「セラピストって、人の心や身体を癒す、とっても素敵なお仕事ですよね。なんだかキラキラしていて、誰かの役に立てるなんて、素晴らしいなって思います。」
でも、インターネットで「セラピスト やめとけ」とか「セラピスト きつい」なんて言葉を見かけると、「えっ、どうして?」「そんなに大変なのかな…」と、ちょっと不安な気持ちになってしまいませんか? 本当に、憧れだけで目指してしまって大丈夫なのでしょうか。
この記事では、セラピストというお仕事に興味をお持ちの学生さんや、新しいキャリアを考えていらっしゃる社会人の皆さんに向けて、なぜ安易な気持ちで飛び込むと後悔してしまうことがあるのか、その具体的な理由を7つ、そして、それでもこの道に進みたいと強く願う方のために、どんな心構えが必要なのかを、私なりに詳しく、そして分かりやすく解説していきたいと思います。決してセラピストというお仕事の全てを否定したいわけではないんですよ。ただ、その優しい光の裏には、知っておいてほしい厳しい現実もあるということを、お伝えしたいんです。
この記事でお伝えしたいこと
- セラピストというお仕事の多様な分野とその役割
- なぜセラピストへの道を「やめとけ」と言われてしまうことがあるのか、具体的な7つの理由
- それでもセラピストを目指したい場合に後悔しないための心構えと具体的な準備
- セラピストとして働くことの厳しさについての最終チェックポイントと注意点
セラピストってどんなお仕事?その多様性と「癒し」の裏側
まずは、「セラピスト」が日々どんなお仕事をしていて、どんな種類があるのか、基本的なところから一緒に見ていきましょうか。
「人を癒す仕事」と一口に言っても、その分野は本当に多岐にわたるんですよ。ご自身のイメージと合っているか、確認してみてくださいね。
セラピストの定義と主な種類 – リラクゼーションから心理まで
「セラピスト(therapist)」という言葉は、英語の「therapy(セラピー:治療、療法)」から来ていて、広い意味では「治療する人」「療法士」といった意味合いになります。日本では、心身の不調を和らげたり、リラックスを促したりする専門家を指すことが多いですよね。
セラピストの具体的な種類としては、大きく分けて以下のような分野があります。
- リラクゼーション系セラピスト:
- ボディケアセラピスト:マッサージ(あん摩マッサージ指圧師は国家資格ですが、それ以外の整体やリフレクソロジーなど)を通じて、身体の凝りや疲れを癒します。
- アロマセラピスト:精油(エッセンシャルオイル)を用いて、香りやトリートメントで心身のリラックスを促します。
- エステティシャン:フェイシャルケアやボディトリートメントなど、美容を中心とした施術で心身の満足感を高めます。
- その他、ヘッドセラピスト、リフレクソロジストなど、特定の部位や手法に特化したセラピストもいます。
- 心理系セラピスト(カウンセラー):
- 臨床心理士・公認心理師:心理学的な知識や技法を用いて、心の問題を抱える人の相談に乗り、心理的な援助を行います。これらは専門性の高い資格が必要です。
- 産業カウンセラー:職場で働く人々のメンタルヘルスケアやキャリア相談などに対応します。
- その他、スクールカウンセラー、夫婦カウンセラーなど、対象や分野に特化したカウンセラーもいます。
- 医療・福祉系セラピスト(国家資格):
- 理学療法士(PT):病気や怪我などで身体機能が低下した人に対し、運動療法や物理療法で機能回復を支援します。
- 作業療法士(OT):心身に障害のある人に対し、日常生活や社会復帰のための作業活動を通じてリハビリテーションを行います。
- 言語聴覚士(ST):話す、聞く、食べることに問題を抱える人に対し、専門的な訓練や指導を行います。
この記事では、主にリラクゼーション系セラピストと心理系セラピスト(カウンセラー)に焦点を当ててお話しを進めていきたいと思います。医療・福祉系の国家資格を持つセラピストの方々は、また少し異なる専門性や働く環境がありますので、その点はご了承くださいね。
「人を癒したい」という純粋な想いと、仕事としての現実
「誰かの役に立ちたい」「苦しんでいる人を少しでも楽にしてあげたい」「笑顔を取り戻すお手伝いがしたい」…セラピストを目指す方の多くは、そんな純粋で温かい想いを抱いていらっしゃるのではないでしょうか。それは本当に素晴らしいことで、その気持ちこそが、このお仕事の原動力になるのだと思います。
お客様やクライアントさんから「ありがとう、楽になったよ」「話を聞いてもらえて心が軽くなった」そんな言葉をいただけた時の喜びは、何物にも代えがたい、大きなやりがいになりますよね。
でも、どんなお仕事にも言えることですが、「好き」という気持ちや「やりがい」だけでは、なかなか乗り越えられない壁があるのも事実なんです。
セラピストというお仕事は、人を癒すという素晴らしい側面がある一方で、ご自身の心身を消耗しやすかったり、経済的に不安定だったり、理想と現実のギャップに悩んだりすることも少なくありません。
「癒しを提供する側」が、実は「癒しを必要としている」状況に陥ってしまうこともある…。そんな厳しい現実も、残念ながら存在するのです。
次の章では、そういったセラピストの「大変さ」や「難しさ」について、なぜ「やめとけ」という声が上がることがあるのか、具体的な理由を7つ、詳しく見ていきたいと思います。少し耳の痛い話もあるかもしれませんが、皆さんの大切な将来に関わることなので、ぜひ知っておいてくださいね。
ここが過酷!セラピストはやめた方がいい7つの理由
それでは、ここからが本題です。なぜ、人を癒すという尊いお仕事であるはずのセラピストが、時として「やめとけ」「きつい」と言われてしまうことがあるのでしょうか。その具体的な理由を7つ、深掘りしてご説明しますね。
これらは、セラピストとして働く上で直面する可能性のある、厳しい現実です。ご自身の適性や覚悟と照らし合わせながら、じっくりと考えてみてください。
【理由1】心身の消耗が激しすぎる! 共感疲労と肉体的負担のダブルパンチ
セラピストのお仕事は、心と身体の両面で大きなエネルギーを消費します。
精神的な消耗(共感疲労)
特に心理系のセラピストや、お客様と深く関わるリラクゼーションセラピストは、クライアントの抱える悩みや苦しみ、悲しみといったネガティブな感情に日々向き合うことになります。
相手の気持ちに寄り添い、共感することは非常に大切ですが、それがあまりにも続くと、知らず知らずのうちに相手の感情に引きずられてしまい、自分自身も精神的に疲弊してしまう「共感疲労(compassion fatigue)」に陥ることがあります。
また、クライアントの期待に応えなければというプレッシャーや、思うように改善が見られない時の無力感なども、精神的な負担となることがあります。
肉体的な消耗
リラクゼーション系のセラピスト、特にボディケアやエステティシャンなどは、想像以上に肉体的な負担が大きいお仕事です。
- 長時間の立ち仕事や中腰姿勢:施術中は立ったまま、あるいは中腰といった不自然な体勢を長時間続けることが多く、足腰への負担は相当なものです。腰痛や肩こり、腱鞘炎などに悩まされるセラピストは少なくありません。
- 体力勝負の施術:お客様の身体の状態によっては、かなりの力を使って施術を行う必要があり、体力も消耗します。
- 不規則な勤務時間:お客様の都合に合わせて、土日祝日や夜遅くまでの勤務になることも多く、生活リズムが不規則になりがちです。
「人を癒すはずの自分が、心も身体もボロボロ…」なんてことになってしまっては、元も子もありませんよね。

セラピストとして長く働き続けるためには、自分自身の心身のケアがいかに重要か、そしてそれがどれほど難しいか、ということを肝に銘じておく必要があります。
【理由2】収入が不安定で低い? 資格・経験と給与のアンバランス
セラピストのお仕事は、その専門性や責任の重さに対して、必ずしも経済的に恵まれているとは言えないのが現実です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」などで、関連する職業(例:エステティシャン、カウンセラー、あん摩マッサージ指圧師など)の平均年収を見てみると、職種や地域によって差はありますが、全産業の平均と比較して、決して高い水準とは言えない場合があります。(具体的な数値は常に変動するため、最新の情報をご確認ください。)
特に、以下のような要因が、収入の不安定さや低さにつながることがあります。
- 資格と収入が直結しない場合がある:民間資格の中には、取得に高額な費用と時間がかかるものもありますが、それが必ずしも高収入に繋がるとは限りません。特にリラクゼーション業界では、資格よりも実務経験や指名数が重視される傾向があります。
- 歩合制や業務委託が多い:サロンなどに勤務する場合、固定給が低く設定されていたり、完全歩合制だったり、あるいは個人事業主としての業務委託契約だったりすることがあります。その場合、お客様の数や施術時間によって収入が大きく変動し、安定しにくいというデメリットがあります。
- 独立開業の難しさ:独立して自分のサロンを開業すれば高収入も夢ではないかもしれませんが、集客、経営、経理など、施術以外の業務も全て自分で行う必要があり、成功するのは容易ではありません。初期投資もかかりますし、失敗すれば借金を抱えるリスクもあります。
- 社会保険未加入のケースも:小規模なサロンや業務委託の場合、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入できないこともあり、将来への不安も大きくなります。
「人の役に立ちたい」という気持ちは大切ですが、生活していくためにはお金も必要です。「やりがい」と「経済的な安定」のバランスをどう取るのか、現実的な視点で考えることが求められます。
「好きな仕事だけど、正直、給料は安い。一人暮らしだとカツカツ。もっとお客様に喜んでもらいたいけど、そのためには勉強も必要だし、セミナー代も馬鹿にならない。このままずっと続けられるのかなって不安になる時がある。」(リラクゼーションセラピストのSNS投稿より、一部表現を調整)
【理由3】理想と現実のギャップ! 華やかなイメージと地道な雑務・クレーム対応
「セラピストって、おしゃれなサロンで、お客様を癒して、感謝されて…なんだか華やかで素敵な仕事!」そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
確かに、お客様がリラックスして笑顔になってくださる瞬間は、何物にも代えがたい喜びです。でも、その裏側には、地道で目立たない雑務がたくさんあることを忘れてはいけません。
- 予約管理・顧客管理:電話やネットでの予約対応、カルテの記入・管理、DM作成など。
- 清掃・洗濯:施術ルームの清掃、使用したタオルやシーツの洗濯・乾燥・たたみ作業。衛生管理は非常に重要です。
- 備品管理・発注:オイルや化粧品、タオルなどの備品が不足しないように管理し、発注します。
- 集客活動:SNSでの情報発信、チラシ配り、イベント企画など、新しいお客様に来てもらうための努力も必要です。
- 会計業務:レジ締めや売上管理など。
これらの業務は、お客様に快適な時間を提供し、サロンを円滑に運営していくためには不可欠なものですが、決して華やかではありません。むしろ、施術時間よりも雑務に追われている時間の方が長い、なんてことも珍しくないんです。
また、どんなに心を込めて接していても、時にはお客様からクレームをいただくこともあります。「効果が感じられない」「接客態度が悪い」「予約時間通りに始まらなかった」など、理不尽に感じるような内容であることも…。そういった場合の対応も、精神的に大きなストレスとなります。
「癒す仕事がしたい」と思って入ったのに、現実は雑務とクレーム対応に追われる毎日…そんなギャップに苦しんでしまう人もいるかもしれませんね。
【理由4】資格制度の曖昧さと民間資格の乱立 – 専門性と信頼性の問題
セラピストの世界は、資格制度が非常に複雑で、分かりにくいという問題を抱えています。
まず、大きく分けて「国家資格」と「民間資格」があります。
- 国家資格:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、はり師・きゅう師、そして心理系の公認心理師などがこれにあたります。これらの資格は、法律に基づいて国が認定するもので、資格がなければその名称を名乗ったり、特定の業務を行ったりすることができません。専門的な知識と技術が保証されており、社会的信用も高いと言えます。
- 民間資格:上記以外のセラピスト関連の資格の多くは、民間の団体やスクールが独自に認定しているものです。アロマセラピスト、リフレクソロジスト、整体師、カイロプラクター、各種カウンセラー資格など、その種類は無数にあります。
問題なのは、この民間資格の質のばらつきが大きいことです。中には、短期間の講習で簡単に取得できてしまうものや、高額な受講料を請求するだけで、実質的なスキルアップには繋がらないようなものも存在すると言われています。「○○セラピスト」という名称は誰でも自由に名乗れてしまうため、専門性や信頼性を見極めるのが非常に難しいのです。
「この資格を取れば、すぐにでもプロとして活躍できる!」といった甘い言葉で勧誘するスクールやセミナーも残念ながら存在し、「資格ビジネス」の温床になっているという指摘もあります。
「せっかく高いお金を払って資格を取ったのに、就職にも役立たないし、お客様からの信頼も得られない…」そんな悲しいことにならないためには、資格の名称や発行団体だけに惑わされず、その資格が本当に自分の目指す分野で必要とされているのか、カリキュラムの内容は充実しているのか、講師の質は高いのか、などを慎重に見極める必要があります。
特に心理カウンセラーを目指す場合は、臨床心理士や公認心理師といった信頼性の高い資格を目指すか、あるいはそれに準ずるような学術的な裏付けのあるトレーニングを積むことが、専門家としての第一歩と言えるでしょう。
【理由5】終わりなき学びとスキルアップのプレッシャー – 技術と知識のアップデート
セラピストの世界も、日進月歩で新しい技術や理論、考え方が生まれています。お客様により良いサービスを提供し続けるためには、常に学び続け、自分のスキルをアップデートしていく努力が不可欠です。
- 新しい手技や施術法の習得:リラクゼーション系であれば、より効果的なマッサージ技法や、新しい美容機器の使い方などを学ぶ必要があります。
- 最新の知識や研究のキャッチアップ:心理系であれば、新しいカウンセリング理論やアプローチ、脳科学や精神医学の進歩など、常に最新の情報を学んでおく必要があります。
- 関連分野の知識習得:例えば、アロマセラピストが解剖生理学を学んだり、ボディケアセラピストが栄養学を学んだりすることで、よりホリスティックな視点でお客様に対応できるようになります。
- セミナーや勉強会への参加:業界団体やスクールが開催するセミナーや勉強会に参加し、他のセラピストと情報交換をしたり、刺激を受けたりすることも大切です。
これらの学びには、時間も費用もかかります。休日を返上してセミナーに参加したり、けっして安くはない受講料を支払ったりと、自己投資を継続していく覚悟が必要です。
「一度技術を身につければ、あとはそれを繰り返すだけ」というわけにはいかないのが、この世界の厳しさであり、また面白さでもあるのかもしれません。
「もっとお客様を癒せるようになりたい!」という向上心があれば、学びは楽しいものになるでしょう。しかし、それがプレッシャーとなり、「勉強し続けなければ置いていかれる…」という焦燥感に繋がってしまうと、仕事そのものが辛くなってしまうかもしれませんね。
【理由6】人間関係の難しさと孤独感 – お客様、同僚、そして自分自身
セラピストは「人」を相手にするお仕事ですから、人間関係の難しさに直面することも少なくありません。
- お客様との関係:ほとんどのお客様は感謝してくださいますが、中には無理な要求をしてくる方、高圧的な態度の方、あるいはセラピストに対して個人的な感情を抱いてしまう方などもいらっしゃいます。そういったお客様との適切な距離感を保ち、上手に対応していくスキルが求められます。
- 同僚や上司との関係:サロンなどに勤務する場合、他のセラピストとの間で、技術レベルやお客様からの人気などで競争意識が生まれたり、派閥のようなものができたりすることもあるかもしれません。また、経営者や上司の方針と自分の考えが合わない、といった悩みも出てくるでしょう。
- 独立開業した場合の孤独感:一人でサロンを開業した場合、施術から経営まで全てを自分で行うため、相談できる相手がおらず、孤独感を抱えてしまうことがあります。特に、仕事で悩んだり、精神的に落ち込んだりした時に、一人で抱え込んでしまうのは辛いですよね。

「人を癒す仕事なのに、人間関係で疲弊してしまう…」というのは、皮肉な話ですが、実際にあり得ることなんです。
特に、共感力の高い人ほど、他人の感情に影響されやすいため、意識的に自分の心を守る工夫が必要になります。
【理由7】「人のため」が自分を追い詰める? 自己犠牲とバーンアウトのリスク
「誰かの役に立ちたい」「人を癒したい」という気持ちは、セラピストにとって非常に大切な原動力です。しかし、その想いが強すぎるあまり、自分自身のことを後回しにしてしまい、自己犠牲的になってしまう危険性があります。
「お客様が辛そうだから、予約時間外でも対応してあげたい」「自分の体調が悪くても、お客様をがっかりさせたくないから無理して施術してしまう」「自分の悩みは後回しにして、まずはクライアントの話を聞かなければ」…
そんな風に、常に「人のため」を優先していると、知らず知らずのうちに心身のエネルギーを使い果たし、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ってしまうことがあります。
バーンアウトの兆候としては、
- 極度の疲労感、無気力
- 仕事への興味や関心の喪失
- クライアントに対する共感や思いやりの低下
- 自己嫌悪、無価値観
- 身体的な不調(頭痛、不眠、食欲不振など)
などがあります。
一度バーンアウトしてしまうと、回復までに長い時間がかかったり、最悪の場合、セラピストとしての仕事を続けられなくなってしまったりすることもあります。
「人を癒すためには、まず自分自身が健康で満たされていなければならない」この当たり前のようでいて忘れがちなことを、常に心に留めておく必要があります。セルフケアの重要性は、どんなセラピストにとっても最優先課題と言えるでしょう。
「自分を大切にできなければ、本当の意味で他人を癒すことはできない」のかもしれませんね。
それでもセラピストを目指したいあなたへ – 後悔しないための心構えと対策
ここまで、セラピストというお仕事の厳しい側面や、直面する可能性のある困難について、詳しくお話ししてきました。もしかしたら、「やっぱり自分には無理かもしれない…」「こんなに大変だとは思わなかった…」と、少し気持ちが揺らいでしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、これらの困難を理解した上で、それでも「人を癒す仕事に就きたい!」「この手で誰かの役に立ちたい!」という熱い想いが消えない方も、きっといらっしゃると思います。その志は、本当に素晴らしいものですし、癒しを必要としている人はたくさんいます。
そんな皆さんに向けて、この章では、セラピストの道を選んで後悔しないために、どんな心構えが必要で、どんな具体的な準備をすれば良いのか、いくつか大切なアドバイスをお伝えしたいと思います。
本当に「セラピスト」でしか実現できないことか?自己理解を深める
まず、何よりも大切なのは、ご自身が「なぜセラピストになりたいのか」という動機を深く掘り下げ、それが本当に「セラピスト」という職業でしか実現できないことなのか、徹底的に自己分析することです。
「人を助けたい」「誰かの役に立ちたい」「癒しを提供したい」という想いは、セラピスト以外にも、医療、福祉、教育、ボランティア活動など、様々な分野で実現できる可能性がありますよね。
以下の点を、じっくりと自分自身に問いかけてみてください。
- 自分の強みや得意なことは何か?(傾聴力、共感力、手先の器用さ、探究心、忍耐力など)
- どんな時にやりがいや喜びを感じるか?
- 逆に、どんなことが苦手で、ストレスを感じやすいか?
- セラピストの仕事のどんな部分に特に魅力を感じているのか?(施術そのもの、カウンセリング、お客様とのコミュニケーション、独立開業の可能性など)
- セラピストの仕事の厳しい側面(これまでお話ししてきたようなこと)を、本当に受け入れられる覚悟があるか?
これらの自己分析を通して、「やっぱり自分は、直接手で触れて癒したいんだ」「じっくりと人の心に寄り添って話を聞きたいんだ」といった、より具体的なセラピスト像が見えてくるかもしれません。
もし、「セラピストじゃなくても、自分のやりたいことは実現できるかもしれない」と感じたなら、無理にセラピストの道に固執せず、他の選択肢も視野に入れてみるのが賢明ですよ。
どの分野のセラピストを目指すか?専門性と将来性の見極め
セラピストと一口に言っても、その分野は多岐にわたります。まずは、自分がどの分野のセラピストを目指したいのか、具体的な方向性を定めることが大切です。
- リラクゼーション系か、心理系か? まずはこの大きな二つの方向性から考えてみましょう。身体的なアプローチに興味があるのか、精神的なサポートに興味があるのか。
- もしリラクゼーション系なら、どんな手技や分野に特化したいか?(オイルトリートメント、ドライマッサージ、リフレクソロジー、フェイシャルエステ、ヘッドスパなど)
- もし心理系なら、どんな対象や問題に関わりたいか?(子ども、成人、高齢者、家族、キャリア、トラウマ、依存症など)
それぞれの分野によって、求められる知識やスキル、必要な資格、将来性、働き方などが大きく異なってきます。
例えば、心理カウンセラーとして専門性を高めたいのであれば、臨床心理士や公認心理師といった資格の取得を目指し、大学院での学びや臨床経験を積むことが一般的です。一方で、リラクゼーションセラピストであれば、特定のスクールで技術を習得し、サロンに就職したり、経験を積んで独立したりといったキャリアパスが考えられます。
それぞれの分野の需要や将来性についても、客観的な情報を集めて調べてみましょう。例えば、高齢化社会においては、介護予防や健康増進に関連するセラピーの需要が高まるかもしれませんし、ストレス社会においてはメンタルヘルスケアの重要性がますます増していくでしょう。
自分の興味関心と、社会のニーズ、そして将来性を照らし合わせて、どの分野に進むべきか、じっくりと検討してみてくださいね。
信頼できるスクール・資格選びのポイント – 誇大広告に騙されないために
目指す分野が決まったら、次は必要な知識や技術を学ぶためのスクール選びや、取得を目指す資格の選定です。ここは、後悔しないために非常に重要なポイントになりますので、慎重に進めましょう。
【理由4】でも触れましたが、セラピスト関連の民間資格は玉石混交です。以下の点に注意して、信頼できるスクールや資格を選んでください。
- 誇大広告や甘い言葉に注意する:「誰でも簡単にプロになれる!」「短期間で高収入!」といった広告には要注意です。そんなうまい話は、まずありません。
- カリキュラムの内容をしっかり確認する:座学と実技のバランスはどうか、解剖生理学や心理学といった基礎的な知識もしっかり学べるか、実践的なトレーニングは十分か、などを細かくチェックしましょう。
- 講師の質と実績:どんな経歴や資格を持った講師が教えてくれるのか。現役で活躍しているセラピストが講師であれば、現場の生きた情報も得やすいでしょう。
- 卒業生の進路や評判:卒業生がどんな分野で活躍しているのか、スクールや資格の評判はどうなのか、口コミサイトやSNSなども参考にしつつ、多角的に情報を集めましょう。可能であれば、実際に卒業生から話を聞いてみるのが一番です。
- 費用と期間の妥当性:受講料や資格取得までにかかる費用、学習期間が、得られる知識やスキルと見合っているか、他のスクールや資格とも比較検討しましょう。不必要な教材や高額な追加費用が発生しないかも確認が必要です。
- 資格認定団体の信頼性:その資格を発行している団体が、業界内でどれくらいの認知度や信頼性があるのかも重要です。歴史のある団体や、学術的な裏付けのある団体が認定する資格は、比較的信頼性が高いと言えるでしょう。
- 国家資格との違いを理解する:目指す分野によっては、民間資格だけでなく、国家資格(公認心理師、あん摩マッサージ指圧師など)の取得も視野に入れるべき場合があります。それぞれの資格の法的な位置づけや業務範囲の違いを、きちんと理解しておきましょう。
焦って決めずに、複数のスクールの資料を取り寄せたり、説明会や体験レッスンに参加したりして、自分自身の目で見て、話を聞いて、納得のいくところを選ぶことが大切ですよ。
「自分を癒す」スキルも同時に磨く – セルフケアの徹底とスーパービジョン
セラピストとして長く健康に働き続けるためには、「お客様を癒すスキル」と同じくらい、あるいはそれ以上に、「自分自身を癒すスキル(セルフケア)」を磨くことが不可欠です。
【理由1】や【理由7】でお話ししたように、セラピストは心身ともに消耗しやすいお仕事です。自分自身のケアを怠ってしまうと、バーンアウトしたり、体調を崩したりして、仕事を続けられなくなってしまうかもしれません。
具体的なセルフケアとしては、
- 十分な睡眠とバランスの取れた食事:健康の基本ですね。不規則な生活になりがちなセラピストだからこそ、意識して心がけましょう。
- 適度な運動やストレッチ:身体的な負担を軽減し、リフレッシュするためにも大切です。
- 趣味やリラックスできる時間を持つ:仕事とは全く関係のない、自分が心から楽しめる時間を作ることで、ストレスを発散し、気分転換を図りましょう。
- 信頼できる人に相談する:仕事の悩みや愚痴などを話せる友人、家族、同僚、あるいは専門家(カウンセラーなど)を持つことは、精神的な安定に繋がります。
- 自分自身もセラピーを受ける:時には、自分もお客様の立場になって、他のセラピストから施術を受けたり、カウンセリングを受けたりするのも、良いリフレッシュや学びになるでしょう。
- 境界線を引く訓練:お客様の感情に巻き込まれすぎないように、自分と相手との間に適切な境界線を引く練習も大切です。これは特に心理系のセラピストにとって重要なスキルです。
また、特に心理系のセラピストを目指す場合や、独立開業して一人で仕事をする場合には、スーパービジョンを受けることを強くおすすめします。
スーパービジョンとは、より経験豊富な先輩セラピスト(スーパーバイザー)から、自分が行ったカウンセリングや施術のケースについて、客観的なアドバイスや指導を受けることです。これにより、自分のスキルアップに繋がるだけでなく、仕事上の悩みや困難を共有し、精神的なサポートを得ることもできます。

「自分を大切にすること」は、決してわがままなことではありません。むしろ、質の高い癒しを提供し続けるための、セラピストとしてのプロフェッショナルな責任の一つだと考えてくださいね。
【総括】セラピストという仕事で後悔しないために – やめた方がいい理由の再確認
さて、今回はセラピストというお仕事について、「やめとけ」と言われることがある理由を中心に、その多様な側面や厳しさ、そしてもし目指す場合の心構えや準備について、詳しくお話ししてきました。
人を癒すという、かけがえのない価値を持つお仕事である一方で、心身の消耗、経済的な不安定さ、理想と現実のギャップなど、乗り越えなければならない課題も少なくないことをご理解いただけたでしょうか。
最後にもう一度、セラピストへの道を慎重に考えるべき理由をまとめておきますね。
- 理由1:心身の消耗が激しすぎる!
共感疲労や肉体的負担が大きく、自分自身のケアが不可欠です。 - 理由2:収入が不安定で低い可能性
資格や経験が必ずしも高収入に繋がるとは限らず、経済的な覚悟が必要です。 - 理由3:理想と現実のギャップ!
華やかなイメージとは裏腹に、地道な雑務やクレーム対応も多いです。 - 理由4:資格制度の曖昧さと民間資格の乱立
信頼できる資格やスクールを見極める眼と、資格だけでは通用しない現実の理解が必要です。 - 理由5:終わりなき学びとスキルアップのプレッシャー
常に新しい知識や技術を学び続ける自己投資と努力が求められます。 - 理由6:人間関係の難しさと孤独感
お客様や同僚との関係、独立した場合の孤独など、対人関係の課題も。 - 理由7:「人のため」が自分を追い詰める?
自己犠牲的になりやすく、バーンアウトのリスクが高い職業です。
これらの厳しい側面を理解した上で、それでも「私はセラピストとして、誰かの心と身体を癒したい!」という強い情熱と、それに向き合う覚悟があるのなら、その道はきっとあなたにとって、かけがえのないものになるでしょう。その際には、この記事でお伝えした心構えや準備を参考に、後悔のない選択をしてくださいね。
大切なのは、表面的なイメージや憧れだけで判断するのではなく、仕事の光も影も全て理解した上で、それでも「挑戦したい」と心から思えるかどうかです。
この記事が、皆さんの大切な将来の選択にとって、少しでもお役に立てたなら、私も心から嬉しく思います。情報を吟味し、じっくりと考えて、ご自身にとって最善の道を見つけてください。