AIエンジニアはやめとけ!華やかな世界の裏にある6つの落とし穴と後悔

やめとけ

「AIエンジニア」と聞くと、皆さんはどんなお仕事を想像されますか?なんだか最先端の技術を駆使して、未来のサービスや製品を次々と生み出していく、とってもカッコよくてやりがいのあるお仕事…そんなキラキラしたイメージをお持ちの方も多いかもしれませんね。

ニュースやメディアでも「AIの進化が止まらない!」「これからはAI人材が社会を動かす!」なんて言葉をよく目にしますし、学生さんやキャリアチェンジを考えている社会人の方にとっては、非常に魅力的な選択肢に映るでしょう。でも、インターネットで「AIエンジニア」と検索してみると、「AIエンジニア やめとけ」「AIエンジニア 後悔」「AIエンジニア きつい」なんて、ちょっとドキッとするような言葉も一緒に表示されることがあるんです。

「え、そんなに大変なの?将来性もあって、引く手あまただと思っていたのに…」と、不安に感じてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。一体どうして、そんな声があがってしまうのでしょう?

この記事では、AIエンジニアという職業について、なぜ一部で「やめとけ」と言われてしまうのか、どんな点に注意しないと、憧れだけで飛び込んだ結果、大きな後悔につながってしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして皆さんに分かりやすくご説明していきたいと思います。

もちろん、AIエンジニアには素晴らしい魅力や社会を大きく変える可能性を秘めた、夢のあるお仕事がたくさんあります。でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんが将来の大きな決断をする際に、後で「こんなはずじゃなかった…」と肩を落とすことがないよう、お手伝いができれば嬉しいです。最先端技術に関わるお仕事だからこそ、その実態をしっかりと見極めることが大切ですからね。

この記事でお伝えしたいこと

  • AIエンジニアの基本的な仕事内容、求められるスキル、そして一般的な魅力や将来性
  • なぜAIエンジニアが「やめとけ」と言われるのか、その具体的な6つの理由と背景
  • AIエンジニアを目指す上で知っておくべき潜在的なリスクや、理想と現実のギャップ
  • それでもAIエンジニアを目指したいと考えた場合に、後悔を避け、賢明な判断をするための重要な注意点と心構え
  • ご自身の適性や価値観に、AIエンジニアという専門性の高い道が本当に合っているのかを見極めるためのヒント

  1. AIエンジニアとは?その概要と魅力
    1. AIエンジニアの仕事内容と種類
    2. AIエンジニアが注目される背景と将来性
    3. AIエンジニアの一般的な魅力
  2. AIエンジニアはやめとけと言われる6つの深刻な理由
    1. 【理由①】絶え間ない学習地獄と技術の陳腐化の速さが尋常ではないから
    2. 【理由②】「AI万能」という過度な期待とビジネス現場の現実とのギャップに苦しむから
    3. 【理由③】華やかなイメージとは裏腹なデータ収集・前処理といった泥臭い作業の多さ
    4. 【理由④】倫理的・社会的責任の重さとAIの判断に対する説明責任の難しさ
    5. 【理由⑤】求人ニーズと個人のスキルとのミスマッチや、過度な期待による就職・転職の難しさ
    6. 【理由⑥】AI自身の進化による「AIエンジニア不要論」への漠然とした、しかし無視できない不安
  3. それでもAIエンジニアを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え
    1. 【ポイント①】なぜAIエンジニアになりたいのか、その「情熱の源泉」と「明確なビジョン」を掘り下げる
    2. 【ポイント②】数学・統計学・プログラミングといった基礎学力を徹底的に固め、論理的思考力を磨く
    3. 【ポイント③】実践的な経験を積む機会を積極的に探し、ポートフォリオを構築する
    4. 【ポイント④】特定の専門分野(ドメイン知識)を見つけ、AI技術と掛け合わせる視点を持つ
    5. 【ポイント⑤】コミュニケーション能力や倫理観を磨き、「人間ならではの価値」を高める努力をする
  4. AIエンジニアを目指す上での「やめとけ」理由総括

AIエンジニアとは?その概要と魅力

まずはじめに、「AIエンジニアって、具体的にどんなことをしているの?」「プログラマーとはどう違うの?」という方のために、AIエンジニアの基本的なところからご説明しますね。

その専門性や社会的な役割、そしてなぜこれほどまでに注目されているのかを知ることは、今回のテーマを深く理解する上でとても大切なんです。

AIエンジニアの仕事内容と種類

AIエンジニアとは、その名の通り、人工知能(AI:Artificial Intelligence)に関連する技術を専門とし、AIを用いたシステムやサービス、製品の開発・実装・運用などを行うエンジニアのことです。

AIと一口に言っても、その技術は非常に幅広く、AIエンジニアの仕事内容も多岐にわたります。大きく分けると、以下のような専門分野があるんですよ。

  • 機械学習エンジニア:AIの中核技術である「機械学習」のアルゴリズムを設計・開発し、モデルを構築・学習させ、システムに組み込む専門家です。例えば、画像認識、音声認識、自然言語処理、推薦システムなど、様々な分野で活躍します。
  • データサイエンティスト:大量のデータ(ビッグデータ)を収集・分析し、そこからビジネス上の課題解決や意思決定に役立つ知見を見つけ出し、機械学習モデルの構築にも関わることがあります。統計学や数学の知識、そしてビジネスへの理解が求められます。
  • AIリサーチャー(研究者):まだ世の中にない新しいAIアルゴリズムや理論を研究・開発する専門家です。大学や企業の研究機関などで、より高度で革新的なAI技術の創出を目指します。
  • AIコンサルタント/AIプランナー:企業の課題に対して、AI技術をどのように活用すれば解決できるかを企画・提案し、導入を支援する役割です。技術的な知識だけでなく、ビジネスの理解やコミュニケーション能力も重要になります。

これらはあくまで一例で、実際にはこれらの領域が重なり合っていたり、より細分化されていたりすることもあります。

共通しているのは、数学的な知識(線形代数、微分積分、確率統計など)、プログラミングスキル(Pythonがよく使われます)、そしてAIや機械学習に関する専門知識が不可欠だということです。

AIエンジニアが注目される背景と将来性

AIエンジニアがこれほどまでに注目され、「将来性がある」と言われるのには、いくつかの大きな理由があります。

  • AI技術の急速な進化と社会への浸透:ディープラーニング(深層学習)をはじめとするAI技術は、ここ数年で目覚ましい進歩を遂げ、自動運転、医療診断支援、チャットボット、金融、製造業の品質管理など、私たちの生活やビジネスのあらゆる場面で活用され始めています。この流れは今後ますます加速すると予想されています。
  • 深刻なAI人材不足:AI技術を活用したいと考える企業は急増していますが、そのニーズに対して、高度な専門知識を持つAIエンジニアの数はまだまだ不足しているのが現状です。経済産業省の調査などでも、将来的に数十万人規模でAI人材が不足すると予測されており(参考:IT人材育成の状況等について – 経済産業省)、その需要の高さから引く手あまたと言われることもあります。
  • 生産性向上や新たな価値創出への期待:AIを活用することで、従来の業務を効率化したり、人間では難しかった高度な分析や予測を行ったり、全く新しいサービスやビジネスモデルを生み出したりすることが期待されています。企業の競争力を高める上で、AIの活用は不可欠になりつつあります。

こうした背景から、AIエンジニアは「21世紀で最もセクシーな職業」と評されたり(データサイエンティストについてですが)、高い年収が提示されたりすることも珍しくなく、多くの人が憧れを抱くのもうなずけますよね。

AIエンジニアの一般的な魅力

そんなAIエンジニアという職業には、どのような魅力があるのでしょうか。一般的に言われるメリットをいくつか挙げてみますね。

  • 最先端技術に触れられる刺激的な環境:常に新しい技術や知識に触れ、世の中を変える可能性のあるプロジェクトに関わることができます。知的好奇心が旺盛な人にとっては、非常にやりがいのある環境でしょう。
  • 社会貢献性の高さ:医療、環境、教育、防災など、様々な社会課題の解決にAI技術で貢献できる可能性があります。自分の仕事が社会の役に立っているという実感を得やすいです。
  • 高い専門性が身につく:数学、統計学、プログラミング、機械学習など、高度で専門的な知識やスキルを習得できます。これは、他の分野への応用も利きやすい強力な武器となります。
  • 高収入の可能性:人材不足と需要の高さから、特に優秀なAIエンジニアは、他のITエンジニアと比較しても高い給与水準を得られる可能性があります。
  • キャリアパスの多様性:AIエンジニアとしての専門性を深めるだけでなく、データサイエンティスト、AIコンサルタント、研究者、あるいはAIを活用する事業の起業など、多様なキャリアを描ける可能性があります。

これらの魅力に惹かれて、文系・理系を問わず、多くの方がAIエンジニアを目指そうと考えるんですね。しかし、その華やかなイメージの裏には、厳しい現実や知っておくべき課題もたくさん隠れているんです。


AIエンジニアはやめとけと言われる6つの深刻な理由

さて、ここからが本題です。AIエンジニアの概要と魅力をご理解いただいたところで、なぜ一部で「AIエンジニアはやめとけ」という、ちょっと心配になるような声があがってしまうのか、その具体的な理由を6つに絞って、詳しくご説明していきたいと思います。

これらの理由を知っておくことは、皆さんがAIエンジニアという道を検討する上で、非常に重要になってくるはずです。

【理由①】絶え間ない学習地獄と技術の陳腐化の速さが尋常ではないから

AI技術、特に機械学習やディープラーニングの分野は、日進月歩どころか、秒進分歩とも言えるほどの凄まじいスピードで進化し続けています。

毎日のように新しい論文が発表され、新しいアルゴリズムやフレームワーク、ツールが登場し、数ヶ月前まで最新だった技術が、あっという間に時代遅れになってしまうことも珍しくありません。

これは、AIエンジニアにとって何を意味するのでしょうか?それは、「一度スキルを身につければ安泰」という考えが全く通用せず、常に最新の情報をキャッチアップし、新しい技術を学び続けなければ、あっという間に市場価値が低下してしまうという厳しい現実です。

まさに「学習地獄」とも言える状況に身を置く覚悟が必要になります。

  • 英語の論文や技術ドキュメントの読解は必須:最先端の情報は、まず英語で発表されることがほとんどです。英語の論文や技術ブログ、公式ドキュメントなどを日常的に読みこなす能力が求められます。
  • 新しいプログラミング言語やライブラリ、フレームワークの習得:Pythonが主流とはいえ、TensorFlow, PyTorch, scikit-learnといったライブラリやフレームワークも頻繁にアップデートされますし、時には新しい言語やツールを学ぶ必要も出てきます。
  • 数学や統計学の知識の深化:AIの根幹を支える数学や統計学の理論も、より深く理解し、応用できるようになるための継続的な学習が必要です。
  • 業務時間外の学習が常態化しやすい:日々の業務に追われながら、これらの最新技術を学び続けるためには、休日や業務時間外にも多くの時間を自己学習に充てなければならないケースが多いです。

「勉強が好きだから大丈夫!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは「趣味の勉強」とは異なり、「生き残るための勉強」です。常に「このままでは取り残されるのではないか」というプレッシャーを感じながら、終わりなき学習を続けることは、想像以上に精神的な負担が大きいものです。もし、あなたが安定志向で、一つのスキルをじっくりと深めたいと考えるタイプだとしたら、この変化の速さは大きなストレスになるかもしれません。

「数年前に学んだ機械学習の知識が、もうほとんど通用しなくなっていた…」「新しいフレームワークを覚えるのに必死で、プライベートな時間が全くない…」そんな悲鳴にも似た声が、現役のAIエンジニアから聞こえてくることもあります。この「学び続ける覚悟」がないのであれば、AIエンジニアの道は非常に険しいものになるでしょう。

「AIエンジニアって、本当に毎日が勉強。ちょっと油断するとすぐ浦島太郎状態だよ。新しい論文とかフレームワークとか、追いかけるだけで精一杯。好きじゃないと絶対続かない仕事だと思う。」(AIエンジニア歴5年のAさんの声)

この絶え間ない学習へのプレッシャーが、「やめとけ」と言われる大きな理由の一つなんですね。

【理由②】「AI万能」という過度な期待とビジネス現場の現実とのギャップに苦しむから

メディアなどでは、「AIが全てを解決する!」「AIを導入すれば劇的に業務が改善する!」といった、まるで魔法の杖であるかのようなAIのイメージが先行していることがあります。

しかし、現実のAI技術は、まだまだ発展途上であり、万能ではありません。そして、この「AIに対する過度な期待」と「ビジネス現場の現実」との大きなギャップが、AIエンジニアを苦しめる原因の一つになっているのです。

例えば、以下のような状況に直面することがあります。

  • データがなければAIは何もできない:AIモデルを学習させるためには、大量かつ質の高いデータが不可欠です。しかし、多くの企業では、そもそもAIに使えるようなデータが整備されていなかったり、データの質が悪かったり、あるいはデータがサイロ化(部署ごとに孤立)していてアクセスできなかったりするケースが少なくありません。「データはあるはずだから、あとはAIで何とかしてくれ」と丸投げされても、AIエンジニアは途方に暮れてしまいます。
  • AIで解決できない課題もある:全ての課題がAIで解決できるわけではありません。時には、AIよりも従来の手法の方が効率的だったり、そもそもAI技術の適用が不適切だったりするケースもあります。しかし、経営層や他部署から「うちもAIを導入したい!」という号令だけがかかり、具体的な目的や課題設定が曖昧なままプロジェクトがスタートしてしまうと、AIエンジニアは成果を出せずに苦しむことになります。
  • PoC(概念実証)止まりで実用化に至らない:実験的なプロジェクト(PoC)で一定の成果が出たとしても、それを実際の業務システムに組み込み、安定的に運用し、ビジネス上の価値を生み出すまでには、技術的なハードルだけでなく、組織的な壁やコストの問題など、多くの障壁があります。多くのAIプロジェクトが、PoCの段階で頓挫してしまうことも珍しくありません。
  • 期待されたほどの精度や効果が出ない:AIモデルの精度は100%ではありません。誤認識や誤判定も起こり得ます。また、AIを導入したからといって、すぐに劇的なコスト削減や売上向上が実現するとは限りません。こうした現実を理解してもらえず、「AIなのに、なぜこんなこともできないんだ?」と過度なプレッシャーをかけられることもあります。

「AIエンジニアなら、どんな難しい問題も魔法のように解決してくれるはずだ」というような、周囲の誤った期待に応えようと奮闘し、結果として疲弊してしまう…そんなAIエンジニアも少なくないのです。

技術的なスキルだけでなく、ビジネスサイドとのコミュニケーション能力や、期待値を適切にコントロールする能力も非常に重要になってきます。

「上司から『このデータ使ってAIで何かすごいことやってよ!』って言われたけど、データはぐちゃぐちゃだし、目的も曖昧だし…。AIは魔法じゃないって、何度言っても分かってもらえないのが辛い。」(企業内AIエンジニアBさんの嘆き)

この理想と現実のギャップに挟まれ、無力感を感じてしまうことが、「やめとけ」と言われる一因となっているのかもしれませんね。

【理由③】華やかなイメージとは裏腹なデータ収集・前処理といった泥臭い作業の多さ

AIエンジニアの仕事と聞くと、高度なアルゴリズムを駆使して未来的なシステムを開発する、といった華やかなイメージを抱くかもしれません。

しかし、実際のAI開発プロジェクトにおいて、AIエンジニアが費やす時間の大部分は、実は非常に地道で泥臭い作業に充てられていることが多いのです。その代表格が、「データの収集」と「データの前処理(クレンジングや整形)」です。

「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れたら、ゴミしか出てこない)」という言葉があるように、AIモデルの性能は、学習に使うデータの質と量に大きく左右されます。

そのため、AIモデルを構築する前に、以下のような作業に膨大な時間と労力を費やす必要があります。

  • 必要なデータの収集:社内外の様々なソースから、目的に合ったデータを集めてきます。時には、Webスクレイピング(ウェブサイトから情報を自動収集する技術)を行ったり、センサーデータを取得したり、あるいは手作業でデータを入力したりする必要も出てきます。
  • データクレンジング:収集したデータには、欠損値(データが抜けている部分)、外れ値(異常に大きい、または小さい値)、ノイズ(誤った情報)、表記の揺れ(「東京」と「東京都」など)といった「ゴミ」がたくさん含まれています。これらを一つひとつ丁寧に除去したり、修正したりする作業が必要です。
  • データ整形・変換:収集したデータを、AIモデルが学習しやすい形式に整形・変換します。例えば、カテゴリデータを数値に変換したり(One-Hotエンコーディングなど)、数値データを正規化(一定の範囲に収めること)したり、画像データであればサイズを統一したり、明るさを調整したりといった作業が含まれます。
  • アノテーション(教師データ作成):教師あり学習(正解データを与えてAIに学習させる方法)を行う場合、収集したデータに対して、人間が一つひとつ「正解ラベル」を付与していく「アノテーション」という作業が必要になります。例えば、大量の猫の画像に「猫」というラベルを、犬の画像に「犬」というラベルを付ける、といった地道な作業です。これが非常に時間とコストのかかる作業になることもあります。

AIプロジェクト全体の作業時間の6割から8割程度が、こうしたデータ収集と前処理に費やされるとも言われています。

つまり、AIエンジニアは、高度な数学やプログラミングの知識を駆使する時間よりも、むしろこうした地道で忍耐力のいる作業に多くの時間を割いているのが実情なのです。

もし、あなたが「常に新しいアルゴリズムを開発していたい」「もっとクリエイティブな仕事がしたい」と考えてAIエンジニアを目指すのであれば、この泥臭い現実とのギャップに直面し、「こんなはずじゃなかった…」と感じてしまうかもしれません。

こうした地道な作業を厭わず、むしろそこに面白さや重要性を見いだせる人でなければ、AIエンジニアとして長く活躍するのは難しいかもしれませんね。

【理由④】倫理的・社会的責任の重さとAIの判断に対する説明責任の難しさ

AI技術は、私たちの社会に大きな便益をもたらす可能性がある一方で、その使い方を誤れば、深刻な倫理的問題や社会的な不利益を引き起こす危険性もはらんでいます。

AIエンジニアは、自らが開発するAIシステムが、社会にどのような影響を与えるのかを常に意識し、高い倫理観と責任感を持って開発に取り組む必要があります。

例えば、以下のような倫理的・社会的な課題が指摘されています。

  • バイアスと公平性:AIモデルは、学習に用いたデータに含まれる偏り(バイアス)を反映してしまうことがあります。例えば、過去の採用データに性別や人種による偏りがあれば、AIが作成した採用判定モデルも同様の偏りを持ってしまい、特定の属性の人々を不当に差別してしまう可能性があります。
  • プライバシーの侵害:AIが大量の個人データを収集・分析することで、個人のプライバシーが侵害されるリスクがあります。
  • 透明性と説明責任(Explainable AI:XAI):特にディープラーニングのような複雑なAIモデルは、なぜそのような判断や予測をしたのか、その根拠を人間が理解するのが難しい「ブラックボックス」状態になることがあります。しかし、例えば医療診断支援AIが誤った診断を下した場合や、自動運転車が事故を起こした場合など、AIの判断が重大な結果を招く可能性がある場面では、その判断プロセスを説明できること(説明責任)が強く求められます。この「説明できるAI(XAI)」の実現は、現在のAI技術における大きな課題の一つです。
  • 雇用の喪失や格差の拡大:AIによる自動化が進むことで、一部の仕事が失われたり、AIを使いこなせる人とそうでない人との間で経済的な格差が拡大したりする可能性も懸念されています。
  • 悪用のリスク:AI技術が、フェイクニュースの生成、監視社会の強化、自律型兵器の開発といった、社会にとって有害な目的に悪用されるリスクもあります。

AIエンジニアは、こうした複雑で難しい問題に対して、技術者としての視点だけでなく、倫理的・社会的な視点からも深く考察し、自らが開発するAIシステムが「善きこと」のために使われるように、細心の注意を払わなければなりません。

時には、開発の方向性について、倫理的な観点から異議を唱えたり、社会的な影響を考慮して開発を中止したりする判断も求められるかもしれません。これは、非常に重い責任であり、大きな精神的プレッシャーを伴います。

総務省や経済産業省なども、AI開発における倫理原則やガイドラインを策定し、企業や開発者にその遵守を呼びかけています(参考:AI開発ガイドライン – 総務省)。しかし、最終的な判断と責任は、現場のエンジニアにも少なからずかかってくるのです。

「自分が作ったAIが、もし誰かを傷つけたり、不公平な結果を生み出したりしたらどうしようって、時々すごく怖くなる。技術の力は大きいけど、その分、責任も重いってことを痛感してる。」(AI倫理に関心を持つ若手エンジニアCさんの言葉)

「ただ技術的に面白いから」「新しいものを作りたいから」という動機だけでは、この重責を全うするのは難しいかもしれません。

「社会のために、人のために、何ができるのか」という高い倫理観と使命感がなければ、AIエンジニアとして道を誤ってしまう危険性すらあるのです。

【理由⑤】求人ニーズと個人のスキルとのミスマッチや、過度な期待による就職・転職の難しさ

「AI人材は引く手あまたで、高年収も期待できる」というイメージが先行していますが、現実はそれほど単純ではありません。確かにAI人材の需要は高いのですが、企業が本当に求めているのは、単にプログラミングができるというだけでなく、ビジネス課題を深く理解し、AI技術を適切に選択・活用して、具体的な成果を出せる、ごく一部の高度な専門性を持った人材であることが多いのです。

一方で、AIブームに乗ってプログラミングスクールなどで短期間だけAIを学んだ、というレベルの人材も増えてきており、そうした方々と、企業が求める高度なスキルセットとの間には、大きなギャップ(ミスマッチ)が生じているケースが少なくありません。

  • 即戦力となる経験者への需要集中:多くの企業は、AIプロジェクトをリードできるような、数年以上の実務経験を持つシニアクラスのAIエンジニアやデータサイエンティストを求めています。未経験者や経験の浅いジュニアクラスのエンジニアにとっては、希望するようなポジションに就くのは依然として狭き門である可能性があります。
  • 「AIエンジニア」という肩書だけでは通用しない:単に「AIの勉強をしました」というだけでは、企業からは評価されにくいです。実際にどのような課題に対して、どのようなAI技術を使って、どのような成果を出したのか、具体的な実績やポートフォリオが重視されます。
  • 高いコミュニケーション能力やビジネス理解力の要求:技術力だけでなく、ビジネスサイドの担当者と円滑にコミュニケーションを取り、課題を正確に把握し、AIの専門知識がない人にも分かりやすく説明できる能力が求められます。
  • 過度な期待による採用ハードルの上昇:AIエンジニアに対して「何でもできるスーパーマン」のような過度な期待を抱いている企業もあり、その結果、採用のハードルが不必要に高くなっているケースも見受けられます。

「AIエンジニアになれば、すぐに高収入で良い条件の会社に入れるはずだ」と安易に考えて、キャリアチェンジを目指したものの、なかなか希望するような就職先が見つからなかったり、入社できたとしても期待していたような仕事内容ではなかったりして、後悔してしまう人もいるかもしれません。

また、AI技術の進化が速いため、企業が求めるスキルセットも常に変化しています。数年前に主流だったスキルが、今ではあまり求められなくなっている、ということもあり得ます。常に市場のニーズを把握し、自身のスキルをアップデートし続ける努力が不可欠です。

「AIエンジニアに転職したくてプログラミングスクールに通ったけど、いざ就職活動してみたら、未経験だと全然相手にしてもらえない…。求人はたくさんあるように見えても、企業が求めてるのはもっとハイレベルな人材なんだって痛感した。」(転職活動中のDさんの悩み)

AIエンジニアという職業は、確かに将来性がありますが、それは厳しい競争を勝ち抜き、常に自己成長を続けられる人に限られるのかもしれません。

「AI」という言葉の響きだけで判断せず、現実の求人市場や求められるスキルレベルを、しっかりとリサーチすることが大切です。

【理由⑥】AI自身の進化による「AIエンジニア不要論」への漠然とした、しかし無視できない不安

これは少し皮肉な話かもしれませんが、AIエンジニアが開発しているAI技術そのものが進化し、高度化していくことによって、将来的にはAIエンジニア自身の仕事の一部、あるいは多くがAIによって自動化され、不要になってしまうのではないか、という漠然とした不安の声も、一部では聞かれるようになっています。

例えば、近年注目されている「AutoML(自動機械学習)」といった技術は、データの前処理からモデルの選択、ハイパーパラメータのチューニングといった、従来AIエンジニアが多くの時間と専門知識を費やして行っていた作業の一部を自動化することを目指しています。

また、自然言語処理技術の発展により、人間が自然言語で指示するだけでAIがコードを生成したり、システムを構築したりするような未来も、遠くないかもしれません。

もし、AIモデルの構築や運用が、専門知識を持たない人でも簡単に行えるようになってしまえば、AIエンジニアの専門性の価値は相対的に低下し、仕事が奪われてしまうのではないか…そんな不安を感じるのも無理はないかもしれません。

もちろん、現在のところ、AIがAIエンジニアの仕事を完全に代替できるようになるまでには、まだ多くの技術的なハードルがありますし、AIの設計思想を考えたり、倫理的な判断をしたり、複雑なビジネス課題を解決したりといった、より高度で創造的な役割は、依然として人間のエンジニアに求められ続けるでしょう。

しかし、AI技術の進化のスピードを考えると、10年後、20年後にAIエンジニアという職業がどのような形になっているのか、正確に予測するのは非常に難しいのが現状です。

「自分たちが作っているAIに、いつか自分たちの仕事が奪われるかもしれない」という、ある種のジレンマを抱えながら働くことになる可能性も、頭の片隅には置いておく必要があるかもしれませんね。この「将来への不確実性」もまた、「やめとけ」と言われる背景の一つになっているのかもしれません。

「最近のAIの進化を見てると、本当にすごいと思う反面、いつか自分たちの仕事もAIに取って代わられるんじゃないかって、ちょっと怖くなる時がある。常に新しい価値を生み出し続けないと、生き残れないんだろうな…。」(ベテランAIエンジニアEさんの本音)

この先、AIエンジニアに求められるのは、単にAIを作る技術だけでなく、AIと協働し、AIを賢く活用し、そしてAIでは代替できない人間ならではの価値を発揮できる能力なのかもしれませんね。

以上が、「AIエンジニアはやめとけ」と言われることがある主な6つの理由です。

どれも、AIエンジニアという最先端の職業ならではの、光と影、理想と現実を映し出しており、決して軽い気持ちで受け流せるものではない、ということがお分かりいただけたでしょうか。


それでもAIエンジニアを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え

ここまでAIエンジニアの厳しい側面や、「やめとけ」と言われる理由について詳しくお話ししてきましたが、「うーん、やっぱりAIエンジニアになるのは、想像以上に大変そうだから、諦めた方がいいのかな…」と、少し気持ちが揺らいでしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、お待ちください! AIエンジニアという仕事が持つ、未来を創造するワクワク感や、社会に大きな変革をもたらす可能性、そして知的好奇心を満たしてくれる奥深さは、他の多くの職業では味わえない、かけがえのない魅力です。困難な道だからこそ、それを乗り越えた先には、大きな達成感と、社会に貢献できる素晴らしいキャリアが待っている可能性も十分にあります。

大切なのは、AIエンジニアという道の「華やかさ」と「厳しさ」の両面を正しく理解し、その上で、ご自身の価値観や目標、そして覚悟と照らし合わせて、本当に自分にとって進むべき道なのかを真剣に考えることです。

そして、もし「それでも私はAIエンジニアとして、未来を創る一翼を担いたい!」という強い意志をお持ちなのであれば、後悔しないために、いくつかの重要な心構えと準備が必要です。ここでは、そのためのヒントをいくつかご紹介しますね。

【ポイント①】なぜAIエンジニアになりたいのか、その「情熱の源泉」と「明確なビジョン」を掘り下げる

まず何よりも大切なのは、「なぜ自分はAIエンジニアになりたいのか?」「AI技術を使って、何を成し遂げたいのか?」その動機や目的、そして将来のビジョンを、誰に何を言われても揺るがないくらい、明確に、そして深く自分の中に持つことです。

先にお話ししたように、AIエンジニアの道は、絶え間ない学習や、時には泥臭い作業、そして倫理的な葛藤など、決して平坦なものではありません。そんな時、自分を支え、困難を乗り越える原動力となるのは、「それでも自分は、AIの力でこんな未来を実現したいんだ!」という、その仕事に対する純粋な情熱や、社会に対する問題意識、そして揺るぎない使命感なんです。

  • 「AIを使って、医療の分野で画期的な診断技術を開発し、多くの人の命を救いたい」
  • 「環境問題の解決に貢献できるような、新しいAIシステムを構築したい」
  • 「教育格差をなくすために、AIを活用した個別最適化学習プラットフォームを作りたい」
  • 「純粋に、AIという技術の奥深さに魅了されていて、その可能性をとことん追求したい」

きっかけや目指すものは人それぞれで良いと思います。しかし、それが「なんとなくカッコ良さそうだから」「給料が高そうだから」「流行っているから」といった表面的な理由だけであれば、厳しい現実に直面した時に、簡単に見失ってしまうかもしれません。

自分自身の内から湧き出る、本物の「知的好奇心」や「社会貢献への思い」、「創造への欲求」を見つけ出し、それを具体的なビジョンとして描くことが、AIエンジニアという長く険しい道のりを歩み続けるための、最も大切な羅針盤になるのです。

【ポイント②】数学・統計学・プログラミングといった基礎学力を徹底的に固め、論理的思考力を磨く

AIエンジニアとして活躍するためには、華やかな応用技術の前に、その土台となる盤石な基礎学力が不可欠です。

特に、以下の分野については、付け焼き刃ではない、本質的な理解を目指して、徹底的に学び、身につける努力が必要です。

  • 数学:線形代数(行列やベクトル計算)、微分積分(関数の変化や最適化)、確率・統計(データのばらつきや関連性、予測モデルの評価)は、機械学習アルゴリズムを理解し、適切に活用するための共通言語とも言えます。数式を見ただけで拒否反応を示すようでは、AIエンジニアとして深く進むのは難しいでしょう。
  • 統計学:データから意味のある情報を取り出し、仮説を検証し、モデルの性能を客観的に評価するためには、統計学的な思考方法と知識が欠かせません。
  • プログラミング:Pythonがデファクトスタンダードとなっていますが、単にコードが書けるというだけでなく、効率的で読みやすいコードを書く能力、アルゴリズムを実装する能力、そしてデバッグ能力などが求められます。データ構造やアルゴリズムに関する基本的な理解も重要です。
  • 論理的思考力(ロジカルシンキング):複雑な問題を分解し、原因を特定し、仮説を立てて検証し、最適な解決策を導き出すという、論理的な思考プロセスは、AI開発のあらゆる場面で必要とされます。

これらの基礎学力は、一夜漬けで身につくものではありません。大学の講義や専門書、オンラインコースなどを活用し、時間をかけてじっくりと、そして手を動かしながら(実際に問題を解いたり、コードを書いたりしながら)学ぶことが大切です。

そして、なぜそうなるのか、その本質を常に問い続ける姿勢が、応用力に繋がります。流行のフレームワークを使いこなす前に、まずこの基礎を固めることが、遠回りに見えて実は一番の近道なのです。

【ポイント③】実践的な経験を積む機会を積極的に探し、ポートフォリオを構築する

AIエンジニアとしてのスキルを本当に自分のものにし、そしてそれを他者に証明するためには、座学だけでなく、実際に手を動かしてAIモデルを構築したり、データを分析したりする「実践的な経験」を積むことが不可欠です。

そして、その成果を「ポートフォリオ」としてまとめ、目に見える形で示すことが、就職や転職、あるいはプロジェクトへの参画において非常に重要になります。

  • オンラインの学習プラットフォームやコンペティションへの参加:Kaggle(カグル)のようなデータサイエンスのコンペティションサイトや、Coursera(コーセラ)、Udacity(ユダシティ)といったMOOCs(大規模公開オンライン講座)では、実際のデータセットを使った課題に取り組んだり、他の参加者と競い合ったりしながら、実践的なスキルを磨くことができます。
  • 個人プロジェクトの実施:自分の興味のあるテーマで、データ収集からモデル構築、評価までを一通り行ってみるのも良いでしょう。例えば、好きなスポーツの勝敗予測モデルを作ってみたり、手持ちの画像データで画像分類AIを作ってみたり。その過程や成果をGitHub(ギットハブ)などのプラットフォームで公開すれば、立派なポートフォリオになります。
  • インターンシップやアルバイト:学生であれば、AI関連企業でのインターンシップに積極的に参加し、実際の業務を通じて経験を積むのが理想的です。社会人でも、副業としてAI関連のプロジェクトに短期間関わったり、ボランティアでNPOのデータ分析を手伝ったりといった機会を探してみるのも良いかもしれません。
  • 学術論文の実装:最新のAI研究論文を読み、そこに書かれているアルゴリズムを自分で実装してみる(再現実装)というのも、非常に高度な学習方法であり、深い理解に繋がります。

「理論は分かっているけど、実際に手を動かしたことはない」という状態では、AIエンジニアとして評価されるのは難しいでしょう。

小さなことからでも良いので、とにかく「作ってみる」「試してみる」という経験を積み重ねていくことが、自信と実績に繋がります。

【ポイント④】特定の専門分野(ドメイン知識)を見つけ、AI技術と掛け合わせる視点を持つ

AI技術は、それ単体で価値を生み出すというよりは、特定の業界や分野(ドメイン)の課題を解決するための「ツール」としての側面が強いです。

そのため、AIエンジニアとして長期的に活躍していくためには、AIの技術的な知識だけでなく、自分がAIを適用したいと考えている分野の専門知識(ドメイン知識)を深く理解し、その両者を掛け合わせる視点を持つことが非常に重要になります。

例えば、

  • 医療分野のAIエンジニアであれば、医学や薬学、医療制度に関する知識。
  • 金融分野のAIエンジニアであれば、金融工学や市場の動向、金融規制に関する知識。
  • 製造業のAIエンジニアであれば、生産プロセスや品質管理、サプライチェーンに関する知識。
  • マーケティング分野のAIエンジニアであれば、消費者行動や広告効果測定、ブランド戦略に関する知識。

といった具合です。ドメイン知識が深ければ深いほど、その分野特有の課題を的確に捉え、AI技術をより効果的に、そして創造的に活用することができるようになります。

逆に、ドメイン知識が浅いと、どんなに高度なAI技術を持っていても、的外れな分析をしてしまったり、現場のニーズに合わないシステムを作ってしまったりする可能性があります。

もし、あなたが既に何らかの専門分野(例えば、学生時代の専攻や、これまでの職務経験など)を持っているのであれば、それを活かして「〇〇 × AI」という形で、ご自身の専門性を深掘りしていくのが良いでしょう。もし、これから専門分野を見つけるのであれば、ご自身の興味関心や、社会的なニーズの高さなどを考慮して、長期的に取り組める分野を選ぶことが大切です。「AI技術者」であると同時に、「〇〇分野の専門家」でもある、という二つの顔を持つことが、AIエンジニアとしての独自の価値を高めることに繋がります。

【ポイント⑤】コミュニケーション能力や倫理観を磨き、「人間ならではの価値」を高める努力をする

AI技術がどんなに進化しても、それを開発し、社会に実装し、そしてその影響を評価するのは、最終的には人間です。そのため、AIエンジニアには、技術的なスキルだけでなく、人間ならではのコミュニケーション能力や、高い倫理観、そして社会全体を見渡す視野を持つことが、これまで以上に求められてきます。

  • コミュニケーション能力
    • ビジネスサイドとの連携:AIの専門知識がない経営層や他部署の担当者に対して、AIで何ができて何ができないのか、プロジェクトの進捗や課題、成果などを、専門用語を避け、分かりやすく説明し、合意形成を図る能力。
    • チーム内での協調性:他のエンジニアやデータサイエンティスト、デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持つメンバーと円滑に連携し、共通の目標に向かって協力し合える能力。
    • プレゼンテーション能力:開発したAIモデルの性能や、分析結果から得られた知見などを、説得力を持って他者に伝え、意思決定を促す能力。
  • 倫理観と社会的責任感
    • AIがもたらす可能性のあるバイアスや差別、プライバシー侵害といった倫理的な問題に対して常に意識を高く持ち、そうした問題を引き起こさないような設計や開発を心がける。
    • 開発するAIシステムが、社会全体にとってどのような影響を与えるのかを多角的に考察し、負の影響を最小限に抑えるための努力をする。
    • AI技術の悪用を防ぎ、その恩恵が公平に行き渡るような社会の実現に貢献する意識を持つ。

これらの「人間ならではの価値」は、AI自身が代替することが難しい領域です。技術の進化が速いからこそ、こうした普遍的なヒューマンスキルや倫理観を磨き続けることが、AIエンジニアとして長く社会に貢献し、必要とされ続けるための鍵となるでしょう。

技術オタクになるだけでなく、広い視野と温かい心を持ったエンジニアを目指してほしいと思います。

これらのポイントを押さえて、覚悟と準備を持って臨めば、AIエンジニアという道は、きっとあなたにとって大きな成長と達成感、そして何よりも、未来を自らの手で創り出すという、かけがえのないやりがいをもたらしてくれるはずです。

大切なのは、情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考え、自分で決断し、そしてその決断に責任を持つことなんですね。


AIエンジニアを目指す上での「やめとけ」理由総括

さて、ここまでAIエンジニアについて、「やめとけ」と言われてしまう理由や、それでもAIエンジニアという最先端の道を選ぶ場合に後悔しないための心構えや準備について、詳しくお話ししてきました。最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがこの変化の激しい技術分野でキャリアを築いていく上で、本当に大切なことは何なのか、おさらいをしておきましょう。

今回の記事でお伝えしてきた、「AIエンジニアはやめとけ」と一部で言われることがある主な理由は、以下の6点でしたね。

  • 理由①:絶え間ない学習地獄と技術の陳腐化の速さが尋常ではない
    常に最新技術を追い続けなければならず、学び続ける覚悟と精神的なタフさが不可欠です。
  • 理由②:「AI万能」という過度な期待とビジネス現場の現実とのギャップに苦しむ
    データの制約や技術的な限界、そして周囲の誤解との間で板挟みになることがあります。
  • 理由③:華やかなイメージとは裏腹なデータ収集・前処理といった泥臭い作業の多さ
    プロジェクト時間の大部分を占める地道な作業への忍耐力が求められます。
  • 理由④:倫理的・社会的責任の重さとAIの判断に対する説明責任の難しさ
    開発するAIが社会に与える影響を常に考慮し、高い倫理観を持つ必要があります。
  • 理由⑤:求人ニーズと個人のスキルとのミスマッチや、過度な期待による就職・転職の難しさ
    企業が求める高度な専門性と、個人のスキルセットとの間にギャップが生じやすいです。
  • 理由⑥:AI自身の進化による「AIエンジニア不要論」への漠然とした、しかし無視できない不安
    AIがAIエンジニアの仕事を代替する可能性も視野に入れ、人間ならではの価値を高める必要があります。

これらの理由だけを見ると、「やっぱりAIエンジニアになるのは、自分には荷が重すぎるかもしれない…」と、夢を諦めそうになってしまうかもしれません。でも、どうか忘れないでください。

これらの厳しい側面は、AIエンジニアという仕事が、社会に革命的な変化をもたらし、未来を形作るという、計り知れないほどの可能性と影響力を持っていることの裏返しでもあるということを。

どんなフロンティア(未開拓分野)にも、困難とリスクはつきものです。そして、その困難を乗り越え、未知の領域を切り拓いていく先にこそ、大きな発見と、これまでにない価値の創造が待っているのではないでしょうか。

AIエンジニアという道を選ぶか否か、その最終的な判断をする上で最も重要なのは、インターネット上の誰かの「やめとけ」という言葉や、あるいは「未来はAIだ!」という熱狂的な声にただ流されるのではなく、

  1. まず、ご自身が「なぜAIエンジニアになりたいのか」「AI技術を使って、どんな世界を実現したいのか、どんな課題を解決したいのか」という、心の奥底から湧き出る「知的好奇心」と「創造への情熱」、そして「社会への貢献意欲」を、深く、そして正直に見つめ直すこと。
  2. 次に、AIエンジニアという仕事の魅力や可能性、そして同時に、その仕事に伴う厳しさや課題、現実的な側面について、信頼できる多様な情報源から、時間をかけて真摯に、そして批判的な視点も持って学ぼうと努めること。
  3. そして、そこで得た知識と、ご自身の価値観(何を大切にして働きたいか)、適性(論理的思考力、学習意欲、忍耐力、倫理観など)、そして現実的な状況(学習に使える時間、経済的基盤など)を冷静に照らし合わせ、本当に自分にとって挑戦する価値のある道なのか、覚悟を持って判断すること。
  4. 最後に、もし挑戦すると決めたならば、その決断に誇りと責任を持ち、あらゆる困難を乗り越えるための周到な準備(盤石な基礎学力の習得、実践的な経験の積み重ね、人間力の涵養など)と、決して諦めない強い意志、そして変化を楽しみながら学び続ける柔軟性を持って、全力で取り組むこと。

これらのステップを一つひとつ真摯に踏んでいくことが、後悔のない選択をするための、そして、もしAIエンジニアという道を選んだ場合に、その道を力強く、そして創造的に歩んでいくための、何よりの力になるのだと、私は信じています。

AIエンジニアは、確かに簡単な道ではありません。

しかし、自らが生み出したAIが、誰かの生活を便利にしたり、社会の課題を解決したり、あるいは全く新しい価値を世の中に提供したりする瞬間に立ち会えることは、何物にも代えがたい、大きな感動と喜びを与えてくれるはずです。

「やめとけ」という言葉は、時に私たちを慎重にさせ、リスクを回避する知恵を与えてくれます。しかし、その言葉の裏にある本質を見抜き、課題を克服するための具体的な方策を考え、そして「それでも自分はこの未来を創りたい」と心から願うのであれば、その声はもはや障害ではなく、むしろより深く、より真剣に自分の進むべき道と向き合うための、貴重な羅針盤となるのではないでしょうか。

この記事が、皆さんのAIエンジニアという職業に対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんお一人おひとりが、ご自身の未来について真剣に考え、後悔のない決断をするための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。

皆さんの知性と情熱が、より良い未来をデザインする力となることを、心から応援しています!

UTA

会社員。営業職で着実に成果を上げ、年収は本業と副業合わせて1,X00万円。副業は投資とライティング。妻と小学生の娘と3人暮らし。休日は家族サービスと自己研鑽に励む。趣味は映画鑑賞。

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やめとけ