点でしたね。

  • 理由①:想像を絶する激務と長時間労働が常態化している
    深夜残業や休日出勤は日常茶飯事で、体力と精神力の限界に挑戦する覚悟が必要です。
  • 理由②:常に高いプレッシャーと精神的負担に晒され続ける
    案件の成否や億単位の金額を扱う責任、クライアントや上司からの期待が重くのしかかります。
  • 理由③:専門知識の幅広さと絶え間ない学習が求められ続ける
    会計・税務・法務・ファイナンスなど広範な知識を常にアップデートし続けなければなりません。
  • 理由④:ワークライフバランスの崩壊は覚悟しなければならない
    プライベートな時間の確保は極めて困難で、仕事中心の生活になりがちです。
  • 理由⑤:成果主義と社内外の厳しい競争に常に晒される
    Up or Outの文化も存在し、常に高いパフォーマンスと結果を出し続ける必要があります。
  • 理由⑥:景気やM&A市場の動向にキャリアが左右される不安定さも否定できない
    外部環境の変化によって、業務量やキャリアの安定性が影響を受ける可能性があります。

これらの理由だけを改めて見ると、「やっぱりFASの世界は、自分にはあまりにも過酷で、リスクが高すぎるかもしれない…」と、尻込みしてしまうかもしれません。

でも、どうか忘れないでください。これらの厳しい側面は、FASという仕事が、企業の経営戦略の根幹に関わり、社会経済に大きな影響を与えるという、非常に重要で責任ある役割を担っていることの裏返しでもあるということを。

どんな専門職も、その頂を目指す道は平坦ではありません。そして、大きな目標を達成するためには、相応の努力と困難、そして時には大きな犠牲が伴うのは、どの分野を選んだとしても同じなのかもしれませんね。

FASという道を選ぶか否か、その最終的な判断をする上で最も重要なのは、インターネット上の誰かの「やめとけ」という言葉や、あるいは「エリートコースだ」という華やかなイメージにただ流されるのではなく、

  1. まず、ご自身が「なぜFASの仕事がしたいのか」「FASを通じて、どんな専門家になり、社会にどんな価値を提供したいのか」という、心の奥底から湧き出る「強い動機」と「揺るぎないビジョン」を持っているのかを、深く、そして正直に見つめ直すこと。
  2. 次に、FASという仕事の魅力や可能性、そして同時に、その仕事に伴う厳しさや課題、現実的な側面について、信頼できる多様な情報源から、時間をかけて真摯に、そして批判的な視点も持って学ぼうと努めること。
  3. そして、そこで得た知識と、ご自身の価値観(何を大切にして生きていきたいか)、適性(論理的思考力、ストレス耐性、学習意欲、倫理観など)、そして現実的な状況(体力、経済的基盤、家族の理解など)を冷静に照らし合わせ、本当に自分にとって挑戦する価値のある道なのか、覚悟を持って判断すること。
  4. 最後に、もし挑戦すると決めたならば、その決断に誇りと責任を持ち、あらゆる困難を乗り越えるための周到な準備(盤石な基礎学力の習得、実践的なスキルの涵養、心身の健康管理、人間関係構築能力の向上など)と、決して諦めない不屈の精神、そして変化を恐れず学び続ける柔軟性を持って、全力で取り組むこと。

これらのステップを一つひとつ真摯に踏んでいくことが、後悔のない選択をするための、そして、もしFASという道を選んだ場合に、その道を力強く、そして誇りを持って歩んでいくための、何よりの力になるのだと、私は信じています。

FASは、確かに簡単なキャリアではありません。

しかし、複雑な課題を解き明かし、企業の未来を左右するようなダイナミックな案件を成功に導き、そしてその過程で自分自身も大きく成長できるという経験は、何物にも代えがたい、大きな達成感と喜びを与えてくれるはずです。

「やめとけ」という言葉は、時に私たちを慎重にさせ、立ち止まって深く考えるきっかけを与えてくれます。しかし、その言葉の裏にある本質を見抜き、リスクや課題を克服するための具体的な方策を考え、そして「それでも自分はこの高度な専門性を追求し、社会の変革に貢献したい」と心から願うのであれば、その声はもはや障害ではなく、むしろより賢明に、より力強く未来を切り拓くための、貴重な道しるべとなるのではないでしょうか。

この記事が、皆さんのFASという職業に対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんお一人おひとりが、ご自身の未来について真剣に考え、後悔のない決断をするための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。皆さんの知性と情熱が、より良い社会を創造する力となることを、心から応援しています!

UTA

会社員。営業職で着実に成果を上げ、年収は本業と副業合わせて1,X00万円。副業は投資とライティング。妻と小学生の娘と3人暮らし。休日は家族サービスと自己研鑽に励む。趣味は映画鑑賞。

UTAをフォローする
やめとけ