「旅行会社」と聞くと、世界中を飛び回ったり、お客様の夢の旅行を形にしたりする、なんだかとても華やかで楽しそうなイメージが湧いてくるのではないでしょうか。きっと、あなたも「旅行が好きだから、旅行会社で働きたい!」と、一度は考えたことがあるかもしれませんね。
でも、インターネットで情報を探してみると、「旅行会社はやめとけ」「きつい」「後悔する」といった、少し不安になる言葉を目にすることがあります。憧れの裏に、一体どんな現実が隠されているのでしょうか?
この記事では、なぜ旅行会社への就職が「やめとけ」と言われてしまうことがあるのか、その具体的な理由を5つ、一つひとつ丁寧に、そして分かりやすく解説していきますね。そして、もしあなたがそれでもこの魅力的な業界を目指したいと強く願うなら、後悔しないために、今からどんな心構えをしておけば良いのかも、お伝えしたいと思います。
この記事でお伝えしたいこと
・旅行会社のお仕事内容と、業界を取り巻く現状
・「やめとけ」と言われる具体的な5つの理由と、その背景
・旅行業界のやりがいと、ミスマッチを防ぐための適性判断
・後悔しない働き方を見つけるための企業選びと、必要なスキル
まずは知っておきたい「旅行会社」というお仕事の概要
まずはじめに、旅行会社がどんなお仕事で、今の業界がどのような状況にあるのか、基本的なところから一緒に確認しておきましょう。この業界の「今」を知ることが、後悔しないための大切な第一歩になりますからね。
旅行会社のお仕事内容:華やかなイメージの裏側
旅行会社のお仕事は、一言で「旅行」と言っても、その内容は実に多岐にわたります。大きく分けると、次のような業務が挙げられます。
- 旅行商品の企画・造成: お客様が「行きたい!」と思うようなツアーを企画し、ホテルや交通手段、観光地などと交渉して形にするお仕事です。
- 旅行商品の販売・手配: カウンターやウェブサイトを通じて、お客様に旅行商品を提案し、予約やチケットの手配、宿泊施設との連絡などを行います。
- 法人営業: 企業の社員旅行や報奨旅行、研修旅行などを企画・手配します。お客様は企業になるため、BtoBの専門知識も必要になります。
- 添乗業務: ツアーに同行し、お客様の案内や旅程管理、トラブル対応などを行います。華やかなイメージが強いですが、肉体的・精神的な負担も大きいです。
- 発券業務: 航空券やJR券などの手配や発行を行います。旅行の根幹を支える大切な業務ですね。
- 経理・総務: 会社の運営に関わる事務的な業務です。
このように、一口に旅行会社と言っても、その業務は非常に幅広いんです。「旅行が好き」という気持ちだけでなく、営業力や企画力、事務処理能力、そして何よりもコミュニケーション能力が求められるお仕事なんですよ。
旅行業界を取り巻く環境の変化:コロナ禍とDXの波
旅行業界は、ここ数年で大きな変化を経験しました。特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、業界全体に甚大な影響を与えましたよね。海外渡航が制限され、国内旅行も自粛ムードが広がったことで、多くのお客様が旅行を断念せざるを得ませんでした。
この状況下で、多くの旅行会社が事業の縮小や人員削減を余儀なくされました。そして、この経験を経て、業界は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性を強く認識しました。お客様がオンラインで手軽に旅行を予約できるようになり、情報収集もインターネットが主流になったことで、旅行会社の役割も大きく変わりつつあるんです。

かつては情報提供や手配が旅行会社の主な役割でしたが、今ではAIによるレコメンド機能や、オンラインでの旅行予約サービスが充実しています。これからの旅行会社には、お客様のニーズを深く汲み取り、個別最適化された体験価値を提供するといった、より高度なコンサルティング能力が求められるようになっています。
このように、旅行業界は過去の成功体験に囚われず、常に変化に対応していくことが求められる、ダイナミックな業界だと言えるでしょう。
旅行会社への就職を「やめとけ」と言われる5つの深刻な理由
さて、ここからが本題です。多くの人が憧れる旅行会社というお仕事ですが、なぜ「やめとけ」という声が上がってしまうのでしょうか。その背景にある、5つの深刻な理由を詳しく見ていきましょう。
【理由①】体力勝負の厳しい労働環境と長時間労働
旅行会社のお仕事は、想像以上に体力勝負なんです。特に、繁忙期には、朝から晩まで働き詰めということも珍しくありません。ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、世間が旅行を楽しむ時期こそ、旅行会社にとっての最大の繁忙期だからです。
お客様からの問い合わせや手配業務が殺到し、残業や休日出勤が当たり前になることもあります。また、海外旅行の添乗員であれば、時差ボケと戦いながら、お客様の安全管理やトラブル対応を行うなど、心身ともに非常にタフさが求められます。
実際に働いている方からは、こんな声も聞かれます。
- 「旅行が好きで入社しましたが、自分の旅行に行く時間が全くありませんでした。有給も取りづらく、仕事のための旅行という感じです。」
- 「お客様からの緊急連絡は時間帯を問いません。夜中や休日に電話がかかってくることも日常茶飯事でした。」
- 「添乗に出れば、移動で睡眠時間も削られ、現地の気候や食事で体調を崩すこともあります。常に気を張っているので、帰国するとぐったりです。」

このように、旅行会社のお仕事は、華やかなイメージとは裏腹に、非常にハードな肉体労働であり、不規則な勤務時間も多いため、心身ともに疲弊してしまう可能性があります。ワークライフバランスを重視したい方にとっては、大きなギャップを感じてしまうかもしれません。
【理由②】責任の重圧と精神的ストレスに押しつぶされる後悔
お客様にとって、旅行は一生に一度の思い出となる大切なイベントです。それを預かる旅行会社の仕事は、想像を絶するほどの責任とプレッシャーを伴います。
例えば、飛行機が遅延したり、ホテルでトラブルが発生したり、予期せぬ災害に遭遇したりと、旅行中には様々な問題が起こり得ます。そんな時、お客様の安全を確保し、代替案を迅速に手配し、状況を説明するといった対応は、すべて旅行会社の担当者の責任になります。
小さなミスが、お客様の旅行体験を台無しにしてしまう可能性もあるため、常に緊張感を持って仕事に取り組まなければなりません。お客様からのクレーム対応も日常茶飯事です。時には、理不尽な内容であっても、お客様の感情を受け止めて対応する忍耐力が求められます。
実際に、旅行会社で働いていた方からは、「お客様の旅行中、万が一の事態が起こらないか、常に胃が痛くなる思いだった」「深夜でも電話が鳴ると心臓が跳ね上がった」といった声も聞かれます。お客様の笑顔を見る喜びの裏には、こうした計り知れない精神的な負担があるんです。
特に、ツアー中に何かトラブルが起こった際のお客様の不安や不満を、一番に受け止めるのは添乗員です。その精神的な負担は非常に大きく、心身のバランスを崩してしまう方も少なくありません。
【理由③】激務に見合わない決して高くない給与水準
これまでの話を聞いて、「これだけ大変なのだから、きっとお給料は良いのだろう」と思われるかもしれませんね。残念ながら、旅行業界の給与水準は、その激務や責任の重さに見合っているとは言えないのが現状なんです。
旅行業界は、薄利多売のビジネスモデルであることが多く、特に団体旅行や格安ツアーでは、1件あたりの利益が非常に小さい傾向にあります。そのため、たくさんの旅行を販売しなければ、会社として大きな利益を上げることが難しいんです。
転職サイトのデータによると、旅行業界の平均年収は、日本の全職種の平均よりも低い水準にあることが多いです。例えば、とある大手転職サイトのデータ(2024年6月時点)では、旅行業界の平均年収は300万円台前半から半ばとされており、他業種と比べると低めの水準であることがわかります。

残業が多かったり、土日出勤があっても、残業代がきちんと出ないケースや、固定残業代制でほとんど給与に反映されないこともありました。体力的にきついのに、経済的にも厳しく、将来への不安を感じることが多かったです。
このように、頑張りが直接的に収入に反映されにくいと感じる方も少なくありません。経済的な安定を重視する方にとっては、旅行会社への就職は、後悔の原因となってしまう可能性もあるんです。
【理由④】業界の将来性への不安とキャリアパスの限界
旅行業界は、常に社会情勢や技術革新の影響を受けやすい業界です。特に、前述したコロナ禍や、オンライン化の進展は、業界の構造を大きく変えつつあります。これが、旅行会社で働く上での「将来性への不安」へと繋がっています。
- オンライン化の進展: 航空券やホテルの予約は、インターネットで個人が手軽にできるようになりました。AIによる旅行プランの提案なども進化しており、人が介在する価値が問われつつあります。
- 団体旅行の減少: かつては旅行会社の大きな柱だった団体旅行の需要が、個人旅行志向の高まりやコロナ禍の影響で減少し、回復が鈍い傾向にあります。
- 人材の流動化: コロナ禍で旅行業界を離れた人が多く、他業界への転職も増加しています。これは、業界全体のノウハウや経験の蓄積を難しくする側面もあります。

このような状況では、「果たしてこの先も安定して働き続けられるのだろうか?」という不安を感じてしまうのは無理もありません。また、旅行会社内でのキャリアパスも、部署異動や昇進の機会が限られている場合があり、専門性を深めることが難しいと感じる方もいらっしゃるようです。
多くの業務がマニュアル化され、AIや自動化が進む中で、人が行う業務の範囲が狭まる可能性も指摘されています。専門性の高いスキルを身につけ、市場価値を高めていかなければ、将来的なキャリアの選択肢が限られてしまうかもしれません。
【理由⑤】華やかなイメージとのギャップに直面し、失望する後悔
最後に、多くの人が「やめとけ」と感じる、最も大きな理由の一つかもしれません。それは、「旅行が好き」という気持ちと、実際の仕事内容の大きなギャップです。
「旅行会社で働けば、好きな旅行にいつでも行ける!」
「毎日、世界中の魅力的な場所について話せる!」
「お客様と旅行の話で盛り上がれる!」
こんな憧れを抱いて入社したものの、現実は大きく異なると感じてしまう人が少なくありません。
- 自分の旅行に行けない現実: 繁忙期は休めず、閑散期は会社の業績が悪く有給が取りづらい、またはそもそも人手不足で休めない、といった状況に陥ることがあります。
- 地道な事務作業の多さ: 実際の業務は、手配、書類作成、データ入力、電話対応など、非常に地味で細かい事務作業の連続です。お客様と旅行の話をする時間よりも、パソコンに向かって黙々と作業する時間の方が圧倒的に長いことが多いんです。
- お客様との距離: カウンター業務でも、電話対応でも、お客様は「旅行を予約する人」であって、一緒に旅行の思い出を語り合う友人ではありません。接客業としての側面が強く、時にドライな対応が求められることもあります。
- 会社の利益を追求する厳しさ: お客様の満足度を追求することはもちろん大切ですが、同時に会社の売上や利益に貢献することも求められます。お客様の予算と会社の利益の板挟みになることもあり、理想と現実のギャップに悩む方もいらっしゃいます。

「旅行が好き」という気持ちだけでは乗り越えられない、泥臭くて厳しい現実がそこにはあります。このギャップに直面した時、「こんなはずじゃなかった…」と、大きな後悔をしてしまう可能性があるんですね。
それでも「旅行業界」を目指すあなたへ|後悔しないための心構え
ここまで、旅行会社へ就職する際の少し厳しい現実について、詳しくお話ししてきました。もしかしたら、あなたの心は少し揺らいでしまったかもしれませんね。でも、もちろん旅行業界は大変なことばかりではありません。
お客様の「楽しかった!」という最高の笑顔や、「あなたのおかげで、最高の思い出ができました!」といった感謝の言葉をいただく瞬間は、何にも代えがたい大きなやりがいとなります。旅行を通じて、お客様の人生を豊かにするお手伝いができる、本当に素晴らしいお仕事なんです。
もし、これまでの話を聞いても「それでも、私は旅行業界で働きたい!」という強い気持ちが少しも揺らいでいないのなら、ぜひその情熱を大切にしてほしいと思います。その上で、あなたがこの道に進んで後悔しないために、いくつか心に留めておいてほしいことがあるんです。
自分の適性を冷静に見極めるポイント
まず一番大切なのは、ご自身の性格や価値観が、旅行会社のお仕事に本当に合っているのか、もう一度じっくりと考えてみることです。憧れだけでなく、客観的に自分を見つめ直すことが、ミスマッチを防ぐ何よりの近道ですよ。
・「旅行が好き」という気持ちだけでなく、人のために尽くすことが心から好きですか?
・イレギュラーな事態やトラブル発生時でも、冷静かつ迅速に対応できる自信はありますか?
・長時間労働や不規則な勤務、そして土日祝日も働くことが多くても、受け入れられますか?
・地道な事務作業や数字管理、そして営業活動にも前向きに取り組めますか?
・常に新しい情報やトレンドをキャッチアップし、学び続ける意欲はありますか?
これらの質問に、胸を張って「はい」と答えられるのであれば、あなたは旅行業界に向いている可能性が高いかもしれません。でも、もし一つでも「うーん…」と考えてしまう部分があるなら、もう少し深く自己分析をしてみる時間を持つことをお勧めします。決して無理をする必要はありませんから、ご自身の気持ちと正直に向き合ってみてくださいね。
企業選びは慎重に!「ホワイト」な旅行会社を見つけるポイント
実は、「旅行会社」と一言で言っても、その労働環境や職場の雰囲気は、驚くほど違いがあるんです。もしあなたが旅行業界を目指すのであれば、できるだけ長く、そして気持ちよく働ける、いわゆる「ホワイト」な企業を見つけることが、何よりも重要になります。
求人情報を見るときには、単にお給料や休日数だけでなく、次のような点にも注目してみてください。
- 残業時間の実績: 「みなし残業代」が含まれていないか、月平均の残業時間はどのくらいか、具体的に確認しましょう。サービス残業がないかどうかも重要です。
- 年間休日数: 120日以上あると、プライベートとの両立がしやすくなります。有給消化率が高いかどうかも調べてみましょう。
- 働き方改革への取り組み: テレワークやフレックスタイム制、ITツールの導入など、柔軟な働き方を推進しているかどうかも、企業の先進性を見る上で大切なポイントです。
- 口コミサイトの活用: 実際にその旅行会社で働いていた人のリアルな声は、非常に参考になります。OpenWorkや転職会議といったサイトで、良い面も悪い面もバランスよくチェックしてみるのがおすすめです。
- 企業文化・雰囲気: 企業説明会やインターンシップを通じて、社員の方々の表情や、オフィスの雰囲気、質問への回答などから、企業の文化や風通しの良さを肌で感じてみてください。
- 新しい事業への取り組み: オンライン化やDXに積極的に取り組んでいるか、新たな旅行の形を模索しているかなども、将来性を見極める上で重要です。

専門性を磨き、自分だけの強みを持つ
旅行業界で長く活躍していくためには、「旅行が好き」という気持ちだけでは足りません。変化の激しい業界だからこそ、自分だけの専門性や強みを持つことが非常に大切になります。
例えば、次のようなスキルや知識を磨くことを考えてみてください。
- 特定の分野の専門知識: インバウンド(訪日外国人旅行)、MICE(国際会議やイベント)、富裕層向け旅行、教育旅行、特定の方面(ハワイ、ヨーロッパ、アジアなど)のエキスパートになる。
- 語学力: 英語はもちろん、中国語や韓国語など、特定の言語に堪能であれば、お客様の幅が広がり、海外手配や添乗で重宝されます。
- デジタルスキル・マーケティング知識: ウェブサイトの企画・運用、SNSマーケティング、データ分析など、デジタルを活用した集客や顧客体験の向上に関するスキルは、これからの旅行業界で必須となります。
- 関連資格の取得: 総合旅行業務取扱管理者などの国家資格や、旅程管理主任者資格(添乗員資格)などは、キャリアアップに繋がります。
- 危機管理能力: 予期せぬ事態が発生した際の冷静な判断力と対応力は、お客様からの信頼を得る上で不可欠なスキルです。

「将来どんな自分になっていたいか」を具体的にイメージし、そこに到達するために今からどんなスキルを身につけていくべきかを考えることで、目の前の困難にも目的意識を持って立ち向かえるようになるはずですよ。ぜひ、未来の自分を想像してみてくださいね。
旅行会社への就職が勧められない理由と後悔しないための道筋の総括
今回は、「旅行会社への就職はやめとけ」と言われる理由について、詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。このお仕事が持つやりがいと、同時に抱える厳しい現実の両面を見ていただけたかと思います。
旅行会社への就職が「後悔する」「勧めない」と言われる主な5つの理由
- 体力勝負の厳しい労働環境: 繁忙期の長時間労働や休日出勤が多く、心身ともに疲弊しやすい傾向です。
- 計り知れない責任と精神的ストレス: お客様の旅の安全と満足を預かるプレッシャーや、トラブル・クレーム対応による精神的負担が大きいです。
- 激務に見合わない給与水準: 業界全体の薄利多売の構造から、努力や責任の重さに見合った収入が得られにくい傾向があります。
- 業界の将来性への不安: オンライン化や社会情勢の変化により、事業構造やキャリアパスに不確実性が伴います。
- 華やかなイメージとのギャップ: 「旅行が好き」だけでは乗り越えられない、地味な事務作業や数字管理の多さに失望する可能性があります。
これらの理由は、旅行業界を目指す上で、決して目を背けてはいけない、とても大切なポイントです。もし、安易な気持ちや憧れだけでこの世界に飛び込んでしまうと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまうことになりかねません。
しかし、もしあなたが、これらの厳しい現実をしっかりと理解した上で、「お客様の旅を通じて、最高の思い出や感動を提供したい!」という強い情熱を抱いているのなら、その挑戦は本当に素晴らしいことだと思います。
大切なのは、情報をたくさん集めて、ご自身の適性と真剣に向き合い、そして、長く安心して働ける「ホワイト」な企業を慎重に選ぶことです。そして、時代とともに変化する業界で生き残るために、常に自分をアップデートし、専門性を磨き続ける努力を惜しまないこと。この記事が、あなたの後悔しないキャリア選択の、ささやかながらも確かな一助となれたら、私もとても嬉しいです。