「マンション管理士って、なんだか難しそうな名前の資格ですよね。マンションに住んでいる方なら、管理人さんとは別に、専門的な知識を持った人がいるのかな?って思うかもしれません。」
「でも、インターネットで『マンション管理士 やめとけ』とか『マンション管理士 食えない』なんて言葉を見かけることもあって、実際のところどうなんだろう?って気になりませんか?」
「もしかしたら、あなたも将来のために何か資格を取ろうと考えていて、マンション管理士も選択肢の一つに入っているかもしれませんね。この記事では、そんなマンション管理士について、なぜ『やめとけ』と言われることがあるのか、その理由を一つ一つ丁寧に、そして分かりやすくお伝えしていきたいと思います。」
「この記事を読めば、マンション管理士という資格の光と影、そして資格取得を目指す前に知っておくべき厳しい現実が分かって、後悔しないための判断ができるようになるはずです。ぜひ最後までお付き合いくださいね。」
この記事でお伝えしたいこと
- マンション管理士の基本的な仕事内容と、その専門家としての役割
- なぜ一部でマンション管理士の資格取得を「やめた方がいい」と言う声があるのか、その具体的な7つの落とし穴
- マンション管理士資格に潜む、独占業務の不在、実務経験の壁、独立の難しさ、精神的負担などの課題
- それでもマンション管理士を目指す場合に、後悔しないために押さえておくべき心構えと具体的な対策
- マンション管理士という資格が本当に自分のキャリアプランに合っているかを見極めるための視点
マンション管理士とは?その概要と知っておくべき実態
まずはじめに、「マンション管理士」という資格について、具体的にどんな仕事をする人で、どんな役割を担っているのか、基本的なところからご説明しますね。
あまり馴染みのない資格かもしれませんが、マンションの快適で安全な暮らしを支える上で、実はとても大切な存在なんですよ。
マンション管理士の基本的な仕事内容と役割
マンション管理士は、マンションの管理に関する専門的な知識をもって、管理組合の運営や、マンションの建物・敷地の維持管理に関して、管理組合の管理者(理事長など)やマンションの区分所有者などからの相談に応じ、助言や指導、その他の援助を行うことを業務とする専門家です。
簡単に言うと、マンションの住民さんたちで構成される「管理組合」の運営がスムーズに進むように、また、マンションという大切な資産が適切に維持管理されるように、専門的な立場からサポートするコンサルタントのような役割なんです。
具体的には、以下のような業務を行います。
- 管理規約の作成・変更に関する助言:マンションのルールブックである管理規約について、法律に適合しているか、住民の実情に合っているかなどをチェックし、適切な内容になるようアドバイスします。
- 総会の運営サポート:年に一度開催される総会(マンションの最高意思決定機関)が円滑に進むように、議案の作成や運営方法について助言します。
- 長期修繕計画の作成・見直しに関する助言:マンションを長く快適に保つためには、定期的な大規模修繕が不可欠です。そのための長期的な修繕計画の作成や見直しについて、専門的な知見からアドバイスします。
- 管理費や修繕積立金の徴収・管理に関する助言:マンションの運営や修繕に必要な資金の管理方法について、適切なアドバイスを行います。
- 管理会社との契約内容のチェックや見直しに関する助言:管理組合が管理会社に業務を委託している場合、その契約内容が適切かどうかをチェックし、必要であれば見直しのアドバイスをします。
- 住民間のトラブル解決に向けた助言:騒音問題やペット飼育問題など、住民間のトラブルが発生した場合に、解決に向けた話し合いの進め方などについて助言することもあります。
マンション管理士は、2001年に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」に基づいて創設された国家資格です。この法律は、マンションの管理の適正化を推進し、マンションにおける良好な居住環境の確保を図ることを目的としています。
参考:国土交通省「マンション管理適正化法、マンション建替え円滑化法関連」

マンション管理士の資格取得の難易度と現状
マンション管理士になるためには、年に一度実施される国家試験に合格し、マンション管理士として登録を受ける必要があります。
この試験、実はかなりの難関なんです。合格率は、例年7%~9%程度で推移しており、これは他の不動産関連資格と比較しても低い水準です。例えば、宅地建物取引士(宅建士)の合格率が15%~17%程度、管理業務主任者の合格率が20%~23%程度であることと比べると、その難しさが分かるかと思います。
試験範囲は、マンション管理適正化法はもちろんのこと、民法、区分所有法、建築基準法、都市計画法といった法律関係から、マンションの構造・設備、会計・税務、管理実務まで、非常に広範囲にわたります。
そのため、合格するには相当な学習時間と努力が必要になります。独学で合格する人もいますが、多くは資格予備校などを利用して計画的に学習を進めているようです。
資格取得後の現状としては、マンション管理会社に勤務する人、不動産関連企業に勤める人、あるいは独立開業してコンサルタントとして活動する人など、様々な働き方があります。しかし、後述するように、資格を取ったからといってすぐに仕事が保証されるわけではない、という厳しい現実もあるんです。
マンション管理士に寄せられる期待と世間の評判
マンションは、多くの人にとって一生に一度の大きな買い物であり、大切な資産です。その資産価値を維持し、快適な住環境を確保していくためには、適切な管理運営が不可欠です。
しかし、マンションの管理組合の役員(理事)は、住民の中から輪番制で選ばれることが多く、必ずしもマンション管理の専門家ではありません。そのため、専門的な知識や経験を持つマンション管理士に対して、
- 管理組合の運営を円滑に進めてほしい
- 複雑な法律問題や会計処理について分かりやすく教えてほしい
- 大規模修繕工事を成功させてほしい
- 管理会社との交渉を有利に進めてほしい
- 住民間のトラブルを解決してほしい
といった大きな期待が寄せられています。特に、建物の老朽化が進むマンションが増えている現代において、その役割はますます重要になっていると言えるでしょう。
一方で、世間の評判としては、「難関資格なのに仕事がない」「食えない資格」といったネガティブな声も聞かれることがあります。これは、マンション管理士には法律上の「独占業務」がないことや、資格取得後のキャリアパスが必ずしも明確ではないことなどが影響していると考えられます。
マンション管理士は、マンションの適正な管理を支える重要な専門家である一方、資格を活かして安定した収入を得るには、様々な課題があることも知っておく必要があるんですね。
マンション管理士はやめとけ!資格取得を勧められないこれだけの理由
さて、ここからが本題です。なぜマンション管理士の資格取得は「やめとけ」と言われてしまうことがあるのでしょうか?その理由を、具体的に7つの落とし穴として詳しく見ていきましょう。
これらの理由を知ることで、もしあなたがマンション管理士を目指そうと考えているなら、その決断が本当に正しいのかどうか、より深く考えるきっかけになるはずです。
【理由1】資格取得の難易度が高い割に、独占業務がないから
マンション管理士の資格取得が「やめとけ」と言われる最も大きな理由の一つが、その試験の難易度の高さに比べて、法律で定められた「独占業務」がないという点です。
「独占業務」とは、その資格を持っている人でなければ行うことができない業務のことです。例えば、弁護士であれば法律事務、医師であれば医療行為、宅地建物取引士であれば重要事項の説明などが独占業務にあたります。
独占業務がある資格は、その業務を行うために必ずその資格者が必要となるため、資格の価値が担保されやすく、仕事にも繋がりやすい傾向があります。
しかし、マンション管理士には、この独占業務がありません。マンション管理士の業務である「管理組合への助言・指導・援助」は、極端な話、マンション管理士の資格がなくても、知識と経験があれば誰でも行うことができてしまうのです。(ただし、マンション管理士でない人が「マンション管理士」と名乗ることはできません。これは「名称独占」と言います。)
合格率1桁台という難関試験を突破して、ようやく手にした資格なのに、「この資格がないとできない仕事」がないというのは、資格取得を目指す人にとって、大きなモチベーションの低下に繋がりかねませんよね。
もちろん、資格を持っていることで専門知識があることの証明にはなりますし、信頼も得やすくなります。しかし、仕事を得るためには、資格に加えて、実務経験や営業力、コミュニケーション能力といった他の要素がより重要になってくるのです。
「苦労して資格を取ったのに、仕事がない…」という状況に陥ってしまう可能性も否定できないのが、マンション管理士資格の厳しい現実の一つなんです。
【理由2】実務経験がないと仕事に繋がりにくく、ペーパーライセンス化しやすいから
マンション管理士の仕事は、法律や会計、建築設備といった専門知識はもちろんのこと、実際に管理組合が抱える様々な問題を解決してきた実務経験やノウハウが非常に重視される世界です。
しかし、マンション管理士試験は、実務経験がなくても受験できます。そのため、資格は持っているけれど、実際のマンション管理の現場経験がない、いわゆる「ペーパーライセンス」のマンション管理士も少なくありません。
管理組合がマンション管理士に相談や業務を依頼する場合、やはり実績のある経験豊富なマンション管理士を選びたいと考えるのが自然ですよね。そのため、実務経験のないマンション管理士が、すぐに仕事を得るのは非常に難しいのが現状です。
資格を取得した後に、
- マンション管理会社に就職して経験を積む
- 既に独立開業しているマンション管理士の事務所で働く
- ボランティアなどで管理組合の運営に関わる
といった方法で実務経験を積んでいく必要がありますが、これらの道も必ずしも容易ではありません。
特に、マンション管理会社への就職を目指す場合、マンション管理士の資格だけでは決定的な強みにならず、年齢やこれまでの職務経歴、コミュニケーション能力などが総合的に判断されることが多いです。また、独立開業しているマンション管理士の事務所は、そもそも求人が少ないという問題もあります。
結果として、せっかく難関資格を取得したにもかかわらず、それを活かす場が見つからず、資格が「ただ持っているだけ」の状態、つまりペーパーライセンスになってしまうリスクが高いのです。
「マンション管理士取ったけど、実務未経験だと全然仕事ない。どうやって経験積めばいいんだろう…」
(資格取得者の掲示板投稿より)
こうした悩みを持つ資格取得者は少なくないようです。
【理由3】独立開業のハードルが高く、安定した収入を得るのが難しいから
マンション管理士として独立開業し、自分の事務所を構えてコンサルタントとして活動することを目指す人もいるかもしれません。
しかし、マンション管理士として独立開業し、安定した収入を得るのは、非常にハードルが高いと言わざるを得ません。
その理由としては、
- 営業力・人脈が不可欠:独立開業した場合、自分で仕事を見つけてこなければなりません。管理組合に自分のサービスを売り込み、顧問契約などを獲得するための高い営業力や、業界内での人脈がなければ、仕事を得るのは困難です。
- 実績と信頼の構築に時間がかかる:管理組合は、大切なマンションの管理運営を任せるわけですから、実績のない新人マンション管理士にいきなり仕事を依頼することは稀です。地道に実績を積み重ね、信頼を勝ち取っていくには時間がかかります。
- 顧問契約の単価と継続性:マンション管理士の主な収入源は、管理組合との顧問契約です。しかし、顧問料の相場は、マンションの規模や業務内容によって異なりますが、それほど高額ではないケースも多く、複数の管理組合と契約しなければ安定した収入には繋がりません。また、契約が継続される保証もありません。
- 競合の存在:マンション管理士の資格を持つ人は年々増えています。また、管理会社自身もコンサルティング業務を行っていたり、他の士業(弁護士、建築士など)がマンション管理に関する相談に応じていたりするため、競合は少なくありません。
- 事務所経費の負担:事務所の家賃、光熱費、通信費、広告宣伝費など、独立すれば様々な経費がかかります。

日本マンション管理士会連合会の調査によると、マンション管理士の年収は、勤務形態や経験年数によって大きく異なりますが、独立開業しているマンション管理士でも、必ずしも高収入を得ている人ばかりではないようです。
一部の成功している独立系マンション管理士は、高い専門性と豊富な経験、そして卓越した営業力を持っています。しかし、多くの人にとっては、独立開業して生計を立てていくのは、決して簡単な道ではないのです。
【理由4】マンション管理会社との関係性が難しく、板挟みになりやすいから
マンション管理士は、管理組合の立場に立って、管理組合の利益のために助言や支援を行うのが役割です。
一方、多くのマンションでは、日常的な管理業務(清掃、点検、会計など)をマンション管理会社に委託しています。管理会社は、営利企業として自社の利益を追求します。
このため、マンション管理士が管理組合の代理人として、管理会社に対して委託業務費の値下げ交渉を行ったり、管理業務の質について厳しい指摘をしたりする場面では、管理会社との間に対立関係が生じることがあります。
もちろん、良心的な管理会社も多く、管理組合とマンション管理士、そして管理会社が良好なパートナーシップを築いて、協力してマンションの価値向上に取り組んでいるケースもたくさんあります。
しかし、中には、マンション管理士の介入を快く思わない管理会社や、管理組合に対して過大な請求をしていたり、質の低いサービスを提供していたりする管理会社も存在します。
そのような場合、マンション管理士は、
- 管理組合の利益を最大限に守るために、管理会社と毅然と交渉しなければならない。
- しかし、管理会社との関係が悪化しすぎると、その後の管理組合運営に支障が出る可能性も考慮しなければならない。
- 管理組合の役員(理事)の中にも、管理会社寄りの意見を持つ人がいたり、逆に過度に管理会社を敵視する人がいたりして、意見がまとまらないこともある。
といった、非常に難しい立場に立たされることがあります。まさに、管理組合と管理会社、そして時には理事会内部の意見の対立の板挟みになってしまうのです。
こうした状況で、冷静かつ客観的に、そして粘り強く調整役を務めるのは、相当なコミュニケーション能力と精神的なタフさが求められます。
【理由5】住民間の利害調整が精神的にきつく、クレーム対応も多いから
マンションには、様々な価値観やライフスタイルを持つ人々が共同で生活しています。そのため、どうしても住民間での意見の対立やトラブルが発生しやすくなります。
例えば、
- 騒音問題(子供の足音、楽器の音、生活音など)
- ペット飼育に関するトラブル(鳴き声、糞尿処理、アレルギーなど)
- ゴミ出しのルール違反
- 共用部分の私的利用
- 駐車場や駐輪場の利用方法
- 管理費や修繕積立金の滞納
- 大規模修繕工事の進め方や費用負担に関する意見の対立
など、挙げればきりがありません。
マンション管理士は、こうした住民間の利害が複雑に絡み合う問題に対して、中立的な立場から解決策を提示したり、話し合いの場を設けたりといった役割を期待されることがあります。
しかし、全ての住民が納得する解決策を見出すのは非常に困難です。どちらかの意見を立てれば、もう一方からは不満が出ることもあります。時には、感情的になった住民から厳しい言葉を浴びせられたり、理不尽な要求をされたりすることもあるでしょう。

クレーム対応は、マンション管理士の仕事の中でも特に精神的な負担が大きい業務の一つです。相手の話を丁寧に聞き、共感しつつも、客観的な事実に基づいて冷静に対応するスキルが求められます。
こうした住民間の利害調整やクレーム対応に日々追われることは、精神的にかなりきついと感じる人が多いようです。人の役に立ちたいという思いでマンション管理士になったとしても、こうした現実に直面して、疲弊してしまうケースも少なくないのです。
【理由6】法改正や新しい知識の習得が常に必要で、学習コストが高いから
マンション管理を取り巻く法律(区分所有法、マンション管理適正化法、建替え円滑化法など)は、社会情勢の変化や新たな問題の発生に対応するために、頻繁に改正されます。
また、マンションの設備や建材、修繕技術なども日々進歩していますし、会計処理や税務に関するルールも変わることがあります。
そのため、マンション管理士は、資格を取得した後も、常に最新の情報を収集し、新しい知識やスキルを習得し続ける必要があります。これを怠ると、適切なアドバイスができなくなってしまったり、管理組合に不利益を与えてしまったりする可能性もあります。
具体的には、
- 法改正に関するセミナーや研修会への参加
- 専門書や業界誌の購読
- 関連団体が主催する勉強会への参加
- 新しい技術や工法に関する情報収集
などを継続的に行わなければなりません。
これらの学習には、当然ながら時間と費用(学習コスト)がかかります。特に独立開業しているマンション管理士にとっては、これらのコストは全て自己負担となります。
「せっかく難関資格を取ったのに、また勉強し続けなければならないのか…」と感じるかもしれませんが、専門家として信頼を維持し、質の高いサービスを提供し続けるためには、この継続的な学習は不可欠なのです。
常に新しいことを学び続ける意欲と、そのための時間的・経済的な余裕がないと、マンション管理士として長く活躍していくのは難しいかもしれませんね。
【理由7】AIやテクノロジーの進化で将来性が不透明?仕事がなくなる可能性も?
近年、AI(人工知能)や様々なテクノロジーが急速に進化しており、多くの業界で仕事のあり方が変わろうとしています。マンション管理の分野も例外ではありません。
例えば、
- 管理組合の会計処理や書類作成:AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって自動化される可能性があります。
- 法律や規約に関する簡単な相談:AIチャットボットが対応できるようになるかもしれません。
- 建物の劣化診断:ドローンやセンサー技術を活用して、より効率的かつ正確に行えるようになる可能性があります。
- 遠隔での設備監視や管理:IoT技術の進展により、現地に行かなくても状況を把握できるようになるかもしれません。
こうしたテクノロジーの進化によって、これまでマンション管理士が担ってきた業務の一部が、AIやシステムに代替されるのではないか、という懸念の声も聞かれます。そうなると、マンション管理士の仕事が減ってしまったり、将来性が不透明になったりするのではないか、と不安に思う人もいるでしょう。
確かに、定型的な事務作業や情報収集といった業務は、今後テクノロジーに置き換わっていく可能性は高いと考えられます。
しかし、その一方で、
- 住民間の複雑な利害調整や合意形成
- 個々のマンションの状況に応じたオーダーメイドのコンサルティング
- 人間的なコミュニケーションや信頼関係の構築
- 倫理的な判断や創造性が求められる業務
といった、高度なコミュニケーション能力や専門的な判断力、人間的な温かみが求められる業務は、AIやテクノロジーでは簡単に代替できないという意見も多くあります。
マンション管理士が、AIやテクノロジーを使いこなしつつ、人間にしかできない付加価値の高いサービスを提供できるようになれば、むしろその専門性はより一層高まるとも考えられます。しかし、そのためには、変化に対応し、新しいスキルを積極的に習得していく姿勢が不可欠となるでしょう。
将来、どのような形でマンション管理士の仕事が変化していくのかは、まだ誰にも分かりません。この不確実性も、「やめとけ」と言われる一因になっているのかもしれませんね。
それでもマンション管理士を目指すなら?後悔しないための注意点
ここまで、マンション管理士の資格取得をおすすめしない理由をたくさんお伝えしてきました。読んでいるうちに、「やっぱりマンション管理士はやめておこうかな…」と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、マンションの適正な管理運営をサポートするというマンション管理士の仕事は、社会的に非常に意義があり、やりがいのある仕事でもあります。もし、それでも「自分はマンション管理士を目指したい!」という強い意志があるなら、後悔しないために以下の点に注意して、賢明な道を選んでくださいね。
明確な目的意識とキャリアプランを持つ
まず最も大切なのは、「なぜマンション管理士になりたいのか?」「マンション管理士になって何をしたいのか?」という明確な目的意識と、その後のキャリアプランを具体的に描くことです。
「難関資格だから将来安泰そう」「なんとなく役に立ちそう」といった曖昧な理由で目指すと、前述したような厳しい現実に直面したときに、挫折してしまう可能性が高いです。
例えば、
- 現在住んでいるマンションの管理組合活動に貢献したい。
- マンション管理会社で専門性を高め、キャリアアップしたい。
- 将来的に独立開業し、地域社会のマンション問題解決に貢献したい。
- 他の不動産関連資格と組み合わせて、総合的なコンサルティングサービスを提供したい。
など、具体的な目標を設定しましょう。そして、その目標を達成するために、資格取得後にどのようなステップを踏んでいくのか、長期的な視点でキャリアプランを考えることが重要です。
強い目的意識があれば、困難な状況に直面しても、それを乗り越えるためのモチベーションを維持しやすくなります。
実務経験を積むための具体的な道筋を考える
マンション管理士として活躍するためには、実務経験が不可欠です。資格を取得する前から、あるいは取得後すぐに、どのようにして実務経験を積んでいくのか、具体的な道筋を考えておく必要があります。
考えられる選択肢としては、
- マンション管理会社への就職・転職:フロント担当者(マンション担当者)として、複数の管理組合を担当し、日常的な管理業務から総会・理事会の運営支援、修繕工事の提案まで、幅広い実務経験を積むことができます。
- マンション管理士事務所やコンサルティング会社への就職:既に独立しているマンション管理士の下で働き、コンサルティング業務のノウハウを学ぶことができます。ただし、求人は少ない傾向にあります。
- 不動産関連企業(デベロッパー、仲介会社など)での経験:マンションの開発や販売、仲介といった業務を通じて、マンションに関する知識や経験を深めることも、間接的に役立つ可能性があります。
- 自身の住むマンションの管理組合活動への積極的な参加:理事や専門委員として、実際に管理組合の運営に携わることで、貴重な経験を得ることができます。
- 関連団体が主催する研修やOJTへの参加:マンション管理士会などが主催する実務研修やOJT(On-the-Job Training)の機会があれば、積極的に参加しましょう。
どの道を選ぶにしても、受け身で待っているだけでは、なかなかチャンスは巡ってきません。積極的に情報を収集し、行動を起こすことが大切です。
他の関連資格とのダブルライセンスを検討する
マンション管理士の資格だけでは、仕事の幅が限られたり、他の専門家との競争で不利になったりする可能性があります。そこで、他の関連資格と組み合わせて取得する(ダブルライセンス、トリプルライセンス)ことで、専門性を高め、活躍の場を広げることが期待できます。
マンション管理士と相性の良い資格としては、
- 管理業務主任者:マンション管理会社に設置が義務付けられている国家資格で、重要事項説明などの独占業務があります。マンション管理会社への就職・転職を目指すなら、ぜひ取得しておきたい資格です。試験範囲もマンション管理士と重複する部分が多いです。
- 宅地建物取引士(宅建士):不動産取引の専門家であり、不動産業界で働く上で非常に有利な資格です。マンションの売買や賃貸にも関わるため、マンション管理士の知識と合わせて役立ちます。
- 賃貸不動産経営管理士:賃貸住宅の管理に関する専門知識を持つ国家資格です。賃貸マンションの管理にも関わる場合に有効です。
- 建築士(一級・二級):建物の設計や工事監理を行う専門家です。大規模修繕工事など、技術的な側面からのアドバイスが必要な場合に強みを発揮します。
- ファイナンシャル・プランナー(FP):個人の資産運用やライフプランニングに関するアドバイスを行う専門家です。修繕積立金の運用や、住民のライフプランに合わせた資金計画の相談などに応用できます。
これらの資格を組み合わせることで、より専門性の高い、付加価値のあるサービスを提供できるようになり、他のマンション管理士との差別化を図ることができます。
コミュニケーション能力と交渉力を徹底的に磨く
マンション管理士の仕事は、法律や専門知識をただ知っているだけでは務まりません。その知識を、管理組合の役員や住民の方々に分かりやすく説明し、納得してもらい、合意形成に導くための高度なコミュニケーション能力と交渉力が不可欠です。
特に、
- 傾聴力:相手の話を丁寧に聞き、何を問題と感じているのか、何を求めているのかを正確に理解する力。
- 説明力:専門的な内容を、専門知識のない人にも分かりやすい言葉で、論理的に説明する力。
- 提案力:問題解決のための具体的な選択肢を複数提示し、それぞれのメリット・デメリットを明確に伝える力。
- 調整力:意見の異なる複数の関係者の間に立ち、それぞれの立場を尊重しながら、妥協点を見つけ出し、合意に導く力。
- 交渉力:管理会社や業者などと、管理組合の利益を守るために、粘り強く交渉する力。
- 対人関係構築力:管理組合の役員や住民、管理会社担当者など、多くの人と良好な信頼関係を築く力。
といった能力は、日々の業務の中で意識して磨いていく必要があります。
これらのソフトスキルは、一朝一夕に身につくものではありません。セミナーに参加したり、ロールプレイングで練習したり、経験豊富な先輩から学んだりしながら、地道に向上させていく努力が求められます。
最新の情報収集と継続的な学習を怠らない
前述したように、マンション管理を取り巻く法律や技術は常に変化しています。そのため、マンション管理士として活躍し続けるためには、常にアンテナを張り、最新の情報を収集し、継続的に学習する姿勢が欠かせません。
具体的には、
- 国土交通省や関連省庁のウェブサイトを定期的にチェックし、法改正や新しい通達などの情報を把握する。
- マンション管理に関する専門誌やニュースサイトを購読する。
- マンション管理士会や関連団体が主催する研修会、セミナー、勉強会に積極的に参加する。
- 他のマンション管理士や専門家(弁護士、建築士など)とのネットワークを築き、情報交換を行う。
- 新しい管理手法や技術、判例などについて、自主的に学習する習慣をつける。
といったことを心がけましょう。
「資格を取ったからもう勉強しなくていい」というわけでは決してありません。学び続ける姿勢こそが、専門家としての信頼を維持し、変化の激しい時代を生き抜くための鍵となるのです。
マンション管理士資格取得の失敗を避けるための総括
さて、ここまでマンション管理士の資格について、なぜ「やめとけ」と言われるのか、その多くの理由と、それでも目指す場合の注意点について、詳しくお話ししてきました。
最後に、この記事でお伝えしたかった大切なポイントをまとめておきますね。
マンション管理士の資格取得を慎重に考えるべき理由の総括
- 難易度が高い割に独占業務がない:苦労して取得しても、その資格がないとできない仕事が法律上定められていません。
- 実務経験がないと仕事に繋がりにくい:資格だけでは不十分で、実際の現場経験が非常に重視されるため、ペーパーライセンス化しやすいです。
- 独立開業のハードルが高い:営業力や人脈、実績がないと、安定した収入を得るのは容易ではありません。
- 管理会社との板挟みになりやすい:管理組合と管理会社の間に立ち、難しい調整役を担うことが多いです。
- 住民間の利害調整やクレーム対応で精神的にきつい:様々な価値観を持つ住民間のトラブル解決は、精神的な負担が大きいです。
- 継続的な学習コストが高い:法改正や新しい知識の習得が常に必要で、時間と費用がかかります。
- AIやテクノロジーの進化による将来性の不透明感:一部業務が代替される可能性も指摘されています。
これらの理由から、「難関資格だから安心」「取ればなんとかなる」といった安易な気持ちでマンション管理士を目指すのは、後悔する可能性が高いと言わざるを得ません。
もし、それでもマンション管理士という仕事に魅力を感じ、目指すことを決意するのであれば、
- なぜなりたいのか、なって何をしたいのかという明確な目的意識を持つこと。
- 資格取得後のキャリアプランを具体的に描き、実務経験を積むための道筋を考えること。
- 必要に応じて他の関連資格とのダブルライセンスも視野に入れ、専門性を高める努力をすること。
- コミュニケーション能力や交渉力といったソフトスキルを徹底的に磨くこと。
- 常に最新情報を収集し、学び続ける姿勢を持つこと。
といった点を強く意識し、周到な準備と覚悟を持って臨むことが何よりも大切です。
マンション管理士は、決して「楽して稼げる」資格ではありません。しかし、マンションという多くの人々の大切な資産と快適な暮らしを守るという、非常に社会的意義の大きな仕事です。その仕事に情熱を持ち、困難を乗り越えていく覚悟があるのなら、挑戦する価値はあるかもしれません。
この記事が、あなたの賢明な判断の一助となり、将来のキャリア選択で後悔しないためのお役に立てれば、とても嬉しいです。