FIREはやめとけ!早期リタイアで後悔する致命的な失敗6選

やめとけ

「FIRE(ファイア)」という言葉、最近よく耳にしますよね。「Financial Independence, Retire Early」の略で、「経済的自立と早期リタイア」を目指すライフスタイルとして、特に若い世代の方々を中心に大きな注目を集めています。

「若いうちに頑張ってお金を貯めて、あとは好きなことして自由に暮らしたい!」そんな夢のような生活に、憧れを抱いている学生さんや社会人の方も多いのではないでしょうか。でも、インターネットで「FIRE」と検索してみると、「FIRE やめとけ」「FIRE 後悔」「FIRE 失敗」なんて、ちょっと気になる言葉も一緒に表示されることがあるんです。

「え、そんなに大変なの?自由な生活を手に入れるための素晴らしい方法だと思っていたのに…」と、不安に感じてしまった方もいらっしゃるかもしれません。一体どうして、そんな声があがってしまうのでしょう?

この記事では、FIREというライフスタイルについて、なぜ一部で「やめとけ」と言われてしまうのか、どんな点に注意しないと、夢見たはずの早期リタイアが大きな後悔につながってしまうのか、その理由を一つひとつ丁寧に、そして皆さんに分かりやすくご説明していきたいと思います。

もちろん、FIREを達成し、充実した人生を送っている方もたくさんいらっしゃいます。でも、今回はあえて「やめとけ」と言われる側面から、皆さんが人生の大きな決断をする際に、後で「こんなはずじゃなかった…」と途方に暮れることがないよう、お手伝いができれば嬉しいです。人生設計に関わる大切なことですから、じっくりと考えていきましょうね。

この記事でお伝えしたいこと

  • FIRE(経済的自立と早期リタイア)の基本的な概念と、なぜ多くの人を惹きつけるのかという魅力
  • なぜFIREが「やめとけ」と言われるのか、その具体的な6つの理由と、理想と現実のギャップ
  • FIREを目指す上で知っておくべき潜在的なリスクや、計画の脆さ
  • それでもFIREを目指したいと考えた場合に、後悔を避け、賢明な判断をするための重要な心構えと準備
  • ご自身の価値観やライフスタイルに、FIREという生き方が本当に合っているのかを見極めるためのヒント

  1. FIREとは?その概要と魅力
    1. FIREの基本的な概念
    2. FIREが注目される背景
    3. FIREの一般的な魅力
  2. FIREはやめとけと言われる6つの深刻な理由
    1. 【理由①】目標達成までの道のりが想像以上に険しく、多くの人が挫折しやすいから
    2. 【理由②】想定外の支出やインフレで、計画が簡単に破綻してしまう脆さがあるから
    3. 【理由③】完全リタイア後の社会的孤立感や生きがいの喪失に苦しむことも
    4. 【理由④】資産運用に関する知識不足とリスク管理の甘さが命取りになるから
    5. 【理由⑤】健康状態の変化や予期せぬ病気・介護への備えが不十分で破綻
    6. 【理由⑥】FIRE達成後の「暇」との戦いと、いざという時の再就職の困難さ
  3. それでもFIREを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え
    1. 【ポイント①】なぜFIREしたいのか、その「本質的な目的」と「譲れない価値観」を明確にする
    2. 【ポイント②】現実的で柔軟な目標設定と、徹底的なシミュレーションを何度も行う
    3. 【ポイント③】収入源の多様化を意識し、「完全リタイア」以外の選択肢(サイドFIREなど)も視野に入れる
    4. 【ポイント④】資産運用は「守り」を最重視し、長期・分散・低コストの原則を徹底する
    5. 【ポイント⑤】FIRE後の生活設計を具体的に描き、生きがいや社会との繋がりを確保する準備をする
    6. 【ポイント⑥】健康維持への投資と、不測の事態(病気・介護・災害など)への経済的・精神的備えを万全にする
  4. FIREという生き方を選ぶ上での「やめとけ」理由総括

FIREとは?その概要と魅力

まずはじめに、「FIREって、具体的にどういう状態を目指すの?」「ただの早期退職とは違うの?」という方のために、FIREの基本的なところからご説明しますね。

その考え方や魅力、そしてなぜこれほどまでに多くの人々、特に若い世代の関心を集めているのかを知ることは、今回のテーマを深く理解する上でとても大切なんです。

FIREの基本的な概念

FIRE(ファイア)とは、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で、直訳すると「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。

もう少し具体的に言うと、生活費を資産運用から得られる収益(不労所得)だけでまかなえる状態(経済的自立)を達成し、会社などに縛られずに若いうちに仕事から解放される(早期リタイア)ことを目指すライフスタイルやムーブメントのことなんですね。

FIREを達成するための一般的な目安としてよく言われるのが、「年間支出の25倍の資産を築く」というものです。そして、その資産を年利4%程度で運用し、運用益の範囲内で生活していく(いわゆる「4%ルール」)という考え方があります。

例えば、年間の生活費が300万円なら、その25倍である7,500万円の資産を築き、それを年利4%で運用できれば、年間300万円の運用益が得られる計算になり、理論上は資産を減らさずに生活していける、というわけです(税金やインフレなどは考慮していません)。

FIREにもいくつかのタイプがあると言われています。例えば、

  • Fat FIRE(ファットファイア):比較的贅沢な生活を送れるだけの十分な資産を築いてリタイアする。
  • Lean FIRE(リーンファイア):生活費を切り詰めて、比較的少ない資産でリタイアする。ミニマリスト的な暮らし。
  • Barista FIRE(バリスタファイア):完全にリタイアするのではなく、生活費の大部分は資産運用でまかないつつ、好きなカフェでアルバイトをするなど、楽しみや社会との繋がりのために少しだけ働く。健康保険などの福利厚生のためという側面も。
  • Coast FIRE(コーストファイア):ある程度の資産を築いたら、それ以上積極的な積み増しはせず、あとは複利の力で資産が増えていくのに任せ、当面の生活費は働きながら稼ぐ。リタイア時期は少し遅めになることも。

など、目指す生活水準や働き方によって、必要な資金額や達成までの道のりも変わってきます。

FIREが注目される背景

FIREという考え方が、特にここ数年で日本でも注目されるようになった背景には、いくつかの社会的な要因があると考えられます。

  • 働き方の多様化と価値観の変化:終身雇用や年功序列といった従来の日本的な働き方が揺らぎ、「会社に縛られずに自由に生きたい」「自分の時間を大切にしたい」と考える人が増えてきました。
  • 将来への経済的な不安:年金制度の持続可能性への疑問や、長引く低金利、物価上昇など、将来のお金に対する不安感が高まっています。「自分の力で資産を築かなければ」という意識の表れとも言えるでしょう。
  • 情報へのアクセスの容易化:インターネットやSNSを通じて、FIREを達成した人の体験談や、資産運用の情報などが手軽に入手できるようになり、若い世代にもFIREという選択肢が現実的なものとして広まりました。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響:パンデミックを経験し、働き方や生き方を見つめ直す人が増えたことも、時間や場所にとらわれないFIREというライフスタイルへの関心を高めた一因かもしれません。

こうした背景から、「会社のために我慢して働き続けるのではなく、早く経済的な自由を手に入れて、自分の本当にやりたいことや、大切な人と過ごす時間を優先したい」と願う人々にとって、FIREは非常に魅力的な目標として映るんですね。

FIREの一般的な魅力

では、FIREを達成することで、どのような魅力的な生活が待っているのでしょうか。一般的に言われるメリットをいくつか挙げてみますね。

  • 時間的自由:毎日の通勤や、決められた勤務時間に縛られることなく、自分の好きなように時間を使えるようになります。趣味に没頭したり、旅行に出かけたり、家族とゆっくり過ごしたり、学びたいことを学んだり…可能性は無限大です。
  • ストレスからの解放:仕事上の人間関係のストレス、ノルマや残業のプレッシャー、満員電車での通勤の苦痛など、会社勤めに伴う様々なストレスから解放されます。精神的なゆとりが生まれ、心穏やかに暮らせるかもしれません。
  • 場所の自由:必ずしも会社に通う必要がなくなるため、自分が本当に住みたい場所(例えば、自然豊かな地方や、物価の安い海外など)を選んで暮らすことができるようになります。
  • 本当にやりたいことへの挑戦:お金のために働く必要がなくなるので、これまで諦めていた夢や、本当に情熱を注げること(例えば、創作活動、ボランティア、社会貢献活動など)に、時間を気にせず打ち込めるようになります。
  • 自己決定権の獲得:自分の人生の舵を、会社や他人に委ねるのではなく、自分自身で握り、自分の価値観に基づいて生き方を選択できるようになります。

これらの魅力は、多くの人にとって、まさに「理想の生き方」そのものかもしれません。しかし、この輝かしい理想の裏には、厳しい現実や、知っておくべき落とし穴もたくさん隠れているんです。


FIREはやめとけと言われる6つの深刻な理由

さて、ここからが本題です。FIREの概要と魅力をご理解いただいたところで、なぜ一部で「FIREはやめとけ」という、夢に水を差すような、しかし真剣に耳を傾けるべき声があがってしまうのか、その具体的な理由を6つに絞って、詳しくご説明していきたいと思います。

これらの理由を知っておくことは、皆さんがFIREという大きな目標に向かって進むべきかどうかを判断する上で、非常に重要になってくるはずです。

【理由①】目標達成までの道のりが想像以上に険しく、多くの人が挫折しやすいから

FIREを達成するためには、前述の通り「年間支出の25倍の資産」を築くことが一つの目安とされています。例えば、年間300万円で生活したいなら7,500万円、年間400万円なら1億円といった具合です。

この金額を、特に20代や30代といった若い世代が、給与収入の中から貯蓄と投資だけで達成しようとするのは、並大抵の努力では不可能に近い、極めて険しい道のりです。

その理由はいくつか考えられます。

  • 必要な資金額の莫大さ:数千万円から1億円という金額は、普通の会社員が一生かかって貯められるかどうかというレベルです。これを例えば10年や20年といった短期間で達成しようとすれば、相当な高収入であるか、あるいは極端な節約生活を送る必要があります。
  • 極端な節約生活の継続困難性:収入の大部分を貯蓄や投資に回すためには、日々の生活費を極限まで切り詰める必要があります。食費、住居費、娯楽費、交際費など、あらゆる面で我慢を強いられる生活が長期間続くと、精神的に大きなストレスとなり、途中で「何のためにこんな生活をしているんだろう…」と虚しさを感じて挫折してしまう可能性が高いです。
  • 収入アップの難しさと投資の不確実性:大幅な収入アップを実現するのは簡単ではありませんし、かといって投資だけで資産を急激に増やすのは、高いリスクを伴います。安定して高いリターンを得られる保証はどこにもありません。
  • 人生の予期せぬイベント:結婚、出産、住宅購入、病気、家族の介護など、人生にはまとまったお金が必要になるイベントがつきものです。FIRE計画中にこうしたイベントが発生すると、計画の大幅な見直しや、最悪の場合は中断を余儀なくされることもあります。
  • 精神的なプレッシャー:「早く目標を達成しなければ」という焦りや、「周りの人は楽しそうなのに自分だけ…」という孤独感、そして「もし失敗したらどうしよう」という不安感が、常に付きまとうことになります。

「FIRE 最速」といったキーワードで検索すると、様々な節約術や投資法が紹介されていますが、それらを全て実践し、長期間継続できる人はごく一部でしょう。多くの人にとっては、あまりにも非現実的な目標設定になってしまう可能性が高いのです。「夢を追いかけるのは素晴らしいけれど、そのために今の人生を犠牲にしすぎるのは本末転倒ではないか?」という疑問も湧いてきますよね。

「FIRE目指して、毎月の食費2万円、飲み会は全部断って、家賃の安いボロアパートに住んで…って生活を2年続けたけど、もう限界。友達も減ったし、何のために生きてるのか分からなくなって、結局普通の生活に戻した。FIREは自分には無理だった。」(20代後半、元FIRE志望者のSNS投稿より)

この目標達成までの道のりの厳しさが、「FIREはやめとけ」と言われる最も大きな理由の一つかもしれません。

【理由②】想定外の支出やインフレで、計画が簡単に破綻してしまう脆さがあるから

仮に、目標としていた資産額を達成し、晴れてFIRE生活に突入できたとしても、それで安心というわけではありません。その後の人生においても、当初の計画を狂わせるような「想定外の事態」が発生するリスクは常に存在します。

そして、資産を取り崩しながら生活していくFIREのライフスタイルは、こうした不測の事態に対する脆弱性を抱えているのです。

具体的には、以下のようなリスクが考えられます。

  • 予期せぬ大きな支出:自分自身の病気やケガによる高額な医療費、家族の介護費用の発生、住宅の大規模修繕、自然災害による被害など、人生にはいつ大きな出費が必要になるか分かりません。FIRE計画時にこれらの費用を全て正確に見積もっておくことは不可能です。
  • インフレーション(物価上昇)のリスク:長期間にわたるFIRE生活においては、インフレによって生活費が当初の想定よりも大幅に上昇する可能性があります。例えば、年2%のインフレが30年続けば、物価は約1.8倍になります。つまり、今の年間300万円の生活費が、30年後には540万円近く必要になる計算です。資産運用がインフレ率を上回るリターンを安定して生み出せなければ、実質的な資産価値はどんどん目減りしていくことになります。
  • 資産運用環境の変化:FIRE計画の根幹となる「4%ルール」は、過去のアメリカの株式市場のデータなどに基づいていますが、将来も同じような運用リターンが保証されているわけではありません。長期的な低金利時代の到来や、大きな金融危機が発生すれば、期待通りの運用益が得られず、資産の取り崩しペースが早まってしまう可能性があります。
  • 年金制度や税制の変更リスク:将来受け取れる年金額が減額されたり、支給開始年齢が引き上げられたり、あるいは資産運用益に対する税率が変更されたりする可能性もゼロではありません。こうした制度変更は、FIRE計画に大きな影響を与えます。

「年間生活費の25倍の資産があれば大丈夫」という計算は、あくまで一定の前提に基づいたものであり、現実の人生はもっと複雑で、予測不可能なことばかりです。

一度FIREしてしまうと、再び安定した収入を得るのは難しいため、こうした想定外の事態によって計画が破綻した場合のリカバリーは非常に困難になります。「老後破産」という言葉も他人事ではなくなってしまうかもしれません。

金融庁のウェブサイトでも、老後2000万円問題に関連して、長期的な資産形成の重要性と共に、ライフイベントに応じた資金計画の必要性が指摘されていますが(参考:高齢社会における金融サービスのあり方 – 金融庁)、FIREの場合はその計画期間がより長くなるため、不確実性も増大します。

「45歳でFIREしたけど、最近の物価高で生活費が予想以上に上がってきて、毎月赤字スレスレ。資産も思ったように増えないし、このままだと70歳くらいで底をつくんじゃないかって不安で眠れない夜もある。」(FIRE歴5年のBさんの悩み)

この計画の脆さと、不測の事態への対応力の低さが、「やめとけ」と言われる大きな理由の一つなんですね。

【理由③】完全リタイア後の社会的孤立感や生きがいの喪失に苦しむことも

毎日会社に行く必要がなくなり、時間に縛られない自由な生活。それは多くの人が夢見る理想の姿かもしれません。しかし、実際にFIREを達成し、完全に仕事からリタイアした人の中には、予期せぬ「社会的孤立感」や「生きがいの喪失」に苦しむケースも少なくないと言われています。

会社勤めをしていれば、良くも悪くも、毎日同僚や上司、取引先といった人々と関わり、社会の一員としての役割や帰属意識を感じることができます。

また、仕事を通じて目標を達成したり、誰かの役に立ったりすることで、自己肯定感や生きがいを得ることもできます。しかし、FIREによってこうした社会との接点が急になくなってしまうと…

  • 社会からの疎外感・孤独感:毎日同じことの繰り返しで、誰とも会話しない日があったり、世の中の動きから取り残されているような感覚に陥ったりすることがあります。特に、周囲の友人や知人がまだ現役で働いている場合、話が合わなくなったり、疎遠になったりして、孤独感を深めてしまうことも。
  • 目標や目的の喪失:「お金を貯めてFIREする」という大きな目標を達成してしまった後、次に何をすればいいのか分からなくなり、虚無感や無力感に襲われることがあります。「暇」という名の苦痛との戦いが始まるのです。
  • 自己肯定感の低下:仕事を通じて得られていた他者からの承認や、社会に貢献しているという実感がなくなることで、自分の存在価値を見失いそうになることがあります。
  • 時間を持て余す苦痛:最初は自由な時間を満喫できても、次第にやることがなくなり、時間を持て余してしまう。「毎日が日曜日」というのは、意外と辛いものなのかもしれません。

もちろん、趣味に没頭したり、新しいことに挑戦したり、ボランティア活動に参加したりと、FIRE後の生活を充実させている人もたくさんいます。

しかし、そのためには、FIREする前から、リタイア後の具体的な生活設計や、生きがいとなるものを見つけておくことが非常に重要になります。「お金さえあれば幸せになれる」というのは、必ずしも真実ではないのかもしれませんね。

人間は、経済的な充足だけでなく、社会との繋がりや、自己実現、他者への貢献といった、精神的な充足も求めている生き物なのです。

「FIREして1年。最初の半年は世界中旅行したりして楽しかったけど、最近は何だか毎日が退屈で…。誰かに必要とされてない気がして、時々すごく虚しくなる。やっぱり、何か人の役に立てるような活動を始めようかなって思ってる。」(元ITエンジニアCさんのFIRE後の生活ブログより)

この「心の空白」という問題も、「FIREはやめとけ」と言われる見過ごせない理由の一つです。

【理由④】資産運用に関する知識不足とリスク管理の甘さが命取りになるから

FIREを達成し、その後の生活を資産運用からの収益でまかなっていくためには、投資や資産運用に関する正しい知識と、適切なリスク管理能力が不可欠です。

しかし、十分な知識がないまま、あるいはリスクに対する認識が甘いままFIREに踏み切ってしまうと、大切な資産を大きく減らしてしまう危険性があります。

特に、以下のようなケースは非常に危険です。

  • 「4%ルール」の過信や誤解:年間支出の25倍の資産を築き、年利4%で運用すれば大丈夫、という「4%ルール」は、あくまで過去のデータに基づいた一つの目安であり、将来も必ずうまくいくという保証はありません。また、このルールは、資産の大部分を株式などのリスク資産で運用することを前提としている場合が多く、相場が大きく下落した際には、資産を大きく取り崩さざるを得なくなるリスクがあります。税金や手数料も考慮されていません。
  • 特定の金融商品への集中投資:「これは絶対に儲かる!」といった情報に飛びつき、一つの株式銘柄や、特定のテーマ型投資信託、あるいはFXや暗号資産といったハイリスクな商品に、FIRE資金の大部分を集中投資してしまうのは非常に危険です。もしその投資が失敗すれば、取り返しのつかないことになります。
  • 市場の暴落時のパニック売り:リーマンショックやコロナショックのような大きな市場の暴落は、いつ起こるか分かりません。そうした際に、冷静さを失って保有資産を全て売却してしまう(いわゆる「狼狽売り」)と、大きな損失を確定させてしまい、その後の市場回復の恩恵も受けられなくなってしまいます。
  • 手数料の高い金融商品の購入:銀行や証券会社の窓口で、「退職金運用プラン」などとして勧められる金融商品の中には、販売手数料や信託報酬といった手数料が非常に高いものが少なくありません。こうした手数料は、長期的に見ると運用リターンを大きく圧迫します。商品の内容やコストを十分に理解せずに契約してしまうのは避けるべきです。
  • 投資詐欺や怪しい儲け話への警戒心の欠如:「元本保証で高利回り」「誰でも簡単に大儲けできる」といった甘い話は、ほぼ100%詐欺です。特に、FIREを目指して焦っている心理状態につけ込まれるケースもあるので、注意が必要です。

FIRE生活においては、資産が「減らない」こと、そして「目減りさせない」ことが何よりも重要になります。「攻めの運用」で大きく増やそうとするよりも、「守りの運用」で着実に資産を保全していくという意識が求められます。

金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)を高め、自分自身で資産を守る力を身につけることが、FIRE達成後の生活安定の鍵となるのです。

金融庁も、NISAやiDeCoといった制度を通じて、国民の安定的な資産形成を支援していますが、最終的な投資判断は自己責任です(参考:NISA特設ウェブサイト – 金融庁)。「プロに任せておけば大丈夫」という考えは危険かもしれません。

【理由⑤】健康状態の変化や予期せぬ病気・介護への備えが不十分で破綻

FIREを計画する際、多くの人が現在の健康状態を前提に考えがちですが、人生は何が起こるか分かりません。特に、年齢を重ねるにつれて、病気やケガのリスクは高まりますし、親の介護といった予期せぬ事態に直面する可能性も出てきます。

こうした健康関連の支出は、FIRE計画における大きな不確定要素であり、備えが不十分だと、せっかく達成したFIRE生活が一気に破綻してしまう危険性すらあります。

  • 医療費の増大:退職すると、会社の健康保険から国民健康保険に切り替わるか、あるいは任意継続被保険者制度を利用することになりますが、いずれにしても保険料の負担や、医療費の自己負担(高額療養費制度があるとはいえ)は、現役時代よりも重くのしかかってくる可能性があります。長期入院や先進医療が必要になれば、数百万円単位の費用がかかることも。
  • 介護費用の発生:自分自身や配偶者、あるいは親の介護が必要になった場合、その費用は非常に大きなものになります。在宅介護でも、介護サービスの利用や住宅改修などで費用がかさみますし、介護施設に入所するとなれば、さらに高額な一時金や月額費用が必要になることがあります。
  • 働けない期間の収入減:もし、FIRE後に資産運用益だけでは生活費が不足し、少しアルバイトなどで補填しようと考えていた場合に、病気やケガで働けなくなってしまうと、その収入源が途絶えてしまいます。
  • 健康保険制度の将来不安:少子高齢化が進む中で、将来的に健康保険の自己負担割合が引き上げられたり、給付内容が縮小されたりする可能性もゼロではありません。

「自分はまだ若いから大丈夫」「健康には自信があるから」と楽観視していると、いざという時に対応できなくなってしまいます。

FIRE計画においては、こうした健康リスクや介護リスクを十分に考慮し、そのための備え(例えば、十分な医療保険・がん保険・介護保険への加入、あるいはそれらの費用をまかなえるだけの余裕資金の確保など)を盛り込んでおくことが不可欠です。

「50歳でサイドFIREして、趣味の登山を楽しんでたんだけど、滑落事故で大怪我して長期入院。治療費もかさんだし、しばらくアルバイトもできなくなって、本当に生活が苦しくなった。もっと医療保険を手厚くしておくべきだったと後悔してる。」(FIRE中のDさんの体験談)

健康は何物にも代えがたい財産です。FIRE後の生活を心から楽しむためにも、健康維持への努力と、万が一の事態への経済的な備えは、絶対に怠ってはいけないポイントですね。

【理由⑥】FIRE達成後の「暇」との戦いと、いざという時の再就職の困難さ

「毎日が日曜日」というFIRE後の生活は、最初は夢のように感じられるかもしれません。しかし、人間は不思議なもので、あまりにも自由な時間が長すぎると、かえって「何をしていいか分からない」「時間を持て余してしまう」という、新たな苦痛を感じることがあります。特に、これまで仕事に多くの時間と情熱を捧げてきた人ほど、その反動は大きいかもしれません。

  • 目的のない自由の辛さ:「何をしてもいい」という自由は、裏を返せば「何をすべきか自分で見つけなければならない」という責任でもあります。明確な趣味ややりたいことがない場合、ただ時間だけが過ぎていく日々に、虚しさや焦りを感じてしまうことがあります。
  • 社会との繋がりの希薄化による自己肯定感の低下:仕事を通じて得られていた社会との接点や、誰かの役に立っているという実感がなくなることで、「自分は社会にとって必要な存在なのだろうか」と、自己肯定感が揺らいでしまうことがあります。
  • 規則正しい生活リズムの崩壊:毎日決まった時間に起きる必要がなくなると、生活リズムが不規則になりがちです。これが、心身の不調に繋がることも。

そして、もし、FIRE後に「やっぱりもう一度働きたい」と思ったり、あるいは予期せぬ事態で収入が必要になったりした場合、一度リタイアした後の再就職は、想像以上に厳しい現実が待っています。

  • 年齢の壁:特に中高年になってからの再就職は、年齢だけで門前払いされるケースも少なくありません。
  • ブランク期間の長さ:FIREしていた期間が長ければ長いほど、ビジネスの現場感覚が鈍っていたり、スキルが陳腐化していたりすると見なされやすくなります。
  • プライドの問題:かつて高い役職に就いていたり、高収入を得ていたりした経験があると、条件の低い仕事や、年下の指示で働くことに抵抗を感じてしまう人もいます。
  • 希望する職種や条件での再就職の難しさ:「自分のペースで、好きなことだけを仕事にしたい」と思っても、そんな都合の良い求人はなかなか見つかりません。

「いざとなったら、また働けばいいや」と安易に考えていると、厳しい現実に打ちのめされてしまうかもしれません。

FIREを目指すのであれば、リタイア後の生活をどう充実させるか、そして万が一の場合のセーフティネット(例えば、再就職しやすいスキルを維持しておく、あるいはスモールビジネスを始める準備をしておくなど)についても、事前に真剣に考えておく必要があるでしょう。

以上が、「FIREはやめとけ」と言われることがある主な6つの理由です。

どれも、FIREというライフスタイルが持つ光と影、理想と現実を映し出しており、決して軽い気持ちで目指せるものではない、ということがお分かりいただけたでしょうか。


それでもFIREを目指すなら?後悔しないための賢い選択と心構え

ここまでFIREの厳しい側面や、「やめとけ」と言われる理由について詳しくお話ししてきましたが、「うーん、やっぱりFIREは夢物語なのかな…」「自分には無理かもしれない…」と、少し気落ちしてしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、お待ちください! FIREという目標が、必ずしも全ての人にとって達成不可能だとか、不幸な結果を招くものだと決まったわけでは決してありません。その理念の中には、自分らしい生き方を追求し、人生の質を高めるためのヒントがたくさん詰まっています。そして、リスクを正しく理解し、周到な準備と現実的な計画、そして何よりも強い意志を持って臨めば、理想のライフスタイルを実現できる可能性も十分にあります

大切なのは、FIREという言葉の響きや、他人の成功談にただ憧れるのではなく、ご自身の価値観や目標、そして現実的な状況と照らし合わせて、本当に自分にとって目指すべき道なのかを真剣に考えることです。そして、もし「それでも私は、経済的自立と早期リタイアという目標に向かって挑戦したい!」という強い思いをお持ちなのであれば、後悔しないために、いくつかの重要な心構えと具体的な準備が必要です。ここでは、そのためのヒントをいくつかご紹介しますね。

【ポイント①】なぜFIREしたいのか、その「本質的な目的」と「譲れない価値観」を明確にする

まず何よりも大切なのは、「なぜ自分はFIREしたいのか?」「FIREを達成して、どんな人生を送りたいのか?」その動機や目的、そして自分にとって本当に譲れない価値観は何かを、誰に何を言われても揺るがないくらい、明確に、そして深く自分の中に持つことです。

先にお話ししたように、FIRE達成までの道のりも、達成後の生活も、多くの困難や予期せぬ出来事が待ち受けている可能性があります。

そんな時、自分を支え、進むべき方向を見失わないための羅針盤となるのは、「それでも自分は、〇〇な人生を送るために、この道を選んだんだ!」という、その目標に対する純粋な情熱や、自分自身の核となる価値観なんです。

  • 本当に「全く働かない」ことが目的なのか? それとも、「会社組織に縛られずに、自分のペースで好きな仕事をする」ことが目的なのか?
  • 手に入れたいのは「時間的な自由」なのか、「場所の自由」なのか、あるいは「精神的なストレスからの解放」なのか?
  • 贅沢な暮らしをしたいのか、それとも質素でも心豊かな暮らしをしたいのか?
  • FIREを通じて、社会とどのように関わっていきたいのか? 誰かの役に立ちたいという思いはあるか?

これらの問いに深く向き合い、自分にとっての「理想のFIRE像」を具体的に描くことが、計画を立てる上での最初の、そして最も重要なステップです。

それが明確でなければ、途中で目標を見失ったり、達成しても「こんなはずじゃなかった」と虚しさを感じたりすることになりかねません。「みんなが目指しているから」ではなく、「自分はこう生きたいから」という、主体的な動機を見つけ出しましょう。

【ポイント②】現実的で柔軟な目標設定と、徹底的なシミュレーションを何度も行う

FIREを目指すと決めたら、次は具体的な計画を立てる段階ですが、ここで重要なのは、決して楽観的すぎず、現実的で、かつ様々な状況変化に対応できるような柔軟性を持った目標設定と、徹底的なシミュレーションを行うことです。

「年間支出の25倍」や「4%ルール」といった一般的な目安は参考にしつつも、ご自身の状況に合わせてカスタマイズし、複数のシナリオを想定して試算を繰り返すことが不可欠です。

  • 生活費の正確な把握と将来予測:現在の毎月の支出を細かく洗い出し、FIRE後の生活で増える費用(国民健康保険料、国民年金保険料、趣味や旅行の費用など)や減る費用(通勤費、交際費など)を考慮して、現実的な年間生活費を見積もりましょう。そして、インフレ率(例えば年1~2%など)を考慮して、将来的に必要となる生活費も試算します。
  • 目標資金額の多角的な検討:上記の生活費と、想定する運用利回り(保守的に見積もるのが賢明です。例えば2~3%など)、そして何歳まで資産を持たせたいか(平均寿命+αなど)を考慮して、必要な目標資金額を複数のパターンで計算してみましょう。
  • 達成までの期間と毎月の積立額の現実性:目標資金額と現在の貯蓄額、そして毎月積み立てられる金額から、目標達成までに何年かかるのかを試算します。その期間が現実的か、毎月の積立額に無理はないかを検証しましょう。
  • ストレステストの実施:もし市場が暴落して資産が20%減ったら? もしインフレ率が想定より高くなったら? もし予定外の大きな支出が発生したら? といった、ネガティブなシナリオも想定し、それでも計画が破綻しないか、あるいはどのように対応できるかをシミュレーションしておくことが大切です。
  • 定期的な計画の見直し:一度立てた計画も、社会情勢の変化やご自身のライフステージの変化に合わせて、定期的に見直し、必要であれば修正していく柔軟性を持ちましょう。

これらのシミュレーションは、Excelなどの表計算ソフトを使ったり、専門のファイナンシャルプランナーに相談したりしながら行うと良いでしょう。

「希望的観測」ではなく、「現実的な最悪の事態」も想定した上で、それでも達成可能で、かつ持続可能な計画を練り上げることが、FIRE成功の鍵を握ります。

【ポイント③】収入源の多様化を意識し、「完全リタイア」以外の選択肢(サイドFIREなど)も視野に入れる

FIREの目標資金額を、給与収入からの貯蓄と投資だけで達成するのは非常に困難であり、また、達成後も資産運用益だけに頼る生活はリスクが高い、というお話をしました。

そこで重要になってくるのが、収入源を多様化するという考え方です。そして、必ずしも「完全に仕事を辞める」ことだけがFIREの形ではない、という柔軟な視点を持つことも大切です。

  • 副業やスモールビジネスの検討:本業の収入に加えて、自分のスキルや趣味を活かせる副業を始めたり、小さなビジネス(例えば、ブログ運営、オンライン講師、ハンドメイド作品の販売など)を立ち上げたりすることで、収入源を増やすことができます。これがFIRE達成までの期間を短縮するだけでなく、FIRE後の収入の柱の一つになる可能性もあります。
  • 不労所得の構築:株式の配当金、不動産投資からの家賃収入、印税収入など、自分が直接働かなくても得られる収入(不労所得)を少しずつでも増やしていく努力をしましょう。ただし、これらの不労所得を得るためにも、初期投資や相応の知識・リスク管理が必要です。
  • 「サイドFIRE」という選択肢:生活費の全てを資産運用益でまかなうのではなく、例えば生活費の半分は資産運用益で、残りの半分は自分の好きな仕事や負担の少ないアルバイトなどで稼ぐ、という「サイドFIRE」の考え方も注目されています。これにより、必要な目標資金額を下げることができ、FIRE達成のハードルがぐっと低くなります。また、社会との繋がりや生きがいを維持しやすいというメリットもあります。
  • スキルアップと市場価値の維持:もし将来的に再就職する可能性を考えるなら、FIREを目指す過程でも、本業や副業を通じて常に自分のスキルを磨き、市場価値を維持・向上させておく努力が重要です。

「収入は会社からの給料だけ」という状態から脱却し、複数の収入の柱を持つことは、経済的な安定性を高めるだけでなく、精神的な安心感にも繋がります。「完全に働かない」ことに固執せず、自分らしい働き方と収入のバランスを見つけることが、より現実的で持続可能なFIREへの道を開くかもしれません。

【ポイント④】資産運用は「守り」を最重視し、長期・分散・低コストの原則を徹底する

FIRE達成後の生活は、基本的に資産を取り崩しながら、あるいは資産運用益で生活していくことになります。そのため、資産運用においては、「大きく増やす」ことよりも、「いかに減らさずに、安定的に運用し続けるか」という「守り」の視点が何よりも重要になります。

若い頃のようなハイリスク・ハイリターンを狙う攻めの運用は、FIRE生活においては非常に危険です。

  • コア・サテライト戦略の活用:資産の大部分(コア部分)は、全世界株式や米国株式のインデックスファンドといった、低コストで分散の効いた安定的な運用を目指す商品で構成し、ごく一部の資金(サテライト部分)で、個別株やテーマ型ファンドなど、少しリスクを取った運用を試みる、といったように、リスク許容度に応じて資産配分を考えるのが良いでしょう。
  • 長期的な視点での運用:日々の市場の変動に一喜一憂せず、数年~数十年単位の長期的な視点で、どっしりと構えて運用を続けることが大切です。
  • 徹底した分散投資:特定の国や地域、特定の業種や銘柄に資産を集中させるのではなく、地理的にも、資産クラス(株式、債券、不動産など)的にも、できる限り幅広く分散させることで、リスクを軽減します。
  • 低コストな運用商品の選択:投資信託を選ぶ際には、信託報酬(運用管理費用)などの手数料が極力低い商品を選びましょう。長期間で見ると、このコストの差が運用成果に大きな影響を与えます。ネット証券などで扱っている低コストなインデックスファンドやETF(上場投資信託)が有力な選択肢となります。
  • NISAやiDeCoの有効活用:税制優遇制度であるNISA(つみたて投資枠、成長投資枠)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を最大限に活用し、効率的な資産形成を目指しましょう。ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せない点に注意が必要です(参考:NISA特設ウェブサイト – 金融庁、iDeCo公式サイト iDeCoってなに?)。
  • 暴落時の冷静な対応:市場が大きく下落した際には、パニックにならず、事前に決めておいたルール(例えば、一定期間は売却しない、あるいは追加投資のチャンスと捉えるなど)に従って冷静に対応することが重要です。

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言を常に心に留め、リスクをコントロールしながら、時間をかけて着実に資産を育てていくという、地道で堅実な運用を心がけることが、FIRE生活の経済的基盤を守るためには不可欠です。

【ポイント⑤】FIRE後の生活設計を具体的に描き、生きがいや社会との繋がりを確保する準備をする

FIREを達成して時間的な自由を手に入れたとしても、その時間をどう使うのか、何に価値を見出して生きていくのか、という「FIRE後の生活設計」が具体的でなければ、かえって虚しさや孤独感に苛まれてしまう可能性があります。

「お金」だけでなく、「生きがい」や「社会との繋がり」といった、精神的な豊かさも追求することが、真に充実したFIREライフを送るためには欠かせません。

  • 趣味や好きなことへの没頭:これまで時間がなくてできなかった趣味や、本当にやりたかったことに、思う存分時間を使えるようになります。それが生きがいとなり、日々の生活に彩りを与えてくれるでしょう。
  • 新しいことへの挑戦・学習:興味のある分野を深く学んだり、新しいスキルを習得したり、資格取得に挑戦したりするのも良いでしょう。知的好奇心を満たし、自己成長を続けることは、人生を豊かにします。
  • ボランティア活動や地域貢献:自分の時間や能力を、誰かのためや社会のために役立てることで、大きな満足感や自己肯定感を得ることができます。地域社会との繋がりも深まります。
  • 人間関係の維持・構築:家族や友人との時間を大切にし、FIRE後も積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。また、新しいコミュニティ(趣味のサークル、地域の集まり、オンラインサロンなど)に参加し、新たな人間関係を築くことも、孤独感を防ぎ、生活に刺激を与えてくれます。
  • 健康維持のための活動:運動習慣を続けたり、健康的な食生活を心がけたりと、自分の健康に気を配ることは、FIRE後の生活の質を維持する上で非常に重要です。
  • 小さな目標設定と達成感:完全にリタイアした後も、何か小さな目標(例えば、毎日散歩をする、週に一冊本を読む、新しい料理に挑戦するなど)を設定し、それを達成していくことで、日々の生活にハリが生まれ、自己効力感を高めることができます。

FIREは「ゴール」ではなく、あくまで「新しい人生のスタートライン」です。その先の人生をどうデザインし、どう豊かにしていくかは、自分自身にかかっています。お金の準備と並行して、あるいはそれ以上に、FIRE後の「心の準備」と「生き方の設計」を真剣に行うことが、後悔しないためには絶対に必要です。

【ポイント⑥】健康維持への投資と、不測の事態(病気・介護・災害など)への経済的・精神的備えを万全にする

FIRE後の長い人生を安心して楽しむためには、何よりもまず「健康」が大切です。そして、どんなに気をつけていても、病気やケガ、あるいは親の介護といった、予期せぬ事態に見舞われる可能性は誰にでもあります。

こうした不測の事態に対する経済的・精神的な備えを万全にしておくことが、FIRE生活の安定性を大きく左右します。

  • 健康診断の定期的な受診と生活習慣の見直し:早期発見・早期治療が何よりも重要です。定期的な健康診断を受け、もし何か問題が見つかれば、すぐに対処しましょう。また、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった、健康的な生活習慣を維持する努力を続けましょう。
  • 医療保険・がん保険・介護保険などの見直しと適切な加入:退職すると会社の健康保険の恩恵が受けられなくなるため、自分に必要な保障内容をよく検討し、民間の医療保険やがん保険、あるいは公的な介護保険だけでは不足すると感じる場合は民間の介護保険などへの加入を検討しましょう。ただし、保険料とのバランスも重要です。
  • 十分な生活防衛資金(緊急予備資金)の確保:病気やケガによる急な入院・手術費用、あるいは自然災害による住宅修繕費用など、予期せぬ大きな支出に備えて、いつでもすぐに使える現預金を、生活費の半年分~2年分程度(個人の状況による)は確保しておきましょう。これは投資に回すお金とは別に、安全な場所に保管しておくことが大切です。
  • 公的制度の活用知識:高額療養費制度、傷病手当金(国民健康保険には原則なし、任意継続の場合も注意)、障害年金、介護保険サービスなど、いざという時に利用できる公的な制度について、事前に知識を得ておくといざという時に慌てずに済みます。
  • 家族との話し合いと情報共有:もしもの時に備えて、自分の資産状況や加入している保険、延命治療に関する希望などを、家族と事前に話し合い、情報を共有しておくことも大切です。

「備えあれば憂いなし」という言葉の通り、不測の事態に対する備えがしっかりしていればいるほど、FIRE後の生活の安心感は高まります

お金の心配をせずに、治療や介護に専念できる環境を整えておくことが、何よりも重要です。この「守りの備え」を怠ると、せっかくのFIRE生活が、不安と後悔に満ちたものになってしまうかもしれません。

これらのポイントを押さえて、覚悟と周到な準備を持って臨めば、FIREというライフスタイルは、きっとあなたにとって大きな自由と充実感、そして自分らしい生き方を実現するための素晴らしい選択肢となり得るはずです。

大切なのは、情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考え、自分で決断し、そしてその決断に責任を持つことなんですね。


FIREという生き方を選ぶ上での「やめとけ」理由総括

さて、ここまでFIRE(経済的自立と早期リタイア)について、「やめとけ」と言われてしまう理由や、それでもFIREという新しい生き方を選ぶ場合に後悔しないための心構えや準備について、詳しくお話ししてきました。

最後に、今回の内容をまとめて、皆さんがこの大きな人生の選択をする上で、本当に大切なことは何なのか、おさらいをしておきましょう。

今回の記事でお伝えしてきた、「FIREはやめとけ」と一部で言われることがある主な理由は、以下の6点でしたね。

  • 理由①:目標達成までの道のりが想像以上に険しく、多くの人が挫折しやすい
    莫大な資金額、極端な節約、投資の不確実性など、達成には並外れた努力と忍耐が必要です。
  • 理由②:想定外の支出やインフレで、計画が簡単に破綻してしまう脆さがある
    病気、介護、物価上昇など、長期的な計画には多くの不確定要素が伴います。
  • 理由③:完全リタイア後の社会的孤立感や生きがいの喪失に苦しむことも
    仕事を通じた繋がりや目的を失い、精神的な空白を感じるリスクがあります。
  • 理由④:資産運用に関する知識不足とリスク管理の甘さが命取りになる
    「4%ルール」の過信や不適切な投資判断が、資産を大きく減らす原因になり得ます。
  • 理由⑤:健康状態の変化や予期せぬ病気・介護への備えが不十分で破綻
    医療費や介護費用の増大に対応できず、経済的に困窮する可能性があります。
  • 理由⑥:FIRE達成後の「暇」との戦いと、いざという時の再就職の困難さ
    時間を持て余したり、万が一の際に安定収入を得る手段が限られたりします。

これらの理由だけを改めて見ると、「やっぱりFIREなんて、夢のまた夢で、自分には到底無理な話なのかもしれない…」と、少しネガティブな気持ちになってしまうかもしれません。

でも、どうか忘れないでください。これらの厳しい側面は、FIREというライフスタイルが、従来の「働き続けることが当たり前」という価値観に疑問を投げかけ、自分らしい人生を主体的にデザインしようとする、非常に前向きで魅力的な挑戦であることの裏返しでもあるということを。

どんな新しい生き方にも、未知のリスクや困難はつきものです。そして、その困難を乗り越え、自分自身で道を切り拓いていく先にこそ、真の自由と、これまでにない達成感が待っているのではないでしょうか。

FIREという生き方を選ぶか否か、その最終的な判断をする上で最も重要なのは、インターネット上の誰かの「やめとけ」という言葉や、あるいは「FIRE最高!」という熱狂的な声にただ流されるのではなく、

  1. まず、ご自身が「なぜFIREしたいのか」「FIREを達成して、どんな人生を送り、何を実現したいのか」という、心の奥底から湧き出る「本質的な欲求」と「譲れない価値観」を、深く、そして正直に見つめ直すこと。
  2. 次に、FIREというライフスタイルの魅力や可能性、そして同時に、それに伴うリスクや課題、現実的な側面について、信頼できる多様な情報源から、時間をかけて真摯に、そして批判的な視点も持って学ぼうと努めること。
  3. そして、そこで得た知識と、ご自身の価値観(何を幸福と感じるか)、性格(リスク許容度、計画性、忍耐力など)、そして現実的な状況(現在の資産、収入、家族構成、健康状態など)を冷静に照らし合わせ、本当に自分にとって目指すべき道なのか、覚悟を持って判断すること。
  4. 最後に、もし挑戦すると決めたならば、その決断に誇りと責任を持ち、あらゆる困難を乗り越えるための周到な準備(現実的な資金計画、収入源の多様化、リスク管理、FIRE後の生活設計、心身の健康維持など)と、決して諦めない強い意志、そして状況の変化に柔軟に対応できるしなやかさを持って、全力で取り組むこと。

これらのステップを一つひとつ真摯に踏んでいくことが、後悔のない選択をするための、そして、もしFIREという道を選んだ場合に、その道を自分らしく、そして豊かに歩んでいくための、何よりの力になるのだと、私は信じています。

FIREは、単に「仕事を辞めて楽をする」ことではありません。

それは、経済的な自立を基盤として、自分の人生の主導権を自分自身の手に取り戻し、本当に価値があると信じることに時間とエネルギーを注ぎ込むための、「手段」の一つなのです。

「やめとけ」という言葉は、時に私たちを慎重にさせ、立ち止まって深く考えるきっかけを与えてくれます。しかし、その言葉の裏にある本質を見抜き、リスクや課題を克服するための具体的な方策を考え、そして「それでも自分はこの新しい生き方に挑戦し、自分らしい人生を切り拓きたい」と心から願うのであれば、その声はもはや障害ではなく、むしろより賢明に、より力強く未来を創造するための、貴重な道しるべとなるのではないでしょうか。

この記事が、皆さんのFIREというライフスタイルに対する理解を少しでも深め、そして何よりも、皆さんお一人おひとりが、ご自身の未来について真剣に考え、後悔のない決断をするための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。

皆さんの人生が、経済的な自由と精神的な豊かさの両方に満たされることを、心から応援しています!

UTA

会社員。営業職で着実に成果を上げ、年収は本業と副業合わせて1,X00万円。副業は投資とライティング。妻と小学生の娘と3人暮らし。休日は家族サービスと自己研鑽に励む。趣味は映画鑑賞。

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やめとけ