「人の体の不調を改善する整体師って、なんだかかっこいいし、やりがいがありそう!」そう思って、このお仕事に憧れを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、インターネットで情報を集めていると、時に「整体師はやめとけ」「後悔する」「きつい」といった、少し心配になる言葉を目にすることがありますよね。
「一体、どうしてそんな風に言われるんだろう?」と、不安に思われるのも無理はありません。整体師というお仕事は、確かに人の役に立てる素晴らしい側面がある一方で、知っておくべき厳しい現実も持ち合わせているんです。
この記事では、なぜ整体師を目指すことが「やめとけ」と言われてしまうのか、その具体的な理由を5つ、一つひとつ丁寧に、そして分かりやすく解説していきますね。そして、もしあなたがそれでもこのお仕事を目指したいと強く願うなら、後悔しないために、今からどんな心構えをしておけば良いのかも、お伝えしたいと思います。
この記事でお伝えしたいこと
・整体師というお仕事の基本的な内容と、他の資格との違い
・「やめとけ」と言われる具体的な5つの理由と、その背景
・整体師のやりがいと、ミスマッチを防ぐための適性判断
・後悔しないために、今からできる準備と心構え
まずは知っておきたい「整体師」というお仕事の基本概要
まずはじめに、整体師がどんなお仕事で、他の似たような資格と何が違うのか、基本的なところから確認しておきましょう。ここをしっかり理解することが、このお仕事の「落とし穴」を知るための大切な第一歩になりますからね。
整体師とは?国家資格ではない民間資格の存在
整体師は、一般的に、体の歪みを整えたり、筋肉のバランスを調整したりすることで、肩こりや腰痛といった体の不調を和らげる施術を行う専門家のことを指します。手技を使って、お客様一人ひとりの体の状態に合わせたアプローチをする、とても繊細なお仕事なんです。
「専門家」と聞くと、何か特別な資格が必要なように感じますが、実は整体師には、医師や看護師のような国家資格は必要ありません。現在、整体師に関する公的な資格制度はなく、施術を行うための免許なども存在しないんです。
多くの整体師は、専門学校やスクール、通信講座などで体の知識や手技を学び、卒業後に民間団体が認定する資格を取得して活動しています。そのため、資格の種類も非常に多く、内容も団体によって様々なんです。
これが、後ほど詳しくお話しする「やめとけ」と言われる理由の一つにも繋がっていくポイントなので、覚えておいてくださいね。
「整体師」と「医療系国家資格」の違いを明確に理解する
整体師と混同されやすいお仕事に、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師といったものがあります。これらも体の不調を改善するお仕事ですが、決定的な違いは「国家資格」であるかどうか、そして「医療行為」ができるかどうか、なんです。
- 柔道整復師: 骨折や脱臼、打撲、捻挫などに対して、手術をせず、手技や装具を用いて治療を行います。保険適用となる施術もあります。厚生労働省のHPでもその役割が明記されています。
- あん摩マッサージ指圧師: あん摩(なでる)、マッサージ(揉む)、指圧(押す)といった手技で、全身の循環改善や痛みの緩和を図ります。こちらも医療行為として保険適用となる場合があります。
- 鍼灸師: 鍼(はり)やお灸を使って、体のツボを刺激し、自然治癒力を高めて不調を改善します。東洋医学に基づいた施術ですね。
これらの国家資格を持つ方々は、医師の同意があれば保険適用となる医療行為を行うことができます。一方、整体師は民間資格であり、医療行為を行うことはできません。「治療」という言葉を使うことも、薬機法や医師法などの関係で制限されていることが多いです。

つまり、整体師は「予防」や「健康維持」、「リラクゼーション」といった側面が強く、病気や怪我を直接「治す」ことを目的とした医療とは、根本的に立ち位置が違うんです。この違いを理解しておくことは、お客様からの期待とご自身の提供できるサービスとのギャップをなくすためにも、とても大切になりますよ。
整体師を「やめとけ」と言われる5つの深刻な理由と後悔
さて、ここからが本題です。やりがいも大きい整体師のお仕事ですが、なぜ「やめとけ」という声が上がってしまうのでしょうか。その背景にある、5つの深刻な理由を詳しく見ていきましょう。
【理由①】体力勝負の肉体労働!身体を酷使する過酷な現実
まず一番に挙げられるのが、整体師というお仕事が非常に肉体労働であるという点です。お客様の体を施術するわけですから、常に立ちっぱなしで、腕や指、腰など、全身を使って施術を行います。
特に、男性のお客様や、体格の大きなお客様を施術する際には、想像以上の力が必要になることもあります。施術中は集中力も非常に高めるため、精神的な疲労も伴います。
一般的な整体院では、1日に何人ものお客様を連続して施術することが珍しくありません。例えば、1人のお客様に60分の施術をするとしましょう。これが1日に8人、9人と続くと、単純計算でも何時間も立ちっぱなしで、腕を動かし続けることになります。

このような働き方は、身体に大きな負担をかけます。実際に、整体師として働いている方々からは、こんな声も聞かれます。
- 「施術が終わると、腕がパンパンで指が曲がりにくくなることがよくあります。」
- 「腰痛や肩こりは、お客様だけでなく、自分自身の職業病になってしまうことが多いです。」
- 「年齢を重ねるごとに、体力が落ちていくのを実感します。いつまでこの仕事を続けられるか不安になることも…。」
体が資本のお仕事なのに、自分自身が体を壊してしまっては元も子もありませんよね。施術技術を磨くことと同じくらい、自身の体のケアが不可欠になるんです。
【理由②】精神的負担が大きい!お客様との板挟みと成果へのプレッシャー
次に、精神的な負担の大きさも「やめとけ」と言われる大きな理由の一つです。
整体師は、お客様の体に直接触れ、不調を改善するお手伝いをするお仕事です。お客様は「何とかしてほしい」という藁にもすがる思いで訪れる方もいらっしゃいますから、施術への期待値が非常に高いことが多いんです。
しかし、体の不調は様々で、一度の施術ですべてが改善されるわけではありません。また、お客様の生活習慣や体質によって、施術の効果には個人差があります。そのため、「期待に応えられないのではないか」「お客様をがっかりさせてしまうのではないか」というプレッシャーが常に付きまといます。
また、時には次のような状況に直面することもあります。
- 施術後、「全然良くならないじゃないか」と直接クレームを言われる。
- お客様の体調が悪化した際に、整体のせいにされてしまう。(医療行為ではないため、限界があるにも関わらず)
- 効果を感じてもらえないお客様に、次の施術を提案することに躊躇してしまう。
さらに、個人の整体院では、施術だけでなくカウンセリングや営業、リピートに繋げるためのコミュニケーションもすべて自分で行う必要があります。お客様一人ひとりの心に寄り添いながら、プロとして結果を出すことの難しさは、想像以上に精神的な負担となるんです。
【理由③】収入が不安定!独立開業の厳しさと集客の壁で後悔
整体師として働く場合、大きく分けて「整体院などに勤務する」か「独立開業する」かの二つの道があります。どちらの道を選んだとしても、収入の不安定さは大きな課題となりやすいんです。
まず、整体院などに勤務する場合、固定給に加えて歩合制が導入されていることが多いです。歩合制は、たくさん施術すれば収入が増えるというメリットがある一方で、お客様が少ない時期は収入が激減してしまうリスクもあります。特に、経験が浅いうちは指名も少なく、安定した収入を得るのが難しいと感じるかもしれません。
そして、多くの整体師が最終的に目指す「独立開業」の道は、さらに厳しい現実が待っています。独立するということは、施術スキルだけでなく、経営者としての能力も求められるということです。

具体的には、次のような壁にぶつかることがあります。
- 開業資金: 店舗の賃料、内装費、備品代など、数百万円単位の初期投資が必要です。
- 集客の難しさ: 整体院は全国に数多く存在し、競争が非常に激しい業界です。ウェブサイトの作成、SNSでの発信、広告運用など、マーケティングの知識が不可欠になります。
- リピーターの確保: 一度来店したお客様に「また来たい」と思ってもらうための高い施術スキルとコミュニケーション能力が求められます。
- 経営全般: 経理、税務、従業員を雇う場合は労務管理など、施術以外の業務が山積します。
もし集客がうまくいかなければ、収入はゼロに等しくなってしまい、開業資金だけが赤字として残る可能性もあります。整体院の廃業率は決して低くありませんから、この収入の不安定さや経営の厳しさは、整体師を目指す上で覚悟しておくべき大きなリスクと言えるでしょう。
【理由④】民間資格ゆえの社会的な立ち位置と法的規制の曖昧さ
前述したように、整体師は国家資格ではありません。これが、このお仕事の社会的な立ち位置や、働く上での難しさに繋がることがあります。
まず、民間資格であるため、施術者のスキルや知識のレベルが非常に多様です。中には、短期間の講習を受けただけで整体師を名乗る人もいるため、お客様から「本当に効果があるの?」「信頼できるのかな?」と疑問を持たれてしまうケースも少なくありません。
また、法的な規制が曖昧なため、施術中に思わぬトラブルに巻き込まれるリスクもゼロではありません。例えば、「医療行為」とみなされるような表現を使ったり、お客様の症状に対して「治る」などと断定的な発言をしたりすると、法律に抵触する可能性もあります。

厚生労働省は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の国家資格を定める一方で、それ以外の者が行う施術について、無資格者による危険な施術や、医業類似行為によるトラブルが起こりうることを注意喚起しています。整体師として活動する際には、ご自身の提供できるサービス範囲を正確に理解し、誤解を招かない表現を心がけることが非常に重要になります。
この民間資格ゆえの社会的な位置付けは、お客様からの信頼を得る努力や、常に最新の知識と技術を学び続けるモチベーションを維持する上でも、大きな課題となりやすいんです。
【理由⑤】競争が激化!飽和状態の業界で生き残る難しさ
最後の理由は、整体業界の現状に関わることです。実は、整体院やリラクゼーションサロンの数は、年々増え続けており、もはや飽和状態にあると言っても過言ではありません。
駅から近い場所、商業施設の中、住宅街の路地裏など、至るところに整体院が存在しています。このような状況では、新規のお客様を獲得するのも、リピーターになってもらうのも、非常に難しくなります。
競争が激しいと、次のような問題が起こりやすくなります。
- 価格競争: 他店との差別化が難しいため、価格を下げてお客様を呼び込もうとする傾向が見られます。これは、整体師一人の収入を圧迫することに直結します。
- 差別化の難しさ: 「どこも同じような施術をしているのでは?」と思われがちです。お客様に「ここじゃないとダメだ」と思ってもらうための、独自の強みやコンセプトを見つけるのが非常に難しいんです。
- 大手チェーンとの競合: 大手整体チェーンは、潤沢な資金を使って広告を打ち出したり、多店舗展開で集客力を高めたりします。個人経営の整体院にとっては、このような大手との競争は非常に厳しいものとなります。

このような激しい競争の中で生き残り、安定した経営を続けていくには、施術スキルが高いことはもちろん、マーケティングやマネジメントなど、ビジネス全般に関する幅広い知識と実践力が求められます。施術だけしていれば良い、という甘い世界ではないのが、整体業界の厳しい現実なんです。
それでも「整体師」を目指すあなたへ|後悔しないための心構え
ここまで、整体師というお仕事の厳しい現実について、詳しくお話ししてきました。もしかしたら、少し気持ちが落ち込んでしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、もちろん整体師は大変なことばかりではありません。
お客様の体の不調が改善し、笑顔を取り戻された時の喜びや、「先生のおかげで、またゴルフができるようになりました!」「諦めていた旅行に行けるようになりました!」といった感謝の言葉をいただく瞬間は、何にも代えがたい大きなやりがいとなります。人の役に立てる、本当に素晴らしいお仕事なんです。
もし、これまでの話を聞いても「それでも、私は整体師になりたい!」という強い気持ちが少しも揺らいでいないのなら、ぜひその情熱を大切にしてほしいと思います。その上で、あなたがこの道に進んで後悔しないために、いくつか心に留めておいてほしいことがあるんです。
自分の適性を冷静に見極めるポイント
まず一番大切なのは、ご自身の性格や価値観が、整体師というお仕事に本当に合っているのか、もう一度じっくりと考えてみることです。憧れだけでなく、客観的に自分を見つめ直すことが、ミスマッチを防ぐ何よりの近道ですよ。
・人の体に触れること、そして人の不調に真剣に向き合うことに抵抗はありませんか?
・長時間立ちっぱなしでの施術や、腕や指を使う肉体労働に耐えられる体力はありますか?
・お客様の期待に応えられない時や、クレームを受けた時でも、冷静に対応できますか?
・常に新しい知識や技術を学び続け、自分をアップデートしていく意欲はありますか?
・施術だけでなく、カウンセリングや集客、経営など、幅広い業務をこなす覚悟はありますか?
これらの質問に、胸を張って「はい」と答えられるのであれば、あなたは整体師に向いている可能性が高いかもしれません。でも、もし一つでも「うーん…」と考えてしまう部分があるなら、もう少し深く自己分析をしてみる時間を持つことをお勧めします。決して無理をする必要はありませんから、ご自身の気持ちと正直に向き合ってみてくださいね。
失敗しないための整体院選び・スクール選びのコツ
整体師として働く場合、最初はどこかの整体院やサロンに勤務することになる方がほとんどだと思います。そして、整体師を目指すためのスクール選びも非常に重要です。実は、「整体院」や「スクール」と一言で言っても、その環境や質は本当に様々なんです。後悔しないために、できるだけ長く、そして気持ちよく働ける、質の高い環境を見つけることが、何よりも重要になります。
スクール選びのポイント
- 学習内容と期間: 解剖学、生理学、臨床経験など、基礎から応用まで体系的に学べるか。期間は短すぎないか。
- 講師陣: 経験豊富で、現役で活躍している整体師が教えているか。
- 卒業後のサポート: 就職先や独立開業に関する相談、アフターフォローが充実しているか。
- 実践的なカリキュラム: 座学だけでなく、実技演習や臨床実習が十分に用意されているか。
整体院(勤務先)選びのポイント
- 研修制度: 未経験でも安心してスタートできるような、しっかりとした研修制度があるか。
- 給与体系: 固定給と歩合のバランス、残業代の有無など、不明瞭な点がないか確認しましょう。
- 労働時間と休日: ワークライフバランスを保てるだけの十分な休日や労働時間設定になっているか。
- 職場の雰囲気: 面接や見学を通じて、実際に働いている人の表情や、職場の空気感を肌で感じてみましょう。
- 経営理念・施術方針: 自分が目指す整体師像と、その整体院の方向性が一致しているかを確認することも大切です。
資格取得後のキャリアプランを具体的に描く
最後に、ただ整体師になることだけをゴールにするのではなく、その先のキャリアプランを考えておくことも、後悔しないために非常に大切です。
例えば、整体師として経験を積んだ後も、特定の技術(例えば、スポーツ整体、美容整体、産後ケアなど)を専門的に学ぶことで、自身の強みを確立し、お客様からの指名を増やすことができます。

また、独立開業を目指すのであれば、施術スキルだけでなく、集客やマーケティング、会計、マネジメントといったビジネススキルも並行して学んでいく必要があります。セミナーに参加したり、ビジネス書を読んだり、実際に独立している先輩整体師に話を聞いたりするなど、積極的に情報収集を行うことが成功への鍵となります。
そして、万が一整体師として続けるのが難しくなった場合でも、身につけた知識や経験を活かせる道はたくさんあります。例えば、健康食品の販売やフィットネスジムでのトレーナー、あるいは整体スクールの講師など、健康や体のケアに関わる様々な分野で活躍できる可能性を秘めています。
「将来どんな自分になっていたいか」を具体的にイメージすることで、目の前の困難にも目的意識を持って立ち向かえるようになるはずですよ。ぜひ、未来の自分を想像してみてくださいね。
整体師を目指すのが「やめとけ」と言われる理由の総括
今回は、「整体師はやめとけ」と言われる理由について、詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。このお仕事が持つやりがいと、同時に抱える厳しい現実の両面を見ていただけたかと思います。
整体師が「後悔する」「勧めない」と言われる主な5つの理由
- 肉体労働であること: 長時間の施術による身体的疲労や、自身の怪我のリスクがあります。
- 精神的ストレスの大きさ: お客様の期待と現実のギャップ、クレーム対応、成果へのプレッシャーが伴います。
- 収入の不安定さ: 特に独立開業の場合、集客や経営の難しさから収入が不安定になりがちです。
- 民間資格ゆえの課題: 資格の多様性や法的な位置付けの曖昧さから、社会的な信頼を得る努力が必要です。
- 激しい競争: 飽和状態の業界で生き残るためには、高いスキルとビジネスセンスが求められます。
これらの理由は、整体師というお仕事を目指す上で、決して目を背けてはいけない、とても大切なポイントです。もし、安易な気持ちや憧れだけでこの世界に飛び込んでしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうことになりかねません。
しかし、もしあなたが、これらの厳しい現実をしっかりと理解した上で、「人の体の不調を和らげ、健康に貢献したい!」という強い情熱を抱いているのなら、その挑戦は本当に素晴らしいことだと思います。
大切なのは、情報をたくさん集めて、ご自身の適性と真剣に向き合い、そして、質の高い学びの場や、安心して働ける「ホワイト」な職場を慎重に選ぶことです。この記事が、あなたの後悔しないキャリア選択の、ささやかながらも確かな一助となれたら、私もとても嬉しいです。